インタビュー

「SIGMA dp Quattro」の新技術

“きちんと撮る”必然から生まれたボディデザイン

 シグマが2月に開発発表したコンパクトデジタルカメラ「dp Quattro」シリーズは、新型センサーやユニークなデザインなどで話題になっている製品だ。今回は新型センサーの技術などを中心にシグマで広報を担当しているマーケティング部 マーケティング第2課の桑山輝明氏にお話を伺った。(聞き手:杉本利彦、本文中敬称略)

シグマの桑山輝明氏(広報を担当)

ユニークなデザインの理由

――CP+2014でお披露目され斬新なデザインで話題ですが、まずはこのカメラのコンセプトからお願いします。

左からdp1 Quattro、dp2 Quattro、dp3 Quattroの試作機(以下同)。いずれも発売時期は未定

桑山:DPシリーズは2008年発売の「DP1」から始まりますが、いまは各社から発売されるようになっている大型イメージセンサー(APS-Cサイズ)を搭載したいわゆる「フルスペック・コンパクト・デジタルカメラ」は、当時はまだ他にはなく、「DP1」が先駆けでした。DP1のコンセプトは、本格的な写真表現の機会をより日常的なものにしようといったものでした。

DP1(2008年発売)

 以来DPシリーズは同様のコンセプトのもとに作られており、今回の「dp Quattro」についても基本的な考え方は同じで、作品作りカメラとしての方向性をより先鋭化しています。

 これをふまえたうえで今回のdp Quattroでは、新開発のイメージセンサーを採用し、解像感をさらに向上させるとともに、“写真を撮るための道具”として研ぎ澄ませ、シグマの写真哲学を具現化しました。

――旧タイプからデザイン、イメージセンサーともドラスティックな変化が感じられますが、変革を求めた理由は?

桑山:ドラスティックな変化というよりは、従来の路線の正常進化の結果なんです。Quattorセンサーは、あくまで画質向上を目指しているというところは変わらず、その画素数増加に伴う課題を解決したものです。ボディのデザインは、「きちんと撮るカメラ」「コンパクトネスよりもしっかりとしたホールド性を優先」というところは以前から持っているコンセプトで、今回はそのコンセプトに原点回帰致しました。

 また、レンズの光軸上にホットシューや液晶モニター、三脚穴を設けるといったこだわりも継承していますので、変更点だけでなく継承している部分も多いのです。

液晶モニター、ホットシュー、三脚穴をレンズ光軸に合わせて配置している

――グリップがやや大型で、通常とは逆に後側にグリップが張り出したユニークなフォルムを提案されていますが、握りやすさの点では意見が分かれそうですね。

桑山:グリップ部にバッテリーを格納しているためその大きさがそのままグリップの大きさになっています。dp Quattroは、解像力がさらにアップしているので、ブレに注意しなければなりません。左手でカメラとレンズ部分を支えて頂き、右手を添えるようにホールドしますと、安定感がありかつ操作しやすくなると思います。

特徴的なグリップ形状となっている

 グリップを前に出すか後に出すかは社内でもいろいろな意見があり試行錯誤した結果、今回はこの形状を選択しました。一般的には、グリップが前に出ているカメラが多いので、それに慣れている方がdp Quattroのグリップを握ると多少の違和感を感じられる場合もあると思いますが、左手でしっかりとカメラを支えると握りやすく感じて頂けるのではないかと考えています。

――なるほど。右手だけでグリップを持って構えるとすこし違和感がありますが、左手をメインにホールドして、右手を添えるようにすれば非常に安定感があり、握りやすくなりますね。ところで、グリップとレンズ部までの距離が結構あり、ボディがかなり薄くなっていますがこれはデザイン優先でこうなっているのですか?

