特別企画

クリエイター向けノートPC「Prestige 15」を風景写真家・館野二朗さんに使ってもらいました

フォトグラファーが外出先で必要とする性能とは? 処理能力・インターフェイス・操作感について聞く

MSIのクリエイター向けノートPC「Prestige-15-A11SCS-006JP」

MSIが2020年末に発売した「Prestige-15-A11SCS-006JP」は、クリエイター向けスタンダードクラスのノートPCだ。スタンダードクラスとはいえ、CPUにIntelの第11世代「Core i7-1185G7」を搭載し、ディスクリートGPUとして「GeForce GTX 1650 Ti Max-Q(4GB)」を採用するなど、ベースの部分は上位モデルの「Prestige-15-A11SCS-064JP」と変わりなく、高い処理性能を備える。それでいて、価格は税込みで20万円を切るという大胆な設定をしたなかなかの野心作だ。

今回は、この「Prestige-15-A11SCS-006JP」を写真家の館野二朗さんに試用していただき、感想をうかがってみた。ネイチャーフォトの分野で活躍される館野さんにとって、ノートPCの利用シーンは、撮影地での運用が大きなウェイトを占める。実際、先ごろまで桜前線を追いかけて1カ月以上の撮影行をされたばかりとのこと。必然、ノートPCに対する要求も一段高くなると思われるが、いかがだろうか。

館野二朗

1975年東京都生まれ。若い頃からバックパッカーの旅やフライフィッシングを通して自然と向き合う。手つかずの自然美にインスピレーションを受け、2000年頃から本格的に撮影活動を開始。以降現在まで、日本全国を撮影行脚。独創的な視点のその作品は、見る者のイマジネーションを刺激する。近年は奄美大島をテーマの一つとしている。

撮影:館野二朗
EOS 5D Mark IV / EF24-70mm F2.8L II USM / 65mm / マニュアル露出(1/4秒・F11) / ISO 100
撮影:館野二朗
EOS 5D Mark III / EF24-70mm F2.8L II USM / 70mm / マニュアル露出(1/13秒・F8) / ISO 320
撮影:館野二朗
EOS 5D Mark III / EF24-70mm F2.8L II USM / 28mm / マニュアル露出(1.0秒・F11) / ISO 100


◇   ◇   ◇

——まずは現在お使いのPC環境について教えていただけますか?

デスクトップが1台とノートPCが1台という組み合わせですね。デスクトップは2019年の暮れごろ、ノートPCは2014年最終モデルの13型です。特にノートPCは購入から年月が経っているため、力不足を感じてきています。

——ノートPCの使用頻度は高いのでしょうか?

自宅以外での作業が多くなりますので、使用頻度は高い方だと思います。

使用するアプリケーションは、Lightroom Classicを主軸にしつつ、レンズ補正用のDigital Photo Professional(DPP)、After Effect、Premire、Microsoft Officeなどです。ノートPCだけでフィニッシュということはほとんど無いですが、ワークフローを完了できるような環境にはしてあります。

もちろん、編集作業に用いるだけではなく、データストレージとしての役割も欠かせません。撮影後は毎日ノートPCにデータを退避させます。流れでいうと、例えばクライアントが居る撮影の場合、その日のうちにアタリを出す必要があります。夜帰って来て、データをバックアップしつつ、編集し、JPEGに変換して、クライアントに送るというような使い方になります。

あとは原稿を書いたりもします。なので、ノートPCが活躍するのは撮影後のことが多いですね。

クライアントと一緒の場合だと、撮影現場で絵を確認してもらうためのビューワとしても使用します。他にはセミナーや講演会、撮影会でも使用しますね。

——現在使用中のノートPCだと力不足になってきたとのことですが、どのようなところに不足を感じていますか?

全体的に、という感じですね。要因になっているのは、デジタルカメラの画素数が増えたことでしょう。データサイズが大きくなったので、演算処理性能が低いと時間がかかるようになりました。

また、記録メディアからノートPCにデータを転送する時間も長くなります。先ほど言ったように主な作業は撮影後なので、なるべく早く寝るために処理速度と作業時間はわりと切実ですよ(笑)ストレージに関してもより大きな容量が必要になってきましたね。USBなどの外部インターフェイスが少ないことにも不満を覚えています。

——「処理性能」、「ストレージ容量」、「外部インターフェース」といったところですね。今回試用いただいたPrestige-15-A11SCS-006JPはいかがだったでしょうか?

