SIGMA EF-Mレンズ連続レビュー

「EOS Kiss M × SIGMA」で撮る “大口径標準” 街中スナップ

SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporaryが描く クリスマスシーズンのきらめき

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/100秒・F1.4・+1.7EV) / ISO 200

シグマからこの秋発売された3本のレンズは、いずれもキヤノンEF-Mマウントを採用しています。

SIGMA 16mm F1.4 DC DN|Contemporary
SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary
SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary

左からSIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary、SIGMA 30mm F1.4 DC DN、SIGMA 56mm F1.4 DC DN。

意外なことに、シグマがEF-Mマウントのレンズを発売するのはこれが初めて。いずれも軽量でコンパクトなため、EOS Kiss MなどEOS Mシリーズのカメラボディにマッチしそうなレンズです。

そんな3本の魅力を引き出すため、デジカメ Watchではそれぞれのレンズについて、女性写真家にレビューをお願いしました。

第2回目の今回は、大口径の単焦点標準レンズ「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」を福井麻衣子さんに撮ってもらいました。クリスマスシーズンにふさわしい、華やかで可愛らしい作例の数々を、福井さんはどうやって撮ったのでしょうか。(編集部)

福井麻衣子

大阪府出身。現在東京を拠点とする。写真家・内池秀人氏に師事、現在フリーランスフォトグラファー。人・ライフスタイル・旅の撮影を軸とし、雑誌・広告を中心に、カメラ誌・書籍への執筆、展示など様々な分野で活動中。カメラメーカーのカタログへの作品提供も。「日々の小さな感動を糧に」きらりと光る瞬間や、その時の空気やにおいまで写したい、という想いを大切に写真を撮っている。

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SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
EOS Kiss Mに装着したところ

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このレンズの画質は?

コンパクトなのに開放F値F1.4の明るさを持つ本格的な大口径レンズ、というのが特徴の「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」。手にした印象もとてもスマート。F1.4の世界は一度使えばやみつきになってしまうのではないでしょうか。

明るいレンズといえば大きなボケですが、このレンズは素直でやわらかいボケを作り出します。後ろを大きくぼかす、はたまた前ボケを使う、といったボケの楽しさも、キラキラのきれいなまんまる玉ボケも楽しめました。

もちろん絞った時のシャープな写りもとても良かったです。隅々まで歪曲も少なくきれいだなぁと感じました。

大きさ・重さはいかがですか?

開放F値1.4という大口径レンズですが、APS-Cセンサー用のEF-Mマウントということもありとても軽くてコンパクトだなという印象です。EOS Kiss Mとのバランスもとても良かったです。

普段の撮影業務では、ほとんどのシーンでフルサイズセンサーを搭載するカメラボディを使用しますが、実はプライベートでのお出かけでは「ほいっ」と鞄に入れて持ち歩ける、小型のミラーレス機に単焦点レンズを付けて出かけることばかりです。日常では、連れて歩くのに負担にならない方がカメラを持ち出す機会も増え、撮りたい時にすぐ撮れるからです。

そんなときこそコンパクトな単焦点レンズは強い味方です。写りも良くてきれいにぼけて、といいことづくめ。機材が限定されることで見えてくる世界や工夫もあります。

今回も普段通り、カメラバックではない鞄の中にふわふわのクッション巾着に入れ持ち歩きました。

画角と明るさについて

カメラを楽しんでいる方にぜひ1本は持っておいていただきたいのが、35mm判換算で焦点距離50mm前後の「標準レンズ」。自身が動くことで様々な絵を作ることができる、上達への第一歩のレンズだと思っています。

大きく背景を取り入れたかのような引きの世界も、ズームアップされた寄りの世界も「自分で動いて作る」のが醍醐味です。被写体との距離感覚を覚えることもできます。

それに加えてF1.4という大きなボケが得られる開放絞りで見えてくる世界は、今まで体験したことがなかった方にはなかなかの感動があると思います。肉眼で見るのとは全く違う世界を表現できるからです。

