新製品レビュー
SIGMA dp2 Quattro(機能編)
圧倒的な存在感を放つ、新生Foveonコンパクト第1弾
大浦タケシ(2014/6/20 08:00)
今年2月開催のCP+2014年で話題となった「dp2 Quattro」が、いよいよ発売される。
同社のDPシリーズは、APS-CサイズのいわゆるFoveonセンサーを搭載するコンパクトデジタルカメラ。2008年3月に発売された「DP1」がファーストモデルだ。
Foveonセンサーとは、一般的なバイヤ(ベイヤー)配列型のイメージセンサー(単板方式)とは異なり、独自の3層構造とする。原理的に偽色の発生がほとんどないためローパスフィルターを搭載しておらず、それによる高い解像感と独特の絵づくりでコアな写真愛好家から高く支持されている。
28mm相当の単焦点レンズを搭載するDP1の姉妹機として、2009年に登場したのが45mm相当のレンズを搭載する「DP2」である。
その後、両モデルとも細かなマイナーチェンジを行ない、DP1は「DP1s」→「DP1x」へと、DP2は「DP2s」→「DP2x」へと進化。その後フルモデルチェンジを行い、同社デジタル一眼レフ「SD1 Merrill」と同じFoveon X3 Merrillセンサーを積む「DP1 Merrill」および「DP2 Merrill」が2012年に、続いて2013年には75mm相当のレンズを搭載する「DP3 Merrill」が登場している。
新しいdp2 QuattroはDP2 Merrillの後継モデルとしてボディスタイルを大きく変え、新開発のFoveon X3 Quattroセンサーと画像処理エンジンTRUE IIIを搭載するシグマの意欲作である。
発売は6月27日。本稿執筆時点での店頭予想価格は税込11万円前後である。
斬新すぎるスタイリング。でも使い勝手は○
まず実機を見て驚かされるのは、そのスタイリングだろう。これまでの四角四面の生真面目ともいえるシェイプから、横にグンと張り出した独特のものとする。
グリップも一般的な前方に飛び出ているものではなく、後方に突き出たものだ。
レンズ鏡筒は従来モデルより太いものの、ボディ高自体はこれまでより低く、かつグリップを除いた本体部分はスリムに仕上がる。
デジタルカメラ黎明期には、様々なスタイルのカメラが登場したが、そのときですらこのようなボディシェイプを持つカメラは登場していない。従来のコンパクトデジタルの概念を打ち破るスタイルといってよいだろう。
ボディ表面は高級感ある梨地処理が施され、どこか安っぽい印象の拭えなかった従来機と一線を画す。
ホールディングした印象もこれまでにないものだ。グリップは握るというよりもその形状から掴むといったほうが相応しい。グリップした右手の人指し指と中指の先が当たる部分にはラバーが、同じく親指はカメラ背面にあるセレクターの出っ張りがあり、思いのほかしっかり“掴む”ことができる。
グリップ上部にある前および後ダイヤルの操作性も上々である。さらにカメラ背面、液晶モニター右側に沿って並ぶボタンも右手親指での速やかな操作が可能。惜しむべくはフォーカスリングで、ローレット部分の幅が4mmほどしかなく、MF操作のときなどに心もとなく感じられる。
書き込み時間が短くなった!
