新製品レビュー
パナソニックLUMIX FZ1000(実写編)
4K動画の切れ味は?バランスの良い1型センサー高倍率ズームモデル
曽根原昇(2014/8/7 11:23)
パナソニックの「LUMIX DMC-FZ1000」(以下FZ1000)は、有効2,010万画素の1型センサーと、35mm判換算で焦点距離25-400mm相当F2.8-4の光学16倍ズームレンズを搭載する、高倍率ズームモデルである。
高精細な約236万ドットのEVFを内蔵し、一見すると一眼レフ機やミラーレス機のように見えるが、レンズ交換式ではないレンズ一体型デジタルカメラだ。
大きさは幅約136.8mm、高さ約98.5mm、奥行き約130.7mmとコンパクトデジタルカメラというには大柄なボディであるが、質量はバッテリーとメモリーカードを含め約831gと見た目の割には軽い。一体となっている高倍率ズームの利便性と併せ、さまざまなシーンで活用することのできる高機能な1台だ。
また、レンズ一体型デジタルカメラとして初めて4K動画の本体記録に対応したことも特筆すべき点である。
「実写編」である今回は、1型の大型センサーとライカブランドの高倍率ズームレンズとの連携による、FZ1000の描写を見ていきたい。
遠景の描写は?
FZ1000はレンズ一体型カメラであるため、搭載された1型高感度MOSセンサーと光学16倍ズームのLEICA DC VARIO-ELMARITレンズ、最新のヴィーナスエンジンの3者は高いレベルでマッチングが図られている。
広角端の焦点距離は35mm判換算で25mm相当。開放F値も2.8と大口径に設計されており、広角レンズとしても十分にワイドな画角と明るさをもった高性能レンズとして見ることができる。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
細かく見れば周辺付近でわずかな像の滲みと、倍率色収差と思われる色ズレが見られるが、それはよほど拡大しなければ気づかない程度のこと。全体的にはハイコントラストかつシャープであり、解像感は画面全体で均一に保たれている。
テレ端の焦点距離は35mm判換算で400mm相当と、高倍率ズームのテレ端としては大変な超望遠である。開放F値がワイド端より1段落ちるものの、400mm相当の望遠レンズとしては明るい部類といってよく、内蔵されたレンズシフト式手ブレ補正の効果もあって、手持ち撮影でも安定性が高く実用的である。
この超望遠域での描写でも画面全体の均質性は高く維持されており、遠くの被写体を大きく写すために十分な解像力を見せてくれている。
絞り値と画質の関係としては、F4からF5.6くらいで最も結果がよかった。とはいえ、各絞り値での画質の差はさほど大きくはない。最大絞りがズーム全域でF8までに抑えられていることもあり、描写性能を気にして絞り値をいくつに設定するかを悩む必要はあまりないだろう。
高感度画質は?
通常感度の設定範囲はISO125からISO12800。さらに、拡張感度を有効にするとISO80からISO25600までの設定が可能となる。
撮影条件は日中昼間の室内窓際で、自然光による大きな輝度差と自然な色味の再現を要求されるシーンである。
ベース感度であるISO125が、最もダイナミックレンジとノイズ発生量のバランスがよいのは予想通り。その後、ISO400までは画質に大きな変化はなく、ISO800でも通常の使用で問題のない高画質を維持している。
ISO1600になるとノイズの発生によるザラツキが目立ってくるが、カラーバランスはよく保たれており、A3以上の大伸ばしプリントなどにしない限りは、特に問題を感じることはない。
ISO3200になると、とたんに解像感が低下してノイズが多く見られるようになり、彩度も目に見えて低くなることが見てとれる。
ISO6400以上での画質低下はさらに顕著となり、非常用での使用を除けば画質は期待しないほうがよいだろう。
人工照明に照らされた屋外夜景でもISO感度別の撮影をしてみた。室内で撮影した場合と同じように、ISO3200以上から目立ってディテールが消失し、カラーバランスも崩れていく印象だ。
ただし、背景が均質な暗部(夜空)となっているため、室内の場合に比べてノイズの発生は早くから目立ち、ISO1600でもノイズがより多いと感じることがあるかも知れない。
総じてFZ1000の高感度性能は高いといえるが、撮影条件と画像の使用目的に応じて設定するISO感度を必要以上に上げないように気をつけたほうがよい。
マクロの描写は?
