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世界中のどんな場所でも安心して撮れること…風景写真家・中西敏貴氏に訊く「なぜAngelbirdのメモリーカードを使うのか」
- 提供:
- 銀座十字屋ディリゲント事業部
2024年3月29日 07:00
「交換レンズを買うのも大切だが、よいメモリーカードを買うのも同じくらい大事」とは、風景写真家・中西敏貴さんの言葉だ。中西さんはそれくらい、メモリーカードを重視している。
自らを「記録メディア難民」と称し、たくさんのメモリーカードを渡り歩いた結果、たどり着いたのがAngelbirdだという。その経緯をお伺いすると、実に深かった……。
メモリーカードは作風にも影響しかねない点も含め、プロの風景写真家がAngelbird製品を選ぶ理由や、みなさんが気になるだろう撮影の秘話などをじっくりと紹介していこう。
1971年大阪生まれ。2012年に美瑛町へ移住。大雪山系とその麓に広がる丘陵風景をメインフィールドとしつつ、人々と自然との関わり方を探求する旅を続けながら、古来から続く北海道の基層文化をテーマに作品制作に取り組む。2020年9月キヤノンギャラリーS において写真展「Kamuy」を開催。日本写真家協会会員、日本風景写真家協会会員、日本風景写真協会指導会員、thinkTANKphotoアンバサダー、Markinsアンバサダー、Angelbirdアンバサダー、ホグロフス・フレンズ。
意識しないで済むメディアはよいメディア
風景写真家・中西敏貴さんは、眼前の光景を“あたりまえ”には撮らず、デザインされた構図でシンボリックに切り取るアーティスティックな写真家だ。絵筆の代わりにカメラを持ち、光で絵を描くような、幻想的な作品を数多く生み出している。
取材の直前、中西さんが撮影セミナーを行っていたため拝聴させていただいたのだが、要所でメモリーカードの重要性を訴えていた。
マイナス数10度の極寒の地や、灼熱の現場で撮影する風景写真家だからこそ「信頼できるメモリーカードが必要」と語り、「苦労して撮影した写真が記録されていないと悲しい」とセミナーの参加者を諭す。
後の取材で分かることだが、メモリーカードのエラーで貴重な撮影データを失った経験があるからこそ、万全の準備で撮影に臨んでもらいたかったようだ。
冬山の撮影シーンをスクリーンに投影し、メモリーカードがいかに過酷な状況に置かれているかを語る言葉には説得力があった。
当初は雑談程度に聞いていただろう参加者の方々も、いつしか真剣に耳を傾けるほど中西さんのメモリーカードに対する考えは深く、その思いは熱い。
ちなみに、中西さんが使用しているメモリーカードはAngelbird製のもの。
中西:僕がメモリーカードに求めるのは、どんなに厳しい環境でも安心できること。メモリーカードに不安を抱かず、意識しなくてもいいくらいに安定していることが重要です。
メモリーカードは「カメラの心臓」だと中西さんはいう。普段は意識しないけれども、止まっては困る存在がメモリーカードなのだと。
連日2,000枚の撮影を支えるAngelbird製品
セミナーを拝聴した後、風景写真家・中西敏貴さんの撮影スタイルや写真に込める思いを含めつつ、メモリーカードについて詳しくお聞きした。
「写真家=芸術家=文系」のイメージがあるため、どうしてもステレオタイプに捉えてしまいがちなのだが、セミナーを終えて取材ルームに現れた中西さんはというと、見るからに体育会系。
厳しい自然を相手にする風景写真家は身体も鍛えられるのだろうと思ったのだが、実は、写真家になる前は大阪の基礎スキー選手だったとのこと。とあるスキー場の国体専用コースを滑りたいために、アルペン競技もしていたという。
中西:今もオーストリア製のスキーを使っていて。だから、個人的にオーストリアが好きなんですよ。スキーヤーにとってオーストリアはいつか行きたい憧れの国ですね。
仕事柄プロの写真家にお会いする機会は多く、中でも写真家になる前の職業や写真家になったきっかけに関しては興味深いものがある。
スキーの選手で公務員でもあった中西さんは、プロの中でもユニークな経歴のもち主といえるだろう。
