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検証:ソニーα7Sは広角オールドレンズの救世主か!?
Reported by澤村徹(2014/7/18 08:00)
先月、ソニーからα7シリーズの最新機、α7Sが登場した。4K動画出力と超高感度撮影が可能で、スチル派よりもムービー派の注目を集めているモデルだ。
その一方で、オールドレンズユーザーもα7Sに大きな期待を寄せている。α7Sが発表になるや否や、フランジバックの短い広角オールドレンズのベースボディとしてα7Sは理想的ではないのか、と話題になった。
本稿ではα7Sと広角オールドレンズの相性を検証してみたい。
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なぜα7Sと広角オールドレンズなのか。これを理解するために、α7/7Rと広角オールドレンズの関係をおさらいしておこう。
フランジバックの短い非テレセントリックの広角オールドレンズ、端的に言うとレンジファインダー機用の広角オールドレンズをα7/7Rに装着すると、周辺部にマゼンタの色かぶりが発生することが多い。α7は28mm、α7Rは35mmがボーダーラインで、これより焦点距離が短いレンズではマゼンタかぶりと周辺光量落ちが顕著だ。また、周辺像が流れがちで、フルサイズで広角レンズを使えるとは言うものの、画質面で満足とは言い難い状況だった。
それでは何故α7Sに期待するのか。それは画素ピッチが大きくなっているからだ。α7Sはα7/7Rと同じフルサイズイメージセンサーを搭載している。しかし、α7が約2,430万画素であるのに対し、α7Sは約1,220万画素だ。画素数だけ見れば約半分にダウングレードしているが、見方を変えると画素ピッチが大きくなり、周辺部までたっぷり受光できる可能性を示唆している。これによってマゼンタかぶりが解消されるのではないかと期待されているわけだ。
もうひとつの理由はα7Sのサイレント撮影モードだ。同機能を有効にすると、自動的に電子シャッターに切り替わる。対称型の広角オールドレンズは後玉が突き出し、一部のレンズはシャッター幕と干渉するリスクがあった。α7Sでサイレント撮影モードを使えば、α7/7Rで内部干渉したレンズでも使える可能性が高い。広角レンズ好きであれば、これはいやが上にもα7Sに期待したくなるはずだ。
今回はα7でマゼンタかぶりが顕著だった広角オールドレンズを集め、α7Sで実写してみた。結論から言うと、大半のレンズはマゼンタかぶりが解消している。
ただし、逆にシアンかぶりが発生し、色かぶりがゼロというわけではない。幸い、青系の色かぶりはマゼンタほど不自然さがないため、色がかぶりつつも写真として成立している。特に背景が青空の場合はさして気にならないレベルだ。周辺像の流れは相変わらずだが、それでもショートフランジの広角オールドレンズを「使える」という実感は十分に得られるだろう。
Biogon T* 21mm F2.8
コンタックスGマウントのビオゴン T* 21mm F2.8は、α7でマゼンタかぶりが発生していた。ハイキーで撮ったり背景を工夫すれば実用できるレベルだったが、シャープで階調のよいレンズだけに、よりよい画質で使いたいというニーズは高かった。α7Sではマゼンタかぶりはほぼ解消され、代わりにシアンがいくぶんのってくる。それなりに周辺光量落ちがあるものの、21mmレンズとして順当な程度だ。周辺像が流れるのでベストな描写とは言えないが、α7よりもベターなコンディションであることはまちがいない。
GR Lens 21mm F3.5
GRレンズ21mm F3.5は、周辺光量落ちの大きいレンズとして知られている。それを加味しても、α7では極端な減光で、なおかつ周辺のマゼンタかぶりも顕著だ。α7Sではマゼンタかぶりはほぼ解消され、シアンかぶりも気にならないレベルだ。周辺光量落ちはレンズ本来の減光といった雰囲気で、このレンズの魅力をしっかりとキープしている。周辺像の流れがあるものの、このレンズの醸すかっこよさを実感できるはずだ。
Russar 20mm F5.6
ロモグラフィーからルサール20mm F5.6の復刻版が予定されているが、ここで取り上げたのはオールドレンズのルサールだ。α7Sではマゼンタかぶりが解消される一方、長辺の両端に青と緑の中間色がうっすらとかぶっている。今回試写した範囲では実用できる程度のかぶり方だ。21mmレンズとの差はわずか1mmだが、周辺像の流れは21mmレンズよりきつくなっている。