桑山:いいえ、デザイン優先ではありません。必然的にこのような形になりました。dp Quattroの高画素を処理するには他社のフラグシップ一眼レフクラスの画像処理能力が要求されますので、当然中身もAFE(アナログフロントエンド)4個、2Gbit DRAM2個、4Gbit DRAM2個、前段処理チップ(FPGA)、後段処理チップ(TRUE III)といったフラグシップ一眼レフクラスと同等のものを中に入れなくてはなりません。そのため、従来機では基板を前後2枚構成にしていたのですが、その結果ボディが多少厚くなってしまっていました。

 しかし、今回は小型化だけでなく基板を1枚にしたいという要求がありました。1枚の基板で従来の基板2枚分の内容を搭載するとなると、必然的に面積が上下に増えるか、左右に増えるかになります。そこで今回は右に伸ばしたレイアウトにすることで解決しました。基板を横長の1枚にした結果、本体を薄型にすると同時に高さを抑えることもできました。

グリップを除くとボディ部は従来よりも薄い
グリップにはバッテリーが収まっている

――ボディが薄くなった分、レンズ部分はやや大型になっていますね。

桑山:これは第一に、レンズ径を意図的に大きくすることで、必然的に左手の指でレンズを押さえて手のひらでカメラを支える構え方になりますので、カメラをより安定させることができます。また従来のDPシリーズでは、AF時のレンズ駆動をボディ側のモーターから行っていたのですが、dp Quattroでは、レンズ径を大きくしたことで、レンズ内に駆動用モーターを組み込むことができました。

 また、AF補助光もレンズ前面に組み込むことができ、暗い場所でもより効果的にAFが動作できるようにしています。駆動モーターやAF補助光をレンズ側に組み込むことで、このような薄型ボディにすることができました。

――レンズフードやケースなども非常に洗練されたデザインで一体感がありますね。

桑山:これは最初にdp Quattroの形が決まった後、これに調和するようにデザインしました。フードのマウント部分には切り欠きがあり、装着すると窓が開いたようになるのですが、これは光学ファインダー使用時に多少なりとも向こう側が見えるように配慮した結果です。また、フードのベースはdp Quattroの1、2、3で共通なのですが、3では遮光範囲を広げるためエクステンションフードを先端に取り付けるようになります。

ケース、フード、外付けファインダーを装着したところ

 ケースのほうも、デザイン上違和感がなく、付加価値を感じて頂けるような仕上がりになっています。

――バッテリーがやや大きくなっているそうですが、撮影可能枚数はどれくらい増えていますか?

桑山:撮影枚数についてはまだ開発途中なので正式に公開しておりませんが、約200枚程度になります。

解像力を上げながらデータ量を減らす仕組み

――続いてイメージセンサーについてお聞きします。新開発の「Quattro」センサーとはどのようなセンサーですか?

桑山:世界初の三層構造のFoveon X3フルカラーイメージセンサーを搭載したのは2002年に発売したSD9です。

「SD9」「SD10」の有効画素数約340万画素×3層=1,020万画素で解像度は約680万画素相当、「SD14」「SD15」の有効画素数約460万画素×3層=1,400万画素で解像度は約920万画素相当、そして「SD1」「SD1 Merrill」の有効画素数約1,500万画素×3層=4,600万画素で解像度約3,000万画素相当と、これまでカメラのメジャーなモデルチェンジごとにイメージセンサーの画素数を増やし、解像度を高めて来ました。

 今回もさらなる高解像度を求め画素数を増やそうとしましたが、Foveonが3層構造であるために、当然3倍のデータ量になってしまいます。画像処理や保存に時間がかかったり、画像処理エンジンをフルパワーで動かすためバッテリーの持ちが悪かったりしてしまい、快適に撮影できるカメラでなくなってしまいます。それは避けなければといった思いがありました。

Quattroセンサー
Quattroセンサーの概念図

 この分光特性チャートを見ていただくとおわかりになるようにFoveonセンサーは、幅広い分光感度特性を持っています。例えば、トップ層では、Bに1番感度を持っていますが、GとRにも感度を持っていますね。つまりB以外にもGやRがどれくらいの値を持っているかという情報も捉えているのです。

 このFoveonの特性を利用してトップ層でブルーの色情報と同時に解像情報を取得し、その解像情報をTRUE IIIでミドル層のGとボトム層のRに載せて処理をすることで、4:1:1(BGRの順)から4:4:4のフルカラーの画像情報を得ることができました。これによって有効画素数を1,960万画素+490万画素+490万画素、合計で約2,900万画素に抑えつつ、高解像のデータを得ることができました。

分光特性チャート。各層の感度が他の色にも及んでいるのがわかる

――Merrillなどオリジナルの3層式からすると解像感が落ちたり、偽色が生じたりするのではないですか?