使用している撮影機材に関しては、キヤノンの「EOS R5」と「EOS R6 Mark II」とのこと。
海外ロケのときはダブルスロットの両方にメモリーカードを入れ、RAW+JPEGで撮影している。普段の撮影はCFexpressカードだけをカメラに入れて、バックアップ記録はしていないという。
以前は、常にダブルスロットにメモリーカードを入れてRAW+JPEGでバックアップ記録をしていたが、RAW現像時の色確認用として記録していたJPEGが不要になったこと、Angelbirdの信頼性が高いことなどから、CFexpressカードだけカメラに入れてRAW形式で撮影しているそう。
中西:海外の撮影では、リスク管理のバックアップとしてだけでなく、すぐに送信できるJPEG形式が必要になりますが、普段の撮影は家に帰ってバックアップするのでRAW形式のみです。Angelbirdのメモリーカードにしてから1年くらい経ちますが、まったくエラーがない。だから、バックアップ記録をしなくても安心して使えます。
参考までに撮影枚数をお聞きしてみると……
中西:1日に2,000から3,000枚くらいです。
咄嗟には言葉の真意が掴めず、筆者の感覚から「月に2、3度は撮影に出て、その日は2,000枚くらい撮るのだろう」と勝手に解釈したのだが……そうではない。
ご自身の撮影フィールドでもある北海道の美瑛町に移住して以来、自宅にいるときは毎日、撮影に出ているという。
中西:家の前が大雪山なので、丘を車で回ったり山に入ったり森に入ったりして、割と自然環境の厳しい中で撮影しています。それを毎日。毎朝、日の出の1時間前に家を出て。「今日は写真を撮ろう」とかじゃないんですよ。息するような感じです。起きたら写真を撮るというのがルーティンになっています。
連日2,000枚の写真(RAWデータ)が蓄積されていくのだから、途方もない容量のストレージが必要だろう。
中西:10TBのHDDを5台使ってRAID(複数のHDDを1台として扱う安全性の高いシステム)を組んで、現在はそれが4セットあります。そこにオリジナルのRAWデータを保存していて、RAW現像したものはそれとは別のHDDに保存しています。オリジナルと現像した写真を分散しているのは、リスク管理のためです。
単純計算で、写真の保管に使用しているドライブの容量は200TBとなる。
プロの写真家を数多く取材してきたが、写真の保管にこれほどの容量を使っている写真家はちょっと記憶にない。それくらいに、撮影する写真の枚数が尋常ではないということだ。
そして、直近の1年間とはいえ、その根底を支えているメモリーカードがAngelbirdの「AV PRO CFexpress SE」と「AV PRO CFexpress SX」、「AV PRO SD MK2 V90」の3種類。
毎日2,000枚の写真を撮影してはフォーマットする過酷な使い方をしていて、それでもエラーが出ていないというのだから、Angelbirdに対する信頼感が高いのもうなずける。
メインで使用しているのは「AV PRO CFexpress SE」。大容量タイプがあるから選んでいるとのこと。
「AV PRO CFexpress SX」の方が高速なのだが、中西さんは連写を多用する撮り方をしないため、絶対的な速度よりも容量を重視している。
ミラーレスカメラで大きく変化したワークフロー
中西さんの写真に対する姿勢は明確だ。
デジタルデータよりも「紙媒体」を重視し、デジタルデータは常に「最新の技術で仕上げる」というもの。
写真家として目指すのは、これから十年をかけて「作品だけで生計を立てる作家になる」ことだという。そのために海外展開を見据えた活動もしていて、海外での販路もある出版社から写真集も出している。
中西:デジタルデータは、やっぱり失われていくものですし。でも、紙ならずっと残ります。だから僕は作品をプリントするし、写真集も作る。それに写真の色の好みは変化するので、RAW現像したりレタッチした作品はそれで終わりではなく、新しいソフトや新しい技術が出たときに、そのときの“感覚”で新たに仕上げたりもします。
