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MSIとキヤノンがクリエイター向けPCの販売で協業

いま高性能なPCが求められている理由とは

左からRicky Chiang氏(エムエスアイコンピュータージャパン株式会社 代表取締役社長)、大井正博氏(キヤノンマーケティングジャパン株式会社 コンスーマビジネスユニット ITプロダクト営業部 部長)

MSIとキヤノンマーケティングジャパン株式会社は10月16日、ノートPCの販売で協業していくと発表した。この協業によりECサイト「MSIストア」が10月17日に開設される。

協業の背景

協業の発表にあたり、エムエスアイコンピュータージャパン株式会社 代表取締役社長 Ricky Chiang氏は、近年、ノートPCに多コアCPUが搭載されるようになり、グラフィックスに関しても独立したプロセッシングユニットが搭載されるようになってきたことで、デスクトップPCとノートPCの性能差が絶対的なものではなくなってきていることが、こうしたゲーミングPCが支持されるようになってきている一因だと話す。

Ricky Chiang氏(エムエスアイコンピュータージャパン株式会社 代表取締役社長)

当誌でも写真家・チャーリィ古庄氏によるMSI社の製品レビューを紹介しているが、フォトグラファーにとって、PCに要求する処理性能はゲーミングPCに通じるものがあるのだという。

ゲーミングPCの性能面での主な特徴をみてみると、まず高速なCPUがあげられる。そして独立したGPUの搭載とPCI Express接続の高速ストレージの搭載などになる。そしてもう1点重要なのが、これらのパーツが安定的にその処理性能を発揮できる状態を維持する、ということだ。

これを写真や動画の処理にあてはめてみると、大容量RAWデータの大量現像や、長時間動画のコーデックやエフェクト処理などが、やはり同様の環境を求めていることが浮かびあがってくる。

このような状況から、ゲーミングPCを求める人の中には、ゲームだけでなく静止画や動画も楽しんでいる層が存在しており、グラフィックデザイナーや3D CAD、動画配信などといったクリエイター層はPCゲーマーよりもさらに多数存在しているのだとRicky氏は続ける。

こうした潜在的に高性能PCを求めている層へのアプローチとして、同じくクリエイターに支持・使用されてきた、カメラに代表されるキヤノン製品の利用層とのマッチング、そして利用層の拡大というのが、今回の協業の核となっているわけだ。

ECサイト名は「MSIストア」となる。キヤノンマーケティングジャパンがECサイトのノウハウをいかしつつ、さらに幅広い層へ高性能ノートPCを訴えかけていく。キヤノンマーケティングジャパン株式会社 コンスーマビジネスユニット ITプロダクト営業部 部長の大井正博氏は、これまでとは異なる層へ向けてクリエイターPCを拡大していきたいと話した。

大井正博氏(キヤノンマーケティングジャパン株式会社 コンスーマビジネスユニット ITプロダクト営業部 部長)

このほか、MSIストアならではの製品もある。キヤノンマーケティングジャパン株式会社 デジタルマーケティング・EC企画センター 課長の内藤秀幸氏より、そのうちのひとつとして4K表示に対応したディスプレイ「Prestige PS341WU」が紹介された。

アスペクト比が21:9のワイドタイプで、4K表示にも対応している。解像度はWUHD(5,120×2,160)で、色域はsRGB、DCI-P3カバー率は98%となっている。発売時期および価格については、後日のアナウンスとなる。

内藤秀幸氏(キヤノンマーケティングジャパン株式会社 デジタルマーケティング・EC企画センター 課長)

クリエイター向けノートPCに新製品

クリエイター向けノートPCより新製品も発表された。ラインアップは4製品。

1つめは、高性能・高機能かつ大画面のノートPCを必要としているクリエイター向けだというハイエンドモデル「P75 Creator」。デスクトップ機なみの処理性能ながら、重量2.28kgとなっている。

2つめは、15.6インチかつ4K表示に対応した液晶パネルを搭載した「Prestige 15」。デスクトップ機なみの処理性能を有するCPUおよびGPUを搭載しながらも最大約16時間のバッテリー駆動を実現したというモデルだ。発売時期は10月下旬。MSIストアでの取り扱い価格は、税別21万9,800円。

3つめは、14インチモデル「Prestige 14」。6コア12スレッドのCPUに加え、独立GPUを搭載。最薄部で15.9mm、重量1.29kgを実現したモデルだ。MSIによれば、場所を選ばずに最適な性能のクリエイティブ環境を提供する、としている。発売時期は11月上旬。MSIストアでの取り扱い価格は、税別18万9,800円。

4つめは、軽量ビジネスノートとして位置づけられる「Modern 14」。プロセッサにCore i7-10510Uを搭載。重量1.19kgで、バッテリー駆動時間は最大約10時間を実現している。発売日は10月17日。MSIストアでの取り扱い価格は、税別12万2,546円。

このほか、デスクトップタイプPCの展開もある。モデル名は「Prestige P100A」と「Prestige PE130」。両モデルともにストレージにNVMe接続のSSDを搭載。GPUはGeForce GTX 1660 Tiまたは1650を独立して搭載、Core i7プロセッサを共通して採用している。発売時期および価格については、後日のアナウンスとなる。

MSIストアではアウトレットモデルの販売も予定しているという。

なぜ高性能なノートPCが必要なのか

発表会では写真家の村上悠太氏が登壇し、なぜ写真家が高性能PCを必要としているのかを紹介する場面もあった。

村上悠太氏

MSIのクリエイター向けノートPC「Prestige 15」を使用したという村上氏。まず製品を開けてみて驚いたことは、モニターがノングレアタイプを採用していたことだったと話す。15.6インチの4K表示(3,840×2,160ピクセル)に対応した同製品について、氏がそれまで使用していたPCよりも、ディスプレイの幅がひろく、写真編集時に画像とツールパレットをならべて作業できると、その使い勝手のよさを強調した。また、4K表示に対応していることで、撮影時の感動をしっかりと確認できると、解像の良さについても言及した。

また、講演などでHDMI端子を多様するという村上氏。同PCのHDMI端子部が普及率の高いType A端子を採用していることについても、アダプターなどを介さなくても様々な場所・機器に接続できると、とりまわしの良さをあげた。

左ポート部(Prestige 15)

続けて動画クリエイターとして、ユーチューバーのばんのけ氏が登壇。14年以上もYouTubeで作品を発表しているとして、動画編集ではプレビューの処理速度が、まず重要だと話した。

ばんのけ氏

PCの処理性能が高ければ、エフェクト処理などといった凝った映像編集ができる、というばんのけ氏。そうした効果を確認する際にプレビューの表示が遅いと、そうした編集をやめてしまうこともあるのだと続ける。

最近では3分、5分といった短時間の動画ではなく、もっと長い動画が求められるようになってきていると話すばんのけ氏。通信速度が高速化し、また容量の制限も厳しくなくなってきている近時の通信インフラと4Kの普及など、長時間かつ高画質の映像需要の高まりにともない、PCの処理性能の向上は、重要なトピックとなっているのだと強調した。

キャンピングカーを自作していると続けるばんのけ氏は、せまい空間で旅をしながら映像の編集をするのが夢だと続ける。こうした点とともに、持ち歩けるということも含めハイスペックなノートPCが必要なのだと話した。

このほか発表会では、MSIのPCを使用したeスポーツの実演もあった。担当したのは、SunSisterの面々だ。

本誌:宮澤孝周