最短撮影距離は通常のAF設定でレンズ先端からワイド端で30cm、テレ端で100cmであるが、AFをマクロモードに切り換えた場合、あるいはMF、インテリジェントオート、動画撮影の場合は、ワイド端でレンズ先端から3cmの接写が可能となる。
近接撮影においても、滲みの発生などによる画質の低下はほとんど見られず、高倍率ズームのマクロとしては大変好ましい描写を得ることができる。
4K動画を撮る
FZ1000はレンズ一体型デジタルカメラとして初めて4K動画の本体記録に対応した。4Kの設定は1モードのみで、サイズは3,840×2,140ピクセルでフレームレートは30p、記録方式はMP4に固定される。
1/60秒 / ISO125 / シャッター優先
圧縮率なども固定されるため、業務用途などの本格的な4Kに比べると、動いている被写体の描写などに多少のざわつきを感じることもあるが、カメラのクラスと価格を考慮すれば十分以上のスペックといえるだろう。
また、色味に関する仕上がり設定であるフォトスタイルは、静止画撮影時と同様に設定変更が可能である。動画は静止画よりも落ち着いた色調が好まれる傾向があるので、自分の好みに合わせて設定を変えてみるとよいだろう。
4K PHOTOを試す
FZ1000は撮影した4K動画から、約800万画素の静止画として1コマを切り出す機能がある。4K動画となると相当ハイレベルな再生・編集環境が必要となるが、「4K PHOTO」機能はボディ内で動画から静止画の切り出しができる。
ただし、一般的に動画撮影で設定する1/50秒から1/100秒のシャッター速度では、切り出した静止画がブレてしまうことが多いので注意したい。4K動画からの静止画切り出しを目的とする時は、シャッター速度を1/1,000秒以上に設定し、1コマごとの被写体の動きを止める必要がある。高速シャッターで撮影した動画は動きが不自然になってしまうので、静止画切り出し専用の撮影、という心構えで臨むようにしよう。
下は、切り出した静止画の元になった動画だ。
ハイスピード動画も撮れる
クリエイティブ動画モードでメニューの「ハイスピード動画」をオンにすると、フルHDで1/4倍速のスローモーション動画を撮影することができる。
ピント、ズーム、露出、ホワイトバランスが撮影開始時に固定されるなどの制限もあるが、気軽にスローモーション動画を楽しめるので、機会があれば試してみてはいかがだろう。
作品集
35mm判換算で25mm相当のワイド端のおかげで風景を広大に写すことができる。木々の緻密な解像感も、霞がかった柔らかな空気の表現も好ましく感じる。
色鮮やかでありながら過度に派手にならない色再現性は大変に優秀だ。植物の葉や茎など、似た色同士の緑もきちんと分解して、微妙なグラデーションを描き分けている。
1型センサーのサイズなら、テレ側で被写体との距離を近くすることで大きな背景ボケを得ることができる。二線ボケなども見られず柔らかで美しいボケである。
35mm判換算で400mm相当のテレ端は、遠くの被写体を大きく写すことを容易にする。警戒心が強くなかなか近づかせてくれない猫も画面いっぱいに撮影することができた。
夕方になって急に発達してきた夏の雲を撮ってみた。さまざまな撮影シーンに対応できる高機能なカメラでありながら、こうしたスナップを気軽に撮れる軽快さもFZ1000の魅力のひとつだ。
1型センサーの安定した画質が気軽に楽しめる
初めて本機を目にした時の第一印象は「大きい」というもの。しかし、実際に持ち歩いて撮影を重ねていくうちに、その活躍ぶりに対して、むしろ「小さく軽快」という印象を抱くようになった。
従来のFZシリーズに採用されていた1/2.3型センサーに比して、大型化した1型センサーの画質の良さは明らか。描写性能に優れた固定搭載の高倍率ズームと相まって、広角から望遠まで安定した画像を提供してくれる。
4CPUで高速化したヴィーナスエンジンのおかげもあって、起動時や操作時のレスポンスが素晴らしく速く、使っていて気持ちのよさを感じることができる点などが、本機の大きさを気にさせなくする要因となっている。
よく似たコンセプトで本機の対抗機種ともいえるカメラが、昨年11月に発売されたソニーの「サイバーショットDSC-RX10」である。静止画重視派にとってはテレ端を200mm相当F2.8にするか400mm相当F4にするかが購入時の悩みどころとなりそうだが、話題の4K動画を実売10万円以下の本機に盛り込んできたことで、静止画と動画の両刀派の心は大きく揺さぶられることになりそうだ。