特別企画

キヤノンPoweShot G7 Xの画質を徹底チェック!

期待の1型センサー搭載モデル G16と画質を比較

10月3日に発売されるキヤノンの「PowerShot G7 X」(以下G7 X)。名前の通り、同社の高級コンパクトデジタルカメラ「PowerShot Gシリーズ」の流れを汲む新製品である。

最大の特徴は、撮像センサーが1型の大型CMOSセンサーであることだ。

これまでのGシリーズは、2000年に発売された「PowerShot G1」を皮切りに、現行の「PowerShot G16」(以下G16)まで、EOS同等の堅牢なボディと操作系をもちながら、1/1.8型〜1/1.7型の撮像センサーを搭載していた。

その後、2012年には同じGシリーズとして、より大きな1.5型センサーを搭載した「PowerShot G1 X」(以下G1 X)が登場。さらに、今年3月にはG1 Xの後継機となる「PowerShot G1 X Mark II」(以下G1 X Mark II)が発売されている。

今回新たに登場したG7 Xは1型センサーを搭載し、G1 X Mark IIとともにNEW Gシリーズを形成。かたや1.5型センサー、かたや1型センサーという強力な布陣となったのだ。

さて、1型センサーというのはコンパクトデジタルカメラとしてはかなり大きな部類であり、G16の1/1.7型に比べて、G7 Xの1型は面積比にして約2.8倍。センサーサイズの大型化で期待できることといえば、解像感、ノイズ耐性、ボケの量、ダイナミックレンジなどの向上などである。最上位機であるG1 X Mark IIの1.5型センサーには及ばないものの、これほどの面積差があれば従来の一般的なコンパクトデジタルカメラに比べて格段に高画質が望めるはず。

ということで、今回は描写の違いを中心として、使用感やコンセプトの違いを探るべく、同じくPowerShot GシリーズのG7 XとG16について、実写比較を試みてみた。

1型センサー+大口径ズームレンズをコンパクトなボディに凝縮

前置きが長くなってしまったが、実写の比較をする前にざっとG7 XとG16両機のスペックを見てみよう。

まず、両機を見比べてすぐに気がつくのが大きさの違いだ。

G7 Xは103.×60.4×40.4mmで、重さが約304g(バッテリーおよびメモリーカード含む)。

G16は108.8(幅)×75.9(高さ)×40.3(奥行き)mmで、重さが約356g(バッテリーおよびメモリーカード含む)。

なんと、センサーサイズの大きなG7 Xの方が、G16よりもひと回り以上小さくて軽い。

左がG16、右がG7 X。光学ファインダーがないとはいえ、センサーサイズを考えると小さなボディにまとめられている

G7 Xが小型化している要因としては、G16が搭載する光学式ビューファインダーを非搭載としていることが大きいと思われるが、それにしても1型の大型センサーを搭載しながらこのサイズを達成し、専用の露出補正ダイヤルまで備えているのは見事だと思う。

G7 Xはアクセサリーシューがないため、外付けビューファインダーやEOS用のスピードライトなどを装着できないが、それを除けばG16をはじめとした既存のGシリーズよりも、最上位機種のG1 X Mark IIに近いデザインコンセプトであるといえるだろう。

上側180度まで動かせる約104万ドットチルト液晶が採用されている点も、小型化されたG7 Xの自由度の高さを示している。

レンズは、G7 Xが35mm判換算24-100mm相当F1.8-2.8の4.2倍ズームで、G16が35mm判換算28-140mm相当F1.8-2.8の5倍ズームを搭載している。

光学性能に優れた大口径ズームレンズを搭載するのは、Gシリーズ当初からの基本コンセプトであり、Gシリーズがキヤノンの高級コンパクトデジタルカメラたる理由のひとつにもなっている。

解像力(遠景)

