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GNDフィルターを使うコツを「H&Yマグネットホルダー」を例に紹介!

撮影中の筆者

風景写真の撮影地に行くとしばしば見かけるのが、角型フィルターを装着して撮っているアマチュア写真家だ。レンズの前に大きなガラス板を取り付けて撮るそのスタイルは、カメラが並ぶ撮影地でもとりわけ目を引く。しかも近年、この分野に参入するブランドが増えていることもあり、多くの写真家が自分の作品に取り入れている。

角型フィルターの主流がGND(グラデーションND)フィルターだ。その使いどころを一言でいえば「明るさの差をなくす」ことにある。明るい太陽と暗い地面などを同じ構図に入れると、本来どちらかが飛んでしまう(または潰れてしまう)。その状況で、画面内の一部の明るさを変化させることができたら……そんなときこそGNDフィルターの出番だ。

この記事では、今月より日本で販売が開始されたH&Y Digital Co. ltd.のフィルターホルダー「K-Series」を使い、GNDフィルターの基本を解説してみた。作例の撮影と解説は写真家の武井眸さんだ。「K-Series」を試用した印象も綴ってもらっている。

H&Yとは?

香港発のフィルターメーカー。高い光学技術と独創的な製品により支持を集めている。日本市場へは可変式ステップアップリング「REVORING」の発売を機に参入。フィルターホルダー「K-Series」も直販サイトで取り扱っている。

ちなみに一般的なフィルターシステムは、フィルターホルダーと角型フィルターで構成され、角型フィルターフィルターホルダーに設けられたスリットにはめ込んで使用する。

一方、H&Yのフィルターシステムは、フィルターホルダーと角型フィルターの双方にマグネットが内蔵されており、ワンタッチで装着可能。スムーズかつ確実なフィルター交換が特徴だ。

また、フィルターの素材として、強度面で定評のあるゴリラガラスが使用されている。落下しても割れにくいため、頻繁な交換が必要な撮影現場でも、破損の可能性が少なくなるのはありがたい。(編集部)

H&YのソフトGND(グラデーションND)フィルター
フィルターホルダーを介して角型フィルターを装着する。

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GNDフィルターの主な特徴

GND(グラデーションND)フィルターとは、被写体に明暗差(水平又は垂直に)がある場合、光量の多い部分を抑え明暗差を軽減させるための撮影アイテム。レンズの前に装着して使用する。

例えば朝日や夕日を撮影する際、露出を暗い部分に合わせてしまうと明るい部分が白とびしてしまう。そのような場面で明るい部分のみの光量を抑え、暗い部分の光量はそのまま残すことができる。

GNDフィルターをレンズに装着するには、専用のフィルターホルダーを用意する必要がある。フィルターホルダーはレンズのフィルターネジ枠にねじ込んで装着(ステップアップリングを使っても良い)。その後、GNDフィルターをフィルターホルダーにセット。その後、GNDフィルターを上下にスライドさせることで、明暗の境目に微調整しながら合わせていく。フィルターホルダーに装着する前、GNDフィルターを風景にかざし、大体の位置を決めてからホルダーに設置するのも良いだろう。

今回の撮影に持参した機材。上段左からハードGND、ソフトGND、リバースGND。下段中央上がフィルターホルダー。下段下はフィルターホルダーにドロップインできるPLフィルター、NDフィルター、PL/NDフィルター。これらが右の専用ケースに収納できる。

大抵のレンズの前枠には円形フィルターを装着するためのネジ枠が設けられている。そこにフィルターホルダーをねじ込んで装着する。
フィルターホルダーとGNDフィルターはマグネットで固着する。その状態で上下にスライドさせ、NDをかけたい箇所を探る。

今回試用したH&Yのフィルターシステムはマグネット式のため、フィルターホルダーへの装着や微調整がストレスなくおこなえた。手元を見ることなく、撮影に集中できるのはメリットに感じた。マグネットの強度も強すぎず、弱すぎず、フィルターの微調整が楽である。

ところで、風景写真でよく使うフィルターといえばPLフィルターだろう。H&Yの場合、フィルターホルダーに専用のPLフィルターを取り付けられる。これにより、GNDフィルターとPLフィルターの併用が可能だ。フィルターホルダーの手前(レンズに近い部分)に、PLフィルターをドロップインする仕組みになっている。

なおH&YのPLフィルターには、NDコーティングが施されたものがある。PLフィルターとNDフィルターの両方の効果を持つため、荷物をコンパクトにできるのが利点だ。重ねがけにならないため、解像度の面でも有利に働くだろう。

