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プログレードデジタルの新CFexpress「GOLD 512GB/1TB」は買いなのか?
「COBALT」に迫る高性能?コスパ抜群の逸品をチェックしてみた
2023年2月17日 08:00
多くのカメラメーカーで採用が進むCFexpressカードはSDカードの性能を圧倒的に凌駕する超高速メモリーカードだが、一方で大容量かつ高性能モデルは高価でなかなか手が出せないという読者も多いのではないだろうか。
CFexpress黎明期から業界をリードしてきたProGrade Digital(プログレードデジタル)から発売になった新しいCFexpress Type B GOLDカードは同社の上位モデルCOBALTシリーズに迫る高速性能を有しながら、容量単価は約3分の1に押さえた非常にコストパフォーマンスに優れる製品だ。
一足早く製品版をテストする機会が得られたので新しいCFexpress Type B GOLDカード(512GB/1TB)のレビューをしていきたい。
結論を先に言えば、今までCOBALTシリーズをメインで使用してきた私でも、今後はほとんどのシーンで新しいGOLDカードで十分なのではないかと感じてしまうくらい高い完成度のカードだった。
主なスペックと外観
今回リニューアルされた新型のCFexpress Type B GOLDカード(新GOLDカード)は512GBと1TBの2種類。ProGrade Digitalによると2TBの発売も今後予定しているとのことだ。
ラベルは従来のGOLDとほぼ同じだが、新型の特徴でもある最低継続書込み速度(512GB:800MB/s、1TB:1300MB/s)の表記が追加されている。
多くのメモリーカードメーカーが数字の大きな最大書込み速度を表記する中、あえて数字の小さな(しかし実際の運用では非常に重要な)最低継続書込み速度を表記しているところにProGrade Digitalの企業姿勢が見てとれる。
新しいGOLDを含む現在発売中のProGrade Digitalの公式スペック表は以下の通りだ。
使用するメモリーは従来と同じくTLCを採用。TLCメモリーは継続書込み速度や発熱などの面で不利とされてきたが、新GOLDカードではNANDチップ、コントローラー、ファームウェアなどすべてを刷新しこれらの問題を解決。pSLCを採用する上位のCOBALTシリーズに迫る性能を発揮しているのが特徴だ。
TLCメモリーは1セルに3bitのデータを書き込むため、1セル1bitのSLCに対して同じNANDチップを使用した場合3倍の容量メリットがある。ProGrade DigitalによるとSLCタイプのCOBALT 165GBとGOLD 512GBのNANDチップ構成はほぼ同じとのことだ。そのため、 価格もCOBALT 165GBとGOLD 512GBはほぼ同じとなっている 。実に分かりやすい設定だ。
実際に使用して性能をチェック
続いて、実環境で新GOLDカードを使用した時の性能をベンチマーク、連写、動画撮影に分けて検証したので紹介していこう。
テストに使用したのは新しいCFexpress Type B GOLDカード(512GB/1TB)に加え、現行のGOLD 256GB、COBALT 325GBだ。
ベンチマーク
MacBook Pro M1 Proを使用し、ベンチマークを計測した。使用したアプリはBlackmagic Disk Speed TestとAmorphousDiskMarkだ。
Blackmagic Disk Speed Test(テストサイス5GB)では両カードとも書込み1,200MB/s、読み出し1,500MB/sを超えて非常に高速なカードであることが確認出来た。
※以下の計測にはProGrade Digital Thunderbolt 3専用 (CFexpress B)カードリーダーを使用しています
さらに同条件ではCOBALT 325GBの結果をもわずかに上回る結果となっている(ProGrade Digitalによるとカード自体はカメラで発生するデータに最適化されているため、汎用ベンチマークソフトでは真の実力が出ないことがあるとのことだ)。
なお、現行のGOLD 256GB(最低継続書込み速度300MB/s)では読み出しは高速だが、書込みは400MB/s台と大きく落ち込んでいる。
つづいて、大きなファイルを書き込んだときの速度変化を調べるためにAmorphousDiskMarkをチェック。テストサイズを標準の1GBと最大の64GBにして変化を見た。
下図はGOLD 512GBの結果だ。