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例えばこの作品のように、奥行きとボケを活かすことで、広角レンズのようなダイナミックな表現ができます。近づいて斜めに撮ることで手前から奥への表現が強調され、ボケがそれを強めています。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/100秒・F1.4・+1.7EV) / ISO 200

被写体までの距離を自分の足で調整することで、このような表現ができるのも単焦点レンズの楽しさの一つ。この時のカモメは近づきすぎるとすぐ逃げてしまったので、どこまで近づけるか、怖がらせないようにそ〜〜っと近づき撮影しました。ズームレンズをズームして撮るのとはまた違った楽しみがあるのです。

このレンズでどんな作品を撮りましたか?

たまたま関西方面への出張がありましたので、神戸メリケンパーク付近や、大阪・梅田スカイビルのクリスマーケットを訪れました。クリスマス時期ならではの場所や、ちょっとレトロな雰囲気や光を求めて歩いてます。

今回はすべての作品でRAW現像ではなく、JPEGで撮影したものを使用しています。撮影しているその場で「ホワイトバランス」「ホワイトバランス補正」「コントラスト」「彩度」を調整しました。ここまで作り込んでおけばそのままでも素敵だし、さらに手を入れたい時もベースができているので楽チンです。

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神戸といえばポートタワー! 何度も撮っているのですが、近くまで来るとつい撮ってしまいます。ランドマークもお天気や時間などで色々と表情が変わるので、いつ撮っても楽しい。今回は薄曇りでしたが、空を大胆に入れてぽつんとしたポートタワーを表現。絞りはF5.6でスッキリと。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/400秒・F5.6・+2.3EV) / ISO 400

北野を歩いている時に見つけた素敵な影。開放F1.4で柵を大胆にぼかし、奥行き感と主題への目線の誘導を意識しました。爽やかな印象になるための露出補正は大胆に行なっています。きれいな光と陰を見つけるといつでも嬉しくなります。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/1,250秒・F1.4・+2.0EV) / ISO 100

こちらも散歩中に見つけた可愛らしいショーウィンドウ。絞り開放だとゆる過ぎるかなぁと思いF2まで絞って撮影。ここも光がきれいだったので柔らかい光を活かせるアングルを探しました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/1,250秒・F2.0・+1.0EV) / ISO 100

シャッターを切るとき、頭の中で言葉を組み立ててみると自分が何に感動したのかより明快になります。今回は「レトロな黄色い車止めがちょっと寂しそうに冬の海のきらめきを見つめている感じ」。そうすると自然とピント位置や最適な絞り、構図も定まってきます。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/4,000秒・F1.8・+1.7EV) / ISO 400

一休みしたカフェのアートなスムージー。一つずつ手作業で模様を描いてくれて、繊細でキュートで感動。このレンズの画角だと席に座ったままでも、いい感じの距離感で撮れるので便利です。グラス以外は大胆にぼかして余計な情報は入れず被写体を引き立てました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/250秒・F1.8・+0.7EV) / ISO 200

青い看板に映り込んだ、懐かしいビルの景色。こういう景色も大好きで良く撮っています。写り込んだ景色に注目したいので看板のロゴはしっかりぼかして。写り込んだ景色へのオートフォーカスも正確でした。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/40秒・F1.8・+1.0EV) / ISO 125

可愛らしい看板を思いきったホワイトバランスの調整でより素敵に。しっかりぼかしてもピント面はシャープなので、安心しできます。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/320秒・F1.4・+2.0EV) / ISO 100

きらきらとした逆光が美しかったこのシーン。思いっきり太陽の光を受けるシーンですが、軽いフレアも可愛らしく逆光の良いところを活かし撮影できました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/1,000秒・F1.4・+2.3EV) / ISO 100

地下道で見つけた、印象的な壁面のオブジェ。ぼかさないほうがそのものの良さが出そうだったのでF9まで絞りました。アクリルのシャープさがしっかり際立ち印象的な描写になりました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/20秒・F9.0・+1.7EV) / ISO 125