フィルターホルダーに専用のPLフィルターを取り付けることができる。これによりPLのみ、あるいはGNDとの重ねがけが可能になる。

H&YのフィルターホルダーにはPLフィルターを回すためのノブが付いており、これを指で回すことで効き具合を調整できる。ノブは直径1cmほどなので、手袋をつけたままでも回しやすかった。手の大きい方でも使いやすいのではないだろうか。

フィルターホルダーにドロップインしたPLフィルターは、ノブで回すことができる。

H&Yの角型フィルターには以下の種類が存在する。

ハードGNDフィルター
ソフトGNDフィルター
リバースGNDフィルター
リバースGNDフィルター
センターGNDフィルター
NDフィルター
ナイトフィルター(光害カットフィルター)

GNDフィルターとは、約半分が透明、約半分がND(減光効果を施す)になっているフィルター。減光効果のある箇所とない箇所の境目がなだらかに(グラデーション)なっているフィルターを指す。ハード、ソフト、リバースは、それぞれその境目や範囲が違う。

今回はハード、ソフト、リバースの3タイプのNDフィルターを紹介する。

作例:ハードGNDフィルター

ハードGND(グラデーション)フィルター

ハードGNDフィルターは、境目のグラデーションが比較的はっきりしているタイプ。そのため、地平線、一面の雲海などに沈む夕日、または昇ってくる朝日など、明暗差の境界線がはっきりしている場面、まっすぐな場面で有効である。

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スキーで有名な白馬・八方尾根より日の出の撮影。街の上には雲海が広がっている。標高 1820mならではの景色。雲海のディテールを見せつつ、太陽が昇ってこようとしている温かみのある色も出したいところ。

フィルターを使用せず、雲海に露出を合わせると朝日の部分が露出オーバーになってしまい暖色系の色が出ない。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF16-35mm F2.8L IS III USM / 24mm / マニュアル露出(3.2秒・F5.6) / ISO 100

ここでハードGNDフィルターを用いた。境目がはっきりしているので、朝日の淡いオレンジが出て、なおかつ雲海のディテールも残すことができた。

ハードGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF16-35mm F2.8L IS III USM / 24mm / マニュアル露出(3.2秒・F5.6) / ISO 100

◇   ◇   ◇

作例:ソフトGNDフィルター

ソフトGND(グラデーション)フィルター

ソフトGNDフィルターはハードGNDフィルターとは逆に、明暗部の境目がはっきりしない場面や、直線ではない場面を得意とする。例えば山の稜線のように、明暗部が線で区切れないような被写体に向いている。


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八方尾根より、朝陽を受ける北アルプスの白馬三山。数日前に降った雪で上部は少し雪化粧、冬の訪れを感じさせるが、山頂から少し下の方ではまだ秋がねばっている。

この両者を潰さず表現したいが、下の残る紅葉の部分に露出を合わせると山頂部分が少し露出オーバーになってしまい、岩肌や山頂の輪郭が薄くなってしまう。下記がその例である。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 31mm / マニュアル露出(1/30秒・F8.0) / ISO 100

この場合、稜線がまっすぐではないことと、暗部も境目がはっきりしないため、ソフトGNDフィルターを使用。初冬の山頂付近と、踏みとどまる秋を残すことができた。

ソフトGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 31mm / マニュアル露出(1/30秒・F8.0) / ISO 100

◇   ◇   ◇

10月下旬の栂池自然園。うっすらと雪化粧する白馬三山。手前の笹や枯れ草に霜が降り、山頂にはうっすらと雪の積もり始める季節。手前の霜の降りた葉と山の稜線を出したい。

フィルターを使用しない場合、手前の葉に露出を合わせると山のディテールがでない。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 45mm / マニュアル露出(1/30秒・F11) / ISO100

そこでソフトGNDフィルターを使用して稜線の露出を抑え、手前の霜の降りる葉と山の稜線を出すことができる。また、不規則な明暗部の境目もソフトGNDフィルターでは違和感なく、自然に出すことができる。

ソフトGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 45mm / マニュアル露出(1/50秒・F11) / ISO100

◇   ◇   ◇

八方池山荘付近からの朝日。こちらはフィルターなしで撮影した例になる。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/10秒・F8.0) / ISO100

