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飛行機撮影での実力は? 軽快スリムな超望遠レンズ「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports」

プロに撮り方を教わりながら聞いてみた

撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F5.6)/ISO 640

シグマから意欲的な超望遠単焦点レンズ「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports」が発売されました。焦点距離500mmなのに、驚くほど小型・軽量であることが特徴の製品です。

ここ数年、超望遠レンズの世界に目覚め、身近な野鳥や動物の撮影を楽しんでいる筆者ですが、飛行機撮影のような本格的な世界への入門には躊躇していたところ……

「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports」も気になるし、飛行機撮影も体験してみたい、などと思っていたら、プロ航空写真家の佐々木豊さんと一緒に、まさにそのレンズを使いながら飛行機撮影のイロハを学びつつ、さらには作品を拝見・解説してもらう機会に恵まれました。

佐々木豊

1966年京都府生まれ。これまでモータースポーツや様々なスポーツ競技を撮影。雑誌などに作品を発表。その経験を活かし、現在は航空機撮影を主に行う。月刊エアライン、ヒコーキ写真テクニック(イカロス出版)や同社カレンダーなどにも作品を提供。どんなシーンでも自身独自の視点とエッセンスをちりばめることに主眼を置いて撮影に挑む。伊丹空港を中心に全国各地の空港で活動。日本航空写真家協会(JAAP)準会員。ソニー・イメージング・プロ・サポート会員。ソニーαアカデミー講師。

コンパクトな500mm、その懐の深さ

曽根原昇 (以下、曽根原):超望遠レンズで飛行機を撮る、しかも単焦点となると、どの焦点距離が適切なのかもよく分かりません。今回2人が使うこのレンズ「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports」の焦点距離は500mmですけど、大丈夫でしょうか?

佐々木豊 (以下、佐々木):私は普段、400mmと600mmを使い分けているのですけど、500mmはその中間になります。両方の良いところを使える画角ともいえますから、飛行機の撮影では汎用性があります。その500mmが、これまでになく小型なサイズで登場してくれたことがポイントです。

500mmとは思えないスリムな鏡筒
伊丹スカイパークで使いこなしを教わる

曽根原 :確かに、単焦点の超望遠レンズといえば「大砲」と呼ばれるほど大きく重いイメージがありました。

佐々木 :それはけっこう大切なことで、例えば多くの飛行機ファンが集まる場所や、家族連れの方々が多いような撮影ポイントで、威圧感を出さずに撮れるのがこのレンズのメリットの1つだと思います。しかも、このレンズ、素晴らしく高い描写性能を見せてくれるのですよ。

曽根原 :描写性能も良いのですか?

佐々木 :私も使ってみて、このレンズの画質の良さに感心しました。それは後ほど、今日の実写と、これまでに私が撮った写真とで一緒に確認してみましょう。

実地で使い勝手を検証

曽根原 :初めての伊丹空港での撮影、伊丹スカイパークと憧れの千里川土手です! それはそうと、本当に取り回しの良いレンズですね。とても500mmとは思えません。

憧れの千里川土手で

佐々木 :千里川土手の場合、遠くから飛行機が向かってくるところ、真上に来たところ、着陸するところを連続で撮れるのですけど、ずっと手持ちで自由に追いかけられるのがメリットですよね。伊丹スカイパークなら左右にレンズ振りながら離陸や着陸を手持ちで追う。初めてでも使いやすいのではないですか?

撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F5.6)/ISO 640

曽根原 :はい、これなら飛行機撮影初心者の僕でも安心して使えます。AF性能は大丈夫でしょうか?

佐々木 :私がこれまで使ってみた限りではまったく問題を感じませんでした。高速で飛ぶ飛行機にもよく追従しますし、狙ったポイントに素早くピタリと合焦する印象。今回はソニー α1で使っていますが、カメラ側の高い要求にもしっかり応えてくれます。だから、AF性能も心配せず使ってもらって大丈夫ですよ。

撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F5.6)/ISO 640

作品を見せてもらう

佐々木 :それでは場所を変えて、私が「SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports」で撮影した作品を見ていただきましょう。伊丹空港だけでなく他の空港で撮った写真もあります。夜の撮影以外は、全て手持ち撮影です。

曽根原 :よろしくお願いします。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/200秒、F9.0)/ISO 125

曽根原 :いきなりカッコイイ作品です!

佐々木 :2月に新千歳空港で撮影したタキシング中の機体です。プロペラ機は高速シャッターで撮影すると、プロペラが止まって写ってしまうので、シャッター速度を遅めの1/200秒にしました。焦点距離500mmで1/200秒だと手ブレが起きやすいところですが、レンズの「OSスイッチ」を「1」(手ブレ補正のうち、一般的な撮影に適しているモード)にして、プロペラの回転はイイ感じで回転しながら、機体はシャープに写せています。


レンズ左側面のスイッチ類。上からAF/MF切替、フォーカスリミッター、OS(手ブレ補正)モード切替、カスタムモード切替

曽根原 :これは……本当にものすごい解像性能がありますね。

佐々木 :本レンズの描写性能ならではの写りです。本当に解像性能が高くて、金属表面の質感を見事に表現できていますし、パイロットの表情まで克明に写しだしているところはさすがだなと思いました。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/1,250秒、F6.3)/ISO 200