デジタル写真はモニターで見る楽しみもあるけれど、最終的には作品を物質化するというのが中西さんのこだわりでもある。
中西:作品にする写真はすべてプリントします。プリントはプリントとしての美しさを求めていて、だからハイライトやシャドウが切れていてもよいと思ってます。見えないところは見えない、とんでいるところはとんでいる。その中で1番表現したいコアな部分が映っていればヨシとしようと。
写真のRAW現像には、主にキヤノンの純正ソフト「Digital Photo Professional」(以下、DPP)を使用している。
RAW現像ソフトや管理ソフトがたくさんある中でDPPを使う大きな理由は、「モニターとプリントの色が合うから」とのこと。
DPPはカメラメーカー純正のソフトなので、カメラで作った色がそのまま反映されるという点もDPPを選ぶ理由のひとつらしいが、カメラやDPPで作った色がプリントに正しく反映されるという点は、中西さんがこだわる物質化には必須のようだ。
中西:当然のことですが、キヤノンのカメラで撮って、純正のDPPでRAW現像して、キヤノンのプリンターでプリントすると、一貫して同じ色が扱える。外部のソフトで無理なレタッチとかはしないので、基本的に色がズレないんです。
物質化、つまり作品をプリントに落とし込むという行為は、中西さんのワークフローにも大きな影響を与えているようだ。
以前はRAW現像ソフトやレタッチで色を作り込んでいたけれど、モニターで最適解のレタッチをしても、プリントで良い結果にならないことをこの10年くらいで実感したという。
その結果として行きついた撮影スタイルが、「制限を掛ける」というもの。
中西:写真がデジタルになって可能性が広がったのはよい面なんですけど、(仕上げの)選択肢が広がるとともに迷いも生じてしまう。だから、RAW現像とかレタッチでいろいろな可能性を模索するのではなくて、撮影時にある程度追い込んだら、その時点で制限を掛けています。これは自分に対するプレッシャーでもあります。撮影の段階でほぼ色を決めているので、迷いの生じるレタッチをすることがなくなりましたし、その結果として、DPPだけで作業できるようになり、プリントの色もイメージどおりに出せます。
中西さんの撮影スタイルを大きく変えた新機能が、ミラーレスカメラに搭載されたEVF(電子ビューファインダー)だ。
中西:カメラにEVFが搭載されて、撮影時にファインダーの中で(色が)追い込めるようになったじゃないですか。一眼レフのときとは異なって、撮りながらファインダーの中で上がりの色が見える。ワークフローがガラリと変わりましたね。昔は階調をつぶさないニュートラルなRAWデータを作って、そこから現像とレタッチで追い込んでいましたが、今は撮影時にホワイトバランスやピクチャースタイル(キヤノンの仕上がり設定の名称)を追い込んで、どうしても表現できない部分をRAW現像するようになりました。
撮影現場で画作りをしている、ということだろうか。
中西:そうです。景色を見たときに色作りのイメージを決めて、ワンカットずつカメラの設定を調整しています。咄嗟の撮影のときは同じ設定で撮ることもありますけど、そのとき現場で感じたイメージをできるだけ残したいので、急いでいるときでも即座に設定が変えられるようにしています。
トッププロが信頼するメディアだから僕も使う
メモリーカードの話に戻すと、Angelbird製品との出会いは先日取材させていただいたスポーツ写真家・奥井隆史さんがきっかけだという。
中西:奥井さんと仲がいいんです。奥井さんって世界選手権とかオリンピックとか、絶対に失敗できない現場で撮影しているプロ中のプロじゃないですか。その奥井さんが信頼しているメモリーカードだと教えてもらって、それなら僕もと。
以前の中西さんは“記録メディア難民”だったといい、安定するメディアを求めて散財を繰り返していたとのこと。
メモリーカードの世界は有名・無名を問わずメーカーが乱立しているし、スペック的に迷う要素が多い上、製品によってはエラーが出やすいなど、Angelbirdと出会うまでは苦労していたようだ。
Angelbirdの製品と「もっと早く出会いたかった」とは中西さんの弁。
