新製品レビュー

SIGMA dp2 Quattro(実写編)

あのFoveon画質がさらなる高みへ。JPEG撮って出しも進化

発売は6月27日。本稿執筆時点での店頭予想価格は、税込10万9,620円前後。

「SIGMA dp2 Quattro」はこれまでのDPシリーズから大胆に変化したカメラである。

直方体であったボディシェイプは、独特の形状のグリップを持ちサイドに大きく広がったものへ。ボディのつくりも従来とは異なり、質感および剛性感とも格段に向上している。

操作部材のレイアウトについても、ユーザーの視点に立った隙の無いものだ。

さらに心臓部であるイメージセンサーには、新開発のFoveon X3 Quattroセンサーを採用。画像処理エンジンも最新のTRUE IIIとし、同社が現在持ち合わせるテクノロジーを惜しみなく注ぐ。

従来DPシリーズといえば、書き込み速度の遅さがウィークポイントであったが、それについても大きく改善されている。

前回掲載の「機能編」では、そのような部分を中心に見ていった。今回は実写編と称し、dp2 Quattroの絵づくりを見てみることにしたい。

※注記のない限り、SIGMA Photo Pro 6でストレート現像したJPEGを掲載しています。

遠景

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

遠景の作例で、最初に驚かされるのが開放絞りF2.8の描写。画面の隅々までたいへんキレのよいものである。

開放値での描写というと、古いレンズはともかくとしてデジタルに最適化された最新のレンズでも周辺部は描写の甘さや、シャープネスの低下など見受けられることも少なくない。

しかし、本レンズにはそのようなところなどまったくなく、圧倒的ともいえる描写である。もちろん、Foveonセンサーの特性に担うところも大きく、あらためて同センサーのスゴさも知らしめる。

しかもF5.6までは絞り込むごとにシャープネスがさらに向上。描写のピークはF8あたりで、それよりも絞り込むと回折現象により次第に解像感がわずかずつではあるが低下していく。

なお、dp2 Quattroの最高シャッター速度は、開放F2.8の場合1/1,250秒、絞りF4では1/1,600秒、F5.6以上では1/2,000秒。そのため、掲載した作例では、開放絞りのものが露出オーバーとなってしまったことをご承知おき願いたい。

また、原因は不明だが、同じ露出でありながら作例により濃度に微妙なバラツキが出てしまっている。これについては改善を望みたいところだ。

ボケ

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味については、二線ボケや乱れのようなものはなく、単焦点レンズらしい柔らかく素直なものだ。合焦面からのボケの始まりも急激なものではなく、ナチュラルな印象である。

ただし、35mmフルサイズ判換算45mm相当の画角とはいえ、実焦点距離は30mm。さらに開放値がF2.8であることから、被写体を鮮明に浮き立たせるような大きなボケは得られにくく、その点に期待していると拍子抜けするユーザーもいるかも知れない。

こちらの作例についても、開放絞りはシャッター速度の関係からわずかに露出オーバーになっている。また、その他の絞りの作例についても同じ露出ながら濃度にばらつきが散見される。

高感度

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

Foveonセンサーの高感度の弱さはよく知られた話だ。代を重ねるごとに改善されてきてはいるものの、それでも似たようなスペックを持つベイヤー配列のイメージセンサーには正直及ばない。

dp2 Quattroについても同様で、ISO400まではノイズレベルは低く解像感の低下もまったく感じられないが、ISO800になるととたんにノイジーになり、解像感も大きく低下する。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

東京タワーを写した作例をご覧いただくとそのことが分かりやすい。Foveonセンサーの高感度特性については同社も認識していることなので、決してなおざりにしているわけではないだろうが、有効な改善策を早急に見いだしてほしく思える。

「低感度でじっくり腰を据えて撮る」、それがFoveonセンサーの描写を活かす現時点での楽しみ方といえるだろう。なお、ISO800以上では条件によってホワイトバランスが不安定になるのが気になった。

