交換レンズレビュー
Batis 2/25
ツァイス伝統の25mmがAF動作!高解像度時代にふさわしいレンズ
Reported by澤村徹(2015/9/4 12:00)
昨今、カールツァイスからミラーレス機向けレンズのリリースが相次いでいる。昨年、フルサイズEマウント用のMFレンズ、Loxiaシリーズを投入した。そして同じくフルサイズEマウントに向けて、今回はAF対応のBatisシリーズをラインアップする。Batis 2/25とBatis 1.8/85が登場し、今回はBatis 2/25を取り上げてみた。
Batis 2/25はツァイス伝統の広角25mmレンズで、8群10枚のディスタゴンタイプだ。筆者はヤシコンのDistagon 25mm F2.8を使っているが、Distagon 25mmをAFで使えるというだけで感慨深いものがある。
デザインと操作性
デザインはAPS-Cミラーレス向けのTouitシリーズに似ており、曲線を活かしてフードと一体化したデザインが特徴だ。このデザインはTouitが登場した際に物議を醸した。しかし、こうして同テイストのBatisが登場するに至り、デジタル時代のレンズデザインの先取りとして、今後は定着していくのかもしれない。
Batisシリーズは鏡胴に有機ELディスプレイを搭載している。このディスプレイには合焦位置と被写界深度を表示することが可能だ。初期状態ではMF時に表示する仕様だが、設定変更すればAF時にも表示できる。
近距離と遠距離で被写界深度の表示スタイルが異なり、近距離は合焦距離を軸に前後の差分の距離を示し、遠距離では何mから何mまでピントが合うかを示す。メーカーなりに実用シーンを踏まえた結果、このようなスタイルを採用したという。
多少好みが分かれそうな気もするが、被写界深度を数値で把握できるのが利点だ。また、mとft表示の切り替えも可能で、こうした表示スタイルはフォーカスリングを360度以上回すことで変更できる。既存のレンズにはないインターフェイスであり、かつ操作スタイルもかつてないものだ。デジタル時代のレンズのあり方に、ツァイスなりの答えを見せたといったところだろうか。
Batis 2/25はツァイスという強力なブランドレンズだが、ソニーEマウントレンズとしてはサードパーティー製レンズのひとつだ。それだけにAF性能が気になるところだろう。
今回試用した範囲では、AFパフォーマンスは至って良好だった。中近距離で狙い通りに合焦するのは無論、無限遠域にも気持ちよくピントが合う。広角レンズは無限遠撮影することが多く、無限遠でAFが悩むと興醒めだ。幸い、本レンズでは無限遠域でのモタつきはなく、安定感のあるAF動作が好印象だった。
遠景の描写は?
画質面では抜きん出たシャープさが目を奪う。1段ずつ絞りながら撮影したところ、中央部、周辺部ともに開放からシャープでコントラストの付き方も申し分ない。
歪曲収差や色収差もほとんど気にならない。開放では若干周辺光量落ちが発生するものの、1段絞ったF2.8ではほぼ解消されている。安定感のある広角レンズだ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
本レンズは開放F2と明るく、近距離ではボケを楽しむことも可能だ。大口径というほどではないにせよ、被写体の前後にボケを稼げるのは本レンズの利点だ。
ボケ味は前ボケ、後ボケともにクセがない。最短撮影距離が20cmと短いので、よりボケを稼ぎやすいはずだ。
逆光耐性は?
逆光条件では、ツァイスならではの優秀さを実感できる。純正フードを付けた状態ではあるが、逆光下でフレア、ゴーストともによく抑えられている。
光源の有無を問わず、シャドウが締まって申し分のないコンディションだ。これなら光の状態を問わず、どんなシーンも積極的に撮っていけるだろう。
作品
F5.6まで絞り、ヨットにピントを合わせる。全域に渡ってシャープに結像している。ストンと落ちた影が潔く、ツァイスレンズのアドバンテージを裏付ける。
歪曲が少ないから、こうした直線主体の被写体も臆せず狙っていける。都市風景のスナップなら、Batis 2/25は頼もしいパートナーになってくれるだろう。
赤と黄色がスッと手前に出て、発色の良さが伝わってくる。地味な被写体をビビッドかつハイコントラストにとらえ、リアリティを付与してくれる。
F5.6での撮影だが、隅々までシャープで隙のない描き方だ。コントラストもしっかりついて抜けの良いカットだ。
開放F2でドラム缶にピントを合わせ、背景をうっすらとボカす。F2だと晴天下でも露出オーバーにならないことが多く、気軽に開放撮影できるのがいい。
半分空いたバスの窓に、開放F2でピントを合わせた。前後が自然にぼけ、広角のパースペクティブと柔らかさを同時に楽しめる。
まとめ
ソニーから約4,240万画素のα7R IIが登場し、ミラーレス分野でもデジタル時代に見合った高解像度なレンズが求められている。Batisシリーズは高解像度時代に相応しい選択肢のひとつと言えるだろう。
また、10万円半ばという価格は決して安いわけではないが、アマチュア層に対しても現実的な価格に収まっている。買える高性能レンズとして、Batisは貴重な選択肢だ。