知識ゼロでもわかる“PCパーツの基礎”

第3回:快適な作業環境の基礎…「メモリ」と「ストレージ」の抑えておきたいスペック

Micron Technologyは、PCIe 5.0対応のM.2 SSD「Crucial T705 Gen5 NVMe SSD」を2月に発表した

「BTO PCのスペック表の意味がわかる」ことを目標に定めた当連載、第3回のテーマは「メモリ&ストレージ」です。

いずれも「データを置いておく場所」という意味では同じですが、PCにおいて果たす役割が異なります。いわばメモリは編集中のデータをいつでも触れる「作業机」であり、ストレージはデータを保管しておく「倉庫」です。メモリ容量は「机の広さ」であり、ストレージ容量は「倉庫の大きさ」といえます。

メモリとストレージで役割が分かれている理由は、メモリとストレージの特性の違いによります。メモリはストレージよりも転送速度がはるかに速い一方で、電源を切るとメモリ内のデータが消える「揮発性」。ストレージは、転送速度が遅い代わりに電源を切ってもデータが消えない「不揮発性」。この違いによって、PCの中で「一時保管領域(作業机)」と「長期保管領域(倉庫)」の役割分担が生まれているのです。

多く積む分にはいいが、不足すると面倒なことに

PCにおいて大容量のメモリやストレージを搭載するメリットは、アプリを複数立ち上げても動作が重くなりにくく、RAWデータなどの大容量ファイルを大量に保存できることです。例えばLightroomで大量のRAWファイルを現像したり、DaVinci Resolveで長時間の録画データを扱う時などに、1回あたりの読み込み/書き出し待ちの時間が短く済む点で作業の快適性に貢献します。

メモリ容量が不足していると、アプリの動作が重くなったり、作業途中に予期せずアプリが落ちたりします。ストレージの容量が足りない場合は、OSの動作がおぼつかなくなり、そもそもアプリが立ち上がらないなどの不具合も出るでしょう。メモリやストレージの不足が原因で起こる不具合は致命的なものが多いので、快適にアプリを使うための下地を整える基礎部分と捉えて、大きめの容量を確保しておきましょう。

BTO PC購入前のカスタマイズ時に容量が選べる。予算に余裕があれば多めに積んでおくことが望ましい(画像はマウスコンピューターの例)

性能を表記する単語の意味

メモリ

BTO PCにおいてメモリ性能の表記は「容量」と「チップ規格」で表現されます。「64GB(32GB×2 DDR5-4800)」と表記されている場合の見方を例に説明すると、「64GB」は搭載メモリの合計容量(この場合は32GBのメモリ×2枚)、「DDR5-4800」は4,800MHzの動作クロック(周波数)を持ったDDR5世代のメモリチップを搭載していることを意味します。動作クロックの数値は基本的に大きければ大きいほど高速な転送が可能になると捉えて問題ありません。

ショップによってはメモリ性能の詳細に「デュアルチャネル」と記載している場合があります。これは同規格かつ同容量のメモリを2枚1組で搭載することによって性能を上げる機能に対応していることを表しており、メモリが2枚1組で売られている理由でもあります。ただ、BTO PCを購入する限りにおいては(ほとんどデュアルチャネルなので)ことさら意識する必要はないでしょう。

モデルにもよるが、BTO PCの場合は基本的に容量だけを見ることになる(画像はサイコムの例)

ストレージ

現行のBTO PCでは、多くのモデルで「M.2 SSD」「2.5インチSSD」「3.5インチHDD」の3種類をストレージとして採用しています。容量は「1TB」や「500GB」などそのまま書かれているケースがほとんどです。

詳細な説明は長くなるので避けますが、かなりざっくりそれぞれの特徴を述べると、3種類の中では「M.2 SSD」が最も高速かつ高価で容量が少なく省スペースで低消費電力、「3.5インチHDD」が最も低速かつ安価で大型・大容量、「2.5インチSSD」が(結果的に)その中間という位置付けになっています。

M.2 SSDの「M.2」はストレージの接続端子規格で、2024年3月現在の民生用PCでは「NVMe」という転送プロトコルが主流です。ショップでは「M.2 Gen4」といった表記をしている場合もありますが、これは拡張インターフェイス接続規格の「PCI-Express Gen4(PCIe Gen4)」の意味であり、だいたいどのショップも似たような表記をしています。

2.5インチSSDは、M.2 SSDと同じくフラッシュメモリをストレージとして利用するものです。接続方式はHDDと同じ「SATA」なので、M.2ほどではありませんが高速な転送が行なえます。

3.5インチHDDは記録媒体に磁気ディスクを用いた昔ながらのストレージです。転送速度はSSDよりも大幅に遅い代わりに大容量かつ安価なので、容量に対するコスパを重視するのであれば選択肢に入ります。

通常、OSは最も高速なM.2 SSDにインストールする。追加ストレージはできればつけた方がよい(画像はTSUKUMOの例)

クリエイティブアプリにおける必要構成

Photoshopの推奨構成は、メモリが16GB、ストレージが100GB。Capture Oneはメモリ16GB以上でSSDの使用を推奨。

動画編集アプリのPremiere Proは4K映像を編集する場合はメモリ32GB、SSDの使用を推奨。DaVinci Resolveもエフェクト作成アプリの「Fusion」を使う場合は32GBメモリを要求します(ストレージには言及なし)。

現実的な運用としてはクリエイティブアプリだけでなく、Webブラウザなどほかのアプリも併用すると思うので、BTO PCを購入する際には用途を考慮して、余裕を持った構成を検討しましょう。

Capture Oneの推奨構成例

見るべきスペックはどれ?

BTO PCの検討を前提にすると、メモリは「容量」、ストレージは「容量」と「種類」を見ることになると思います。厳密にはまだありますが、ここでは触れません。

メモリはほかのパーツとの兼ね合いもあって、BTO PCでは選択肢があまりありません。

ストレージに関して押さえておきたいのは「容量と速度はトレードオフ」というポイントです。多くのアプリでSSDが推奨されている通り、ファイルの読み書きにはメモリだけでなくストレージの速度も関与するので、作業の快適性に影響します。ストレージはできるだけSSDで揃えておきたいところです。予算的に厳しい場合はHDDも選択肢に入りますが、それでもHDDに保存するのは調整や編集が完了した最終データだけにしておき、作業中のファイルはSSDに保存しておくようにしましょう。

モデルによっては複数のM.2 SSDが装着できる場合もある(画像はFRONTIERの例)
関根慎一