まず処理性能ですが、これはすごく速くなりましたね。作業を並行しても耐えられないほどのモタつきは無いので、かなり快適に使えています。自分の使用しているノートPCに比べれば格段に違いますね。

——お使いいただいたモデルは、内部ストレージとして1TBのM.2 NVMe SSDを搭載しています。

容量が1TBもあるので問題なかったです。今年の桜撮影ではおよそ1か月の間自宅に戻らず、撮影量が1TBを超えました。ですがこれは例外ですし、前もって備えていたので問題ありません。普段の撮影ならば余裕を持って臨めそうです。拡張用のスロットが1基あるらしいので、自分で購入するとしたら、そちらも使用するでしょう。

私の場合、大事なデータは多重化の意味でも、即座に提示できるようにする意味でも、ノートPCに保存しておきたいんですね。あと、動画も撮るようになったので、容量はいくらあっても足りないくらいです。

他には、SSDということもあって起動もデータ転送も速いですね。今のノートPCよりも使い勝手が格段によくなりました。

——外部インターフェースはWi-Fi6、Thunderbolt4、USB Type-C、HDMIなどが揃っています。

左からThunderbolt 4 Type-C(USB PD対応)×2、HDMI×1、ヘッドホン出力(Hi-Res対応)/マイク入力コンボジャック×1
左からmicroSDスロット×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×2

うん、数がちょうど良い感じなんですよね。カメラの方からCFExpress用のカードリーダーを繋ぎつつ、外付けHDD2台にバックアップを取るというのが、いつもの使い方なのです。なので自分の用途には合っています。USB Type-AコネクタもUSB 3.2 Gen2に対応していますが、ここまで転送速度が違うのかと驚きました。USB Type-Cの方も高速でPDに対応、いざとなればスマーフォンなどの充電もできます。

——現環境の不満点はクリアできたようですが、その他の部分の感想もうかがいたいと思います。ディスプレイのサイズや表示性能はどうでしたか?

元々、ノートPCの色再現性にはそこまで求めていないこともあり、十分に満足ができるレベルです。反射がほとんどないノングレア処理なのも良いですね。

サイズについては現状が13型のため、15.6型はかなり広く感じました。並行作業もしやすいです。単に見易さならばもっと大きい方が良いのでしょうが、ノートPCとなるとこのくらいのサイズが自分のベストですね。

——ディスプレイの解像度(1,920×1,080:フルHD)はいかがでしょう。

作業としてはフルHDがあれば十分ですね。タイムラプスでも書き出す時はフルHDなので。ただ気持ちの部分では4Kもありかなというのが残ってはいますが。

——バッテリーの動作時間についてはいかがでしょうか?館野さんは屋外が主体となるので、動作時間は仕事に大きく影響するのでは?

車での移動なので電力供給源に困ることはほとんど無いですが、余分な時間だけ、それも回数を少なく済ませたいのが実際です。

体感でこれまで使っていたノートPCより、時間にして3倍……まではいかないですが倍かそれ以上になりました。今回の撮影行だと、3日使っても充電が必要なく、逆に不安になって充電してしまったくらいです。これだけ持ってくれるなら、それこそ移動や就寝時などの時間だけでも十分に使用できます。

私の場合、屋外に限らず、ホテルなど電源が容易に確保できる環境でも充電、というか結線していたくないんですね。ソファーだったり、テラスだったりと気分次第で色々なところに持ち歩きたい。あと、ラウンジでクライアントと打ち合せたりですね。それだけにこの動作時間は魅力ですね。電力に束縛されずに済みます。

——キーボードやタッチパッドの操作感はいかがでした?

キーの表面がツルッとしておらず、幾ばくかの引っかかりがあるのが良いですね。ピッチがノートPCにしては広くて、タッチが柔らかくタイプしやすかったです。

タッチパッドは、私はいつもタップ無効にしてクリックパッドとして使用しているのですが、程よいクリック感があって使いやすかったですよ。

あと、思った以上に役立ったのが、キーボードのバックライトですね。今回は夜間撮影は無かったのですが、暗所での作業がわりとあります。先日も暗いレストランでクライアントと打ち合わせをしたのですが、その際にもキーの位置がしっかり確認できました。

——サイズや重量を含めたデザインはどうでしょうか?

特に良いのが薄型なこと。カメラバッグに収める時、厚みがあると引っかかって入れにくいんです。その点、Prestige-15-A11SCS-006JPはスッと収納できましたね。重量については思ったほど重くなかったです。あとで約1.7kgと聞いて驚いたくらいです。

——色々とお話をうかがってきたましたが、処理性能はもとより、操作性の良いキーボードとタッチパッド、運搬時に収納場所に悩まずに済むスリムデザイン、バッテリー持ちの良さなど、ユーザがストレスになるような要素を極力排した印象を受けますね。

実際、クリエイター向けに限定することなく万能ですよね。さらに色味も注視したいならば、色評価用にディスプレイを買うか、上位モデルという選択肢もありますし。SNSなどが主体のアマチュアの方ならば、これ1台あればデスクトップは要らないのではないでしょうか。

制作協力[MSI]

※以下のリンク先の製品画像に英字配列のキーボードのイメージが含まれていますが、実際の製品は日本語配列のキーボードになります)

榊信康