SIGMA EF-Mレンズ連続レビュー
「EOS Kiss M × SIGMA」で撮る“広角単焦点”鎌倉スナップ
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryが描く冬のおとずれ
2019年11月28日 12:45
シグマからこの秋発売された3本のレンズは、いずれもキヤノンEF-Mマウントを採用しています。
・SIGMA 16mm F1.4 DC DN
・SIGMA 30mm F1.4 DC DN|Contemporary
・SIGMA 56mm F1.4 DC DN|Contemporary
意外なことに、シグマがEF-Mマウントのレンズを発売するのはこれが初めて。いずれも軽量でコンパクトなため、EOS Kiss MなどEOS Mシリーズのカメラボディにマッチしそう。
そんな3本のレンズの魅力を引き出すため、デジカメ Watchではそれぞれのレンズについて、女性写真家にレビューをお願いしました。
第1回目は鈴木さや香さんに、広角単焦点レンズ「SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary」をとりあげてもらいました。35mm判換算で焦点距離25.6mm相当となるこのレンズ、鈴木さんはどのような印象を持ったのでしょうか。(編集部)
鈴木さや香
日常でつい空白になってしまう部分に、やわらかく焦点をあてた写真作品を撮る写真家。フォトエッセイは「かまくらかたおもい」が鎌倉観光協会HPにて連載中。各メーカーや自治体、大手写真館などで講演やワークショップなどを多数行う。
このレンズの特徴は?
キヤノンの純正EF-Mレンズにはない焦点距離16mm(35mm判換算で25.6mm相当)のF1.4のレンズには、風景や情景をスナップするのにちょうどよい画角が備わっています。さらに最短撮影距離が25cmと短いので、「もう少し引いて目の前の光景を入れられたら」「もうすこし寄りたいのだけど」といった、撮影していて感じる“あと少し”をカバーしてくれます。
さらにF値の明るい大口径レンズなので、ボケ方がやわらかくとても綺麗です。普段ズームレンズを使用されている方は、単焦点レンズのボケを見てしまうと一味ちがう喜びを感じられるのではないでしょうか?
サイズについては、「EOS Kiss M」につけるにはちょっと大きいのかな? と感じていましたが、撮影しているうちに全く気にならなくなりました。サードパーティー製ではあるものの、EOS Kiss Mボディにつけたときに違和感のないマットな表面仕上げにも好感が持てます。
さて、単焦点レンズの一番の楽しみ方は、自分と被写体との距離感が如実に出るところにあると思います。撮れる範囲が限られるので、好きなものには近寄り、傍観したいものは遠目で撮る。そして、無理に近づくのではなく、無理なものはあきらめるという楽しみ方が、写真を見返したときにもはっきり現れます。いっぱい頭をつかって発想するので、写真の上達に無くてはならないのが、単焦点レンズです。
大きさ・重さはいかがですか?
写真の上達には続けることが一番です。自分に合った機材選びをするときに、自分の体に負担が少ない軽量なものを選ぶことは、実はとっても重要です。出かける時にカメラ以外の荷物もある場合、持っていけるものを選択しなくてはなりません。そんなとき、大きなレンズだったらちょっと億劫になってしまうこともあります。
SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryの重量は約405g。EOS KissS Mのボディは約387g。合わせても800g足らず。缶ジュース2本とすこし、という感じです。これなら、いろんなところに持っていけそうですね。
キヤノン純正レンズと違うところは?
このレンズは最近のシグマレンズと同じように、キヤノン製カメラボディのカメラ内収差補正に対応しています。そのため、ゆがみや収差はすくなく感じます。
また、絞り開放で撮影すると、空抜けの細かな部分などにやや色モアレやパープルフリンジが現れますが、これもキヤノン純正のRAW現像ソフト、「Digital Photo Professional(DPP)」を使うことで修正できます。
AFを動かすステッピングモーターは、スムーズなオートフォーカスが求められる動画撮影を踏まえて搭載されたものです。動画でなく静止画でも、オートフォーカスは静かで素早い印象です。
このレンズでどんな作品を撮りましたか?
さて、今回、キヤノンのEF-Mマウント用のレンズにはない焦点距離16mm(25.6mm相当)F1.4のレンズで鎌倉や江ノ島を歩きながら、1本のレンズでどのくらい自分が満足できるかを試してみました。すでに7本のEF-Mレンズを使用している私が、このレンズのどこに物足りなさを感じるか、どこが満たされるか。
実はとてもいい世界が見えました。ゆっくりとした時間のなかで、真っ白い波や、秋を感じる草花と向き合いながら自分を満たす楽しい時間の写真を見ていただきたいです。
まとめ:被写体にしっかり向き合いたくなるレンズ
EOS Mシリーズのユーザーのみなさんは、「シグマ」というブランド名を聞いてあまりピンとこないかもしれせん。
けれども今回のSIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporaryは、どこかかゆいところに手が届く感じがしました。軽快でカメラとの相性も抜群です。使っていて違和感などを特に感じないスマートなデザインと、きれいな描画力です。
今まで広角レンズは苦手であまり使わなかったという方、F値の明るいレンズが高価で手が出なかったという方、(私のように)シグマがノーマークだった方は、ぜひ一度つかってみてほしいなと思います。
レンズフードをつけると大きく感じますが、実際このレンズ1本でお散歩できるので、他のレンズを持ち歩かないですみます。
実は掲載したすべての作例でレンズフードをつけていません。レンズフードがあると、光の最高なところを逃してしまう気がするからです。
でも、それでも、見ていただいたとおりです。さあ、これからもっと寒くなり光の粒子が輝く冬の空気がはじまります。それが終わればふわっとやさしい桜の季節を、ぜひこの1本でたのしんでみてください^^
比較的、わたしは傍観したり距離をおいたりしてスナップする方でした。けれども、広角で被写体に近寄れてやわらかい雰囲気のこのレンズは、今までよりもなんだか積極的にさせてくれるレンズだなと感じました。もっと仲良くしようと思います。
制作協力:株式会社シグマ
機材撮影:武石修