気になるデジカメ長期リアルタイムレポート
ライカM【第4回】
新搭載の「測光センサー切替」を検証
Reported by藤井智弘(2013/9/19 08:17)
機能がシンプルなM型ライカは、これまで説明書を読まなくても扱えるほどだった。ところがライブビューや動画など、多機能になった「ライカM」では、説明書を読まなくては不明なメニュー項目も出てきた。そのひとつが「測光センサー切替」だ。これには「アドヴァンスド」と「クラシック」がある。いったいなんだろうか。
ライカに露出計が搭載されたのは、1965年の「ライカフレックスI型」が初だ。しかし現在では一般的なTTLではなく外部測光式だった。TTLになったのは、1968年の「ライカフレックスSL」からだ。M型ライカでは、1971年の「ライカM5」が初。フィルムを巻き上げると内部に測光セルが現れ、TTLによる測光ができる。そしてシャッターを切った瞬間に測光セルは格納される、という凝った造りだった(ただし「Super-Anguron f3.4/21mm」のように、後玉が出ているレンズは、測光セルにぶつかってしまうため装着できない)。しかしそれまでのM型ライカとは異なるデザインで、しかも大柄になったことで不評の声が相次ぎ、当時のエルンスト・ライツ社はライカM4の再生産を始めた。
トラディショナルなM型ライカの形で露出計を内蔵したのは1984年の「ライカM6」からだ。シャッター幕に12mmの白いドットがあり、レンズから入った光はそのドットに反射した光を測定する。一種のスポット測光だ。以降のM型ライカは、「ライカM9」や「ライカMモノクローム」に至るまで、すべてシャッター幕反射による測光だ。
ところがライブビューができるライカMは、ライブビュー時はシャッター幕反射による測光ができない。そこでCMOSセンサーで測光を行なう。しかもCMOSセンサーによる測光は、ライブビューだけでなくレンジファインダーでも可能。「測光センサー切替」とは、従来からのシャッター幕反射による測光が「クラシック」、CMOSセンサーによる測光が「アドヴァンスド」なのだ。
しかもアドヴァンスドでは、3種類の測光の選択が可能になった。「スポット」、「中央重点」、「マルチ測光」だ。測光の切り替えができるのは、M型ライカでは初となる。ちなみに一眼レフのR型ライカでは、1976年の「ライカR3」で、平均測光とスポット測光の切り替えが可能になった。以降のR型ライカは、すべて複数の測光機能を搭載している。
多分割測光は、1996年の「ライカR8」が初。最後のR型ライカとなる2002年の「ライカR9」にも受け継がれた。そして2009年に発売されたライカ初の中判デジタル一眼レフ、「ライカS2」に多分割測光が搭載(5分割)。現行の「ライカS」にも同じ多分割測光が採用されている。しかし撮像素子を使用した測光は、ライカMが初めてだ。
それでは、それぞれの測光を見てみよう。まずスポット測光だが、ライカM5以降、フィルムのM型ライカはスポット測光を基準にしている。とはいえ装着したレンズの焦点距離によって画面内の測光範囲は変わってしまう。筆者が「ライカM6」を使っている限りでは、中央重点に近いスポット測光に感じる。ライカMのスポット測光は、ライブビューやEVFでは、画面中央に測光枠が表示されるため、測る場所を決めやすい。ただレンジファインダーの中には表示されないので、二重像合致式の距離計を中心に測るといいだろう。
中央重点は、「測光センサー切替」のクラシックとほぼ同じ。画面中央を重点的に測り、周辺部も加味する方式だ。「ライカM8」やライカM9系に慣れている人や、ライカMで測光センサーをクラシック中心に使っている人に向いている。ただし、クラシックとアドヴァンスドはどちらも中央重点だが、完璧に値が同じになる、というわけではなく、あくまで同じ感覚で使える、と考えたい。
M型ライカで初めて搭載されたマルチ測光。撮像素子を分割し、それぞれ測定した値を元に演算。最適と思われる露出で撮影できる。ライカSシリーズの多分割測光が5分割と発表されているのに対し、ライカMのマルチ測光の分割数は特に公表されていない。使用してみると、中央重点より明るくなりやすい傾向にあるようだ。そのため白っぽい被写体でも、ほとんど露出補正なしで適正になる。暗めにして重厚感を出すような表現は苦手に感じたが、ポートレートや明るめの露出が好みの人に合いそうだ。
ライカMは従来からのクラシックとアドヴァンスドの3種類の測光、そしてAEロックと露出補正で、豊富な露出コントロールが可能になった。ちなみに筆者はライカM9を使っていたこともあり、ライカMをレンジファインダーで使用する場合はクラシックに設定。ライブビューやEVFでも、できるだけクラシックと同じ感覚で使いたいため、中央重点をメインに使っている。そして状況に応じてスポットとマルチ測光に切り替える、という使い方だ。
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