近距離

最短撮影距離は0.28m。最短撮影距離におけるボケ味については前述したとおり。ナチュラルで色の濁りなどよく抑えられている。本モデルに対応するクロースアップレンズのリリースがあれば、撮影のバリエーションはより広がるだろう。

AFの速さについては、APS-Cサイズのイメージセンサーを積むカメラとして不足のないものだ。

さすがに近接撮影のときデフォーカスからのAFは手間取るが、ライバルも似たり寄ったりであることを考えると落胆するようなものでもないだろう。

フォーカスポイントは9点のなかから1点を選択する9点選択モードと、任意の位置にフォーカスポイントを移動できる自由移動モードから選択できる。個人的にはスナップ撮影用として、9点のフォーカスポイントを自動的に選択するオートがあるとより便利に思える。

RAW VS JPEG

RAWから現像
JPEG撮って出し

撮って出しのJPEGの画質を見ていこう。

FoveonセンサーはRAWではじめて真価が発揮されるといわれる。実際、撮って出しのJPEG画像とRAWから生成したJPEG画像を比較するとそのことに異論はなく、特に階調再現性は圧倒的にRAWのほうが勝る。

RAWから現像
JPEG撮って出し

ただし、モデルチェンジを行う度にJPEGの画質も向上してきている。新しいdp2 Quattroも例外ではなく、特にハイライト部の階調再現性などRAWからJPEG画像に生成したものと遜色ない仕上がりが得られることが多い。

また、絵づくりにしても違いを見つけるのは難しくなってきている。

RAWから現像
JPEG撮って出し

とはいえ、及ばないところがまだあるのも事実。ブーゲンビリアを写した作例を見れば一目瞭然だが、赤系の色などは未だに撮って出しのJPEG画像で飽和してしまうことが多い。

JPEGでの撮影が多いユーザーは、状況に会わせてRAWに切り換えるか、RAWとJPEGの同時記録を行うのが好ましいように思える。

白とび軽減機能

白とび軽減ON
白とび軽減OFF

トーンコントロール

トーンコントロール強
トーンコントロール弱
トーンコントロールOFF

まとめ:圧倒的な高画質がさらに進化

高感度特性に関しては飛躍的な向上は見られなかったが、低感度域における描写はさらに磨きのかかったdp2 Quattro。

特に絞り開放でも画面隅々まで高い鮮鋭度を得られる点は圧倒的で、他の追従を許さない。

加えてJPEGフォーマットでの画質もこれまでを凌ぎ、撮って出しの画像でも満足いく結果が得られることが多い。

大きく改善された操作性や、速くなった書き込み速度など使い勝手も飛躍的に向上する。

これまでもコンパクトなDPシリーズで本格的に作品撮りを楽しむ写真愛好家は少なくなかったが、本モデルではますます拍車のかかることだろう。

今後28mm相当のレンズを搭載する「dp1 Quattro」、75mm相当の「dp3 Quattro」のリリースも発売時期こそ未定ながら予定されている。どのdpを手に入れるか、はたまたすべてを手に入れるか、あれこれ悩むのも楽しい。

作品集

ピントの合った部分の鮮鋭度は圧倒的。立体感もより際立つ。じっくりと被写体と対峙する撮影に適したコンパクトデジタルである。絞り優先AE / 1/1,600秒 / F4 / -0.33EV / ISO100 / ±0EV
Foveonセンサーらしい色乗りのよい絵づくり。しかも画面の四隅も中央部と変わらぬ解像感の高さを誇る。絞り優先AE / 1/500秒 / F5.6 / -0.66EV / ISO100 / ±0EV
質感描写に優れているのもFoveonセンサーならでは。ハイライト部は白トビしやすいので、明暗差のある被写体の場合露出に注意したい。絞り優先AE / 1/400秒 / F2.8 / ISO100 / ±0EV
作例を見るかぎり、ディストーションや色のにじみなどは見受けられない。レンガ調の壁の微妙な色あいもしっかりと再現している。絞り優先AE / 1/125秒 / F8 / ISO100 / +0.33EV

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。