特別企画

飛行機撮影と鉄道撮影におすすめのPICK UP LENS(トキナー編)

超小型超望遠を実現するミラーレンズ2本…SZX 400mm F8 Reflex MF/SZ 500mm F8 Reflex MF

撮影:深澤明(左上・左下)、山下大祐(右上・右下)

飛行機や鉄道の撮影では望遠レンズがマストとなるが、被写体を大きく捉えたいシーンでは400mm以上の超望遠が欲しくなる。とはいえ、一般的な超望遠単焦点レンズは大きくて重い上に高価でなかなか手が出せないもの。

そこで注目したいのが、反射光学系を採用することで小型・軽量で手頃な価格帯を実現にするミラーレンズ(レフレックスレンズ)だ。

その実力や使い勝手について、飛行機と鉄道それぞれの視点で写真家2名(深澤明さん・山下大祐さん)に語ってもらった。

※本企画はデジタルカメラマガジン2022年5月号より転載・加筆したものです。

今回紹介する2本のミラーレンズ

SZX 400mm F8 Reflex MF & 2X EXTENDER KIT

Tマウント
付属フードBH-673
付属2倍エクステンダー
Nikon Z 9装着例

SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンEF、ソニーE、ニコンF、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ
レンズ構成:5群6枚
最小絞り:F8(固定)
最短撮影距離:1.15m
最大撮影倍率:0.4倍
フィルター径:67mm(前側)、30.5mm(マウント側)
外形寸法(最大径×全長):約74.0×76.8mm
質量:約355g

発売日:2022年4月22日
希望小売価格:7万1,280円(税込)

SZ 500mm F8 Reflex MF

Tマウント
付属フードMH-721
ソニーα7R Ⅳ装着例

SPECIFICATION
対応マウント:キヤノンEF、ソニーE、ニコンF、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ
レンズ構成:7群7枚
最小絞り:F8(固定)
最短撮影距離:1.7m
最大撮影倍率:約0.35倍
フィルター径:72mm(前側)、30.5mm(マウント側)
外形寸法(最大径×全長):約74.0×89.0mm
質量:約310g

発売日:2022年2月25日
希望小売価格:7万1,280円(マウント付属・税込)

解説:ミラーレンズだからできる超小型設計

ミラーを使用した反射光学系により、400mmもしくは500mmの超望遠でありながら驚愕のコンパクトサイズと軽量さを実現したレンズ。まさに手のひらサイズとはこのことだ。トキナーはこの超小型反射望遠レンズの歴史が長く、今回デジタル時代に合わせて復活した形だ。

絞りはF8固定。Tマウント交換式(着脱式)が採用されており、キヤノンEFマウント、ソニーEマウント、ニコンFマウント、同Zマウント、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズマウントの6種類に対応する。

400mmには2倍エクステンダーがキットとして同梱されており、800mmになる優れもの。500mmにも装着可能だが、当面2倍エクステンダーの単体販売の予定はないという。

ピントはMF専用で、露出設定は絞り優先AEもしくはマニュアル露出のみとなっている。電子接点を持たないため、カメラによっては「レンズなしレリーズの許可」に設定する必要がある。

ホールドした感覚は、軽量のステンレスタンブラーがカメラに装着されているのかと錯覚するほど。機動性が十分で飛行機や鉄道、野鳥など超望遠を必要とする被写体からネイチャーまで、気軽に持ち運べる超望遠レンズとして幅広く楽しめるだろう。

飛行機撮影のミラーレンズ活用術——2倍エクステンダーで2つの画角を味わう(深澤明)

SZX 400mm F8 Reflex MFは、軽量・コンパクトで手軽に持ち運べるのが最大のベネフィットだ。空港の展望デッキから駐機中の飛行機をアップで撮るなど、動きがあまりないときは申し分ない。

一方、飛んでいる飛行機の場合は、本レンズがMF専用であることに加え、鏡筒が小さいゆえに構図を安定させにくい。レンズ装着時の重心位置がカメラ側に残るため、安定したパンは少々難易度が高い。本末転倒かもしれないが、適宜三脚や一脚を併用すると安定感が増して撮りやすくなる。