中西:メモリーカードを選ぶときって、スピード優先なのか、安定性優先なのか、容量優先なのかみたいに迷う要素が多くて。価格を優先するとリスクがあるし、安定性を求めると価格は高くなるし、どれかを我慢しなくちゃいけない。プロになってからずっとそんな感じでした。でもAngelbirdを知ったとき、価格と性能のバランスがいいなと思ったんです。なにより、身近なプロが信頼しているメモリーカードという点が大きかったのですが。
以前使っていたメモリーカードの中には、仕事の撮影中にエラーが生じて写真を失ってしまったこともあるという。そのときは肝を冷やしたそうだ。
そのような苦い経験もあり、当時は小容量のメモリーカードを入れ替えながら撮影を行っていて、たとえば厳冬期の過酷な現場でも交換を強いられたという。
本来なら大容量のメディアを使い、撮影現場ではカメラからメモリーカードを抜かないようにしたかったけれど、メディアのエラーですべての写真を失うわけにはいかず、苦肉の策として小容量メディアでリスクを分散するという策を講じていた。
中西:メモリーカードに不安があると集中力が削がれるから、本来は1番集中しなければいけない撮影に全力が向けられなくなってしまう。そうならないためには安定したメモリーカードが必要で、僕にとってはそれがAngelbirdのメモリーカードなんです。
Angelbirdのメモリーカードを使いはじめてから、エラーは一度も経験していないと断言する。
もっとも、エラーを出さないための工夫や使い方もしていて、それが「現場でメモリーカードを抜かない」「カメラでフォーマットをする」「カメラで写真を消さない」だ。
とくに、メモリーカードの抜き挿しは物理的な作用が生じるため危険な瞬間だと中西さんは考えている。端子の破損や静電気によるデータの損傷、水分やホコリ、砂による接触不良だけでなく、地面に落としたときのダメージなど、不安要素が多い。
だからこそ、現場でメディアの交換をしなくても済むように「大容量のメディア」を「安定」して使い続けることが重要で、そのためのメモリーカードを探し求めていたそうだ。
その結果、たどり着いたのが512GBのAV PRO CFexpress SEとなる。
また、メモリーカードはパソコンやほかのカメラでフォーマットしても使うことはできるが、その状態は使用するカメラにとって「記録するのに都合のよい状態」に整っているとは限らない。
そして、多くの写真家がやりがちな使い方が「カメラで写真を消去する」という行為だろう。
その結果として生じる断片化(メディア内のデータの並びが崩れること)は、次の写真を記録するときにデータの分散を招くため書き込み速度に影響が出やすい。本来なら連続して書き込むところを、「空き地を探して飛び飛びに書き込まなければならない」と考えれば、その影響の大きさが理解できることだろう。
誤ったフォーマットも写真の消去も、どちらもメモリーカードにとってはストレスのかかる状態だし、最悪の場合はエラーが生じてしまう危うい使い方なわけだ。
以上のように、中西さんはAngelbird製品の信頼性の高さにプラスして、よりエラーを出さない使い方をしている。
ちなみに、先日取材した奥井さんも同じ使い方をしていて、「カメラでフォーマットする」ことと「カメラで写真を消さない」ことはメディアのエラーを防ぐ鉄則だと話していた。
中西さんはほかにも、Angelbird製のメモリーカードは大容量タイプを安心して使えるため、海外の撮影旅行ではメディアをカメラに入れっぱなしにできるようになったと話してくれた。
中西:カメラにUSBケーブルを接続して毎日バックアップはしますよ。でも、屋外ではメディアはカメラから出しません。清潔なホテルの場合はカメラから抜いてカードリーダーを使いますが、そうでないときは怖いですから。砂漠でキャンプするときもありますし。Angelbirdの製品は耐久性が高いとはいっても、過酷な場所ではカードをむき出しにしたくないので。
堅牢で耐久性が高いと「ラフに扱っても大丈夫」と考えがちだが、メモリーカードにとっては誤った考え方のようだ。
性能に頼るのではなく、それを最後の砦として、その段階に至らないように事前の策を講じることが大切な写真を守る秘訣でもある。
