切り貼りデジカメ実験室

LYTRO ILLUMの不満をコンバージョンレンズで解消!

「ピントが後から変えられるカメラ」をさらに強化する

特異なスタイルが目を惹くLYTRO ILLUMは、“ピントが変えられる写真”が撮れるという特殊機能を有するデジタルカメラだ。その機能を最大限に活かすため、レンズはF2ながら30-250mm相当という異例の大口径高倍率ズームを搭載する。今回はこれにマクロ、ワイド、テレ、の各種コンバージョンレンズを組み合わせ、LYTRO ILLUMの未知なる可能性をさらに引き出すことを試みた。

「写真」のセオリーが通じない新感覚のカメラ

LYTRO ILLUMは“ピントが変えられる写真”が撮れるという、全く新しい概念のカメラだ。デジカメ Watchでも小山安博さんがレポートをされ、みなさんもご存じだろう。 アメリカのベンチャー企業Lytro社によって開発され、日本製デジカメとは全く異なるアプローチに注目が集まっている。

そうしたところ、思いも掛けず発売されたばかりのLYTRO ILLUMをお借りすることができたのである。日本国内の販売店である加賀ハイテックさんから「ぜひ、糸崎さんならではのアイデアを活かして使って欲しい」と託されたのだ。

実際に手にしたLYTRO ILLUMは、まず巨大なレンズとぶっ飛んだデザインに度肝を抜かされる。操作系はタッチパネルを多用した先進的なものだが、一通り説明を聞いただけでは今ひとつ使い方が理解できない。

それもそのはず。このLYTRO ILLUMは、ピント、絞り、構図、と言った通常の“写真”のセオリーが全く当てはまらないカメラなのである。

LYTRO ILLUMの撮影のコツ

まずLYTRO ILLUMで撮影する際は、“撮った後にピント位置が自在に変えられる”とは? という特徴を充分に考慮して撮影する必要がある。だから通常の写真のように被写体を平面構成して構図を作るのではなく、被写体を前後に重ね立体的に配置して撮るのがコツだ。

この意味で2眼式の3Dカメラ(ステレオグラム)と撮り方が似ているが、LYTRO ILLUMの場合は前後にピントのぼけた被写界深度が浅い写真を心掛ける事も重要だ。つまりその方がピントが変えられる写真の特徴を、より活かせるのだ。

このためLYTRO ILLUMに搭載されたレンズはF2と言う大口径で、しかも絞りが無く常に開放F2で撮影する。そのうえ画角はライカ判換算30〜250mm相当の8倍で、デジカメ用としては異例の大口径高倍率ズームなのである。まさに“ピント可動写真”という全く新しい表現の可能性を、望遠から広角に至るまで、ユーザー自身がさまざまに試せるようにできている。

LYTRO ILLUMに搭載された撮像センサーのサイズは1/1.2型(10.82×7.52 mm)で、これは超小型フィルムカメラ「ミノックス」の画面サイズ(11×8mm)とほぼ同じだ。なのでピントが変えられる写真を効果的に撮るには、風景や人物の場合はできるだけズームを望遠にした方が良く、広角で撮る場合は思い切り被写体に接近する必要がある。

以上のような特徴がわかってくると、LYTRO ILLUMの撮影も俄然楽しくなってくる。これまでの写真撮影とは全く異なる“真新しい脳味噌と眼”を使って、表現者としてのフロンティアが堪能できる。

LYTROの不満克服へ

とは言え、使っているとスペックに対し不満が無いわけではなく、例えば250mm相当よりもっと望遠でも撮影したくなるし、30mm相当よりもっとワイドな撮影も試したくなってしまう。また、LYTRO ILLUMは広角端30mm相当でレンズ前0cmまで接写できるが、望遠端250mm相当では同1mまでしか寄ることができない。

幸いなことに、LYTRO ILLUMのレンズ先端には72mm径のフィルターネジが切ってあり、さまざまなレンズを取り付けることも可能だ。そこで自分が持っているさまざまなコンバージョンレンズのうち、マクロ、魚眼、望遠の各種をLYTRO ILLUMに装着し、その秘められた可能性をさらに掘り下げる実験をすることにした。

―注意―
  • この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はデジカメWatch編集部、糸崎公朗および、メーカー、購入店もその責を負いません。
  • デジカメWatch編集部および糸崎公朗は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

