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キヤノン「RF35mm F1.4 L VCM」で鳥海山麓の水を巡る旅

自然風景で館野二朗さんが実感した新世代の大口径RFレンズの魅力

コケに覆われた神秘的な滝。35mmは目の前に広がる光景をそのまま写真に閉じ込められるような印象がある。滝を糸状に流すためF11まで絞っているので、手前から奥までシャープに写し出され、レンズの解像力を実感できた
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、1秒)/ISO 200/WB:4,800K

キヤノンから2024年7月上旬に「RF35mm F1.4 L VCM」が発売される。静止画・動画双方の撮影に適した新コンセプトの大口径F1.4単焦点レンズだ。レンズの発売に先駆けて、写真家の館野二朗さんに「RF35mm F1.4 L VCM」と共に、新緑が美しい鳥海山麓で水を巡る旅をしてもらった。

館野二朗

1975年東京都出身。若い頃からバックパッカーの旅やフライフィッシングを通して自然と向き合い、手付かずの自然美にインスピレーションを受け、2000年頃から創作活動を開始。独創的な視点と撮影技術から生み出される想像を超えた現実風景は、見る人誰ものイマジネーションを刺激する。近年は、奄美大島をテーマに精力的に活動。今後も旅をしながら地球上の美しい場所が仕事場となり、そこで生まれた作品を様々な形で発表していく。現在、雑誌、書籍、企業カレンダーなどで活躍中

※本企画は『デジタルカメラマガジン2024年7月号』より転載・加筆したものです。

RFレンズ初のF1.4大口径が小型・軽量で登場

大口径の単焦点Lレンズに、念願のRF35mm F1.4 L VCMが登場した。35mm F1.4はEFレンズ時代から人気だったので、期待していたEOSユーザーも多いのではないだろうか。初めて手にしたときは、その小ささと軽さに驚かされた。

質量はEF35mm F1.4L II USMより200g以上軽くなっている。大口径レンズと聞くと大きくて重いという印象があったが、バックフォーカスを短くできるミラーレス時代の新設計ではここまで小さくできるのかと感心した。

特徴は、アイリス(絞り)リングが付いていること。見た瞬間フィルム時代を思い出し、懐かしい気持ちになった。動かしてみるとクリックはなくスムーズに動くので、すぐに動画を意識した設計になっていることが分かった。

RF35mm F1.4 L VCM

新35mmレンズと共に鳥海山麓の水を巡る旅

35mmは風景写真で扱いやすい画角だ。広過ぎず狭過ぎない画角は自然な見え方で写せる。風景を眺めているときの視野に近く、構図が安定するのだろう。RF35mm F1.4 L VCMと共に、新緑の鮮やかな鳥海山へと向かった。

その目的は、鳥海山由来の水が育む滝や渓流、ブナ林を35mmの心地良い画角と精緻な画質で写真にすること。そして、雪解けで勢いを増す水流を動画にするためだ。

鳥海山麓エリア

山形県と秋田県にまたがる独立峰の鳥海山は特徴的な山容で被写体としても魅力的だが、その周辺にも鳥海山由来の湧水によって形成された美しいスポットが多数存在している。

無風状態で池が鏡状になり、残雪の鳥海山がきれいに映り込んだ。35mmの画角でピッタリの構図が得られ、自分が思い描いたとおりのイメージで写し取れた
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、1/60秒)/ISO 100/WB:4,900K
ブナの森に湧き出る水を縦位置で撮影。窮屈な感じにならないように、想定位置から少し下がった。単焦点レンズの場合、自分が前後して画角を調整する
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F8、1/8秒)/ISO 400/WB:4,900K
雨にぬれた奇形のブナ林を撮影。枝分かれしコブの付いた幹が印象的だったので、開放F1.4を選択すると、背景は柔らかくぼけて、ブナの造形が浮き上がった
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F1.4、1/100秒)/ISO 400/WB:4,900K
手前のウツギの花にピントを合わせ、滝の水しぶきがぼんやりと見えるようにF1.4で背景をぼかした。花は日陰にあるが浅い被写界深度のおかげで目を引く
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F1.4、1/1,250秒)/ISO 100/WB:4,900K

