知識ゼロでもわかる“PCパーツの基礎”
第2回:「RTX」「Radeon」「Arc」…GPUのシリーズ名と見るべきポイント
2024年2月18日 12:00
「BTO PCのスペック表の意味がわかる」ことを目標に定めた当連載、第2回のテーマは「GPU」です。
GPUは主に映像や画像の処理を行なう装置であり、演算を行なう点はCPUと同じですが、GPUの場合は映像処理に特化している点で役割が異なるのが特徴です。そしてGPUを搭載したパーツを一般に「グラフィックボード」や「ビデオカード」と呼びます。
RAW現像アプリや動画/画像編集アプリにおけるGPUの主な役割は、画像処理やエンコード/デコードを高速化することです。アプリの動作に必要な最低限の性能さえクリアしていれば処理を行なうこと自体は可能ですが、GPUの性能が高いほど早く処理が終わるので、結果的に作業時間が短縮できます。
一例としては、エンコードの高速化により書き出し時間が短く済んだり、あるいは動画編集時にエフェクトやトランジションのレンダリングが高速化してプレビューがほぼリアルタイムで確認できたり、4Kや8Kなどの高解像度映像を問題なく再生できたりすることが挙げられるでしょう。アプリによってはGPU支援機能を有効にしておくことで拡張機能が利用可能になる場合もあります。
グラフィックボードはPCの中で最も高価なパーツになる(ことが多い)ので、搭載するグラフィックボードのランクがひとつ違うだけでも予算に大きく影響します。
主要なGPUメーカー3社と型番の見方
民生機にGPUを供給している主要なメーカーはNVIDIA、AMD、Intelの3社です。GPUについてはCPUと同じく、型番を見ることで大体の性能がわかるようになっています。ここではデスクトップPC向けの「GeForce」、「Radeon」、「Arc」について簡単に紹介します。
NVIDIA
型番の例として「RTX 4070 Ti SUPER」を挙げて説明します。
「RTX」はGeForceシリーズ内のグレード、「4070」のうち「40」が世代、「70」が「同世代機種間の相対的な性能」、「Ti SUPER」は同じ型番の中でさらに細分化された性能差を示す接尾辞となります。
「同世代機種間の相対的な性能」とは、ざっくりといえば「4070」は「4060」よりも高性能だが「4080」にはやや劣るというような意味です。
現行のGeForce RTXシリーズにおける接頭辞が示す性能差は、数字の後に何もつかない「無印」を最下位として「SUPER」→「Ti」の順に高性能化します。最新世代では例に挙げたRTX 4070 Ti SUPERだけ「Ti」よりも上位の「Ti SUPER」が設定されていますが、それでも「4080」には及ばないという位置づけです。
ややこしいのは「同世代機種間の相対的な性能」を示す下2桁(4070でいえば「70」)の部分で、「元々の性能差」が「世代を経ても覆らない」場合があります。これは例えば「4070」が1つ前世代の「3080」を必ずしもすべての面で上回るわけではないということです(2世代違うとさすがに逆転することが多いです)。計測方法や評価基準にもよるので一概には言えませんが、まあ高性能なものは長く使えてお得よね、というくらいに捉えておけば良いかと思います。
なお、現行のプロ向けグラフィックボードは「GeForce」シリーズではなく、単に「RTX ◯◯」あるいは「T◯◯」「A◯◯」のような型番がつけられています。蛇足ですが、より古い世代のプロ向け機種は「Quadro」の名を冠していました。
AMD
「Radeon RX 7800 XT」を例に説明します。
「RX」はRadeonシリーズ内のグレード、「7800」のうち「7」が世代、「800」が「同世代機種間の相対的な性能」、「XT」は同じ型番の中でさらに細分化された性能差を示す接尾辞となります。
型番の見方はGeForceシリーズとほぼ同じで、同世代間で比較する限りは数字が大きいほど高性能です。接尾辞も表現こそ違いますが、「無印」→「XT」→「XTX」の順に高性能化します。旧世代機であっても高性能なら実用面で現行機種と互角に戦える点も同様です。
プロ向けラインでは「Radeon PRO」シリーズを展開しており、ここでは「W◯◯」という型番で同様の命名規則を採用しています。
Intel
「Arc A750」を例に説明します。
「A」はArcブランドのシリーズ名、「7」はグレード、「50」は「同グレード間の相対的な性能」となります。
Arc Aシリーズ現行機種の型番は他2社と比べてシンプルです。
プロ向けの製品としてはワークステーション向けの「Arc Pro」シリーズ、データセンター向けの「Max」や「Flex」などを展開しています。
見るべきスペックはどれ?
GPUのスペック表には動作クロックやメモリ幅など様々な項目が記載されています。もちろんどれも重要なのですが、RAW現像アプリや画像/動画編集アプリなどを利用するときに注視すべきなのはVRAM(ビデオメモリ、GPUメモリ)の数値です。
クリエイティブアプリにおけるVRAMの役割は、編集中のデータへの高速なアクセスです。VRAMが不足しているとデータ処理の速度が遅くなったり、色が正常に表示されなかったり、一時的にアプリがフリーズしたような状態になるなど、作業環境の快適性が損なわれます。
各アプリが要求するシステム構成を見ると、例えばPhotoshopの場合は4GB(4Kディスプレイ以上の場合)推奨、Premiere Proであれば6GB(4K以上)推奨、Capture Oneの場合は8GB推奨、DaVinci Resolveは推奨構成について記載がありませんが最小で2GBとなっています。
快適な作業環境を確保するうえで必要十分なVRAM搭載量は扱うデータにもよるので一概にこれとは言えませんが、4Kや8Kといった高解像度のデータを扱う場合や、高解像度環境の構築を行なう可能性があるならば、最低でもアプリの推奨値、できれば予算の許す限りVRAM容量の大きな機種を選んだ方が無難でしょう。
結局どれがいいの?
先述の通り、GPUの役割はデータの処理速度を高速化することです。GPUが高性能であればあるほど処理待ち時間を少なく抑えて作業を進めることができます。アプリが要求するスペックを最低限クリアしていれば、3社のうちどのメーカーのGPUでもいいとは思いますが、予算の範囲でできるだけ良いものを選ぶことをおすすめします。必ずしも最新世代のグラフィックボードを選ぶ必要もありません。
前回、「CPUの予算をけちってもいいことはない」という意味合いのことを述べましたが、GPUに関しても同様です。ただ一般的なPCの使い方を考えれば、CPUの方により多くの予算を割り振った方が総合的な体験の質は高くなると思います。
なおCPUの「Core」や「Ryzen」などのシリーズではGPUを内蔵しているものもあります。スペック表の上では「Intel UHD Graphics」や「Radeon Graphics」と表記されているものがそれです。もし本当に予算が厳しい場合はCPU内蔵のGPUを利用する選択肢もありますが、アプリが要求するスペックに達していない場合がありおすすめはできません。
コスパを追求するならば最新から数えて2世代くらい前のグラフィックボードでも実用面でそれほど支障はないと思いますが、あまりにも古いものを選ぶと、ハードウェアとしての寿命とは別に、アプリ側からサポートを打ち切られる可能性があるという形で使用期限が短くなるリスクはありえます。