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後からピントを合わせられるカメラ
「LYTRO ILLUM」日本上陸

12月中旬より20万円前後で Android OSやSnapdragon 800を採用

加賀ハイテックは5日、米Lytroのデジタルカメラ「LYTRO ILLUM」(ライトロイルム)を12月中旬から国内で発売すると発表した。11月中旬には日本語サイトをオープンし、予約も受け付ける。価格はオープンプライスで、実売想定価格は20万円前後。

LYTRO ILLUM

Lytroは、ライトフィールド技術を使って撮影後に自由にピント位置を変えられる独自のカメラを開発。第1世代の「Lytro Light Field Camera」は長方形の望遠鏡のようなボディだったが、第2世代となるLYTRO ILLUMでは、大口径高倍率ズームレンズを搭載し、よりカメラらしいスタイルになった。

大口径高倍率ズームを搭載し、迫力のある外観
背面モニタはタッチパネル対応4インチ液晶で、上下方向にチルトする
斜めに傾いた背面。胸のあたりで構えるとちょうどモニタが見やすく、安定して構えられる
底部には三脚穴
1kg近い重量と大型サイズだが、女性でも意外に持ちやすく操作しやすいという
撮影の様子。画面上に青とオレンジの表示が出て、その範囲内はあとからピント合わせができる
撮影後の写真。前方の被写体にピントを合わせたり、後方の被写体にピントを合わせたりできる

ライトフィールド技術の原理自体は古くからあるが、センサーに搭載された無数のマイクロレンズアレイを使って小型カメラとして商品化したのはLytroが初めて。各レンズにさまざまな方向、角度から光が入り、それを3次元情報として記録。その情報を使うことで、撮影後に自由にピント位置を変更できるというのが特徴だ。

これがマイクロレンズアレイ
拡大してみると、光がさまざまな方向から入っているのが分かる

第1世代は1,100万アレイ(Lytroでは画素ではなくアレイと表現する)のライトフィールドセンサーを搭載していたが、第2世代では4,000万アレイとなり、高画素化した。センサーサイズは1/1.2インチ。実際に1枚の画像として出力する際には2,450×1,634の400万画素となる。

第1世代のLytro Light Field Camera
Lytroのカメラは、アナログのカメラ、デジタルのカメラに続く第3世代で、写真を3Dで撮影できるようになったのがポイント

レンズは35mm判換算時30〜250mmの光学8倍ズームレンズで、F値はF2.0。ピント位置だけでなく被写界深度もあとから自由に変更できるため、撮影はすべて開放で行われ、撮影機能としても絞り値を変更することはできない。

レンズの設計はLytroが行ったが、製造は「日本の有名な会社」(Lytro Global Sales VPのJeff Hansen氏)によるものという。メーカー名は明らかにされなかった。

主なスペック
レンズスペック

手ブレ補正機能は搭載されていないが、F2.0と明るいレンズで、ISO3200までの高感度撮影に対応したこともあり、今回は非搭載としたという。ただし、技術的な問題があるわけではないそうで、今後のモデルでは検討するという。

LYTRO ILLUMの内部的にはAndroid OSで動作しており、プロセッサとしてQualcommのSnapdragon 800を採用する。撮影後にピント位置を変更するなどの処理のためには強力なプロセッサが必要で、スマートフォンに使われているハイエンドプロセッサを採用した。

ボディはレンズも大きく、全体として大ぶりだが、大型グリップと台形のボディデザインで持ちやすく構えやすい。背面モニタは4型800×480で、上下方向に可動する。ボタン類はなるべく少なくしたとしており、基本操作はタッチパネルで行う。

インタフェースとしてはUSB3.0、TTL対応のホットシューも備えており、無線LANも内蔵し、撮影した画像をワイヤレスでiPhoneやiPadに転送できる。

現在はiOSアプリのみだが、Android版も開発中。さらに現在は撮影後の転送しか対応していないが、今後リモートライブビューもサポートしていく予定だという。

そのほか、常に開放で撮影するため、明るい屋外での撮影などのためにNDフィルターが付属する。

プロをターゲットにしており、それを踏まえてホットシューなどを搭載した
付属品
Windows/Mac用のLYTRO DESKTOP
各種補正や動画作成などが可能
ピント位置を自在に変更できる
iPadアプリでもピント位置の変更が可能

実際の撮影は普通のカメラと変わらず、シャッターボタン半押しでピントを合わせてシャッターを切るだけ。AF後にピントリングを回してピント位置を変えることもできる。

あとからピント位置を変えられるとはいえ、まず基準となるピントを合わせる作業は必要で、その位置からピントをあとで変えられる範囲が、前ピン位置は青、後ピン位置はオレンジで画面上に表示される。

逆にいえば、LYTRO ILLUMとはいえ、そこから外れた被写体は、後処理でピント合わせはできない。

撮影した画像は、再生画面でタッチをするとその位置にピントが合う。iOSアプリに転送した場合も、アプリ側でピント位置や被写界深度の変更が可能。PC用ソフトでは、F値をF1〜F16まで変更したり、各種の画像処理をした上で、JPEGやTIFF画像として出力できる。

また、ピント位置が連続して変わりながら画像の表示位置が動くような動画を作成することも可能。3Dディスプレイ用に赤青のアナグリフ画像や角度を変えた2枚の画像を生成することもできる。

LYTRO ILLUMは、価格も20万円前後と高額なため、メインターゲットをプロ写真家やアーティスト、クリエーター、ハイアマチュアとして、年間の販売台数は1万台を目指す。

製品の販売だけでなく、サポートやトレーニング、販促活動などは加賀ハイテックが担当。国内のカメライベント「CP+2015」に出展するなど、まずは「触れてもらう」ような活動も行っていく。

加賀ハイテックの関祥治社長は、写真関連からPCまで取り扱ってきた同社に「ふさわしい商品」と話し、LYTRO ILLUMの販売に力を入れていく考え。Lytroでは、各国での販売パートナーは、「単に販売するだけでなく、商品や技術を理解し、販売店のトレーニングもでき、各国市場で長く事業を行っている会社」を選んでいるとして、加賀ハイテックは「パーフェクト」と称賛。

すでに販売を開始している欧米では供給が追いつかずに品薄となっているが、特に日本市場を「重要視している」とHansen氏は話し、日本向けに一定の数量を確保しているとアピールする。

Lytroでは今後もライトフィールド技術を使った製品を開発していく意向で、Hansen氏は「第3世代」としてアレイ数を4倍、1億6,000万アレイの製品を企画しており、それを処理できるプロセッサパワーが実現するのを待って商品化していきたい考えを示していた。

(小山安博)