桑山:3層構造で色情報を得る基本思想そのものには変わりはなく、存在しない情報を補う「補間」はありません。そのため、偽色が発生することはございません。また同じロケーションの色情報と解像情報を掛け合わせるので色解像度が落ちることはありません。

――RAWデータは約2,900万画素(5,424×3,616)ですが、JPEGでは久々にSUPER-HIGHモードが復活して3,900万画素(7,680×5,120)の記録ができるようになりました。これはどのような意図からですか?

桑山:弊社のカメラをお使いのお客様の多くは、RAWで撮影してパソコンで現像されていますが、中には高解像度のJPEG画像をすぐに使いたいと言うお客様もいらっしゃいますので、そのご要望にお応えするために設けました。

 また、先ほどから解像度のお話をしていますが、一般的なカラーセンサーでは、解像情報をGから得ていますのが、全体の画素数の50%の情報にあたります。Foveonは、100%の情報を持っていることになりますので、平面上で同じピクセル数であれば、Foveonは2倍の解像度がある事になります。今回はトップ層で1,940万画素の解像情報(輝度情報)を持っていますので、約3,900万画素相当の解像があると言えます。その解像度のJPEGを出力したといった側面もあります。

――高感度画質は向上していますか? DP MerrillシリーズではISO400くらいが限界に感じました。

桑山:Quattroセンサーは、1:1:4の構造を採用することで、ミドル層とボトム層の画素がMerrillセンサーより大きくなっていて、シチュエーションにもよりますが、最終的には従来比で1段分くらいの改善が見込まれまれる予定です。例えば従来ISO400が限界と感じられたお客様は、ISO800くらいまではお使い頂けると思います。

――以前お話をお伺いしたとき、性能を維持したまま画素数を上げるなら、センサーサイズを大型化(35mmフルサイズ化)するのが自然なのではと意見しましたが、今回も同じことをお聞きしたいと思います。

桑山:以前のお話の際も、センサーをフルサイズ化すること自体は技術的に可能であることをお答えしたと思いますが、それは現在でも変わりません。しかし、当時はセンサーを大型化して画素数を上げても、データ処理量が膨大な量になることもあって、あまり現実的ではないと考えておりました。しかし今回、1:1:4のQuattro方式が開発されたことで、データ量を抑えながらもピクセルサイズを増やすことができるテクノロジーを手に入れたので、可能性としては出てきたと考えています。

――旧タイプと比べてセンサーの分光特性に違いはありますか?

桑山:基本的には変わりません。

新画像処理エンジンでレスポンスも向上

――画像処理エンジンが新しくなっていますが、処理スピードは向上していますか?

桑山:はい。今回のdp Quattroには新開発の「TRUE III」エンジンを搭載していますが、基本的な処理能力を向上させた他、Quattro方式に最適化して処理の高速化を実現しています。

新画像処理エンジンのTRUE III

――有効画素数的にはMerrillより減っているので、処理は軽いのではないですか?

桑山:有効画素数は、1:1:4構造の採用により、2,900万画素と軽くなっていますが、Merrillの12bitに対して、Quattroでは14bitの処理を行っていますので、実際のデータ量としてはそれほど変わっていません。また、今回はトップ層の輝度情報と、ミドル層、ボトム層の情報(1:1:4)から4:4:4にするプロセスが加わりますので、トータルの処理量は増えているのですが、全体として処理が高速化されています。実際にお使い頂きますと、書き込みが終わるまでの時間は短くなっていますので、レスポンス性が向上している点は実感して頂けると思います。

――色再現や階調など画像処理の味付け部分での変更はありますか?

桑山:どちらかと言うと、光源によって左右されないように安定した色再現をめざして画像処理を行っています。様々な光源下や異なった機種間でも変化が無いように追い込む予定です。

――シネマ、サンセットレッド、フォレストグリーン、FOVクラシックブルー、FOVクラシックイエローのカラーモードについて簡単に教えてください。

桑山:基本的にはカラーモードのバリエーションが増えたと考えて頂いてよいのですが、以前からあるスタンダードやビビッドといった標準的な色再現とはやや異なり、エフェクト的な色再現が得られます。

カラーモードが増えた

 シネマは彩度をやや下げてシャドウを持ち上げた映画のようなイメージ、サンセットレッドは夕焼けの赤を強調し、フォレストグリーンは新緑をイメージしています。FOVクラシックブルーはSD9時代の個性的な青色の再現を現代風にアレンジして復活させたもので、当時の色再現を好むお客様のご要望にお答えしました。FOVクラシックイエローは、同様に黄色の色再現を強調したモードになります。

従来機とレンズは変わるのか?