絵本に出てきそうな小さなお店たちは、クリスマスマーケットの好きなところの一つ。素直なまっすぐさを活かした構図で、賑わう人々は1/30秒でぶらしつつ、暖かさやワクワクを感じられるように。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/30秒・F2.0・+1.3EV) / ISO 100

とても素敵だった真っ白なツリーとお願いごとの星形カード。きらきらの丸ボケがたくさん入る場所を選び、ハイトーンでまとめました。幻想的なホワイトクリスマスなイメージになるようにこだわってます。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/200秒・F1.4・+2.0EV) / ISO 800

毎年ドイツからやってくる120年の歴史を持つ手作りのアンティーク・メリーゴーランド。細部までうっとりしてしまうメリーゴーランドの一部をアップで切り取りました。周囲のレトロな街灯を前ボケとして配置して今から乗ろうかな? というワクワク感をイメージ。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/200秒・F1.4・+1.7EV) / ISO 2500

空中庭園の中で開催されていたphotospotのアートなイルミネーション。様々な色のライトが本当にフォトジェニック! 絞りを開けて、カメラをのぞくと面白い瞬間が沢山ありました。こんなに色とりどりですが、目立つ色滲みもほとんどなく素直な写り。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/50秒・F1.8・+0.7EV) / ISO 800

屋根の下にハートを発見! 後ろのツリーの点滅のタイミングを見ながら一番華やかな瞬間を狙いました。明るいレンズなので、夜のシーンもシャッタースピードの心配なく撮影できます。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/250秒・F1.4・+0.7EV) / ISO 1250

定番のクリスマスの装飾は、前ボケ&後ろの丸ボケを活かしてとにかくキラキラに。いいボケを得るために壁に貼りつくような体勢で撮影をしています。実は後ろにLEDのコードが見えていたのですが、大きなボケでほとんど目立たなくなりました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/40秒・F1.4・+2.0EV) / ISO 2000

帰るのが寂しいな〜〜と思っている所です。窓辺のサンタさんにピントを置いて、後ろの人々は大きくぼかして。サンタさんに私の哀愁感を担当していただきました。

EOS Kiss M / 30mm F1.4 DC DN / 絞り優先AE(1/100秒・F1.4・+1.0EV) / ISO 1250

まとめ

個人的にシグマのレンズはメーカー純正には無い画角があったりするのでいくつか保有しています。しかし、EF-Mマウントのレンズを使うのは初めてでした。

コンパクトでよく写るこのレンズは、シグマらしい写りの良さはそのままに、ボケはやわらかく、ピント面はきっちりシャープ。1本で、太陽がきれいな昼間も、イルミネーションが素敵な夜間もしっかり撮影を楽しむことができました。

前ボケや写りこみを活かした撮影が好きで今回も多用していますが、オートフォーカスは迷いなくしっかり動き、開放近い絞りでもしっかりとピントを合わせてくれました。

48mmという標準的な画角は、初めての単焦点レンズを買おうと悩んでいらっしゃる方の候補にもぴったりだなと感じます。F1.4と大口径で、本格的できれいな写りですが少し頑張れば手に入れられる価格も魅力的です。

レンズ1本で1日撮影を行うのは、自分が動くしかないので写真の上達の良い特訓にもなります。仕事の撮影では色々と持って行くのですが、自分が本気でスナップするぞ! という時は単焦点1本だけ、という事も多いです。

それはちょっと横に置いておいて。

明るい大口径レンズは写真ライフをとても楽しくしてくれる相棒のようだなと思っているのでまだ未体験の皆さんには一度その写りを体験して頂きたいなと思います。

EF-Mマウントをお使いの方には、その候補になるレンズが増えてすごくいいな、と感じました。

制作協力:株式会社シグマ
撮影協力:スカイビルクリスマスマーケット(梅田スカイビル)
機材撮影:武石修

福井麻衣子