ちなみに、中西さんが使用するカードリーダーはAngelbird純正の「CFexpress Card Reader MK2」。
USBケーブルの端子が本体の奥深くに刺さるため、ケーブルが抜けにくいだけでなく接続口の接触不良によるエラーも防げて安心という。
挿入したメモリーカード自体も簡単には抜けなくなっているなど、現場の意見が反映された作りになっていて、その思想も心強いのだと紹介してくれた。
写真家の理想=Angelbirdの理念
プロの写真家が語るメモリーカードの「安定性」は、一般の写真家にとってはオーバースペックだと思うかもしれないが、決してそうではない。
「そこまでの性能は求めていない」と思っていても、一度でも“痛い目”に合うとメモリーカード選びは慎重になることだろう。
想像してもらいたい。もし大切な家族旅行を撮影したメモリーカードが、突然のエラーで読み取り不能になったらどんな思いをするかを。
そして、データの復旧に多額の費用が必要になったとき、それを行うかどうかを。
中西さんは「風景写真家」としてメモリーカードの重要性を説いているけれど、それはすべてのジャンル、そしてすべての写真家に当てはまることでもある。
安定して使えるメモリーカードは他社にもあるかもしれないが、「万が一」のさいに心強いメディアとなるとAngelbird以外聞いたことがない、と中西さんはいう。
中西:復旧サービスについて気になったのでメーカーに確認したところ、高い確率で復旧できているそうです。もしメディアが物理的に損傷しても、中のチップが無事なら復旧してみせるといってますし、壊れたメディアを本国(オーストリア)に送って復旧したこともあるとお聞きしました。それを3年間無償でやってくれるというのは、ユーザーにとって嬉しいじゃないですか。プロダクトに対する自信の表れですよね。その姿勢がいいなって思っています。
Angelbird以外にもデータ復旧サービスを付加するメモリーカードはあるし、専門の業者も存在するが、Angelbirdのそれはレベルが違う。
いうなれば、「中のチップを取り出して生きている部品から組み立て直してデータを吸い上げる」的なことをやってのけるわけだ。しかも、無償で。
中西:僕がAngelbirdに魅力を感じるのは、小さい規模で、自分たちの手の届く範囲でいいものをちゃんと作るっていう会社としてのスタンスです。部品の一つひとつを熟知していて、製品の隅々まで知り尽くしているからこそ、破損したメディアでも直せるということなんです。これは大手メーカーにはできないし、製品を作ったメーカー以外にはできないこと。Angelbirdのメモリーカードは耐久性が高いので復旧サービスのお世話になることはないと思いますが、これがあることで安心できます。
世界中を撮り回り、高温・多湿・極寒と過酷な現場での撮影が多い中西さんですら復旧サービスのお世話になることはなさそうというのだから、Angelbirdのメモリーカードは信頼性が高いのだろう。
ちなみに、メモリーカード的に過去最悪の撮影シーンをお聞きしたところ、意外な答えが――
中西:マイナス28度で3時間、星を撮影したときですね。カメラが真っ白に凍り付いて際どい状態でした。寒いから熱暴走はしないのですが、やっぱりメディアは心配になります。もちろん、なにもありませんでしたが。撮影場所はウチの近所です。
どこか遠く、異国の地での撮影かと聞いていたら、ご自宅の近所は普通に極寒の地になるらしく。冬は機材の耐久テストの場なのだなと、北海道の自然の厳しさ実感。
反対に熱さという点では、パキスタンの砂漠地帯が熱と砂で過酷だったという。
冬の北海道という極寒の地で、しかも、毎日2,000枚以上撮影していてもAngelbirdのメモリーカードは問題なく使えている。
もちろん、「エラーを出さない使い方」をしているという点もあるだろう。
しかし、Angelbirdは過酷な状況で撮影するフォトグラファーやビデオグラファーからのフィードバックを重視しているため、ほかのメモリーカードよりも信頼性が高いのも事実だ。
また中西さん曰く、メディアの速度が安定しないと記録エラーが出やすいとのこと。瞬間的な速さは出ていても、書き込み速度の振れ幅が大きいメモリーカードも存在し、そのようなメディアは不安定になりやすいらしい。
