特別企画

新「Lightroom CC」は何がどう変わったのか

そしてLightroom Classic CCとの違いは?

アドビシステムズが開発する写真管理ソフト「Photoshop Lightroom」が大きく変わった。従来のソフトは「Photoshop Lightroom Classic CC」と名称を変更し、新たに「Photoshop Lightroom CC」(以下新Lightroom CC)が追加された。何が変わり、何が新しくなったのか。

全く新しいソフトとなったLightroom CC(新Lightroom CC)。
従来のLightroom CC(旧Lightroom CC)は、Lightroom Classic CCへと移行した。

Lightroomは、アドビが写真管理と写真現像に特化して開発するソフトだ。初代Lightroomの登場は2007年で今年がちょうど10年目にあたり、その間、バージョン6までリリースされた。

2012年まではパッケージ販売だったが、2013年からサブスクリプション方式の販売方法が追加され、WebサービスのCreative Cloudとの同期機能が提供された。2015年からLightroom CC(以下、旧Lightroom CC)が登場。

2015年にはiOS/Android向けのモバイル版Lightroomも提供されており、そして今回、2015年以来の大型アップデートを伴い世に出たのが、新Lightroom CCとLightroom Classic CCだ。

クラウドベースになり生まれ変わった「Lightroom CC」

新Lightroom CCは、以前は「Project Nimbus」と呼ばれていたフォトレタッチサービスのプロトタイプが原型。従来のLightroom CCとは根本的に考え方の異なるソフトだ。

新Lightroom CCの大きな特徴は画像管理方法だ。Lightroom Classic CCでは、従来通り画像を取り込んだらローカルの指定したフォルダ内に保存され、カタログファイルで管理をする。画像はすべてローカルで管理されるのがLightroom Classic CCであり、この基本は旧Lightroom CCと基本的に変わりはない。

それに対して新Lightroom CCは、画像の保管先がクラウドになる。画像を取り込むと、すべてクラウドにアップロードされ、ローカルにはスマートプレビューが保管される。ローカル側に画像本体が残らない、というのが大きな特徴だ。

Lightroom CCのストレージ設定。基本的に保存されるのはクラウドだが、ローカルへの保存も可能。

画像がクラウドにアップロードされるメリットは、ほかのデバイスでも同じ画像が利用できるようになること。PCアプリ、スマートフォンアプリ、Webブラウザアプリの3種類から元画像にアクセスすることができるため、それぞれの環境でまったく同じ画像を扱うことが可能だ。

新Lightroom CCではクラウド側に元画像が保存され、ローカルにはスマートプレビューのみが残る。

一方Lightroom Classicの場合、クラウドにアップロードするとスマートプレビューのみになる。

これまでも、スマートフォン向けのLightroomアプリやWeb版Lightroomは共通化していたし、旧Lightroom CCでも、クラウドへのアップロード機能は搭載されていた。ただし、Lightroom Classic CCからはスマートプレビューのみのアップロードしかできないのに対し、Lightroom CCではさらに押し進めて、PCでもクラウドに元画像の同期を基本にして、ローカルに保管しないという仕組みになっている。

アップロードされた画像はクラウドに保存され、編集時などに同期される。

Lightroom Classic CCは従来通り、クラウドの画像をローカルの指定フォルダに自動でダウンロードする機能も備えているので、新Lightroom CCで外出先のPCに画像を取り込んでおけば、メインPCのLightroom Classic CCに自動的にダウンロードされ、指定フォルダに保存される。今まで通りローカルで画像管理を行い、NASなどにバックアップする、という使い方も可能。RAWをそのまま同期できるので、従来よりも使いやすくなったはずだ。

スマートプレビューは画像表示に使われるが、等倍表示にしようとしたり、編集作業をしたりしようとすると、自動的にダウンロードが行われる。設定ですべての画像をローカルに保存することもできるが、デフォルトでは元画像は基本的に保管されない。編集作業後は、指定したファイル容量を超えたら順次ローカルの元画像は消去されるようだ。

Lightroom CCは、基本的にLightroom Classicと同じように画像を扱うことができる。対応フォーマットも同じだし、最新の現像処理バージョン4に追随しているようだ。現像も基本機能は変わらない。

修復ブラシ、線形グラデーションといったように両者で微妙に機能名が違うが、できることは修正ブラシや段階フィルターと同様。Uprightやプリセットといった機能も新Lightroom CCで利用可能だ。

新Lightroom CC
Lightroom Classic CC

基本的な現像機能は搭載されているが、完全に同等とは言えないし、本気で補正をしようと思ったらLightroom Classic CCの方が機能は上だ。それでも、基本的な補正だったら問題はないだろう。

