特別企画
EXILIM EX-FR10と一緒にアルペンルートを旅した!
フリースタイルカメラならではの撮影が楽しい
Reported by 関根慎一(2014/10/9 07:00)
カシオが9月19日に発売したフリースタイルカメラ 「EXILIM EX-FR10」は、防塵・防滴・耐寒性能を備え、カメラ部とコントローラー部を分離して撮影できる点が特徴だ。
カメラ部分だけを自由に動かせることで、自由度の高いアングルで撮影が可能。またタフネス性能もあるので、カメラだけを乗り物などに取り付けてアクションカムとして使うこともできる。
カシオではEX-FR10の発表当初から旅行先やアウトドアといったシーンにおいてカメラ部分を分離して使う提案をしており、撮影者を含めた全員が楽しんでいる姿を記録できる点をアピールする。
今回はカシオのご厚意によりEX-FR10をアウトドアシーンで体験できる機会を得たので、実際に使ってみた所感を中心にレポートしていきたい。なおカメラとしての詳細なレビューは、北村智史氏のレビューを参照してほしい。
一脚に取り付けて構図を調整
体験の場として設定されたのは、1泊2日の立山黒部アルペンルート。今回辿った大まかなルートは新宿を出発後、長野県の扇沢から黒部ダムを望み、ケーブルカーやロープウェイを乗り継いで断崖絶壁の大観峰を経て室堂で1泊、翌日は室堂から富山県側の弥陀ヶ原へ降りた後、ケーブルカーで立山に移動するというもの。
実施時期は9月末で、山歩きのシーズンとしては終盤にさしかかる頃合い。しかしながら幸い天候にも恵まれ、紅葉で色付いた黒部ダム周辺の山々の彩りを楽しむことができた。
カメラの試用に際しては、手元に三脚ネジのついたトレッキングポールを使った。
これは簡易的な一脚として使えるので、ポールの先端にEX-FR10のカメラ部分を取り付け、通常のカメラでは難しいアングルでの撮影や自分撮りがしやすくなる。手元のコントローラー側で構図の確認ができるところがポイントであり、構図の微調整が容易だ。ポールへの固定にはオプションのトライポッドマウンター「EAM-1」を使用した。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
EX-FR10は35mm判換算で21mm相当のレンズを備えているので、自分と背景を入れて撮影するという用途に支障はないが、近くにカメラ部分を設置できる場所がない場合に少し引きの絵を撮りたい際などは、このトレッキングポール兼一脚は非常に重宝した。
カメラの使い勝手の面では、扱い慣れないせいもあるのだろうが、やや癖がある感じを受けた。
レスポンスは、シャッターボタンを押してから体感で0.5秒以内にシャッターが切れる印象。静止画撮影用に使うには少し長めにカメラをホールドすることを心がけたい。また、シャッターボタンをカメラとコントローラーの両方に備えるため、不意に触れてしまい意図せずシャッターが切れることが多くあった。
コントローラーの2型液晶モニターは23万ドットと粗めなので、撮影時の構図確認用と割り切るべきだろう。どうしても写りを確認したい場合は、スマートフォン用アプリの「EXILIM Link」を用いて、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末に画像をWi-Fi転送してから確認する方法をおすすめしたい。
電池寿命については、公称撮影枚数255枚とのことだが、概ね公称値の通りだろう。静止画の合間に時折1分程度の短い動画を撮影しながら使っていると、大体朝から夕方まで使ったところで電池が切れた。
コントローラーよりカメラ部分の方が電池切れが早かったので、長時間使用する場合は充電用のモバイルバッテリーを用意する必要がある。デジタルカメラでは珍しく、充電中も撮影可能なのがありがたい。
撮影しながら両手がフリーで使える!
さて、立山黒部アルペンルートに含まれる黒部ダムは、堤高186mを誇る日本最大級のダムである。
ダム付近に設けられた遊歩道からはダムと黒部湖、そして周囲の山々を望むことができ、同ルートのハイライトともいえるスポットだ。行楽シーズンには観光放水も行われており、訪れた日は豪快な水しぶきを見ることができた。
EX-FR10のアクションカム的な側面は、どこかに固定して動画を記録しながら、カメラを意識することなく移動できる点にある。
画質やブレ、盛大に出るレンズフレアはさすがに気にはなるが、スポーツなどでの主観カメラ的な活用シーンにおいては、そうした映像が撮影できることそのものに価値があるとともに、撮影しながら両手がフリーで使える点で、安全性の面からもメリットといえるだろう。
到着した黒部ダムでさっそく雄大な景色を撮影した。
また黒部ダムではEX-FR10をオプションのクリップ型アタッチメント「EAM-2」に装着し、バックパックのハーネスに固定して動画を撮影してみた。EX-FR10の動画はフルHDのH.264形式で記録される。電子式手ブレ補正も搭載している。
追加機材なしでアングルの微調整が可能、自分撮りも簡単
黒部ダムからケーブルカーとロープウェイを乗り継いだ先にある大観峰駅では、紅葉が点在する山肌と、遠く針ノ木岳と黒部湖を一望できた。
山肌の紅葉がきれいだったので、手摺りの上にカメラ部分を置いて、自分撮りをした。カメラはヒンジ部で角度を付けられるので、アングルの調整を簡単に済ませられた。普通のカメラであれば三脚が必要になるところだが、カメラ単体で似たようなアングルの写真が撮れる手軽さがうれしい。
風景を撮影していて感じたのは、丸いカメラボディにコントローラー画面の解像度もあいまって、水平をとるのが難しいということ。もともと風景を撮るのに向いたカメラでないことはわかっているが、一般的に水平の取れていない風景写真というのはちょっといただけない。スマートフォンアプリ経由でSNSに写真がアップできる点を考えると、電子水準器が内蔵されていたらありがたかった。
大観峰駅から標高2,450mを走るトロリーバスで室堂に到着すると、時刻は17時を回ったところ。西の空に広がる雲海では、今にも太陽が日の入りを迎えようとしていた。周囲には背の低い高山植物が繁茂し独特な景観を成しており、思わず写真に収めた。
カメラを帽子に装着、インターバル撮影で思いがけない写真が撮れることも
翌日はまだ夜が明けていない早朝4時より、日の出を見るべく一ノ越目指して山登りに出発した。
一ノ越へ近づくにつれきつくなる勾配と、標高が上がるごとに下がる気温、強風による寒さが堪える。安全性を考え、両手が空くよう、ベルト型アタッチメントの「EAM-3」を用いてカメラを帽子に装着することにした。
登りのときはさすがに暗く何も写らなかったので、カメラを使用したのは日が出てから。一ノ越で日の出を見た後、山を下りながら周囲の写真を撮影しようと考えたが、急勾配の下り坂で他のことに気を取られながら歩くのは危険なので、ここでは自分でシャッターを押さなくて良いインターバル撮影を試してみた。
EX-FR10のインターバル撮影は、撮影間隔を15秒、2分、5分の中から設定できる。今回は2分で設定した。インターバル撮影中はコントローラーのライブビュー表示が使用できないので、撮影タイミングや構図がまったくわからないが、それはそれで後から何が撮れているのか確かめる楽しみもあった。
帽子にカメラをつけているので、気になる景色が見えた時は、だいたいこの角度かな? と構図を想像しながらその場に留まり、2分間その景色をじっと眺めるということもした。
その時撮れた写真を後から確認すると、妙なタイミングでシャッターが切れてブレていたり、なかなか思い通りというわけにはいかなかったが、中には予想外によく撮れているものもあり、意外性を楽しめた。
その後は時間の都合で弥陀ヶ原の観光はそこそこに、美女平駅からケーブルカーに乗って立山に到着し、立山黒部アルペンルートの散策を終えた。
まとめ
率直に言ってしまえば、撮影できる写真や動画の画質はそれほどよくはない。しかし、体に装着してカメラを意識せず行楽を楽しめるアクションカムとして使ったり、あるいは地面や樹の枝などに取り付けて自由なアングルで撮影できたりといった付加価値の部分は、そのような用途に使えるということそのものに一定の価値がある。
つまり、ある場所での体験を臨場感ある形で記録し、共有することは、優れた画質の作品として写真を撮影することとはまた別の種類の価値と捉えることができる。
SNSへ画像をアップロードする際には自動的にリサイズがかかる場合も多いため、等倍で画像を見た際の画質はあまり問題にならないケースが多い。そういった意味ではEX-FR10の立ち位置は、SNSにアップロードする画像の撮影に特化したカメラといえるだろう。普通のデジタルカメラとして使うと物足りないが、面白い絵を撮るために使い方を工夫する余地がある点で、ユニークな存在だ。