さて、G7 XとG16の画質の比較であるが、前述の通り両機はセンサーサイズ以外にもスペックの違いがあるので、差異を確認するためにはいくらかの注意が必要になる。

まず、レンズの画角が両機種で異なる。

広角側はG7 Xが24mm相当、G16が28mm相当。望遠側はG7 Xが100mm、G16が140mmだ(いずれも35mm判換算)。

また、フル解像でのアスペクト比も異なり、G7 Xが3:2であるのに対し、G16は4:3である。

さらに、基準となるISO感度はG7 XがISO125、G16は2/3EV低いISO80となる。

両機の画質の違いを考える上で、これらの基本スペックがそれぞれ異なることを理解して話を進めたい。

まず、遠景の描写として樹木や草本の多い風景を選んで撮影を行った。

G7 X(広角端)
PowerShot G7 X/ISO125/F4/1/80秒/0EV/WB:オート/8.8mm(24mm相当)
G16(広角端)
PowerShot G16/ISO80/F2/1/125秒/0EV/WB:オート/6.1mm(28mm相当)
G7 X(望遠端)
PowerShot G7 X/ISO125/F4/1/60秒/0EV/WB:オート/36.8mm(100mm相当)
G16(望遠端)
PowerShot G16/ISO80/F4/1/25秒/0EV/WB:オート/30.5mm(140mm相当)

いずれの焦点域においても、解像感はG7 Xの場合F4〜F5.6程度で最高になるのに対し、G16はF2〜F2.8で最高になった。これは、センサーサイズが小さく画素ピッチも狭いG16の方が、絞り込むことによる回折の影響を早く受けるためだろう。作例として掲載した画像は、それぞれのカメラで最も解像感の高かった絞り値を選んでいる。

この結果からは、広角端と望遠端の両方においてG7 Xの方が解像感が高いことが見てとれる。実際のところ、一見すると、両者はともにクッキリと良好な解像感であるように見えるが、細部を拡大して確認すると、G7 Xは色の近い植物の緑もよく分離して描写しているのに対して、G16は条件によって緑の分解がわずかに不明瞭になってしまっている箇所も認められる。

次に、広角側の画角をG16の端である28mm相当に、望遠側の画角をG7 Xの端である100mm相当に揃え、人工構造物を画面に入れて比較撮影を行った。

G7 X(28mm相当)
PowerShot G7 X/ISO125/F4/1/1,600秒/0EV/WB:オート/10.2mm(28mm相当)
G16(28mm相当)※広角端
PowerShot G16/ISO80/F2.8/1/160秒/0EV/WB:オート/6.1mm(28mm相当)
G7 X(100mm相当)※望遠端
PowerShot G7 X/ISO125/F5.6/1/1,250秒/0EV/WB:オート/36.8mm(100mm相当)
G16(100mm相当)
PowerShot G16/ISO80/F4/1/1,000秒/0EV/WB:オート/21.7mm(100mm相当)

画角を同じにしても、細かい部分の分解性能がG7 Xの方が高く、解像感においてG16を上回っていることが分かる。

1型で約2,020万画素のG7 Xと、1/1.7型で約1,210万画素のG16との比較であり、圧倒的に有利なG7 Xの解像感がG16より好結果だったのは当然のことといえるだろう。

ただし、両者の解像感の違いはここでいうほど大きなものでなく、明確に違いを感じることができるのは、A3以上の大きなプリントにした場合や、トリミングをしたときの話である。

ボケ

ボケに関してもセンサーサイズの大きなG7 Xの方が有利であり、G16に比べて背景のボケが大きくなるのは確か。どのくらい違うのか見てみよう。

G7 XとG16ともに100mm相当に揃えて、同じ撮影距離(被写体となる花から約20cm)で撮影した。両機とも絞り開放である。

G7 X(ボケ)※望遠端
PowerShot G7 X/ISO125/F2.8/1/800秒/0EV/WB:オート/36.8mm(100mm相当)
G16(ボケ)
PowerShot G16/ISO80/F2.8/1/400秒/0EV/WB:オート/21.7mm(100mm相当)