――dp QuattroシリーズのレンズはDP Merrillシリーズのものと同じですか?

桑山:2と3のレンズはDP Merrillシリーズと全く同じものを採用しています。1ではQuattroセンサーに合わせて若干特性を変えています。

19mm F2.8(約28mm相当)レンズのdp1 Quattro
30mm F2.8(約45mm相当)レンズのdp2 Quattro
50mm F2.8(約75mm相当)レンズのdp3 Quattro

――レンズを一体型にするメリットは?

桑山:レンズ交換の必要がありませんので専用の高性能レンズが設計できるメリットがあります。また、レンズの結像面とセンサー面をほぼ完璧にアライメントができるのです。

――ということは、DPシリーズでは1台ずつレンズユニットとボディ部分のアライメントをとっているのですか?

桑山:そうです。全てのカメラでアッセンブリラインで光軸とイメージセンサーを調整しています。そのおかげでDPシリーズは、画面の中心から周辺まで均一なディテールが出ると評価を頂いています。

――「dp2 Quattro」の30mmレンズは、ミラーレス用の「30mm F2.8 DN」とはどのあたりが異なりますか?

桑山:レンズ設計の思想は同じですが、フォーカス方式が異なります。Quattroのレンズは、レンズシャッターである事を活かす繰り出し式ですが、30mm F2.8 DNは、インナーフォーカスを採用しています。

――画像処理で、レンズの収差補正等はやっていますか?

桑山:カメラ内ではそういった処理は行っていません。RAW現像ソフトの「SIGMA Photo Pro」ではレンズの収差補正に対応していますが、DPシリーズのカメラをご使用の方で収差補正の機能を利用されている方は少ないと思います。

――MTFが非常に優秀ですね。これは以前発表されたMerrillセンサーを使ったMTF測定機「A1」で計ったものですか?

桑山:A1で測っていませんが、レンズ一体型のボディということもあり、Quattroセンサー測定しています。

――最近シグマが公開したMTFデータは、波動光学的MTFと幾何光学的MTFがありますが、この違いは?

桑山:光の波動的性質は光の回折現象として現れ像の解像度を低下させる原因になっています。この光の波動的性質を考慮した「波動光学的MTF」と、考慮しない「幾何光学的MTF」の2つがございます。シグマでは当初から実際の撮影データに近い「波動光学的MTF」を掲載しておりましたが、今後は「幾何光学的MTF」も掲載してまいります。

dp2 Quattroの波動光学的MTF
dp2 Quattroの幾何光学的MTF

――他メーカーではレンズ性能は幾何光学的MTFだけなのに比べて、周辺光量低下や歪曲収差のデータなども発表されていて、ユーザーにはありがたいですね。

桑山:お客様に製品を選んでいただくときの参考になるようできる限り情報は提供したいと考え、2年ほど前から各種データを公開しています。

ケーブルレリーズにも対応

――レリーズタイムラグは向上していますか?

桑山:Merrillシリーズとほぼ同等です。

――AFスピードは向上していますか?

桑山:被写体や条件にもよりますが、Merrillシリーズと比べておよそ1.4倍ほど速くなっています。

――動画撮影は可能ですか。

桑山:今回は、静止画のクオリティを上げることに専念するために動画機能は搭載しておりません。

――ライブビュー機能は進化していますか?

桑山:はい、表示関係の画像処理が最適化され、よりきれいで見やすくしています。また、今回新たに追加された機能として、電子水準器が搭載されました。

――レンズシャッターのメリットは?

桑山:一眼レフのようにミラーの動きによるショックがありませんし、フォーカルプレーンシャッターに比べてショックが少なく、カメラブレが少ないといったメリットがあります。

――絞りによって最高シャッタースピードが変わるとありますがこれはなぜですか?

桑山:レンズシャッターでは、構造上シャッターが閉じた状態から特定の状態に開くまでの時間がF値によって異なります。例えばF16とF2.8を比べると、シャッターを開いてから閉じるまでの時間がF2.8の方が長くかかります。

そのため、F2.8〜F3.5では1/1250秒まで、F4〜F5では1/1600秒まで、F5.6〜F16では1/2000秒になります。

――操作体系に変更はありますか?