「未来的」という言葉自体が古びてしまった現代だが、それでもなお未来的と形容したくなるのがLYTRO ILLUMのデザインだ。巨大なレンズと、垂直に対し斜めを基調としたカメラボディは実にユニークだ。しかも単に奇をてらったのではなく、カメラとしての基本を踏まえている事が、実際に手にすると理解できる。先進的な機能をデザインで体現していると言える
ちなみに付属レンズフードは、一般的なバヨネットとは異なる装着方式を採用している(フード側面のスイッチを押し、レンズ先端にフード内側のピンをはめ込む)。レンズキャップは一般的な中つまみ式だが、デザインが独創的でしゃれている。ストラップ取り付け金具も凝っている。とにかくこのカメラは細部にわたり“これまでに無いカメラ”を目指して作られているのがわかって面白い
LYTRO ILLUMは「ピントが変えられる写真」が撮れるというその特徴を活かすため、「30-250mm相当、F2」というハイスペックなズームレンズを装備している。これをさらに機能拡張するため、各種コンバージョンレンズを装着することにした。まずはマクロコンバージョンレンズだが、倍率の異なる2種類をセレクトした。いずれも49mm径で「LYTRO ILLUM」には72mm→49mmのステップダウンリングを使用する
1つめのマクロコンバージョンレンズ「OLYMPUS A-MACRO H.Q CONVERTER f=40cm」は、もともとオリンパスのフィルム一眼レフ「Lシリーズ」専用品で、中古で購入したものだ。LYTRO ILLUMに装着すると広角側ではけられるが、望遠端250mにするとほどよいワーキングディスタンスで、マクロ撮影を楽しめる
もう1つのマクロコンバージョンレンズは「MATCHED MACRO ADAPTOR(1:1)」で、さらに高倍率のマクロ撮影ができる。これも中古で購入し、何用か分からなかったので調べてみると「COSINA 100mm MC MACRO 1:3.5」 の専用品だった。しかし「LYTRO ILLUM」に装着しても、望遠側であれば問題なく使用できる
次に用意したのはテレコンバージョンレンズ(左)とワイドコンバージョンレンズ(右)。これらはもちろんLYTRO ILLUM専用品ではなく、適合しそうなものを自分のコレクションからセレクトしてみたのだ
オリンパス製テレコンバージョンレンズ「OLYMPUS IS/L LENS A-200 HQ CONVERTER 1.5X」は、これも同社のフィルムカメラLシリーズの専用品だ。数年前に中古カメラ店で新古品で売られていたのを購入した。倍率1.5でLYTRO ILLUMに装着すると広角側でケラれるが、望遠端ではライカ判換算375mm相当の超望遠になる
レイノックス製ワイドコンバージョンレンズ「DCR5000」は現行品だ。52mm径で、72→52mmステップダウンリングを介して「LYTRO ILLUM」に装着する。曲率の高い1枚凹レンズで、カメラ側のマクロモードと組み合わせて使う。倍率は0.5で「LYTRO ILLUM」の広角端でライカ判換算15mm相当の超広角になる。

実写作品

LYTRO ILLUMで撮影したRAWデータは、パソコンに取り込みLytro専用ソフトで「ピントが変えられる写真」に現像できる。またその際、ホワイトバランスや露出などの調整も可能。現像した写真は同じくLytro専用ソフトでネットにアップロードし、パソコンやスマホで誰もが閲覧可能になる。

ちょっと焦ったのは、Lytro専用ソフトがMacの場合はOS X 10.7以降にしか対応しておらず、私がメインで使っているMacにインストールできなかったことだ。しかし幸いなことに、サブで使っている使っているWindows 7パソコンには対応していて、無事インストールすることができた。

なおLYTRO ILLUMはWi-Fi機能を搭載し、iPhoneとネットワーク接続することで、パソコンを使わずネットに写真をアップすることもできる。しかしその場合は画像の調整はできず、RAWデータの保存もできない。

さてこれからお見せする写真だが、まず右下に表示された「i」マークをクリックすると、写真右下に操作方法(?マーク)が表示される。さらに左下に表示された「ITOZAKI」をクリックすると、写真が別ウィンドウで大きく表示されるので、ぜひこちらをご覧頂ければと思う。同様の操作はスマートフォンからも行える。

マクロコンバージョンレンズ

オリンパス「A-MACRO H.Q CONVERTER f=40cm」を装着し、望遠端250mm相当で撮影。被写体は近所の鉢植えに咲いていたが、中国原産のサクラソウ科プリムラ・マラコイデスのようだ。マウスでクリックした部分の花にピントが合うが、ピントの範囲から外れた背景は独特の画像処理のためかモアレ状に表示される。


