PROGRESSIVE PRO LENS − 写真家がプロレンズを選ぶ理由

求めるのは「情景の中の人物」。ただし人物そのものも手を抜かない…大村祐里子さんインタビュー

鮮やかな赤い花が印象的だったので、モデルにその花と戯れてもらった。背景のにじむボケが、情景を物語りつつも被写体の存在感を引き立てている。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F1.6、1/800秒) / ISO 400

モデルをただ克明に撮るだけが、ポートレート撮影で求められるレンズの役割ではない。女性が見せる美しさを永遠の1枚に写し込むとき、その美しさを引き立てる世界を作りだすこともまた、レンズの役割なのだ。

この連載では写真家とその作品を紹介しながら、写真への思いや考え方、さらには使用するオリンパスPROレンズへの想いをインタビューしている。

今回は、当サイトでもポートレート撮影などで活躍する大村祐里子さんが登場。「情景の中の人物」を追い、それでいて被写体そのものを描くことにも手を抜かない。そのとき求められるM.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROの役割とは。(編集部)

大村祐里子
1983年、東京都生まれ。写真家(有限会社ハーベストタイム所属)。雑誌、書籍、アーティスト写真の撮影など、多ジャンルで活動。『写ガール』で「読書感想写真」、CAMERAfanで「SHUTTERGIRLWORLD」連載中。

大村祐里子さんの使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO

写真を撮り始めたきっかけは?

大学を卒業してから数年間はフリーのWebデザイナーとして働いていました。その活動の中で「Webサイトで使用する写真を自分で撮れたらいいな」と思い、初めてカメラを手にしました。

本当に写真のことを何も知らなかったので、勉強のため、知人が店長を務めていた「赤坂三共カメラ」でアルバイトをさせていただくことにしました。そこではフィルムの現像やプリントやカメラの販売を担当していたのですが、お客様が持ち込むフィルムカメラで撮影された素敵な写真に魅せられ、わたしもこのカメラで写真を撮ってみたい、と思ったのが写真を撮り始めたきっかけです。

ピンク色の梅の花の前でリラックスしているモデルの表情が良いと思ったのでシャッターを切った。適度な背景描写が、嫌味なく情景を説明している。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F1.4、1/4,000秒) / ISO 200

現在、どのような写真の仕事をされていますか。

宣材、取材、Webや雑誌用の写真、CDジャケットなどでのタレントやミュージシャンのポートレート撮影が最も多いです。最近は企業広告の撮影もさせていただいています。

また、カメラメーカーさんやカメラ関係の雑誌・Webのお仕事も多くさせていただいています。ありがたいことに現在連載を5本持たせていただいているので、毎月そこで何をしたら面白いか考えています。

オレンジの葉が美しいと思ったので、ローアングルから狙い、葉を多めに写し込んだ。90mm相当の画角は人と情景をバランス良く写し出せる。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F1.2、1/2,500秒) / ISO 400

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

Edward Steichenさんが大好きです。『Lives in Photography』という写真集をいつも眺めています。人物も、モノも、何を撮っても「その人らしい」かっこいい写真を撮れる人に憧れます。

実際に大きく影響を受けているのは、師匠の福島裕二さんです。技術はもちろんですが、写真家としての強い生き方を教えていただいたように思います。

白い梅を観賞する姿を撮影。風でモデルの前にある梅の花が大きく揺れていたが、瞳優先AFのおかげでストレスなく被写体の瞳にピントを合わせられた。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F1.2、1/5,000秒) / ISO 200

女性を撮るとき気をつけていることは?

その方の空気感に合わせることです。一緒にハイテンションに騒いだ方が良い方もいますし、たくさん話しかけたほうが良い方もいますし、存在感を消してスーッと近くにいたほうが良い方もいます。

あとは、その方が最も可愛く、素敵に見える角度を瞬時に判断できるように努力しています。

光の差し込む壁際に座ってもらった。ローポジションでの撮影となったが、バリアングルモニターとタッチシャッターの組み合わせでスムーズに撮影できた。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F1.8、1/4,000秒) / ISO 400

大村さんの作品にとって被写界深度とは?

現実と非現実を区別するものです。自分の目は、だいたいF16-22くらいの感じで目の前の光景を捉えているように思います。だから、被写界深度の深い写真は、現実に近いと感じます。

逆に、被写界深度の浅い写真は、自分の見ている光景とだいぶ違うので、非現実だなと思います。

温室の中で撮影をした。ソリッドな感じの窓の前に佇むモデルがいいなと思ったので、情景を広めに切り取った。こういった硬めの被写体を捉えても良い雰囲気に仕上げてくれるレンズだ。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 45mm(90mm相当) / マニュアル露出(F2.8、1/1,600秒) / ISO 200

M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROについて。

45mm(35mm判換算90mm相当)は周りの情景を適度に映しこみながら、ある程度限定された画角が自然と目の前の被写体に視線を向かわせます。自分の目指す「情景の中の人物を生かしつつも、被写体そのものに注目した写真」を撮るにはぴったりのレンズだと思いました。

私は、被写体の前に草木や花が写り込む場所でよく撮影をします。そういったシーンでも「瞳優先AF」を使えば、ストレスなく被写体の瞳にピントを合わせることができました。近づいたときはMFでピントを合わせる方が楽なので、近接時にフォーカスリングを手前に引くと瞬時にマニュアルフォーカスに切り替わる「マニュアルフォーカスクラッチ機構」が気に入っています。

それに加えて、F1.2 PROシリーズは画質が良いので、信頼してポートレート撮影用に持ち歩けます。

鮮やかな赤い花と戯れるモデルを撮影した。花の前ボケと、背景のにじむボケが、情景を物語りつつも被写体の存在感を引き立ててくれている。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO / 14mm(28mm相当) / マニュアル露出(F1.6、1/1,000秒) / ISO 400

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

性格なのか何なのか、とにかく「苦手」だと思うことばかりやりたくなってしまうんです。「それ向いてないよ」ということにばかり燃えてしまいます。

春先にあるテーマで撮影をする予定なのですが、それは、おそらく皆様に「向いてないのでは」と思われる内容です。具体的な内容はまだ秘密ですが……そのうちどこかで披露できたらと思っています。

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デジタルカメラマガジン4月号で大村祐里子さんが撮影テクニックを披露!

発売中のデジタルカメラマガジン2018年4月号では、大村祐里子さんが紹介するM.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PROの使いこなしテクニックが掲載されています。あわせてご覧ください。(編集部)

制作協力:オリンパス株式会社
モデル:野呂侑合香(オスカープロモーション)
撮影地協力:神代植物公園(約4,800種の植物があり、四季を通じて楽しめる日本を代表する植物公園)

デジカメ Watch編集部