桑山:操作系自体は大きくは変わっていませんが、クイックセットを一画面にしたり、グリップ上面に2つのダイヤルを設けたりして、操作性を向上させています。

グリップ上部にダイヤルを2つ設けた

 例えば絞り優先オート時に前ダイヤルで絞り調整を行い、後ダイヤルで露出補正を行うなど、従来は十字キーを使っていた露出関連の操作がダイヤル操作だけでできるようになりました。

 また、クイックセットについても、従来の2画面から1画面になり、素早いアクセスが可能になりました。

――外付けの光学ビューファインダーも新しくなっていますね。

桑山:以前は角形のビューファインダーでしたが、今回は丸形のデザインを採用しています。大型でとても見やすいファインダーに仕上がっています。

外付けの光学ビューファインダー

――ケーブルレリーズが使えるようになっているようですね。

桑山:はい。夕景、夜景の撮影の他に、接写が可能なDP3でブツ撮りをされるお客様から、セルフタイマーの撮影では使いにくいため、ケーブルレリーズが欲しいといったご意見を頂いておりましたので、今回USB端子に接続できるレリーズを作りました。

――その他、進化している部分がありましたら教えてください。

桑山:SIGMA Photo Proが、dp2 Quattroの発売に合わせて新しくなり、バージョン6.0になります。QuattroのRAWデータに対応した他、インターフェイスもより使いやすくなる方向で開発を進めています。

 例えば、現バージョンでは、画像のパラメータを変更してもサムネイルには反映されなかったのですが、新バージョンでは、レビューウィンドウで調整した値がメインウィンドウのサムネイルの画に反映されます。簡単な例では、カラーで撮影した画像でもSPPでモノクロームモードに変更した場合、サムネイルがモノクロになります。

 また、調整値は3つまでX3Fファイル(RAWファイル)に保存することができます。その他にもメインウィンドウのサムネイル表示が速くなっていたり、調整パレットのダイアログを2つに分割し、スクロールしたり、レビューウィンドウとドッキングができるようになったりします。またルーペを固定できるようになりましたので、ルーペで拡大した部分を見ながらシャープネスの調整することができます。

――ソフトの動作は速くなっていますか?

桑山:これまでメイン画面のサムネイル表示は枚数が多いとかなり時間がかかっていましたが、今回は枚数にもよりますが、ほぼ瞬時に表示できるようになっています。また、レビュー画面を開いてもバックグラウンドでサムネイル表示が完了するまで動作が重かったのですが、それはなくなりましたので、全体として動作が速くなっています。

――この次はどうしてもレンズ交換式のミラーレス機の要望が強くなると思います。個人的にはフルサイズのミラーレス機に期待しています。

桑山:DPシリーズの当初から、「このままレンズが交換できればいいのに」とおっしゃるお客様はたくさんいらっしゃいます。しかし、新しいマウントを作るとなると開発のリソースも必要になりますし、超えなければいけないハードルはたくさんありますね。

―インタビューを終えて―

今回の「dp Quattro」シリーズでは、まず斬新なデザインが目を引くのだが、インタビューを通して基本的なフォルムがデザイナー主導で決まったのではなく、技術的な背景や必然性から生まれたものであることが明らかになった。

一方、新開発の「Quattro」センサーの第一報を受け取ったとき、筆者は純正の3層センサーから一歩後退したかに思えた。しかし、第1層でB情報と輝度情報に加え、分光感度のあるGとRの参照情報も取得していて、後段のGとRの画素数が1/4になったとしても、全画素従来の3層式と同じRGB情報を再現できるという説明を聞き、それが誤解であることもわかった。

結局のところ、全画素で輝度情報を採取できているという時点で解像度は確保されるはずなので、あとはGとR信号の正確さが問題になるだけだが、それもかなりの確度で特定できるということだろう。

カメラの完成には今しばらく時間がかかるとのことであったが、あの「DP Merrill」シリーズを上回る解像感が得られるとのことで今から試写が楽しみだ。(杉本利彦)

杉本利彦

千葉大学工学部画像工学科卒業。初期は写真作家としてモノクロファインプリントに傾倒。現在は写真家としての活動のほか、カメラ雑誌・書籍等でカメラ関連の記事を執筆している。カメラグランプリ2013選考委員。