特別企画
冬本番・イルミネーションの季節が到来! より大きな「まるボケ」を作るには?
ボケを作るための「4つのポイント」を解説
2023年12月9日 09:00
街のイルミネーションが華やかになる季節がやってきました。街明かりが灯る美しい冬の光景を、愛用のデジタルカメラで残したいと思う読者も多いかと思います。
そんなイルミネーションの撮影で人気の表現といえば、丸ボケ(円ボケ)ではないでしょうか。メインの被写体の背景に配置された色とりどりの丸ボケは、ポートレートやスナップを印象的な作品にしてくれます。
このページでは効果的な丸ボケを作る方法や、それを生かした作風について解説します。(編集部)
大きな丸ボケ=大きなボケ
そもそも丸ボケとは何でしょうか。背景をぼかしたとき、そこに点光源(強いLEDに光など)があると丸ボケになります。つまり丸ボケを大きくするには、まずは大きな背景ボケを作り出す必要があります。
背景をなるべく大きくぼかしてそこに点光源があれば、大きな丸ボケになるというわけです。
というわけで、ボケを大きくするための4つのポイントをまとめてみました。すべての要素を最大限に引き出すことによって、大きなボケが得られます。
- 絞りを開ける
- 焦点距離を長くする
- 被写体に近づく
- 被写体と背景を離す
これらの4つをすべて取り入れるのか、それともどれを生かすのか……。撮りたいイメージに合わせてボケを自在に作り出しましょう。
1. 絞りを開ける(F値を小さくする)
絞り優先オートで絞り値を変えると背景のボケ量が変わります。絞りを開けるほどボケは大きくなり、絞り込んでいくほどボケは小さくなります。同じ焦点距離および被写体までの距離なら、Fナンバーが小さいレンズほど大きなボケが得られるというわけです。
ボケの大きさとともに、その形に注目してみてください。F4.0以上になると、丸いボケが少し角張っています(円形絞りを採用したレンズで撮影しているのでわずかな違いですが)。これは絞り羽根の形が現れたものです。丸い形を維持しつつ、ボケ量を減らしたい場合は絞り以外の要素でコントロールする必要があります。
2. 焦点距離を長くする
望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F2.8 GM OSS II」の広角端70mmと望遠端200mmで撮り比べてみました。人物の大きさが同じになるよう、人物までの撮影距離を変えています。
望遠端の200mmの方が大きくボケているのがわかると思います。圧縮効果も加わったため、ボケ量とともに背景の写る範囲が変わっています。
焦点距離でボケ量を変えるとき、背景の写る範囲や遠近感も変化することを理解しておきましょう。とにかく大きくぼかしたいのであれば望遠側がベストですが、ほんのりとぼかしつつ、背景の雰囲気を感じさせるような画角のボケもいいですね。レンズをズームさせながら、被写体までの距離を調整すると良いでしょう。
3. 被写体に近づく
同じ焦点距離のまま、撮影距離を変えました。露出も変えていません。被写体から離れるとボケは少なく、近づくとボケは大きくなります。
画面の中に被写体をどれくらいの大きさで撮りたいというイメージは大切にしたいので、あまり撮影距離だけでボケをコントロールすることはありませんが、もうちょっとぼかしたい、ボケを減らしたいというときに、多少の寄り引きでボケ量を変えてもいいでしょう。
前ボケを大きくするには?
