特別企画
α7R/7はオールドレンズのベストボディか?(実写編)
Reported by澤村徹(2013/12/31 08:10)
α7R/7はフランジバック18mmのEマウントを採用し、マウントアダプターさえあればレンジファインダー用レンズはもちろん、シネレンズさえも装着できる。マウントを問わず、さまざまなオールドレンズをフルサイズで楽しめるわけだ。まさにオールドレンズファンのドリームボディといえるだろう。
今回はα7とオールドレンズを組み合わせ、フルサイズ環境での描写を堪能してみたい。
「機能解説編」(2013年12月30日公開)はこちら
オールドレンズをフルサイズで使う意義とは
ミラーレス機に関して、“フルサイズ不要論”を唱える人がいる。
カメラからクイックターンミラーを省くメリットは、小型軽量化に尽きる。現在のデジタルカメラはAPS-Cサイズのイメージセンサーで十分な画質を達成しており、しかるべき高性能レンズを組み合わせれば、画質面でさして不満はないはず。そもそもフルサイズは35mm判というフィルム時代のフォーマットを引きずったものであり、マウントとレンズを新設計したミラーレスにとって、必ずしも35mm判フルサイズにこだわる理由は必要はないはずだ。
フルサイズ不要論をまとめると、おおむねこんなところだろう。これは紛うことなき正論で、説得力のある反論を立てるのは難しそうだ。
しかしながら、ミラーレス機がレンズ交換式カメラである以上、最新ボディで過去のレンズ資産を活用したいというニーズがある。過去のレンズ資産とはフィルム時代のレンズであり、それらは35mm判で使ってこそレンズ本来の実力を発揮する。フルサイズイメージセンサーを搭載したα7R/7は、まさにこうしたニーズとマッチするわけだ。
ソニーがオールドレンズファンに向けてα7R/7を開発したとは思えないが、量販店などではα7R/7のボディ単体の販売が好調だという。α7R/7がオールドレンズファンに“刺さる”ボディあることはまちがいなさそうだ。
フルサイズのα7R/7でオールドレンズ撮影する魅力は、レンズ本来の実力を発揮できる点に尽きるだろう。
具体的には、広角レンズの本来のパースペクティブを楽しむことができ、開放近辺の周辺減光、レンズによっては周辺部の解像度が甘くなる様子など、オールドレンズらしさを実感しやすい。APS-C機でレンズ中央のおいしい部分だけで撮るのもわるくないが、フルサイズ撮影は画像を通じて余裕のようなものが伝わってくる。周辺部は諸収差の多い部分だが、そうしたものも含めてオールドレンズの味わいなのだと実感できるだろう。
Biogon T* 28mm F2.8(コンタックスGマウント)
コンタックスGマウントのレンズは、α7R/7で初めてデジタルフルサイズ撮影が実現した。Mマウント改造してフルサイズのデジタルM型ライカで使うという手もあるが、無改造でのフルサイズ撮影はα7R/7が初の快挙となる。
α7とビオゴン28mmの組み合わせは、ほぼ色かぶりなく、隅々までクリアな画像だ。ただし、周辺部の像が流れ気味で、これは絞り込んでも改善されない。APS-C機でも同様の周辺流れが発生することを思うと、フルサイズの割に健闘しているというべきだろうか。
Biogon T* 21mm F2.8(コンタックスGマウント)
Gビオゴン21mmは、α7でもいくぶんマゼンタかぶりが発生する。ここではレンズ補正アプリを使用し、マゼンタかぶりと周辺光量を補正した作例を掲載した。
レンズ補正アプリの設定は、周辺光量の「光量」をプラス10補正、周辺光量の「赤-青緑」をマイナス5補正している。多少マゼンタが残るものの、ほぼ気にならないレベルで撮影できた。背景が空の場合は、いっそ周辺が青かぶりするくらいまで補正を強め、画像エフェクトとしてレンズ補正アプリを使うのも一興だろう。
DR Summicron 50mm F2(ライカMマウント)
DRズミクロンは近接撮影に対応したライカMマウントレンズだ。フルサイズのデジタルM型ライカに装着自体は可能だが、無限遠方向にヘリコイドをまわすと内部干渉する。デジタルではフルサイズ撮影しづらいオールドライカレンズだったわけだ。α7R/7ならマウントアダプター経由で問題なく装着でき、近接から無限遠まで撮影できる。
ここではホークスファクトリーの新型ヘリコイドアダプターを組み合わせてみた。新たに無限遠アジャスト機能を搭載しており、ヘリコイドの無限遠ロック位置を微調整できる。これによって無限遠の微調整が可能となり、マウントアダプターに無限遠調整というかつてない機能が加わった。ホークスファクトリーはヘリコイドアダプターの元祖だけあって、アイディアの部分で頭ひとつ抜きん出た印象だ。
Ektar 44mm F3.5(Eマウント改造)
本レンズは、コダック製のフィルムカメラ「シグネット35」のレンズをEマウント化したものだ。改造レンズのなかでは比較的ポピュラーで、オークションサイトでもよく見かける。この個体はNEX時代に購入したものだが、α7でケラレなしで撮影できた。
35mm判フィルムカメラのレンズだけあって、イメージサークルにも余裕がある。エクター44mmF3.5は安価な割にエクターらしい高描写だと定評があり、フルサイズでその描写を堪能できるのは、α7R/7ならではのアドバンテージだ。
Distagon T* 18mm F4(ヤシカ/コンタックスマウント)
ヤシカ/コンタックスマウントのレンズ群は、EOSフルサイズ機との組み合わせが定番だ。しかしながら、一部のヤシコンツァイスはEOSフルサイズ機だと内部干渉してしまう。このディスタゴン T* 18mmF4もそうしたレンズのひとつだ。ミラーレスのα7R/7なら内部干渉の心配もなく、加えて18mmレンズを18mmのまま使える。
ヤシコンマウントはフランジバックが長いため、周辺のマゼンタかぶりや像の流れもほとんど感じられない。α7R/7で超広角レンズを楽しむなら、一眼レフ用レンズから選択すると堅実だろう。
Tessar 3cm F2.8(ロボットマウント)
ロボットは35mmフィルムにスクエアフォーマットで撮影するカメラだ。35mm判用レンズよりイメージサークルが小さく、フルサイズイメージセンサーと組み合わせると、長辺方向の左右はイメージサークル外となる。そのため周辺像が流れしまうのが特徴だ。マイクロフォーサーズ機にCマウントレンズを付けた撮影を思い浮かべてもらうと、その関係が理解しやすいだろう。
とはいえケラレが発生するほどではなく、フルサイズ機で周辺像をあえて流して撮りたいなら、ロボットマウントレンズはよい選択肢だ。