特別企画
iPhone 7 Plusのカメラ機能を撮って出しでチェック
安定の絵作りに加え、デュアルカメラ化で広がる守備範囲
2016年9月29日 08:44
2016年9月16日に発売されたアップルのスマートフォン「iPhone 7」シリーズ。今回も先代同様にディスプレイサイズによって4.7インチのiPhone 7、5.5インチのiPhone 7 Plusという2ラインナップとなった。
特に注目を集めているのがデュアルカメラを搭載したiPhone 7 Plusだ。
デュアルカメラを搭載する7 Plus
iPhone 7 Plusのカメラ部分を見てみよう。ボディ外側に位置するのがF1.8の広角レンズで、その内側にF2.8の望遠レンズが搭載されている(それぞれの呼称はアップルの表記に従っている)。
iPhone 7(左)はiPhone 7 Plus(右)と異なり、シングルレンズとなっている。
iPhone 6s Plusとの比較。
EXIF情報を見ると、焦点距離は広角レンズが3.99mm(35mm判換算28mm相当)、望遠レンズは6.6mm(35mm判換算57mm相当)となっていて、それぞれ12メガピクセル(4,032×3,024)という出力サイズだ。
広角レンズはiPhone 6s、6s Plus、iPhone SEの29mm相当から28mm相当へと若干ワイド化されているが、これはPlusではないiPhone 7も同様である。
iPhone 7 Plusのデュアルカメラをアップルは「2倍光学ズーム」と呼んでいるが、広角レンズと望遠レンズの間と、望遠レンズ以遠は最大10倍のデジタルズームとなるので、広角レンズと標準レンズの二眼カメラ+デジタルズーム、と呼んだ方が正しい。
カラーは艶のあるジェットブラックが大人気で入手難だが、撮影者の観点からすると、普通のブラックもオススメだ。目立たないのとガラスなどに写り込む心配が少ないからである。
また大容量の256GBモデルの登場も見逃せない。ロケ先などでデジタルカメラのバックアップを取るのにも向いているからだ。
広角レンズと望遠レンズの切替はカンタン。ディスプレイに表示される「1x」と書かれた丸いアイコンを指先でタップすれば「2x」と瞬時に切り替わる。戻したい場合も同様だ。
ズームしたい場合は丸いアイコンを横にドラッグすればデジタルズームに移行する。とてもスムーズに任意の位置でストップできるので撮影しやすい(ピンチインとアウトでも可能だ)。
「1.9x」と「2.0x」の間は広角レンズと望遠レンズの切り替え位置なので、ディスプレイを見ているとカクッとカメラがスイッチするのがわかる。
ただ2x以遠が必ずしも望遠レンズを使わないところが面白い。なぜなら光学式手ブレ補正機能が広角レンズにしか搭載されていないため、暗い場所などではF値が2.8の望遠レンズを使わず、明るいF1.8の広角レンズのデジタルズームで撮影することがあるのだ。ここら辺の思想がカメラメーカーと違って面白いところである。
また近接撮影時でも最短撮影距離に有利な広角レンズを使うようだ。またiOS10からセルフィーモードとフィルターボタンの位置が入れ替わっているが、それ以外に撮影メニューと方法に変更はない。
iPhone 6s Plusと比較
では広角レンズと望遠レンズ、そしてデジタルズーム時の写りを見てみよう。
広角レンズ
iPhone 7 Plusの描写はiPhone 6s Plusより向上している。発色はやや記憶色に振られた印象で、全体的に暖色よりになっている。またハイライトの粘りが増し、ヌケがいい感じがする。ノイズも全体的に減っており、低照度下での写りも期待できそうだ。また若干ワイドになっているのもわかるだろう。
最大デジタルズーム時
iPhone 7 Plusは284mm相当、iPhone 6s Plusは146mm相当までデジタルズームが可能だ。iPhone 7 Plusは、望遠レンズからのデジタルズームとなる。画質、利便性ともiPhone 7 Plusの圧勝だ。
ポートレート
ポン!と望遠レンズに切り替えられるということで被写体として考えられるのがポートレートだ。今まではパースがつくのを承知で撮影するか、ExoLensのようなコンバージョンレンズを使用していたが、iPhone 7 Plusなら57mm相当で撮影が楽しめるようになる。
しかも今後、ソフトウェアでボケを演出できる「ポートレートモード」の提供も予定されているので大いに期待したい。
裏原宿の路地でモデルに立ってもらい広角レンズで撮影。瞳から肌の調子、髪の毛までしっかりとした写りだ。洋服のディテールもいい。F1.8になって背景のボケ量もやや増えた。
同じ立ち位置から望遠レンズで撮影。デジタルズームとは違って、さすがにしっかりと写る。背景の電球もきれいな玉ボケになっているのがわかる。
広角レンズでは背景を取り込んだ状況説明的なカットを撮り、望遠レンズではモデルに寄ってグラビアのような写真を撮ることが可能だ。これが1タップで瞬時に切り替えられるのがいい。撮影のリズムを壊さないからである。
スキントーンの階調とハイライトの粘りが向上したので、iPhoneographyのレタッチベースとしても好感が持てる。Snapseedで加工したところ、アナログさを出しつつイメージどおりの仕上がりにできた。
スナップ
水辺の風景を広角レンズで。シャッターボタンを押しただけで、見た目そのままにしっかりと撮影できた。ここがこのiPhoneのいいところだ。
アップルのWebサイトにあるムービーで説明されているように、シーンを解析してヒトが心地よいと感じる写真をうまく作り出している。
露出補正したい場合は、ディスプレイをタップして現れる太陽アイコンを上下すれば自在にコントールできるし、長押しでAE/AFロックできるのは変わっていない。
小雨降る代官山のシーンを望遠レンズで。iPhone 7 Plusは車体についた細かい雨粒もしっかりと写しとった。建物のディテールもまずまずの描写だ。
iPhone 7とiPhone 7 Plus、どちらがいいかと聞かれれば、やはりワンタッチでレンズをチェンジできるiPhone 7 Plusがオススメだ。便利だし楽しい。
低照度下の写りが良くなったのも嬉しい。建物の立体感もさることながら、雲の感じまでよく写っている。明るくなったレンズと手ブレ補正機能の効果だろう。
暗い場所だけでなく、防塵防滴構造になり撮影できるフィールドが拡大したのは歓迎したい。
セルフィー(自分撮り)
5メガから7メガピクセル化されたインカメラはやや画角が狭くなった。iPhone 6s Plusが2.65mm(31mm相当)なのに対し、iPhone 7 Plusは2.87mm(32mm相当)になっている。開放F値はどちらもF2.2。
発色がやや暖色系になり、同時にスキントーンの描写が向上している印象だ。モデルに試してもらったが、画角の変化による影響は特にないようだ。
まとめ
コンパクトデジタルカメラの市場を奪ったスマートフォン。その中の代表格、アップルiPhoneシリーズは新製品が出るたびに、カメラ機能や画質が話題を呼ぶ。その理由はやはりカンタンに美しい写真が誰でもシャッターを押すだけで手に入るからだろう。
今回はそれらに磨きをかけた上に、デュアルカメラの搭載やRAW対応、広色域ディスプレイなど、ますますコンパクトデジタルカメラの生息範囲を狭めていきそうだ。
アップデートで搭載されるボケを実現する機能も楽しみだし、RAW対応、レンズ切り替えなど、様々な機能を拡張するアプリが続々と登場してきている。iPhone 7シリーズはどんどんと進化するデジタルカメラなのである。
モデル:高実茉衣