佐々木 :こちらも同じ新千歳空港です。ここは条件によって離陸する場所がバラバラで、どの焦点距離のレンズにするかいつも迷うところです。ターミナルの建物の上に飛行機が来たタイミングで撮りたいわけですが、この時は500mmでちょうどよいサイズ感で撮ることができました。

曽根原 :「500mmは汎用性が高い」とおっしゃっていた意味が分かりました。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/2,000秒、F5.6)/ISO 200

佐々木 :こちらは伊丹空港です。絞り値をF5.6開放にしての撮影で、空が背景ですので周辺光量の低下が心配になるところですが、気になるほどの影響はありません。

曽根原 :なるほど、絞り開放でもクリアでシャープですね。

佐々木 :ただし500mmもの超望遠ということで、描写性能を活かすためには、陽炎のでていない時間を選ぶなど、綺麗に写せるための条件選びも大切になります。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/750mm(クロップ撮影)/マニュアル露出(1/1,250秒、F6.3)/ISO 400

曽根原 :夕陽が綺麗ですね。こちらはどこでしょうか?

佐々木 :関西国際空港の対岸から撮影した写真です。ここは飛行機に絡めて夕陽が撮れます。撮影したのが3月13日(水)で、夕陽の沈む位置に合わせて撮影場所を選んだところ、良い位置で離陸する機体があったので、上手く管制塔と一緒に画面に収めることができました。

曽根原 :飛行機が光の尾を引いているように見えるのは?

佐々木 :ジェットブラスト(排気)に太陽の光が反射してこのように写ります。そしてこの写真は、設定をAPS-Cサイズ(焦点距離750mm相当)にしています。関空は対岸から距離が結構ありますけど、画角を切り換えることで十分なサイズ感で撮れました。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(1/1,000秒、F7.1)/ISO 200

佐々木 :これは成田の航空科学博物館で撮影したものです。先に説明した「周りに威圧感を出さずに撮れる」ことが功を奏しました。家族連れが多く訪れる場所なのですが、できるだけ、そうした方々の邪魔にならないよう自然体で撮れるのが本レンズの良いところです。

曽根原 :手前から奥まで飛行機の迫力がすごいですね。

佐々木 :一番手前と中央の飛行機がボーイング747、いわゆるジャンボで、一番奥に写っているのが世界最大の旅客機エアバスA380ですね。大型の四発機が3点揃っていたので「これは撮らねば!」と。タキシングの途中で3機の並びが良い画角に収まるのを待って撮りました。

曽根原 :シャッターチャンスに強いというわけですね。圧縮効果も効いていてゾクゾクします。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(6.0秒、F8.0)/ISO 400

曽根原 :夜の伊丹空港ですね。

佐々木 :待機中の飛行機はライトを消していることが多いのですけど、この時はつけたままでした。かなり強い光なのでゴーストやフレアが出やすいシーンなのですが、このレンズではまったく出ませんでした。逆光耐性も優秀ですね。

曽根原 :強い光源が端正に写ったことで、むしろ印象的な作品に感じます。

佐々木 :機体は動いておらず、光芒を出したかったこともあって、絞り値をF8にして6秒の長時間露光にしています。ISO 400と感度を低めに設定したこともあって質感も良く表現できました。光の当たった尾翼などは金属感の再現が本当に素晴らしく「ここまで写るのか!」と私も驚きました。

曽根原 :飛行機でも状況によって長時間露光で撮影することがあるのですね。


撮影:佐々木豊
ソニー α1/SIGMA 500mm F5.6 DG DN OS|Sports/500mm/マニュアル露出(15.0秒、F11)/ISO 200

佐々木 :前の写真は6秒でしたが、こちらのカットはさらに長く15秒で撮っています。当然、三脚は必須です。

曽根原 :15秒ですか。それほど長いシャッター速度で撮ることはよくあることですか?

佐々木 :いやいや、普通は15秒ものシャッター速度では撮りません。よく使う400mmや600mmのレンズは大きくて、レンズフードを外しても風を受ける面積が広いため、三脚で固定していてもブレてしまうからです。

曽根原 :そんなにブレやすいものですか?

佐々木 :超望遠レンズは画角が狭いうえに全長が長く、少しの風でもブレてしまうことが多いのです。ところが、このレンズは500mmにしては全長が短いので、風の影響を受けにくい。この写真を撮った日は風が強かったのですけど、 このレンズは500mmにしては全長が短く前玉も小さいので、風の影響を受けにくくい。それにも負けず15秒のスローシャッターで撮れました。

曽根原 :コンパクトだとそんな効果もあるのですね。超望遠レンズにとっては大きなメリットになりますね。

佐々木 :私もこのレンズを使ってみて、コンパクトであることの大切さを実感しました。しかも、ただコンパクトなだけでなく描写性能も抜群に高くて、デザインも良いときたものです。「このレンズ1本で遠征撮影だってこなせちゃうな」と思えるくらいのレンズだと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。