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SIGMA 24mm F2 DG DN|C & 90mm F2.8 DG DN|C

“Iシリーズ”のデザインアプローチを実機で確かめる

24mm F2 DG DN|Contemporaryをα7R IVに装着した状態

シグマは9月9日、YouTubeを通じてライブ配信した「SIGMA STAGE ONLINE」で35mm判フルサイズミラーレスカメラ用の交換レンズ「I」シリーズの拡充を発表した。製品概要は既報のとおりだが、このほど実機を手にする機会を得た。Eマウント用をα7R IVに装着してサイズ感などを確かめていった。Iシリーズの特徴的なデザインアプローチとともに感触をお伝えしていきたい。

Iシリーズは合計6本に

Iシリーズのスタートは、2020年12月に35mm判フルサイズミラーレスカメラ用として発表されたContemporaryラインのレンズ3本に遡る。今回の配信と同じように、12月1日にYouTubeを通じてライブで配信。24mm F3.5 DG DN、35mm F2 DG DN、65mm F2 DG DNと、SIGMA fpとともに登場した45mm F2.8 DG DNを加えた計4本に新しく「Iシリーズ」という呼称を与えるとの発表がなされた。同シリーズの代名詞ともいえる「ビルドクオリティ」の追求もこの発表で強調されたことが記憶に新しい。

同シリーズのポイントは、コンパクトであること、優れた光学性能を有すること、そして優れたビルドクオリティを有していることの3点にある。これらを兼ね備えたレンズシリーズとすること、がシリーズ出発にあたって語られた方針だった。

今回、同シリーズに追加された2本(24mm F2 DG DNと90mm F2.8 DG DN。いずれもContemporaryライン)もそうしたコンセプトに沿って開発されている。配信中で同社代表取締役社長の山木和人氏はIシリーズレンズについて「ぜひ複数本を使ってみてほしい」とコメント。軽量・コンパクトな同シリーズならではの携行性の良さをいかして、例えば旅行などのシーンで表現の幅をひろげてもらえるだろうと、その使い勝手に自信を見せていた。

また山木氏は、コンパクト性を求めるのであればF2.8シリーズを、コンパクト性は求めながらも画質面にもこだわりたい、という場合はF2シリーズを使ってもらえれば、とコメント。同シリーズでは焦点距離24mmに開放絞り値別にF3.5とF2の2本がラインアップすることになったわけだが、そうした使い手の視点から選べるようになった。山木氏は複数本を使う楽しみをぜひ体験してみてほしいと、その特徴を説明した。

24mm F2 DG DN|C

ライブ配信にて「Iシリーズの中でも特にフードを装着した際のバランスが良い」と設計者に言わしめた、と紹介されたように、その外観バランスの良さが際立つ。α7R IVに装着した際のバランスは確かに美しいと感じさせる佇まいがあるように思う。実際に手に持ってみた印象もサイズ・重量バランスも良好で、使い勝手の良さを握った瞬間から想像させてくれる仕上がりとなっている。

最大径はEおよびLマウントともに70mmで、フィルター径は62mm。全長および重量はEマウント用が74mm・360gで、Lマウント用は72mm・365gとなっている。外装のほか内部構造体に至るまで切削アルミニウムを用いて組み上げられているという鏡筒は、付属の花型フード「LH656-02」を含めて手にずしりとしたモノとしての重さをもたらしている。こうした手にふれた際のひんやりとした金属ならではの質感もまた、同シリーズが大切にしているビルドクオリティならではの要素なのだと、山木氏は配信中で言及。繊細な人間の手に訴えかける質感を堅持して展開していきたいと、意気込みを見せていた。

フードを外した状態。オールブラックの鏡筒に白文字でレンズ名やフィルター径、最短撮影距離など情報が記されているデザイン。それでいて、ピントリングと絞りリングのローレットの刻みが微妙に異なっていることが見てとれる。幅も変えられているため、ブラインドでの操作時にもコンパクトなサイズからくる手の迷いを排除してくれる。

また、両リング中間には同じくF2シリーズを構成する35mmと65mm同様、光沢の異なるパーツが配されており、視覚的なアクセントになっている。ソリッドなデザインながら、光の当たり方でより立体的に見えるつくりは、手だけでなく目も楽しませてくれる。所有する喜びや手にする喜びなどを大切にしたモノづくりが感じられる部分だ。

鏡筒はごくシンプルなデザインに徹したものとなっており、スイッチはAF/MFの切り替えを備えているのみ。スイッチの切り替え方向も鏡筒ラインに沿ったものとなっており、他のF2.8シリーズ(24mm F3.5も含む)とは異なる意匠となっている。光沢違いのパーツをあしらった鏡筒デザインなどもF2シリーズならではの特徴としていこうとの考えがあるのだろう。デザイン面での作り分けを認めることができる。

製品には通常のプラスチック製レンズキャップのほかマグネット着脱タイプのレンズキャップも付属する。メーカーにとってはコスト増につながるだろうポイントにも関わらずユーザーの利便性を追求した製品展開は嬉しいポイントだ。今後も継続が望まれる施策だろう。

90mm F2.8 DG DN|C

24mm F2と同時に発表された90mm F2.8の大きな特徴は、やはりそのサイズ感だろう。中望遠レンズとは思えないコンパクトさは、数値以上に凝縮されたサイズ感で手のひらに収まってくれる。最大径×全長は、Eマウント用が64×61.7mm、Lマウント用は64×59.7mmとなっている。質量はEマウント用・Lマウント用ともに295gだ。

付属フード「LH576-02」は円筒形で、ほぼ鏡筒サイズと同等かそれに近い深さとなっている。24mm F2同様、装着時のバランスが良好で、装着した状態が本来の姿と思えるほどの高い一体感が得られる印象がある。マウントからスッと伸びたような直線基調の円筒形の姿も、スッキリした印象を後押しする要素となっていると感じられる。

スイッチ類は、24mm F2と同じく、AF/MFの切り替えスイッチのみ。スイッチの方向は、24mm F3.6や45mm F2.8と同じく、鏡筒の垂直方向となっている。開放絞り値F2の他のIシリーズ単焦点レンズで採用されている光沢違いの外装パーツが用いられていない点も特徴。ただし、外装の質感や手にした時の重量感・塊感からくる印象は、両レンズともに共通している。細かなデザイン上の違いは見られるものの、総じてレンズ自体を持った時の印象はIシリーズでは共通化させていると言えるだろう。

90mm F2.8でもプラスチック製のフードに加えて、マグネット式のレンズキャップが付属する。両レンズキャップは、外観こそ似ているものの、24mm F2と90mm F2.8で互換性はない(フィルター径は24mm F2が62mm、90mm F2.8は55mm)。レンズ前面には刻印等がないすっきりしたデザインとなっている。

Lマウント用のみの特徴ではあるが、別途「USB DOCK UD-11」を用いることでMF操作の感度調整を行うことができる。また、ファームウェアのアップデートもこのドックを用いることでユーザー自身で対応できる。また、USB DOCK UD-11に関しては、詳細は不明ながら追加機能の搭載も予定されていることが製品Webページ上で明記されている。

24mm F2
90mm F2.8

本誌:宮澤孝周