RFマウントの新たな息吹を感じる新コンセプトのレンズ

RF35mm F1.4 L VCM
発売予定日:2024年7月上旬
キヤノンオンラインショップ価格:25万3,000円(税込)

【SPECIFICATION】
レンズ構成:11群14枚
絞り羽根枚数:11枚
最小絞り:F16
最短撮影距離:0.28m
最大撮影倍率:0.18倍
フィルター径:φ67mm
外形寸法(最大径×全長):約76.5×99.3mm
質量:約555g

RF35mm F1.4 L VCMは、優れた写真画質と動画撮影時の操作性の双方を磨き上げた新コンセプトのRF単焦点レンズだ。大口径レンズらしい滑らかなボケ味と、繊細な線を描くシャープさは自然風景はもちろん、スナップやポートレートにもうってつけだ。フィルター径がφ67mmと小さい点も、フィルターワークが重要な風景写真ではありがたい。

大口径を感じさせない小型・軽量設計
大口径のLレンズは重量級の印象が強いが、RF35mm F1.4 L VCMはそのイメージを大きく覆してくれる。全長は10cmを切り、質量も約555gと非常に軽快だ。1日フィールドを歩き回っても疲れないサイズで、際どい立ち位置やアングルからでも、レンズの重みに振られることなく撮影ができる。本レンズでRFマウントによる進化を感じたポイントの1つだ
リアフィルターホルダーが同梱
シートタイプのフィルターを挿入するためのリアフィルターホルダーを同梱。φ67mmのねじ込み式フィルターとシートタイプのフィルターを併用できるので、静止画・動画を問わずフィルターワークの幅が広がる

初採用のVCM(ボイスコイルモーター)は磁力を用いた高推力のフォーカシングユニットで、大口径レンズを力強く駆動させることで高速AFを実現している。動画撮影においては、アイリスリングによるスムーズな描写の変化が可能なことはもちろん、本レンズと鏡筒サイズや重心バランスを共通化した単焦点シリーズが予告されるなど、今後の展開に目が離せない。

スムーズなAFを実現するVCMユニット
重いレンズを磁力で高速移動させるVCMを採用。静粛性にも優れ、動画撮影時にも有利だ。メインのフォーカスレンズとは別に、ナノUSMを用いたフローティングレンズも備わり、撮影距離を問わず高画質を実現する

周辺部まで精緻な解像力

開放絞りからピント面はシャープなレンズだが、F8以上まで絞ることで解像力はより一層向上する。全体に均一な光が回ってくれるので、四隅まで鮮明に描写されて非常に高画質だ。遠景から近景まで幅広いシーンを撮影したが、どの距離でもクリアに解像する。

EF35mm F1.4L II USMにて採用された色収差の補正に効果的なBRレンズこそ非搭載だが、RFマウントの大口径かつショートバックフォーカス設計による恩恵で、本レンズは同等以上の描写力を有している。

滝へ行く際、水量がもう少し多いことを期待していたが、到着してみるとそれほど水量はなかった。本来は縦位置で滝以外の要素を限定した構図にする予定だったが、横位置で周囲の新緑を取り込んだ構図に変更。画面周辺部の葉までしっかりと解像している
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、1/4秒)/ISO 100/WB:4,900K

豊かなボケで立体的に表現

開放F1.4を用いた撮影は、背景がぼけて被写界深度が浅くなるため、被写体を立体的に見せられる。雨の中を歩いていると雨粒を乗せたシダ類の葉が目についた。最短撮影距離の28cmまで寄ってF1.4で撮影すると、ピントを合わせた水滴と葉の一部だけがみずみずしく浮かびがった。ボケも柔らかく好印象だ。

ピントが合っている箇所は極めてシャープで、葉の質感まで伝わる。浅い被写界深度のおかげで雨粒が立体的で、みずみずしさが感じられる1枚に仕上がった
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F1.4、1/640秒)/ISO 100/WB:4,900K