ボケは被写体の後ろ側だけではなく、前側にも現れます。これを「前ボケ」と呼んでいますが、主役となる被写体より前にあるので主役にほんのり被せたり、主役を背景ボケと前ボケで挟むこともできます。
前ボケを作るときにも4つのポイントが必要です。
- 絞りを開ける
- 焦点距離を長くする
- 前ボケに近づく
- 主役と前ボケの距離を離す
「1. 絞りを開ける」「2. 焦点距離を長くする」のは前項の「背景ボケを大きくする4つのポイント」と同じです。
違うのは「3. 前ボケに近づく」「4. 主役と前ボケの距離を離す」になります。主役より前に別の被写体がある状態なので、なるべく大きくぼかすのがポイント。ボケが小さいと、かえって主役を邪魔してしまうので注意しましょう。
ぼかすということはピントを外したいわけですから、前ボケにする光源に(ピントを外して)近づくほど、ボケも大きくなります。つまりレンズに光源が近いほどボケは大きくなります。レンズの最短撮影距離より近くても大丈夫です。レンズの前玉にぶつけないように注意。
また背景ボケと同じく、ピントを合わせる主役の被写体と光源が離れれば離れるほど、ボケは大きくなります。
口径食について
絞り値の明るいレンズ。いわゆる大口径のレンズで丸ボケをつくると、口径食と言って、四隅や四辺にあるボケの形が円形ではなくレモン型になります。これは背景ボケ、前ボケともに発生します。画面の中心と隅とでボケの形が異なるので気になりますよね。
この口径食をなくすためには絞りを絞り込む必要があります。F2.8ではレモン型だったボケがF5.6まで絞ると全面的に円形に近いボケになりました。
ただし、絞り込むほど丸ボケが小さくなるので、どこまで絞るか考えなければなりません。レンズによって口径食の出方や丸ボケを維持できる絞り値などが異なるので、お使いのレンズで確認してみてください。
大きなボケがベストではない?
「背景ボケを大きくする4つのポイント」の「4. 焦点距離を長くする」の裏返しとなりますが、焦点距離が短いレンズ、例えば広角レンズで大きなボケを得るのは難しくなります。しかし、広角レンズ特有の写る背景の広さや遠近感は魅力的です。また美しい装飾のイルミネーションも、大きくぼかしてしまえばただの丸いボケ。せっかく撮りに出かけたのなら、その場所の雰囲気を感じさせた写真も残しておきたいですよね。
確かに広角で撮るとなると、ボケのポイント「4. 焦点距離を長くする」を諦めることになります。そこで、4つのポイントのうち、残りの「1.絞りを開ける」「3. 被写体に近づく」「4. 主役と背景を離す」を取り入れましょう。望遠レンズのような大きなボケにはなりませんが、小さなほんのりとし丸ボケなら作り出せます。ただし、大口径ズームレンズのような明るいレンズが欲しいところです。
標準ズームレンズでバリエーションも豊かに
以下の3点は上の応用編です。標準ズームレンズの「FE 24-70mm F2.8 GM II」で撮影しました。よみうりランドで開催中の「ジュエルミネーション」のうち、定番スポットでもある光のトンネル「パサージュ・オブ・ラブ」での撮影になります。長いトンネル型がカーブを描き、背景を変えることで印象も変わりました。
広角24mmを選択。絞りを開放F2.8にしているので、広角でもイルミネーションがボケています。望遠にはない、特有の遠近感が生まれました。トンネルのカーブに合わせて下から見上げるようなアングルを狙い、画面に流れを作ってみました。
同じく24mm、F2.8で撮影。背景がトンネルの天井部なので、前のカットよりも平面的になっています。全体的に明るく、下から上へと弾けるようなイルミネーションがとても華やかです。
上のカットと同じ場所のまま、標準域の48mmにズームして撮りました。絞りは同じですが、焦点距離が長くなったことで、背景のボケ量が変化しています。またボケを大きくしたことで、背景がすっきりとしました。広角・標準・望遠と焦点距離によって、印象が変わりますね。カラフルなボケがポップな雰囲気を醸し出しています。
撮影でおじゃましたのは「よみうりランド」。恒例のイルミネーションイベント「ジュエルミネーション」が開催中です。宝石の色をイメージしたカラフルなLEDで園内が彩られ、その美しさは息をのむよう。どこを切り取っても背景にイルミネーションが入るので、ポートレート撮影などにぴったりのロケーションです。観覧車に乗れば東京の夜景も見渡せますよ。
- 期間:2023年10月19日(木)〜2024年4月7日(日)
- 時間:16時00分〜20時30分 ※12月16日〜25日は21時00分まで