交換レンズレビュー
SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM
次世代基準のオールマイティ・ズーム
Reported by 礒村浩一(2014/5/29 08:00)
シグマから発売された「24-105mm F4 DG OS HSM」は、35mmフルサイズ機に対応する標準ズームレンズだ。広角域である24mmから中望遠域の105mmまでをカバーする。
ズーム全域において開放絞りはF4。シグマが推し進めている高品位なレンズシリーズ「Artライン」に属する。レンズ構成は14群19枚。FLDガラス、SLDガラス、両面非球面レンズを含むグラスモールド非球面レンズを使用。9枚の絞り羽根を採用することで円形絞りを実現している。
デザインと操作性
手にして最初に感じるのはそのズシリとした重みだ。レンズのみで885gとなる質量は、同社の開放F2.8の標準ズームレンズ「24-70mm F2.8 IF EX DG HSM」より約95g重い。また同じ焦点距離域および同じ開放絞り値を持つキヤノン「EF 24-105mm F4L IS USM」と比較すると約215gも重い。
今回撮影に使用したフルサイズデジタル一眼レフカメラ「EOS 5D Mark III」の質量は約950gなので、組み合わせた重さは約1,835gにもなる。ただレンズの最大径および長さはEF 24-105mmが最大径83.5mm×長さ107mmなのに対して、このレンズは最大径88.6mm×長さ109.4mmとその差はさほどない。
しかしこのレンズのズームリングを左手でつかみ操作したときのダイレクト感はEF 24-105mmと較べ非常に強いものがある。指先に当たるゴムローレットの山が鋭角なので指の腹に食い込むようにグリップする。手を回す動きに遊び無く追随する。長時間の撮影で頻繁に操作すると指先が軽くヒリヒリしてくるほどだ。
一方、フォーカスリングの幅は狭め。ファインダーを覗いたまま手探りでフォーカスリングを掴むためにはもう少し幅があると嬉しい。回転の重さおよびピッチは程よい。フルタイムMFも可能だ。
AF駆動には超音波モーター(HSM)が採用されている。超音波モーターの利点は駆動が速いことと駆動音が静かなことだ。このレンズも十分にその貢献を受けておりEOS 5D Mark IIIとの組み合わせにおいてストレス無く撮影に集中することができる。
また「SIGMA USB DOCK」(別売)にも対応しているので、ユーザー自身により位相差AFの調整を細かく行うことや、レンズのファームウェアの更新が可能だ。
遠景の描写は?
遠景を開放のF4からF16まで1絞りごとに撮影し描写の違いを見る。
まず広角端24mmの中心部および周辺部に注目。中心部および周辺部ともにF5.6~F8が解像力のピークと思われるが、F11~16でも高い解像力を持つ。F16では絞り込みによる回折ボケも表れてはいるが、その影響は非常に小さいといえる。
これらと比べると開放絞りにおいては若干ではあるが緩さが認められる。ただし他の同クラスのズームレンズに比べ、このレンズは非常に解像力が高いので開放絞りといえども十分な画質を得ることができるだろう。ただし周辺光量落ちを解消するにはF8程度まで絞る必要がある。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
次に望遠端105mmで撮影した画像の中心部および周辺部に注目する。
こちらも広角端同様にとても解像力が高い。特にF8における解像力は非常に高く、中心部の細やかな網の目から周辺部の石などをきっちりと分離して描写している。
またF16まで絞り込んでも回折現象による画質の低下がほぼ見受けられない。これは被写界深度を稼ぐ必要のある撮影時にはとてもありがたい。ただし開放絞りF4では解像力は十分に高いものの周辺光量落ちが目立つ。これにより全体にわずかながら暗めの露出となるようだ。
ボケ味は?
開放絞りF4のレンズはその被写界深度の特性から、F2やF1.4といった明るいレンズほど大きなボケを写し出すという性格のレンズではない。しかし背景の存在を程よく見せる画作りにはちょうど良いボケ具合となる。
24mmの広角という特性からも背景が大きくボケることはないが、最短撮影距離の45cmまで被写体に近づいて撮影するなど工夫次第でボケを活かした撮影を行うこともできる。開放F4、F5.6、F8いずれの絞り値においてもとてもナチュラルなボケ描写だ。立体感と現実感が同時に存在する写真となる。
中望遠の105mmともなれば、ピントを合わせた被写体の前後をボカすことも容易になる。前ボケ後ボケを取り入れた画作りもしやすい。
高い解像力を持っているレンズだからこそ、ボケている箇所とそうでない箇所のメリハリが生まれる。“とにかくボケる”というレンズとは違い、どちらかというと落ち着いたボケ描写だ。それだけにイメージに走りすぎない安定感のある写真となる。
逆光は?
木陰から逆光となる空に向けて撮影。あえて太陽を画面に入れて撮影した。撮影条件としては非常に厳しいシーンであるが、コントラストの低下もハレーションの出現も最小限に抑えられている。太陽の周辺以外はあまり影響されていないことがわかる。
まとめ
24-105mmの標準ズームレンズは、その画角の幅からとてもオールマイティに扱える便利なレンズだ。カメラメーカーからも純正レンズとして発売されており、その人気も評価も高い。
そこにあえて参戦してきたシグマだが、単に人気のラインナップであるということ以上の性能を投入してきたのは流石だ。もちろん純正レンズは独自の画像処理が可能であったりカメラとのマッチングが事前に試されていたりなど利点も多い。
しかしそれを念頭においたうえでも、このレンズは積極的に選びたくなるほどの仕上がりとなっている。重いだけの価値がある、そんな1本だ。
(モデル:夏弥)