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祇園の「ライカ京都店」がオープン5周年を迎える

"京都1200年"との調和を目指す、100年のライカ

祇園・花見小路の「ライカ京都店」が5周年を迎えた。同店はライカ銀座店に続く日本の旗艦店のひとつとして2014年3月にオープン。築100年の町家を改装して、祇園の歴史とライカの哲学の融合・調和に取り組んだ店舗だ。

今回はライカ京都店のオープン5周年に寄せて、開店当初から店長を務める都丸直亮氏と、ライカカメラジャパン株式会社代表取締役社長の福家一哲氏に話を聞いた。

都丸店長は日本初の旗艦店であるライカ銀座店に始まり、ライカ二子玉川店、ライカ大丸東京店と新店舗の立ち上げに店長として携わってきた。京都店の初代店長にも抜擢され、現在も店長を務めている。

ライカカメラジャパン株式会社 代表取締役社長の福家一哲氏(左)、ライカ京都店 店長の都丸直亮氏(右)

「あっという間の、中身の濃い5年間」(都丸店長)

あっという間の5年間でした。祇園という素晴らしい場所で中身の濃い5年間を過ごすことができ、たくさんのお客様に出会えたことは光栄でした。

京都は歴史のある奥深い街なので、当初はしっかりとやっていけるかなとの不安もありましたが、おかげさまで5年間務められました。素晴らしいお客様にたくさんお越しいただいて、いいお店になったと思います。

また、日本のお客様に限らず世界中から「ライカ京都店を見てみたい」という方にもお越しいただけています。多くの皆様にライカを手に取っていただける絶好の機会だと思います。

ライカ京都店は祇園の町並みに馴染むためにお店のサイン(看板や外観の目印)を大きく出していないのですが、それでも皆様が楽しんで探し当てて、訪れていただける場所です。そして戸を開けて入ってみると、外観からは全く想像できない店内で、世界中の方に喜んでいただけています。

今後もアカデミーや撮影イベントなどの開催を通じて、お客様に喜んでいただけるお店にしていきたいです。

オープン5周年記念として10台限定で発売した「ライカMモノクローム Kyoto」(レンズは別売)。
トップカバー背面に「KYOTO」の刻印がある。

「反対の声もあったが、成功する予感がしていた」(ライカカメラジャパン福家社長)

祇園町、そして京都の皆さまに受け入れていただき、支えていただき、お店を丸5年継続することができました。皆さまからのご指導、ご支援そしてご厚情に感謝の言葉しかありません。

ライカストアは、その土地の文化や歴史を現す、あるいは取り入れるというコンセプトをそれぞれが持っています。ポルトやサンフランシスコのように伝統的な建物の中にライカストアを作った場所では特に顕著です。

それでも、京都店ほどその土地の特徴が取り入れられている店舗は少ないです。築100年の町家を改装して、町家の雰囲気を残しつつ、かつライカのコーポレート・アイデンティティをしっかり表現するという融合は、手前味噌ですが上手にできたかなと思います。

壁にある窯の中に、約80年前のライカが鎮座している。
京都の老舗企業とコラボレーションした、ライカ京都店のオリジナル商品。

祇園の花見小路およびその周辺は、物販を扱うお店がほとんどない環境でした。しかしながら、京都の伝統文化の象徴であり優美な祇園の街には、写真をお撮りになる方々の拠点としてライカのお店があっても良いのではないかと、出店を決意しました。当初は社内外に心配の声もありましたが、これほど魅力的な場所はありませんでした。

当時のことを想うと感慨深いです。ライカのドイツ本社のCEOが視察に訪れた際、その2年前までお茶屋さんだった無人の建物の中で、低い天井のあちこちに頭をぶつけ、埃だらけになりました。視察後に「どう思いますか?」と尋ねると、「I do not know.」との答えが返ってきました。しかしその後、座禅や京料理、芸舞妓さんの芸といった京都の文化に触れたことで、帰国直前には「京都は素晴らしい。出店を応援するよ」と言ってもらえました。

他にも社内外から出店に反対する声はありましたが、必ず成功する予感がしていました。続出する難題にも、京都のパートナー企業のご指導や、設計会社さんの素晴らしい店舗デザイン、そして弊社プロジェクトチームが本当に一生懸命頑張ってくれて、計画通りの日程で大変満足できるお店が出来上がりました。

1階のストアスペース
2階のライカギャラリー

日本の街には古いものと新しいものが混在しています。しかし祇園には、街として調和を意識し、その美しさを守っていこうという素晴らしい取り組みがあります。その中で、ストアの外観としては控え目な露出ではありますが、ライカの存在を示しつつ、街との調和ができたかなと思います。

ライカ京都店は、現在世界に約50あるライカストアの中でも最も美しく、また最も訪れたいお店として、世界中の皆さまから高い評価をいただいています。これは本当にありがたいことです。今後も、お越しいただいたお客様のお時間やお気持ちに見合う場を目指し、幸せなお時間を提供できるよう、一同尽力いたします。

5周年記念のイベントが開催

3月9日には、オープン5周年記念のレセプションパーティが店内で行われた。

京都市長の門川大作氏が挨拶。「京都は珍しく城壁がない歴史都市。1,200年前から開かれており、それを活かして文化を創造してきた。ドイツのライカが京都に根を張って、そのカメラで素晴らしい作品が生まれれば、まさに京都ならではの創造」。
続けて祝舞が披露された。
2階のライカギャラリーで写真展を開催中のハービー・山口さんがトークショーを開催。
イベントを締めくくるサプライズゲストとして、ギタリストの村治佳織さんが演奏。この距離の近さはライカのイベントならでは。
1階では、イベント2日前に発表された「ライカQ2」が早速展示されていた。人気機種ライカQの後継機とあって注目度は高い。
「完成度の高いライカQの次はどうするのか?という懸念を払拭する、非常に高いレベルのカメラに仕上がりました。ライカQユーザーの声を真摯に取り入れた自信作です」(ライカカメラジャパン福家社長)

"京都1200年"に根を張る、誕生100年のライカ

ライカ京都店がオープンした2014年は、ドイツのライカカメラ本社がゾルムスから誕生の地ウェッツラーに移転するなど、小型カメラ試作機「ウル・ライカ」発明の1914年を起点とした"ライカのカメラ誕生100年"として日本国内に限らず話題の多い年だった。Lマウントミラーレスカメラの初号機が登場したのも2014年だ。

その後、2015年のライカQとライカSL、2017年にはライカCLといった新システムを続々投入し、フィルムのM型ライカ並みの持ち心地を実現したライカM10も含め、「ライカはデジタルカメラ作りが上手くなったね」と以前を知るユーザー達は目を細める。今後はLマウントアライアンスなどの新展開にも期待がかかる。

以前はお茶屋さんばかりだったという祇園には、ライカの出店以降、老舗やハイブランドのブティックが複数オープンしている。この事実こそが、ライカ京都店の成功を証明しているのではないだろうか。およそ1,200年の歴史を持つ京都では、誕生100年のライカも「うちはまだ100年なので」と謙遜するが、いまだ現役の老舗カメラブランドとして、ますます輝き続けてほしい。

本誌:鈴木誠