新製品レビュー
ニコンD810(実写編)
これが次世代FXの高画質。新センサー& EXPEED 4の実力をチェック
大浦タケシ(2014/7/14 12:15)
D810は新開発の35mmフルサイズ3,600万画素CMOSセンサーと、最新の画像処理エンジンEXPEED 4を搭載するデジタル一眼レフカメラである。
ベース感度は先代D800/D800Eより2/3段低いISO64に、通常最高感度は1段アップしたISO12800。コマ速もより高速化され、4コマ/秒から5コマ/秒へと高速化した。
スペックに現れない部分としては、機構ブレの低減および静音化があるだろう。ミラーのアップダウンはモーター駆動に、ミラーから発生する振動およびバウンスはバランサーを設置し抑制を図る。結果、シャッター音は甲高さが抑えられ、いたずらに出しゃばらないものとしている。
その以外にもブラッシュアップされたところは少なくなく、誤解を恐れずにいえば、カメラの型式の数字以上の進化を遂げたといってよいだろう。
前回は機能編と称して、それら諸々の詳細を見たが、今回は実写編としていよいよその描写を見ていくことにする。
遠景その1
遠景でチェックするのは、主に解像感だ。有効3,635万画素であることに加え、D810では正真正銘の光学ローパスフィルターレスとなったことを実感したい。
作例の撮影時の天候は薄くもり。大気中の水蒸気はやや多めと評価用の画像とするには厳しい条件であるが、それでも生成された画像は線が細く緻密な描写である。パソコンのモニターで等倍拡大して見ると、その圧倒的ともいえる解像感が実感できる。
サムネイル画像をクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します(以下同)。
使用したレンズはAF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED 。ナノクリスタルコートを採用するハイエンドの標準ズームだが、その優れた描写特性を余すこと無く引き出すといってよいだろう。陽射しが強く、輝度の高い条件で撮影したものであれば、よりキレのある描写となることはいうまでもない。
下は70-200mm F4G EDでの作例。
また、光学ローパスフィルターレスとしたことによるモアレや偽色の発生については、筆者が見るかぎり見つけだすことはできなかった。
先代では光学ローパスフィルター有りのD800と光学ローパスフィルターなしのD800E(実際は光学ローパスフィルターを搭載し、その効果を打ち消している)の2ラインとしていたが、D810では光学ローパスフィルターなしの1ラインとしたことも納得できる結果だ。
感度
前述したとおりD810の通常感度の設定範囲はISO64からISO12800まで。従来がISO100からISO6400までだったので、設定できるレンジは大きく広がった。
さらに拡張機能を使用するとISO32相当からISO51200相当での撮影を可能とする。
気になるのが、まずベース感度だろう。これまでのISO100からISO64と低くなったことに抵抗のある向きもあるからだ。
では、それぞれを比較し描写に違いが見受けられるかといえば、作例を見るかぎり見当たらない。ノイズはもちろんだが、階調再現性などの違いを見つけるのは困難といってよく、これまで通りISO100で撮影しても何ら支障はない。
高感度域におけるノイズレベルについてはISO1600までならカラーノイズ、輝度ノイズとも気にならないレベルで解像感の低下も極わずかに抑えている。
ISO3200となると、次第にノイズは見極めやすくなり、解像感の低下も始まりだす。さらにISO6400となると色のにじみなども顕著となり全体的にノイジーだ。ただし、従来にくらべ高感度域での画質はそれでも向上しており、D810の進化が見て取れるはずだ。
ハイライト重点測光
D810では、マルチパターン測光/中央部重点測光/スポット測光に加え、新たにハイライト重点測光を搭載する。
これまでのマルチパターン測光の場合、明暗差の大きいシーンでは露出が暗い領域に引っ張られてしまい、明るい被写体が露出オーバーになってしまうことが多い。
ハイライト重点測光では、画面の最も明るい領域をメインに測光を行ない、ディテールを保持しハイライトの白トビを防ぐ。
掲載する作例では評価測光との比較としているが、ハイライト重点測光で撮影したカットはハイライト部のディテールが保持されていることが分かる。
もちろん、その分周囲が暗くなっているが、スポットライトを浴びるステージ撮影などでは、露出補正などを気にする必要もなく、その効果を遺憾無く発揮することだろう。
ピクチャーコントロール
ニコンの絵づくり機能、ピクチャーコントロールもD810では進化している。
従来のスタンダード/ニュートラル/ビビッド/モノクローム/ポートレート/風景に加えフラットを追加。俗にいう素材性を重視した絵づくりである。
ピクチャーコントロールには同様の絵づくりとして従来からニュートラルが存在するが、フラットのほうが演出の少ないよりリニアな絵づくりになっている。好みの仕上がりに追い込みしやすいうえに、色飽和しにくくレタッチ耐性が高いのも特徴である。
D800/D800Eが多くのプロやハイアマチュアから愛用されてきた経緯を考えると、レタッチを前提する絵づくりの搭載は当然の成り行きと考えてよい。
作品集
フォーカスは手前の白い建造物に合わせている。絞りはF11。回折現象がわずかに発生するものの、深い被写界深度と光学ローパスフィルターレス構造を採用するイメージセンサーにより、奥に並ぶビルまでシャープな描写だ。
絞りは使用するレンズの恐らく描写のピークとなるF8。ピントの合った部分のシャープネスは高い。ただしカリカリとしたものではなく、どちらかといえばナチュラルなキレのよさである。
風景など撮る場合、ライブビューの拡大機能を使いMFで合わせるのが確実。面倒だが、D810の解像感の高さを確実に活かす撮影方法といえるだろう。WBはオートだが、これまでに比べて偏りがなくより自然な印象だ。
まとめ
D800ユーザーの筆者にとって、D810は羨ましい部分の多いカメラだ。
広くなった感度のレンジや低く抑えたシャッター音、よりピントの山を掴みやすくなった光学ファインダーやライブビュー時も機能するプレビューボタンなど、使い勝手に関わる部分がブラッシュアップされているからだ。
ただし、その価格にはちょっと抵抗を感じないわけでもない。
現状ではD800Eとほぼ同じだが、光学ローパスフィルターを完全に取り払っていることを考えるとD800と同じくらい、つまり少し懐に優しいものでもいいように思えるからだ。
もちろんミラー駆動用のモーターやRGBWの3.2型液晶モニターの搭載など、これまでよりコストのかかった部分はあるが、敷居がちょっと高すぎるように思える。
とはいえ、D810の生成する画像はやはり魅力的だ。高い解像度にくわえ素材性を重視した絵づくりの追加や細かな微調整の可能なパラメータなど、より撮影者のイメージに合う仕上がりが得られやすい。
従来にくらべカメラとしてのポテンシャルが高まり、さらに魅力的になったD810。作画指向の強い写真愛好家にとっては心強いカメラとなること請け合いである。