着陸機をオーソドックスに空抜けで狙ってみた。400mmは飛行機撮影にはちょうど良い焦点距離で、手軽に持ち運べる軽量・コンパクトなサイズがうれしい。

撮影:深澤明
Nikon Z 9/SZX 400mm F8 Reflex MF/マニュアル露出(F8、1/1,000秒)/ISO 200/WB:晴天

鉄道撮影のミラーレンズ活用術——気ままに手持ちで楽しむ鉄道スナップ(山下大祐)

久々にMFレンズを使ったが、SZ 500mm F8 Reflex MFのねっとりと動くヘリコイドが上質で驚いた。超望遠レンズは鉄道車両のアップや編成美を捉えるのに使う機会が多いが、このレンズはもっと力を抜いて「超望遠鉄道スナップ」を楽しむことをおすすめしたい。

手持ちも苦にならない小型・軽量さと、ピントとシャッター速度だけを操作してサッと撮れる簡単さが生きる。流し撮りや前ボケ表現など、その場でひらめいたままに撮影したが、まさに超望遠画角で遊んで撮るような感覚で楽しい。


ナノハナを前景に走り去る列車にピントを送りながら撮影した。EVFの性能も関係してくるが、撮影距離が遠い分にはピント送りしながらのMF撮影も可能だ。

撮影:山下大祐
α1/SZ 500mm F8 Reflex MF/マニュアル露出(F8、1/250秒)/ISO 800/WB:太陽光

超望遠は背景の限定が容易に行えて、標準レンズ感覚で流し撮りもこなせる。NDフィルターでシャッター速度を調整した。

撮影:山下大祐
α1/SZ 500mm F8 Reflex MF/マニュアル露出(F8、1/10秒)/ISO 100/WB:太陽光/NDフィルター使用

POINT 1: 超小型の超望遠が可能な特殊機構

ミラーレンズは、ドーナツ型の主鏡とその中心円に光を収束させる副鏡を合わせ鏡のように配置した構造で、長い焦点距離を短いレンズ長で納めることができる。構造上、絞り機構を設けられないが、凸レンズで起こりうる色収差が起きない。

POINT 2: 反射光学系に特有のリングボケ

レンズ中心は副鏡に遮られる部分があるため、輝度の高い点像がリング状にぼけて写る「リングボケ」が独特である。不思議なことに合焦部分はそれが分からない。このボケ描写を積極的に生かせるシーンを探すのも楽しみ方の1つだ。

撮影:山下大祐

POINT 3: 6種類のマウントに対応できるTマウント

天体望遠鏡で一般的なスクリュー式のTマウントを採用する。各社のカメラのマウントに対応したTマウントを取り付けて装着できる。つまり、比較的安価なTマウントを用意すれば、複数マウントのカメラで1本のレンズを共用できる画期的な仕様といえる。

POINT 4: 400mmには2倍のエクステンダーが付属

400mm F8 Reflex MFには2倍エクステンダーが付属している。ただでさえ小型の400mmが800mmとなり、非凡な超超望遠画角があっという間に実現する。遠くのものを大きく撮るのはもちろんだが、最短撮影距離で身近なものにレンズを向けて撮るのも面白いだろう。

左からレンズ、エクステンダー、Tマウント、カメラ。400mmに付属の2倍エクステンダーはレンズとTマウントの間に取り付ける。その際はレンズをいったんカメラから外した方が安全だ
展望デッキのフェンスの穴が小さい場合、小型・軽量レンズはとても扱いやすい。それでいて800mmの超望遠とは驚愕だ(撮影:深澤明)
Nikon Z 9/SZX 400mm F8 Reflex MF + 2倍エクステンダー(800mm相当)/マニュアル露出(F16、1/250秒)/ISO 3200/WB:晴天日陰

制作協力:株式会社ケンコートキナー

デジカメ Watch編集部