キーデバイスとするFoveon X3 Quattroセンサーは前述のとおり新たに開発されたもの。三層構造とする同センサーの場合、有効画素数は各層の画素数を合計したものであるが、それによると1層目:1,960万画素、2層目:490万画素、3層目:490万画素なので有効画素数は約2,900万画素となる。実解像度は約1,960万画素とする。
センサーサイズについては23.5×15.7mmで、先代DP2 Merrillと同じとする。画像処理エンジンも新開発の「TRUE III」を採用。より迅速な処理に対応する。
なお、Foveon X3 Quattroセンサーの詳細については、「SIGMA dp Quattro」の新技術をご覧いただきたい。
DPシリーズといえば、これまで書き込み時間の遅さがウィークポイントとしてよく知られている。そのため、dp2 Quattroについても気になるところ。
そこで参考までにDP2 Merrillと書き込み時間を比較してみた。タイムの計測はシャッターを切った瞬間から、アクセスランプが完全に消えた瞬間まで。
記録フォーマットはJPEG(FINE/HIGH)。メモリーカードはサンディスクExtreme Pro16GB(Class10)を使用した。もちろん同一の被写体を同じアングルで撮影している。
10回計測した平均値を出してみたが、DP2 Merrillが9.2秒であるのに対し、dp2 Quattroは約半分の4.7秒。DP2 Merrillが有効4,600万画素12bit処理で、dp2 Quattroは有効2,900万画素14bit処理と負荷は異なるものの、この結果は大いに満足できるものといえる。
実際、今回のレビューでスナップ撮影などを試みたが、ストレスを感じるようなことは皆無。もちろんDP1/DP2のように、書き込み中は他のすべての操作がストップしてしまうこともなく、“サクサク”と撮影が楽しめる。
高画質で騒がれた30mm F2.8レンズを継承
大きく進化したdp2 Quattroだが、光学系に関しては定評のあったDP2 Merrillを引き継ぐ。
画角は35mm判換算45mm相当で実焦点距離は30mm、開放値はF2.8。レンズの明るさなどから被写体にぐっと寄らないかぎり大きなボケは難しいが、その分設計に無理がなく優れた描写特性を持つ。
実際、キレのよい描写は、解像感の極めて高いFoveon X3 Quattroセンサーの特性と相まって他のコンパクトデジタルを圧倒。諸収差も徹底して抑えられ、PCの画面で隅々までチェックしても気持ちよく感じられるほどだ。レンズ構成は6群8枚。グラスモールド非球面レンズ1枚、高屈折率ガラス3枚を採用する。
AF駆動はDP2 Merrillにくらべ静か。超音波モーターではないようであるが、合焦速度も向上しておりAF操作は心地よい。
注目の機能としては、まず「白トビ軽減」と「トーンコントロール」が目新しい。これまでDPシリーズの絵づくりは、ややもすると白トビしやすく、条件によってはトーンジャンプが激しいこともあったので使わない手はないだろう。特に三脚にカメラを据え、液晶モニターで確認しながら撮影に臨むときなど活用したい。
画像サイズの「S-Hi」は7,680×5,120の約3,930万画素での記録を可能とする。画素補間によるものだが、Foveonセンサーは一般的なカラーセンサーに対し、2倍の解像度があるといわれている。そこで実画素数1,960万画素のおおよそ2倍となるモードが以前より設けられている。プリント時など、大きな解像度を必要とするときなど重宝することだろう。
他のカメラでは当たり前となった水準器機能もようやく搭載された。あわせてケーブルレリーズの使用にも対応するようになり、dp2 Quattroを風景撮影で使いたい写真愛好家などにとってうれしい部分といえそうだ。
まとめ:相変わらずの存在感。それでいて扱いやすくなったのは朗報
その斬新なスタイルは、ただならぬカメラであることを主張するには十分すぎるものである。
シグマ独自のFoveonセンサーはさらに進化し、新開発の画像処理エンジンTRUE IIIやハイパフォーマンスな単焦点レンズなどキーデバイスにも隙がない。
しかも、Foveonセンサーを搭載するモデルはこれまでややもすると扱いづらいカメラの代名詞のようにいわれ続けていたが、本モデルはそのような言い掛かりすらも一蹴する。
DPシリーズを愛して止まない写真愛好家のみならず、今一歩Foveonセンサーの世界に踏み込めなかったデジタルユーザーや、エントリーユーザーに対してもスタイル同様強く訴求できるカメラに仕上がっている。
今回、その主要な機能を一通り見てきたが、次回は実写編と称しdp2 Quattroの描写をじっくり見ていくことにする。