結局のところ、「持続速度」と「安定性」はAngelbirdが掲げるメモリーカードに対する理念であり、風景写真家の中西さんと、スポーツ写真家の奥井さんというジャンルの異なる2人が求める「理想のメディア像」にガッチリと嵌ったということだ。
作品を撮るのは自分。メモリーカードの存在を意識せずに済むということは、これ以上はないメモリーカードへの褒め言葉だ。
直接の言葉ではないけれど、中西さん、奥井さんともに、根底にあるのはコレなのだなと筆者は感じ取った。
風景写真家は1年後を見据えて撮影する
最後に、みなさんが知りたいだろう風景写真家のリアルについても少し触れておきたい。
取材したすべてを掲載することはできないので、撮影テクニックよりも「活動内容」を重視してまとめてみた。
まずは、どのように作品を撮っているのか、という点から。
中西:僕の風景の撮り方って、ほぼスナップなんです。風景写真を撮るひとは撮影スポットに三脚を立てて、タイミングを待っていると思うんですけど、僕は三脚を使わないこともあるし、使うときも「車から降りて5秒」で撮ることを自ら課していて。出会った光とか、目に飛び込んだ瞬間をいかに素早く記録するか。これに命を懸けてきたので。
風景写真のセオリーとは異なる撮り方だと思うが、だからこそ風景写真の世界でも目を引く作品を数多く残しているのだろう。
主な撮影場所は自宅(北海道の美瑛町)の周囲で、先に紹介したとおり、毎日撮影に出かけるという。
写真だけでなく、動画向きのシーンがあるときは8Kで動画撮影も行うという。もちろん、AngelbirdのAV PRO CFexpress SEで撮影している。
お話の中で印象に残ったのは、仕事として写真を撮影しているけれど、仕事ではないという点。
中西:風景写真って、基本的にクライアントワークがないんですよ。ジャンルによっては依頼されて撮影する仕事が多いと思うんですけど、風景の場合は依頼されるか分からないけれど撮るんです。そして、セミナーや取材があるときに、その写真を提供するという仕事です。だから、自分の中で「来年この写真が使われるかもしれない」と想像しながら撮っています。お金にならない仕事を毎日やって、1年後にお金に変えて暮らしている、という感じですね。
プロの作風に近づきたい方のために、中西さんはなにを考え、どんな瞬間にシャッターを切るのかもお聞きしてみた。
写真家の思想や経験に基づく繊細なテーマでもあるので、誤解を招かないためにも、できるだけ中西さん本人の言葉で紹介したいと思う。
中西:実は、風景って目の前にあるものを撮るだけじゃなくて、そこにある風の冷たさだったり、岩の鋭さだったり、雪の凍る感じだったりと、「視覚以外の五感」をどうイメージに取り込むかが重要なんですよ。写真はビジュアル表現だから、視覚的なものしか訴えかけてこないんですけど、風景を撮るということはそこにあった温度感や匂いっていう視覚外の情報も作用するので。それを鑑賞者にどう想像させるかっていう。感じさせることは無理なので、想像させる。それは見るひとの経験値も関係してくるところで、そこをどうくすぐってあげるか。風で草木が揺れるサワサワっていう音ってみんな知ってるじゃないですか。風の音って想像できるんですよ。そうやって五感以外の効果をどうくすぐるかというのが、実は自然表現ではもっとも重要かもしれないですね。
取材後記
Angelbirdのメモリーカードは速度面でも優秀なはずなのだが、中西さんはそれよりも「安定性」や「信頼性」を語る点が印象的だった。
これに関しては先日取材した奥井さんも同様で、結局のところ、Angelbirdにたどり着く写真家はそれを求めてのことなのだろう。もちろん、速度的なスペックが十分で撮影に支障が出ないことが大前提だが。
「1枚のメモリーカードをちょっと使ってみた」というレビューではなく、実際にAngelbirdのメモリーカードを複数枚所有しているプロカメラマンが、数十万枚もの写真を撮影した結果の取材になる。参考にしていただけたなら幸いだ。
機材撮影:中西敏貴
人物撮影:武石修 関根慎一