100mm相当の画角ではセンサーサイズの差が現れ、G7 Xの方がG16よりはっきりと大きなボケが得られることがわかる。

ただし、最短撮影距離となるとG16に軍配が上がる。最短距離はそれぞれG7 Xは5cm、対してG16は1cmとなり(ともにレンズ先端からの距離、広角端のとき)、被写体に近づけるほどボケは大きくなるからだ。

加えてG7 Xの最短撮影距離では、ソフトフォーカスがかかったような輪郭描写が見られる。対してG16はざわついたボケになっている。

G7 X(最短撮影距離)
PowerShot G7 X/ISO125/F1.8/1/50秒/-0.3EV/WB:オート/8.8mm(24mm相当)
G16(最短撮影距離)
PowerShot G16/ISO80/F1.8/1/5秒/-0.3EV/WB:オート/6.1mm(28mm相当)

センサーサイズが小さいほど、レンズの最短撮影距離はより短く設計しやすい。この点については、1/1.7型センサーを搭載するG16のアドバンテージだといえる。むしろG7 Xがよく頑張っている方だといえるだろう。

ISO感度

ISO感度の設定幅は、G7 XがISO125〜12800、G16がISO80〜12800となっている。

同一条件でISO感度を変更しながら比較撮影を行った結果では、両機ともにISO800まで目立ったノイズの発生もほとんどなく、大変に優れた高感度特性であった。

※以下の画像は作例の一部を等倍に拡大したものです。
※G16の最低感度ISO80はG7 Xにないため省略しました。

ISO125
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO200
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO400
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO800
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO1600
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO3200
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO6400
PowerShot G7 X
PowerShot G16
ISO12800
PowerShot G7 X
PowerShot G16

しかし、G7 XがISO800を超えてもノイズによる画質の低下が緩やかに起こるのに対して、G16ではISO1600以降急激にノイズの発生が目立つようになり、顕著に画質が低下していく。実用的な高感度設定が、G7 Xの場合でISO3200とするなら、G16は1600までといった印象。 G7 Xの方がG16よりも約1段分ほど高感度特性が優れている。

この結果は、G7 Xの方がG16よりもセンサーサイズが大きく、画素ピッチが広いことの他に、G7 Xが集光効率に優れた裏面照射型のCMOSセンサーを採用していることにも理由があるだろう。

ダイナミックレンジ

撮像センサーの集光効率が高いということは、画像の階調性を決定するダイナミックレンジについてもG7 Xの方が優れていることになる。

そこで、G7 XとG16両機のISO感度を、G7 Xの基準感度であるISO125にセットし同じ露出値でコントラストの高い被写体を撮影してみた。

マニュアル露出にして適正露出よりも1段オーバーで撮影した結果、鉄橋の直射日光が反射した部分が、G7 Xでは何とか白トビを起こさずに粘っているのに対して、G16ではハイライトの大部分が飽和露光量に達して白トビしてしまっている。

G7 X(ダイナミックレンジ)※1EVオーバー
PowerShot G7 X/ISO125/F5.6/1/500秒/0EV/WB:オート/14.9mm
G16(ダイナミックレンジ)※1EVオーバー
PowerShot G16/ISO80/F5.6/1/500秒/0EV/WB:オート/8.4mm

同じISO感度の場合、高感度特性の高さと同じ理由により、G7 XのダイナミックレンジはG16より広く、階調性に優れていることが分かる。

まとめ

コンパクトデジタルカメラとしては大型の1型センサーを搭載したことによって、画質について圧倒的に有利になったG7 X。解像感やダイナミックレンジ、高感度特性といった画質に関する性能は大変に優れていることが今回の実写で確認できた。

作品制作にも通用する高画質を備え、それでいて携帯性を犠牲にしない小さなカメラを求めていた人には、まさにうってつけの1台ではないだろうか。普段使いからレンズ交換式デジタルカメラのサブ機にまで、きっと幅広く活躍をしてくれることだろう。

制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

キヤノン:Powershot G7 X スペシャルサイト

曽根原昇