重要なのは上2段の連続した読み書き性能。64GBの巨大ファイルを連続して書き込んだ場合でも読み出し、書き込み共に変化はなく安定して書き込めていることが分かる。もちろんGOLD 1TBでも同様の結果が得られた(テストサイズ64GBのランダム書き込み0は測定ミスと思われる)。
ベンチマークをみる限り、新GOLDカードがCOBALTの性能に迫っているというのは間違いなさそうだ。
連続撮影とバッファー開放時間
続いてスチル撮影向け評価として連写の持続性とバッファー開放時間をチェックした。約4,500万画素のEOS R5で高速連写+(12コマ/秒)を使用している。
結果は以下の表の通りだ。
RAW (枚) | RAW+JPEG (枚) | C-RAW+JPEG (枚) | バッファー 開放時間(秒) | |
---|---|---|---|---|
GOLD 1TB | 268 | 241 | 421 | 4.7 |
GOLD 512GB | 264 | 237 | 399 | 4.7 |
GOLD 256GB | 223 | 158 | 397 | 8.5 |
COBALT 325GB | 268 | 240 | 440 | 4.8 |
驚いたことに新GOLDカードはいずれもCOBALT 325GBとほぼ同等の結果が得られた。テスト時のRAWとJPEGのサイズはそれぞれ約33.7MB、7.6MBだったのでRAW+JPEGの連写時に約500MB/sのデータが発生していることになる。新GOLDカードおよびCOBALTカードの最低継続書込み速度以下の値だ。つまり新GOLDカードは、 EOS R5のスチル性能を100%引き出せている ということが言えるだろう。
一方GOLD 256GBはRAWやC-RAW+JPEGでは健闘しているものの、データ量の大きいRAW+JPEGでは顕著に連写可能枚数が低下してしまう。EOS R5のスチル性能をしっかり引き出せていないということだ。さらにバッファー開放時間も長く、連写を間欠的に多用する現場ではバッファー詰まりを引き起こす可能性が高まる。
動画撮影と発熱
最後に動画撮影時の安定性と発熱についてもチェックした。EOS R5の8K RAW(約2,600Mbps)撮影を行い、安定記録ができるかどうかと撮影後のカードの温度を測定している。
EOS R5の8K RAW撮影では2,600Mbps = 325MB/sのデータが常に書き込まれる過酷な環境だが、これは新GOLDカードの最低継続書込み速度を下回る値であり、カードが一杯になるか(512GB)、カメラ側が停止するまで(1TB)問題なくデータの書き込みが行えた。
一方、現行のGOLD 256GB(最低継続書込み速度300MB/s)は録画開始1分ほどで速度不足のため停止してしまった。
さらに、8K RAW撮影を5分行った直後のカード温度を測定した結果は以下の通りだ(約10分間プレ撮影を行った後、5分撮影、5分冷却を繰り返した時の2回の平均値。1回目と2回目は逆の順番で測定。非接触温度計を使用)。
録画後のカード温度 | |
---|---|
GOLD 1TB | 49.8℃ |
GOLD 512GB | 52.0℃ |
GOLD 256GB | 55.2℃ |
COBALT 325GB | 47.5℃ |
新ゴールドカードはカード内の最も熱い部分でも50℃前後と比較的発熱は抑えられている。通常のRAW形式では停止してしまうGOLD 256GBは軽量RAW形式で計測をしたが55.2℃と最も高い値となった。低消費電力、低発熱を謳うCOBALTは発熱では新GOLDカード対して優位な結果だ。
素晴らしいコストパフォーマンスのカード
これまで私はメインのCFexpressカードはバッファー開放時間を重視して最低継続書込み速度が大きなCOBALTシリーズを愛用してきたのだが、今回の検証では新GOLDカードがCOBALTに迫る性能になっていることに驚いてしまった。
ProGrade Digitalによる検証ではNikon Z 9のようなフラッグシップ機ではCOBALTがより優位な結果になるとのことだが、私のメイン機であるEOS R5では新GOLDカードでもカメラの性能を十分引き出せていることが分かった。しかも、COBALTに対して約3分の1の価格に抑えられているというのも素晴らしい。
コストパフォーマンスを考えると個人的な結論としては、
フラッグシップ機での利用や高温下など厳しい環境下
→ COBALT
一般ユーザーや大容量メディアを多数使うビデオグラファー
→ 新GOLD(512GB/1TB)
普段はあまり連写しないが撮影後のデータ取り込みを快適に行ないたいユーザー
→ 既存のGOLDカード(128GB/256GB)
を使用するのがおすすめだと感じている。
大容量の高速CFexpressになかなか手が出せなかったユーザーにこそ、新GOLDはぜひチェックしてもらいたい逸品だ。
制作協力:プログレードデジタル