交換レンズレビュー

XF 23mm F1.4 R

絞り開放から高いパフォーマンスの大口径広角レンズ

 富士フイルムのXマウントを採用した「XF 23mm F1.4 R」は、35mm判換算35mm相当のレンズだ。

今回は「FUJIFILM X-T1」で試用した。発売は2013年10月。実勢価格は税込9万4,800円前後

 レンズ構成は8群11枚で、うち1枚の非球面レンズを含み、すべてのレンズにコーティング処理HT-EBCを施している。

 Xマウントレンズは単焦点が充実しているが、35mm相当の本レンズは、ラインナップ中の重要なスタンスを担っている。開放F1.4という明るさも相まって、画質面に期待のかかるレンズだ。

デザインと操作性

 35mmフルサイズ一眼レフ機用の「35mm F1.4」と言えば、堂々とした大きな鏡胴のレンズが少なくない。本レンズはAPS-C機用ということもあり、35mm相当F1.4というスペックのわりにコンパクトだ。ただし、「XF 35mm F1.4 R」よりはいくぶん大きく、「FUJIFILM X-T1」に装着した際もやや大きな印象を受ける。

フィルター径は62mm
金属鏡胴で存在感のあるレンズだ。絞りリング搭載が特徴的である

 操作面での大きな特徴は、距離指標付きのフォーカスリングを搭載している点だ。通常時はロックがかかって回転しないが、フォーカスリングを手前に引くと、距離指標があらわれリングが回転するようになる。

 この操作でAFから自動的にMFに切り替わり、直感的な撮影操作が可能だ。また、レンズ先端部には被写界深度目盛を備え、現行レンズとしてはクラシカルな雰囲気をたたえている。

フォーカスリングを引くと距離指標があらわれ、自動的にMFに切り替わる

 フォーカスリングの感触は軽くもなく重くもなくといった印象で、欲を言えばヘリコイドのようなヌメリ感がほしいところだ。ただ、フォーカスリングの感触は好みに寄るところが大きいだろう。絞りリングも備えており、1/3段ずつクリック感がある。

 距離指標付きのフォーカススリングといい絞りリングといい、本レンズはれっきとしたAFレンズだが、往年のMFレンズのスタイルを踏襲している。アナログフィーリングを満喫しながら撮れるのは、本レンズのアドバンテージと言えるだろう。

 AF動作はミラーレス機用レンズとして申し分ないパフォーマンスだ。動作音が若干気になるものの、撮影を妨げるようなものではない。一般的なスナップであれば、近距離から遠景まで、快適に撮影できるだろう。

遠景の描写は?

 描写面を遠景撮影から見ていこう。本レンズは歪曲収差を光学補正のみで低減させており、絞り値を問わず歪みのないすっきりとした描写が印象的だ。

 開放撮影でも滲みがなく、シャープにディテールを描いている。F4〜F5.6あたりまで絞ると、画像の隅々までシャープに描き切り、コントラストの付き方も力強さを感じる。

 線が細い点も本レンズの良さと言えるだろう。また、ボディ側の点像復元技術を併用することで、F8以降に絞っても細部が甘くならずシャープさを保っている。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
共通設定:FUJIFILM X-T1 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:自動 / 23mm

ボケ味は?

 ボケ味については35mm判換算35mm相当ということもあり、とろとろにボケるというよりも、前後の様子を感じさせるタイプのボケ方だ。

 状況によって周辺部のボケの崩れ方がやや気になる場面もあるが、写真表現としては大きなデメリットにならないだろう。

 最短撮影距離は標準で60cm、マクロモードで28cmとなり、開放近辺で被写体に寄り、大きなボケを得ることができる。

絞り開放・最短撮影距離(28cm)で撮影。X-T1 / 1/4,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
絞り開放・距離数mで撮影。X-T1 / 1/1,800秒 / F1.4 / -0.67EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。X-T1 / 1/640秒 / F2.8 / +0.33EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
絞りF4・距離数mで撮影。X-T1 / 1/220秒 / F4 / -0.67EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm

逆光は?

 逆光環境でもコントラストは良好だ。太陽を写し込むとややフレアが多い印象を受けるが、シャドウが浮いて絵に締まりがなくなるようなことはない。

 太陽を写し込んだカットはフレアとゴーストがもっとも大きくなる位置を選んでおり、その状態でこうした写りであれば、逆光耐性は申し分ない部類だろう。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。X-T1 / 1/90秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。X-T1 / 1/90秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm

作品

水族館のような暗所でも、開放F1.4ならベースISO感度のままで撮影できた。X-T1 / 1/640秒 / F1.4 / -2EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
チューリップの先端にピントを合わせる。地面とさほど距離がないものの、大きなボケが稼げる。X-T1 / 1/4,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
開放で前後のボケを稼ぎ、チョウの薄さを強調してみた。大口径レンズならではの撮り方だ。X-T1 / 1/1250秒 / F1.4 / +0.67EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm
F4まで絞って硬くとらえる。シャドウがしっかりと沈み、濡れた岩の湿度が伝わってくる。X-T1 / 1/120秒 / F4 / -2EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 23mm

まとめ

 XF 23mm F1.4 Rの良さは、すぐれた光学性能が生み出すシャープさにある。単に硬いだけのシャープさではなく、研ぎ澄まされた線の細い描き方が秀逸だ。その鋭さが絞るほどに画一面に広がり、目の前の光景を精緻に描き出してくれる。

 F5.6あたりで気軽に撮ったスナップショットであっても、どこか凄みを感じさせるところが本レンズの真骨頂と言えるだろう。操作面でアナログフィーリングを重視しているが、スタイリングのみならず、Xマウントのメインレンズとして威光を感じさせる仕上がりである。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp