特別企画

グループ写真展に挑戦しよう!

費用は? 会場選びは? 展示方法は?

写真展をやりたい、そう思う写真愛好家の方々も多いことだろう。写真を表現物と捉えるなら当然の想いであるし、いい写真が撮れたら誰しも人に見せたくなる。

しかしながら、1人で写真展をやるとなると何かとハードルは高く、費用も当然かかる。そこでおすすめなのが「グループ写真展」。

幾人かの写真仲間を募って写真展を開催すれば、1人が展示する写真の数は少なくなるものの費用は分担できるため、リーズナブルなものとなる。

今回、私が代表を務めさせていただいている「一期一会のダラダラ撮影会(仮称」が初めてのグループ写真展を開催した。ここでは、その準備から設営、撤収に至るまでをまとめてみたので、グループ写真展を考えている読者諸氏は参考にしていただければと思う。

Facebookで繋がる今風のグループ

まずはこのグループを簡単に紹介させていただく。グループを立ち上げたのは2年ほど前。スナップ撮影の好きな方々に声をかけ撮影会を開催し、その後不定期的に開催することに。

現在まで14回撮影会を開催し、そのなかにはモデルに同行してもらった撮影会も2回行っている。

当初、オールドカメラやオールドレンズでの撮影にこだわったところもあったが、現在では最新のカメラ、レンズを使うメンバーもいるなど、これと言った決まりはなく、また“マウンテンオヤジ”と呼ばれる類の薀蓄や好みを他人に押し付ける輩などもいない自由な雰囲気のグループとして活動している。

現在メンバーは13人。私を除けば、写真に関しては全員アマチュアである。なお、グループ内の情報交換、撮影会の案内などはFacebookのグループ機能を使っている。また、撮影会で撮影した画像もこのグループ機能を使い閲覧鑑賞できるようにしている。

今回グループ写真展を開催した「一期一会のダラダラ撮影会(仮称」のFacebookグループのページ。撮影会の案内や撮影した写真の発表などこのページで行っている。“秘密のページ”に設定しているので、メンバー以外は見ることができない。

そもそもグループ写真展をやろうと考えたのは、メンバーの意見によるところが大きい。個展経験者は私のみで、グループ写真展にしても数名が幾度か経験しているだけ。メンバーのほとんどは写真展未経験者である。

それゆえ写真展を開催したい、作品を人に見せたいという要望が強く、撮影会のあとの食事会などで度々話が出るようになってきていた。

結果、グループの取りまとめ役で、写真展をもっとも経験している筆者が中心になって開催することとなった。ちなみにグループ写真展開催のために動きだしたのが、2017年10月末である。

まずは会場と会期を決める

最初に決めなければならなかったのが、会場と会期。会場は値段、場所、広さなどから東京都中央区日本橋小伝馬町にある写真ギャラリー「アイアイエーギャラリー」を提案。開催日は準備期間などを考え2018年2月半ばを検討することにした。

ちなみに図書館のロビーなどで開催している写真展も見受けられるが、一般的な写真ギャラリーにくらべ照明など物足りなく感じられることが多い。近くに写真ギャラリーがない場合は致し方ないが、可能であれば写真を鑑賞するに少しでもよい条件の場所で開催したほうがよいように思う。

ギャラリーや開催日について異論はなく、会場は当初のとおりアイアイエーギャラリーに、会期はギャラリーと調整のうえ2018年2月13日(月曜)から2月18日(日曜)とした。

このギャラリーは、写真がメインのギャラリーである。カメラメーカーのギャラリーなどにくらべるとこぢんまりとしたものだが、それゆえ密度の高い展示ができるように思える。

アイアイエーギャラリー

なお、ギャラリーのレンタル料はギャラリースタッフが会期中終日在廊する場合9万7,200円(税込)、ギャラリースタッフが在廊せずメンバーが在廊する場合7万5,600円(税込)だが、少しでも費用を抑えたいことと、在廊する経験も大切と考えギャラリースタッフ在廊なしとした。

写真展に関する細かなメンバー間のやりとりなどその都度メンバーを集めたり、電話などで行うのではなく、先に紹介したFacebookのグループ機能を使ってディスカッションを行った。

Facebookグループ内に作成した「第1回ダラダラ撮影写真展」のイベントページ。このページを使い、写真展に関する情報のやりとりを参加メンバーで行った。

ギャラリーに合わせた展示方法

ギャラリーと会期が決まったことで、展示方法もメンバーに提案した。ギャラリーの展示できる壁面は3面。そのうち2面は繋がっている。

また、フレーム(額)も借りる必要があるが、ギャラリーが貸出しできるものは、18×22インチ(白枠)が12枚、半切サイズ(黒枠)が20枚とのこと。

検討した結果、フレームを全部借り、18×22インチは過去2回開催しているモデルの写真に使用し、ギャラリーの1面に展示、半切サイズはスナップ撮影会での写真とし、繋がっている2面に展示することにした。

ちなみに今回のグループ写真展の参加メンバーは私も含め9名。うち1人は諸事情によりモデルの写真1点のみの参加。そのためモデル用としている18×22インチのフレームの残り枚数は11枚。