個人的に気になったのが、一度適用した補正内容をコピーして、ほかの画像にも適用する機能。Lightroom Classic CCではサムネイル表示で補正内容をコピーして、複数画像を選択して一気に適用できるのだが、新Lightroom CCはいったん編集画面にならないと補正内容コピーができないし、複数画像を張り付けてペーストすることもできない。この辺りはちょっと不便だ。

新Lightroom CCの画像管理では、Lightroom Classic CCにもあるフラグやスターの設定が可能。キーワードにも対応しており、Lightroom Classicと新Lightroom CCで共通化している……はずなのだが、どうも動作が安定しない。確認したところ、キーワードを設定しても同期される画像とされない画像があって、現時点でその違いが把握できていない。アドビによればキーワード同期されるはずということなので、何らかの原因があるのだろう。ただし、いずれにしても新Lightroom CCではキーワードの階層化はできないようだ。

フラグやスターの設定、カメラなどでの絞り込みなども可能。

日付やアルバムでの管理も可能。

管理機能での最大の特徴はAdobe Senseiを使った検索機能だ。機械学習を使ったAdobe Senseiは、画像を自動で解析してテキストでの検索を可能にする。従来のようにキーワードを設定しなくても、画像をアップロードするだけで画像が検索できるわけだ。

キーワードが同期されていない例。こちらは新Lightroom CC。
Lightroom Classic CCにはキーワードが設定されている。

検索できるのは、「人」や「花」、「猫」など、さまざまなキーワード。いちいちタグ付けを自分でしなくてもいいので便利だ。「人」で検索すると1人の写真、「人々」で検索すると複数人が写った写真が検索されるといった具合になかなかのものだ。精度は、時々おかしな写真も検索されるが、かなり優秀に感じた。

ただし執筆時、PC版の新Lightroom CCだと日本語の検索ができない。別のタイミングでは検索できたので、ちょっと原因が分からないが、Web版、スマートフォン版ではいずれも日本語検索が可能なので、何らかの問題が発生しているのかもしれない。ちなみに、検索はオンライン状態でないと利用できない。

Addobe Senseiを使った検索。ただし、なぜか「dog」などの英語検索はできたが、現段階では日本語での検索はできなかった
PCアプリの新Lightroom CCで検索できなかった例。
Web版では問題なく検索できている。
スマートフォン版でも同様。

旧版を引き継ぎ強化した「Lightroom Classic CC」

一見すると旧Lightroom CCから何も変わっていなLightroom Classic CCだが、パフォーマンスの向上が図られている。読み込み、プレビュー作成、ライブラリから現像へのモジュール移動のスピードが速くなっているという。

また、段階フィルターなどの部分選択ブラシで、範囲マスクでカラーと輝度の設定が可能になるなど、より詳細な設定が可能になった。

指定した輝度やカラーのみ補正を適用する範囲マスクが搭載さえている。

結局、どちらを使えばいいのか

まとめると、新Lightroom CCは、クラウドベースの写真管理・編集サービスで、そのフロントエンドとしてPCやスマートフォン、Web向けのアプリが用意されている、といっていいだろう。写真の実体はクラウドにあり、それをPCやスマートフォンでアクセスして管理・編集する、という使い方になる。

そのため、大前提としてクラウドサービスのCreative Cloudの利用は必須になる。従来のフォトプランは、Lightroom Classic/CC、Photoshop CCが利用でき、ストレージ容量は20GB。月額は980円(税別、以下同)だ。ストレージ容量を1TBにしたプランもあり、こちらは月額1,980円。新たに、Lightroom CCだけが利用可能で、1TBのストレージがついたLightroom CCプランも追加されており、こちらは月額980円だ。

容量の追加も可能だが、基本的には限られた容量になるため、大量の画像や動画のデータを管理しているユーザーだとクラウドへの完全移行は難しいだろう。その場合は、Lightroom Classic CCでローカルにおける画像管理を継続し、外出先での撮影や現在進行中のプロジェクトだけを新Lightroom CCに保存するようにすればいいだろう。そうすれば、複数のデバイスで同じ画像を扱えるし、すでに画像はクラウドにあるので、客先への提出も共有機能を使えば簡単に行える。

最新の写真は新Lightroom CCでPCに取り込み、作業を行う。設定しておけばLightroom Classic CCには(起動しておけば)自動で取り込みが行われるので、細かい修正やローカルへのバックアップを行って、最終的にプロジェクトや作業が終わったら新Lightroom CC側の画像を削除すれば、ローカル側の画像は削除されない。

新Lightroom CCとLightroom Classic CCは、同じLightroomだが画像の管理方法で大きな違いがある。アドビによれば、Lightroom Classic CCも開発は継続するとしており、どちらか一方というよりも併用する方が便利に使えそうだ。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。