特別企画

ライカが展開する「ライカ・アプルーブド・カメラ」とは

オーバーホール+2年保証で安心の“認定中古カメラ”

ライカカメラジャパン(以下、ライカ)は、2018年3月から認定ユーズドカメラ「ライカ・アプルーブド・カメラ」の販売を開始した。スタートしてからもうすぐ約1年が経つわけだが、ライカ自身が中古を扱う理由や狙いを改めて聞くと共に、一般的な中古ライカと何が違うのか? ラインナップや売れ筋は何か?などを取材した。(写真:編集部)

ライカ自身が中古を扱う意義とは

この取り組みの背景には「中古市場でのライカ製品の品質向上」という目的がある。昔からひとくちに“中古ライカ”と言っても、中古品ゆえに1台1台の状態はバラバラで、個体差がある。いわゆる“当たり外れ”だ。本当の良品を手に入れられれば問題はないが、あまり安く手に入れることばかりを優先すると、あとあと思わぬ修理費が発生して困ってしまう恐れがある。

これは中古ライカを買ったユーザーも不幸だが、「ライカってこんなもんなんだ」と思われてしまってはライカにとっても心外だし、ブランドイメージ的に良くない。もちろん、ちゃんとした中古カメラ店ならある程度の保証は付くが、近ごろはネットオークションやフリマアプリなどで個人間売買も活発だ。そうした取引ではいわゆるNC・NR(ノークレーム、ノーリターン)が前提であることはご承知の通り。出品者によってスタンスは様々だけれど、一般的に保証は一切ない。

そうした中古ライカを取り巻く現在の状況を考えると、ライカ自身が認定中古カメラを取り扱う目的の重要性がよく分かる。最近は「モノそのものに価値を見いだせるのであれば、新品にこだわらず中古でもかまわない」という人もすごく多い。その点、品質と信頼性が担保され、安心して購入できる中古のライカというのは市場からも求められているのだ。

ライカの「認定」は何が違う?

ライカ・アプルーブド・カメラには必ず認定書が付いてくる。ライフサイクルが早くなったデジタルの時代でも、良いモノを長く使って欲しいというライカの基本思想は変わらない。

ライカの認定中古カメラは、正式には「ライカ・アプルーブド・カメラ」(Leica Approved Camera)と呼ばれる。外車では、メーカーが認定した中古車のことをアプルーブド・カーと表記することが多いけど、基本的にはそれと同じだ。

ライカ・アプルーブド・カメラのベースとなるのは、新品ライカを購入した際に下取りされたものが中心。その中からライカが良好と認めた個体のみを認定中古として修理・整備する。作業を行うのはライカカメラ本社から認定を受けたライカ技術者で、使用する測定機器もドイツのライカ本社と同じ。使う部品ももちろんライカ純正だ。

日本のライカ修理センター

内容はオーバーホールが基本となり、50項目以上を点検整備するほか、キズが多い外装は新品に交換される。驚くのは保証期間が2年と長いことだ(当初は1年だったが、2019年2月購入分から2年になった)。中古とはいえライカの自社製品に対する自信を感じる部分である。

通常のライカ・アプルーブド・カメラに対し、さらに「ライカ・プレミアム・アプルーブド・カメラ」になると、シャッターユニットも新品に交換される。もちろんその分価格は高くなるが、各部のオーバーホールに加えてシャッターユニットが新品に交換されているとなると、感覚としてはほぼ新品のカメラと同じだ。

メインの商品は?

ライカ・アプルーブド・カメラの商品は基本的にカメラボディだけで、レンズは今のところ扱いがない。ラインナップはライカM(Typ240)とライカM9が基本で、ライカM9-PやライカMモノクロームなどの派生機種も含まれる。

ライカプロフェッショナルストア東京のアプルーブドコーナー。展示してあるもの以外にも、バックヤードに別の在庫があることも。どれも程度は新品と見間違うくらい美しい。

人気があるのは撮像素子にCCDを採用していたライカM9系で、特にライカM9-Pと初代Mモノクロームを指名する人が多いという。現行ライカはすべてCMOSセンサーへ移行しているが、CCDセンサーを搭載したM9系は今でも根強い人気があるのだ。

ライカM(Typ240)についてはまだ現行機種ということもあって価格的メリットは悩ましいところだが、中にはライカ・アラカルト用の張り革を使ってカスタマイズされたものが並ぶこともある。カスタマイズされてるからといって高価になるわけではないので、好みが合えばお買い得である。

アラカルトの張り革に一新された例。

どこで買える?

2019年2月時点でライカ・アプルーブド・カメラを取り扱っているのは、ライカ銀座店、ライカプロフェッショナルストア東京、ライカ京都店、そしてWebのライカオンラインストア。この中ではオンラインストアでの購入が一番多いそうだ。購入時に実機を確認できないオンライン購入でも、保証がしっかりしているので安心なのだろう。

ライカオンラインストアに掲載されている「ライカ・アプルーブド・カメラ」の一例(2月22日時点)。

今回はライカプロフェッショナルストア東京のアプルーブドコーナーを見せてもらったが、並んでいる台数は7台ほどと、一般的な中古カメラ店に比べると決して多くはない。ただ、陳列していないカメラがバックヤードにあったりするので、気になった人は必ずスタッフに聞いてみよう。その時は在庫がなくても希望機種を伝えておけば、ある程度時間はかかるかも知れないが用意できる可能性もある。

最も気になる価格帯は、ライカM9を例にすると、通常のアプルーブドなら税別48万円くらい、シャッターユニットまで交換したプレミアム・アプルーブドだと税別55万円前後が目安となる。一般的な中古店で売られているライカM9と比べると決して安くはないが、前述の整備内容を考えると決して高すぎるわけではない。

キモはやはり、2年間の手厚い保証だろう。例えばライカ・アプルーブド・カメラを購入してバリバリ使いまくった結果、もし2年以内にシャッターが壊れた場合は、無料でシャッターユニットを交換してくれる。もしシャッターユニット交換を有償で行うと約15万円ほどかかるから、他で購入したノーメンテナンスの中古ライカよりも結果的にはお得になる可能性が高い。ライカを実用機として使い込みたい人にとって、アプルーブド・ライカはかなり有力な選択肢になるのではないだろうか。

確実な中古ライカを買える安心感

一般の中古店でライカをウインドーから出してもらい、持てる全ての能力と知識を駆使してカメラの程度や不具合を見極めつつ購入に悩むというのも結構楽しかったりするが、そこにはちょっとした「賭け」の要素があるのも事実だ。

それよりも手堅く、心強い保証も付いたライカ・アプルーブド・カメラの存在意義は、今後ますます重要になると思う。「ライカ=高い」という先入観で近づきがたく感じてしまっている人に対し、M型ライカの間口を広げたという意味でもアプルーブドの意義は大きい。現在は扱う機種がライカM(Typ240)とライカM9系が主だが、今後はレンズや他のボディを含め、更に展開されていくことを心から期待したい。

制作協力:ライカカメラジャパン株式会社

河田一規

(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。ライカは80年代後半から愛用し、現在も銀塩・デジタルを問わず撮影に持ち出している。