スナップの半切サイズ20枚も含め、単純計算すればモデルとスナップ合わせて4枚展示の参加者が7名、同じく3枚展示が1名となる。

そこでメンバーにモデルの写真およびスナップの写真、それぞれ何点を展示したいか要望を出してもらい、同時に確認用として画像を送ってもらった。

その後メンバーとともに展示する写真の検討を行った。私たちのグループではすんなりと展示する写真は決まったが、グループによってはもっとも気を使うところかも知れない。

なお、できるだけメンバーに数多く展示してもらうことも考慮し、3枚での参加は経験の多い私とした。

ダイレクトメールのビジュアルに一工夫

会場、開催日、メンバー、展示する写真がほぼ決まったところで、写真展のタイトルとDM(ダイレクトメール)用のハガキの検討に入った。

タイトルは単純に「第1回ダラダラ撮影写真展」に決まった。ハガキはメンバーの1人がデザインを行ったが、こだわったのがハガキに使用するビジュアル。

メンバーの展示予定の作品か、それとは関係のない撮影会でのメンバーの様子のわかる写真、いずれかを検討しカンプ(仕上がり見本)を作成。最終的に決まったのは「ダラダラ」と被写体を求めて歩いていくメンバーの後ろ姿を捉えたものとなった。

すぐに印刷となったのだが、ここでトラブルが発生。画面の端にある文字が、ハガキの淵ギリギリとなって刷り上がってきたのである。すぐにこちらから入稿したデータと印刷会社の製版データを擦り合わせてみたのだが、何とフォーマットが異なっていたことが発覚。

すぐに入稿データを整え直して刷り直しを行った。ハガキは後々まで残るし、さらに1人歩きしてしまうので、文字のタイプミスも含め、間違いは是非とも避けなければならないものの1つだ。

最終的に印刷したハガキの枚数は1,000枚。そのうち500枚を写真展を開催するギャラリーに渡し、残りをメンバーで分けることにした。ハガキの印刷代は2,770円(税込)であった。

キャプションボードなども忘れずに

会場に飾る挨拶文と、写真それぞれのキャプションボードは年末年始の時間がある時に作成した。

挨拶文は私が書き起こし、それをFacebookのグループ機能でメンバーに確認してもらった。

キャプションボードの要素としては、撮影会のタイトル(この「一期一会のダラダラ撮影会(仮称」では、毎回撮影ごとにタイトルを付けている)、撮影会の開催日、カメラおよび交換レンズ名、撮影者名とした。

「タイトルは?」と思われるかも知れないが、すでに写真展自体のタイトルがあるわけだし、撮影会のタイトルもあるので、個々にタイトルを付けるのは無しとした。

また、グループ展で見かけることが多いが、撮影データやタイトルなど記したフライヤー(チラシ)を置いたり配ったりすることもしなかった。挨拶文とキャプションボードはウレタンボードに貼り付け展示することにした。

プリントはマットとのサイズ合わせに注意

作品のプリントはメンバーそれぞれで対応してもらった。A3ノビサイズに対応するプリンターを所有するメンバーは自宅で、知り合いなどが持っていればそこで行っている。

また、写真専門のラボやデザイナー御用達の出力センターでプリントを行ったメンバーもいた。そのため、ペーパーの風合いはさまざま。面白く思える反面、統一感がとれていないといえばとれていない。

ただ、次に書くようにメンバーによってはペーパーおよびプリントのサイズに手違いを生じさせてしまったのである。

額装に関しては、5mm厚のマット紙に窓を開け、写真を裏から貼り付ける方法とした。これは写真の額装としてはたいへんベーシックな方法である。

ただし、ここで大きな問題が。モデル用、スナップ用それぞれマットの窓サイズをメンバーに何度か伝えたのだが、一部のメンバーにはうまく伝わってなかったのである。

窓のサイズよりも小さいサイズのペーパーにプリントしてしまったメンバーや、ペーパーは窓よりも大きいもののプリントした写真は窓よりもはるかに小さくなってしまったメンバーがいたのである。

「窓のサイズが分かれば、各自最適なサイズのペーパーを選び、窓の大きさに合わせた印刷を皆行う」と思い込んでしまった私の失敗である。

額装は写真展開催直前の2月11日(日)にメンバー全員で行ったが、サイズの合わなかったメンバーはその後再プリントを行ってもらい、13日(火)の写真展初日には何とか間に合わせた。

なお、マット代は窓加工費も含めポートレート用が1枚986円(税込)、スナップ用が1枚867円(税込)、フレームのレンタル料はいずれも1枚500円(税込)であった。

設営は一苦労 十分な時間を見込んでおきたい

会場の設営には時間を要した。まずは3つある展示用の壁の前に額装した写真を並べ、レイアウトの検討を行う。

事前にLサイズほどにプリントした作品を並べて検討してもよかったのだが、今回はその場の雰囲気やメンバーの意見などを直接聞きながら、ぶっつけ本番で組んでみることにした。

設営の最初に額装の方法をメンバーに説明。
プリントとマットの位置を調整して仮止めする。
裏返してプリントをマットに貼り付けていく。
額装が完成した。

まずはスナップ編のレイアウトを検討。基本的には色味や絵柄などバランスよく配置するようにし、また縦位置と横位置のフレームがあるため、そのことも考慮して何度も写真の並びを確認しようやく決定。

実際に壁に額を当てて、高さや間隔などを決めておく。

次に、レーザーが出るデジタル水準器を使い水平線を壁面に映す。それをもとにフレームをかける釘を打っていく。この水準器はギャラリーで借りられる。最後にフレームを釘にかけていき、ようやく写真展の会場らしくなった。

同様にモデル編も設営。最後に挨拶文やキャプションボードなどを貼り、照明がうまく写真を照らすように調整し設営は完了した。

キャプションボードはピンで固定した。
今回はモデルへの紹介を記したボードも用意した。
展示に合わせて照明を調整するのも欠かせない。

ちなみに額装を開始したのが14時。設営が完了したのが19時ジャストであった。

2面を使用したスナップ編の展示の様子。このレイアウトになるまで1時間近くメンバー一同悩んだ。
こちらはスナップ編の対面に展示されたモデル編。スナップ編にくらべすっきりとした展示となった。

在廊者をどうするか?

写真展開催中のメンバー在廊については、平日は私も含め比較的時間のつくりやすい自営業者2人と、休みのとれた何人かの会社員で対応。土日についてはほぼメンバー全員で対応した。

私の経験上、ギャラリー内に出展した人間がたくさん居座っていると、来場者は気が引けてしまうことが多いが、今回は写真展未経験者が多く、在廊の経験をさせることも大切なミッションと捉えていたので、敢えて調整は行わなかった。

会期中は多くの来場者で賑わった。

在廊したメンバーもそのことはよくわかっていたようで、手の空いたメンバーは近所のコーヒーショップで休憩したり、ギャラリー周辺でブラブラとスナップ撮影など行っていた。

なお、撮影会のときのメンバーの様子を記録したオフショットアルバムをフォトブックでつくり会場に置いたが、多くの来場者から面白いと評価をいただくとともに、メンバーとの会話のきかっけにもなっていたようである。

写真展参加者の声

伊藤浩一さん

初めての写真展となります。これまでブログやSNSなどに写真をアップしていますが、写真を直接人に見せることの大切さや、そのための写真を撮る難しさのようなものを今回の写真展で知ることができました。見せる写真とでもいうのでしょうか、今後はそのような写真も撮っていきたいと考えています。もちろん写真展もまたやりたいですね。

伴和憲さん

写真展は初めです。A3ノビサイズに自分の写真をプリントしたのも初めてで何もかもが新鮮に感じられました。人に見せることがどんなにたいへんなことなのかよくわかりましたが、それが在廊中はよい緊張感にもなりました。機会があれば様々なグループ写真展に参加しようと思います。自分の写真活動にとって貴重でとてもいい経験になりました。

パーティーも開催

写真展といえばパーティがつきものだが、もちろん私たちのグループも開催した。ただし、初日ではなくメンバーが集まりやすい土曜日の夜とし、場所はギャラリーとした。

写真展最終日が翌日だったので、プレクロージングパーティと銘打って行った。

パーティにはメンバーのほか、展示した写真のモデルとなってくれた女性やメンバーと親しい人など少数が集まったが、それでも大いに盛り上がり、写真展を開催してよかったと誰しも思ったはずだ。

ちなみにパーティーでは酒やつまみなどは当初それぞれが持ち寄る予定でいたが、多くの方々から差し入れをいただき、それで賄うことができた。これについては感謝しかない。

パーティで出たゴミについては、今回使用したアイアイエーギャラリーの場合、写真展開催者が持ち帰る必要があり、翌日クルマで来たメンバーの1人に処理をお願いしている。

撤収は30分 あっという間

そして名残惜しい撤収だ。フレームを壁から外し、プリントとオーバーマットを抜いていく。さらにフレームを元箱に収納する。

また、壁に刺さった釘を抜くのも、挨拶文やキャプションボードなどの剥がすのも同時に進行。撤収作業は30分程度で完了した。設営にくらべればあっと言う間で、実にあっけない終了であった。

撤収が終わり、何もなくなったギャラリーの様子。写真展に参加したメンバー一同一抹の寂しさを覚えたが、この後何もなかったかのように打ち上げへ。

“写真展ロス”となるほどメンバーも今回の写真展に満足したようである。準備段階ではいろいろ面倒な調整も必要だし、額装や設営は思いの外手間と時間を必要とする。

しかしながら、実際写真展を開催すると多くの方々に見てもらえ、直接評価もいただける。これは写真愛好家にとって至福の時と言えるものだろう。最終的な来場者は143名に上った。

今回、グループ写真展のスタートから準備、額装・設営、撤収までを簡単に紹介したが、これを参考にぜひ親しい仲間たちとグループ写真展を開催し、至福の時を過ごしていただければと思う。

グループ写真展にかかった費用(プリント代除く)

協力:アイアイエーギャラリー

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。