美しい光条と高い逆光耐性

絞り羽根は11枚。太陽を入れた撮影では22本の鋭い光条が得られるので、ポイントを作りやすい。ASC(Air Sphere Coating)によって逆光耐性が強化されているので、フレアやゴーストも気にならなかった。

下から仰ぎ見ると滝の水しぶきの上空に太陽が顔をのぞかせていた。高速シャッターで水しぶきを写し止めると、フレアやゴーストのないクリアな描写に仕上がった
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、1/640秒)/ISO 100/WB:4,900K
レンズ最前面はフッ素コーティングされているので、水滴が付着しても手入れが簡単な点もうれしい

アイリスリングで動画の表現領域が広がる

RF35mm F1.4 L VCMに搭載されたアイリスリングは現行機では動画撮影のみ使用できる(今後発売予定のカメラでは静止画撮影時も使用可能)。絞りがシームレスに動くので、動画撮影中でも絞りを調整可能だ。

デクリック仕様のアイリスリングを搭載

アイリスリングを使えば、ボケの様子に集中しながら直感的に絞りの操作が行える。本レンズを用いた動画は、以下のYouTubeリンクから確認してほしい(動画作例は13:45から再生)。

キヤノン RF35mm F1.4 L VCMを実機で解説/写真家・館野二朗さん撮影の写真・動画を交えた最速インプレッション - YouTube

まとめ

鳥海山周辺に到着すると、予想通りまぶしいほどの新緑が出迎えてくれた。湧き水や雪解け水が印象的だったので、その水をたどるように山麓を巡っていく。誇張の少ない35mmの画角だからこそ、鳥海山の変化に富んだ自然美が引き立つように感じる。F1.4の明るさは、曇りや雨の日の暗い森の中で特に役に立ち、ぬれた新緑の葉や木の幹を立体的に写してくれる。

生い茂る新緑の森を流れる川は青白く独特の水色をしていた。細かい葉が幾重にも重なり、緑色に同化してしまいそうだが、葉の1つ1つをシャープに描き分けてくれた
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F8、1/5秒)/ISO 100/WB:4,800K

レンズの描写力は申し分なく、滝を流れ落ちる水が岩肌に当たって飛び散る水滴の1粒1粒やこけむした岩の細部、新緑の葉脈の繊細な模様などのすべてを鮮明に描写する。コンパクトさと軽さは、足場の悪い自然の中を長時間移動しながら撮影する状況下で、負担を大幅に軽減してくれる。

小ぶりなレンズではあるが信頼性はこれまでのLレンズと同等。防塵・防滴構造なので、雨中や滝の撮影も安心して行えた。RF35mm F1.4 L VCMは動画撮影を意識した機能も付いているので、精力的に動画も撮影した。勢いよくあふれる伏流水と、その水によって育まれ生命力を増す草木。芽吹きを迎え躍動する山麓の様子を動画に収めていく。

標高1,170mにある竜ヶ原湿原。まだ新緑の葉はほとんどなく、寒々しい景色だったが、天気も良く面白い雲も流れていたので、スローシャッターで雲を流し、水面をフラットに仕上げた。スローシャッターの割には、色収差もかなり抑えられている印象だ
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、13秒)/ISO 100/WB:4,900K

伝統的な35mm F1.4で写す魅力を引き継ぎつつ、写真・動画双方の表現意欲をかき立てる本レンズから、RFレンズを次の世代へ進める気概を感じる旅となった。

重たい雲に覆われた夕暮れの海を撮影しようと向かったが、太陽が水平線に落ちる寸前、雲が薄くなり光があふれてきた。わずかなグラデーションを60秒の露光でじっくりと写した
キヤノン EOS R5/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F11、60秒)/ISO 100/WB:4,900K

※試作機による評価のため、製品版と外観および画質が異なる可能性があります

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館野二朗

若い頃からバックパッカーの旅やフライフィッシングを通して自然と向き合う。手つかずの自然美にインスピレーションを受け、2000年頃から本格的に撮影活動を開始。以降現在まで全国を行脚し、独創的な視点で撮影をおこなっている。