ハードGNDフィルターを使用した場合、境目がソフトに比べ露出がはっきりと抑えられるため、少しコントラストの高い仕上がりになる。

ハードGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/10秒・F8.0) / ISO100

ソフトGNDフィルターを使用した写真は、明暗部の境界の出方が柔らかなイメージになる。

明暗部の境目は割と明確ではあるが、朝日に焼ける雲を少し柔らかく表現したかったため、ソフトの方が自分のイメージにあっていた。どちらがいいかは好みの問題である。

ソフトGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/10秒・F8.0) / ISO100

明暗部の明確さだけで使い分けるのではなく、どのように見せたいかによって選択していくのもフィルターの楽しみのように思う

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作例:リバースGNDフィルター

フィルターを縦に見て、上下部分はND効果が薄く、中央にND効果が現れるのがリバースGNDフィルター。中心に太陽などの強い光源があり、その露出を抑えたい場面で活用したい。日の出・日の入りで水平線に太陽が位置するときや、薄明薄暮の空などに有効である。

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夜明け、星と太陽の入り混じる時間。街はうっすらと雲海に包まれ、街明かりが雲に反射していて、星はまだ太陽に負けず見えている。星、太陽、街、この三者の光を出したいと考えた。

フィルターなしでは空が露出オーバーになる。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/10秒・F4.0) / ISO 1600

ソフトGNDフィルターでは中央の明るさがうまく抑えられない。

ソフトGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/15秒・F4.0) / ISO 1600
リバースGNDフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF24-105mm F4L IS II USM / 41mm / マニュアル露出(1/15秒・F4.0) / ISO 1600

作例:PLフィルター

PLフィルターは光の反射を抑えることで、空や紅葉、緑の色を引き締めてくれる効果や水面の反射を抑える効果が生まれる。風景写真ではよく使われるアイテムである。

2枚のフィルター構造で1枚を回すことで効果を微調整できる。ただし寒い時期に手袋をつけて操作すると回しにくい。H&Yフィルターシステム専用のPLフィルターはノブがついているため、手袋をしていても回しやすい。

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写真は秋の、善五郎の滝(乗鞍高原)である。 秋の黄色い葉と、苔のしっとりとした緑を出したいところ。

フィルターなしの場合、黄色い葉と苔の色があまり出ていない。

フィルターなし
EOS 5D Mark IV / EF16-35mm F2.8L III USM / 24mm / マニュアル露出(1/15秒・F4.0) / ISO 1600

PLフィルターを使用した場合、全体的に葉や苔の緑が出たことに加え、水面の反射が抑えられている。

PLフィルターあり
EOS 5D Mark IV / EF16-35mm F2.8L III USM / 24mm / マニュアル露出(1/15秒・F4.0) / ISO 1600

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H&Yフィルターを使って

日の出の光が刻々と変化する場面、滝雲で雲が形をめまぐるしく変えていく場面など、今回は状況が頻繁に移り変わる中での撮影が多かった。

そうした環境でもフィルターホルダーの装着やフィルターの交換・追加といった操作がとてもスムーズにでき、環境や被写体の変化についていくことができた。また、PLフィルターにノブがついていて回しやすいことは、寒い中でとても快適であった。

寒い山中で使ってみて気づいたのは、カバーをせず外に出しておくと曇りやすいこと。ザックに入れるか、H&Yの純正フィルター用ケースに入れておくことをお勧めする。純正フィルターケースはウエストに装着したり斜めがけができるので、フィルター交換をする時前に回せて使いやすい。

あと感心したのは耐久性である。H&Yフィルターはゴリラガラスが使われており、一度、石の上に落としてしまったのだが、傷はつかなかった。アウトドアの撮影では安心である。

GNDフィルターは「もう少しこの部分を出したかった」「こんな場面にも使えるのでは」といった具合に表現の幅を広げてくれるアイテムである。撮影場所、スタイルによっては荷物の制限も出てくるので、全てのアイテムを持って撮影にいくことは難しいかもしれないが、必要なものを絞って持っていくのもまた創作意欲を沸き立たせてくれるだろう。

協力:八方池山荘、白馬観光開発株式会社

武井眸

日本大学藝術学部写真学科卒業後、ハクバ写真産業(株)、レンタルスタジオスタッフ、堀内カラー受付などを経て2016年独立。現在、出張撮影を主に活動中。山岳写真家菊池哲男氏の言葉に惹かれ撮影業務の合間にアシスタントとして同行、氏を被写体に追う。2017年に個展「異空間」(HCLフォトスペース神田)、2020年に2人展「山岳写真家 菊池哲男×山岳スナップ 武井眸」(富士フォトギャラリー銀座)を開催。