空き地の片隅にナノハナが咲いていた。写真をクリックすると、咲いた花やつぼみなどがそれぞれ見えて、虫眼鏡で本物の花を観察しているような感覚が楽しめる。オリンパス「A-MACRO H.Q CONVERTER f=40cm」を装着し、望遠端250mm相当で撮影した。


より高倍率の「MATCHED MACRO ADAPTOR(1:1)」を装着して撮影した、ロウバイの花。望遠端250mm相当での撮影だが、倍率は「ライカ判換算1:1」を超えている。撮影に際しては、カメラの液晶モニターを「深度オーバーレイ」モードに切り替えて、花びらの先端から花の奥までピントの合う範囲が収まるように調整した。


小春日和に現れたセイヨウミツバチ。だいぶ弱っているようで、枯れ葉の上をヨタヨタと歩いていた。ぼくは昆虫撮影にはストロボを使うことが多いが、LYTRO ILLUMは絞りF2固定のため、今回の撮影は全て自然光のみで行っている。「MATCHED MACRO ADAPTOR(1:1)」を装着し250mm相当で撮影。


近所の畑の霜柱を「MATCHED MACRO ADAPTOR(1:1)」を装着し250mm相当で撮影してみた。写真をクリックしてピント位置を変えると、その表情が驚くほど変化するのが面白い。


2012年に藤沢市に引っ越して以来、なかなか足が向かなかった江ノ島に行って撮影したイソギンチャク。潮だまりで見つけたが、撮影に集中するあまり足に波がかかってずぶ濡れになってしまった。しかしお陰でなかなか不思議な雰囲気の写真が撮れた。「A-MACRO H.Q CONVERTER f=40cm」を装着し250mm相当で撮影した。


テレコンバージョンレンズ

LYTRO ILLUMの望遠端は250mm相当で、小さな野鳥を撮影するにはちょっと物足りない。そこで「OLYMPUS IS/L LENS A-200 HQ CONVERTER 1.5X」を装着すると375mm相当の扱いやすい超望遠になる(以下同じ)。ふと空き地を見たら目の前にツグミがいたが、しばらく逃げないでいてくれたお陰でほどよい大きさで撮影できた。


近所の畑でハクサイをついばんでいたヒヨドリの群れ。慎重に接近したつもりが、警戒してみんなこっちを向いている(笑)。手前のヒヨドリから奥の建物までがピントの範囲に収まるよう、液晶モニターの「オーバーレイ表示」を使って、慎重にピント合わせをした。


電線に止まったスズメを撮影してみたが、前後にも電線や植え込みなどが映り込む“立体構図”を考慮しながら撮影した。またLYTRO ILLUMは手ブレ補正機能を搭載していないが、常に絞り開放F2で撮影されるため、しっかりカメラを構えれば超望遠撮影においても手ブレに悩まされることはあまりない。


ワイドコンバージョンレンズ

マクロコンバージョンレンズで撮影した同じナノハナを、ワイドコンバージョンレンズ「DCR5000」を装着したLYTRO ILLUMの広角30mm相当で撮影した(以下同じ)。レンズ先端に被写体がくっつく直前まで接近して撮影している。お陰で超広角撮影にもかかわらず、被写界深度が浅くピントの変化が楽しめる写真になった。四隅が少しけられているが“ピント可動写真”としてはそれほど気にならない。


下向きに咲くのが特徴のロウバイの花を、見上げるようなアングルで撮ってみた。手前の花から、枝の向こうに見える家に至るまで、ピントの変化が楽しめる。


田んぼの脇に生えていたアメリカセンダングサ。この植物の種子は「ひっつき虫」と呼ばれ、細かなトゲで人の衣服にくっついて、種子を散布する仕組みを持つ。逆光での撮影だが、フレアーもなくいい雰囲気に撮れている。ピントを動かすと、レンズ表面に付着した埃にまでピントが合って、驚いてしまう(笑)。


巨大な戦車出現――! ではなく、美大時代に作った戦車のプラモを公園の砂場に置き撮影してみた。ニチモ製1/35「ドイツ重突撃戦車エレファント」で、ちょっとマニアックなアイテムだ。当時の私は何をやっていいのかからず、プラモづくりなどに興じていて、この戦車も油彩など駆使して仕上げている。しかしこうした迷走があったお陰で、後に写真を立体化した「フォトモ」が産まれたとも言える。ちなみにLYTROも一種の3D技術で、その意味でフォトモと共通性がある。


糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki