新製品レビュー
OLYMPUS STYLUS 1
サブにもメインにも、満足度の高い高倍率ズーム機
Reported by 大浦タケシ(2013/12/19 08:00)
このところ、大型のイメージセンサーと優れた描写特性のレンズを特徴とするハイエンドコンパクトや、高倍率ズームレンズを備えたEVF内蔵のレンズ一体型カメラに勢いがある。廉価なコンパクトデジタルカメラに元気がない中、これらのカメラに対する各社の力の入れようは並々ならぬものだ。
今回ピックアップした 「OLYMPUS STYLUS 1」も、高精細なEVFと大口径高倍率ズームレンズを搭載したレンズ一体型カメラである。どこかで見たことのあるようなボディシェイプも印象的だ。
早速STYLUS 1の電源ボタンを入れてみる。間髪おかずにレンズバリアを開いて鏡筒が繰り出し、液晶モニターが点灯する。レンズはワイド端28mm相当から始まる光学10.7倍ズームで、テレ端は300mm相当の画角となる。レンズ一体型としてはさほど欲張ったズーム比ではないものの、その代わりとして全域で開放F値F2.8を実現する。
電動ズームレンズのズーミングは、シャッターボタンと同軸とするズームレバーのほか、カメラ正面右側のエプロン部に備わるズームレバーでも行なえる。コンパクト機からステップアップしたユーザーなら、シャッターボタン側のズームレバーが指に馴染みやすく、一眼レフのユーザーなどはレリーズに集中できるエプロン部のズームレバーでも使い勝手がよいように思える。さらにエプロン部のズームレバーについては、カスタムメニューでズーム速度を標準と低速度から選ぶことができるのも便利だろう。
レンズ根元にはコントロールリングが備わる。このリングの特徴は、Fn2ボタンと同軸のコントロールレバーの切り替えによって機能が変わることだろう。デフォルトでは、絞り優先AEの場合は絞りとMFに、シャッター優先AEとマニュアル露出の場合はシャッター速度とMFに、プログラムAEのときはプログラムシフトとMFに切り換わる。しかも露出機能のときにはクリックがあり、MF時にはクリックがない滑らかな回転となる。
このハイブリッドコントロールリングは同社のコンパクト機「STYLUS XZ-2」でも採用されている機構だが、その使い勝手のよさに改めて感心させられる。さらにトップカバーに備わるサブダイヤルも具合がいい。P/A/SのAEモード時は露出補正ダイヤルとして、マニュアル露出では絞りダイヤルとして直感的で迅速な設定を可能としている。
EVFもレンズ一体型としてはグレードの高いものが奢られる。解像度は144万ドット。高精細であるうえにコントラストが高く、画面サイズも大きい。オマケ程度のEVFとは別次元の見え具合といっても差し支えないだろう。さらに実際の被写体の動きとファインダー画像とのタイムラグも抑えられており、シャッターチャンスを見逃すようなことも少ない。
レンズ一体型のカメラでEVFを使うか使わないかは、主にその“見え”に左右されることが多いと思われるが、本モデルの場合は積極的にアイピースに接眼して写真を撮ってみようという気分になる。一方の背面モニターについては3型、104万ドット。チルト機能により上方向に80度、下方向に50度可動する。
撮像素子には1/1.7型有効1,200万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用。高感度特性など、クラスとしては不足のない描写が得られる。個人的にはもう一回り大きなイメージセンサーだったらと思わなくもないが、ボディサイズやレンズスペックのバランスを考えると1/1.7型が妥当なところなのだろう。ベース感度はISO100、最高感度はISO12800としている。連写速度は最大7コマ/秒。
レンズは前述しているとおり光学10.7倍ズームの“F2.8通し”とする。この場合の開放値のメリットは、実焦点距離を考えるとボケの大きさよりも、アベイラブルライトでの撮影の可能性の高さや、より速いシャッターが切れることなどといってよいだろう。実際、強力な手ブレ補正機構と相まって、ブレの発生をさほど気にせずに済み、安心して撮影に臨める。
さらにレンズ収納時の鏡筒はコンパクトに納まり、コントロールリングと同じ高さになる。とても28-300mm相当のレンズが収まっているとは思えない大きさだろう。これもひとつには1/1.7型の撮像素子を採用するバランスゆえに実現できたものといえるだろう。光学系には非球面レンズやEDガラスなどがふんだんに用いられるほか、3段分の減光効果のあるNDフィルターも内蔵。明るい屋外でも開放絞りの撮影が気軽に楽しめる。
描写特性については開放から不足のないもので、高倍率ズームにありがちな周辺減光や解像感の低下などがよく抑えられている。ズーム全域で画面周辺部の描写は良好で、際立った色のにじみや像の流れのようなものもほとんど見当たらない。逆光でもフレアの発生は少なく、ゴーストも最小限といってよいレベルだ。ディストーションについては掲載する画像を見ていただければ分かるとおり、ワイド端で弱いタル型が、テレ端では極めて小さな糸巻き型が見受けられる。
高感度特性については、現時点での1/1.7型センサーとしては申し分のないもので、ISO800までならノイズはさほど気にならない。無理して画素数を追わなかったことが功を奏しているのだろう。
STYLUS 1の主だった機能のひとつといえば、Wi-Fiの搭載だ。スマートフォン用のアプリ「OLYMPUS Image Share」と連携させることで、カメラに装填したメモリーカードの画像を転送したり、スマートフォンを使ったリモート撮影が可能。単にレリーズできるだけでなく、ズーミングなども可能だ。
加えて写真の加工やスマートフォンのGPS機能を使った位置情報の画像への付加もできる。初期設定も簡単で、カメラの背面モニターに表示されるQRコードをスマートフォンで読み取るだけ。筆者個人としては、Wi-Fi機能を有効に使うには初期設定に手間がかからず、その後の接続操作もイージーであることが肝と感じているが、まさにそれに沿うカメラである。FacebookなどSNSを楽しんでいるユーザーは必見のカメラだ。
同社カメラでお馴染みのアートフィルターは11種類を搭載。このところオリンパスユーザーから高い支持を得ているドラマチックトーンやリーニュクレールももちろん搭載されている。
また、面白く感じられたのがフォトストーリー機能。すでにXZ-10などに搭載済みのものだが、撮影を行なうとあらかじめ設定したレイアウトの枠に画像を組み込み1枚の画像とする。レイアウトの枠は2パターンあり、それぞれストーリー仕立ての写真が楽しめる。ただし、惜しむらくは撮影した画像からフォトストーリーを生成することはできないことだろう。撮影に集中しているとついついそのような機能があることを忘れてしまうことも少なくない。アートフィルターなども含め後処理でも対応できるようになると、より手軽に楽しめるように思われる。
OM-Dシリーズとたいへんよく似たシェイプを持つボディは、ホットシューを備えるペンタ部や自己主張しすぎないグリップなども含め、レンズ一体型機としてどこか親しみの持てるデザインだ。しかも明るい開放値のズームレンズや見やすいEVFの搭載など、カメラとしてのスペックも申し分なく、アートフィルターなど撮ることが楽しく感じられる機能も多数搭載されている。サブ機を物色している写真愛好家にも、あるいはこれ一台で完結したいユーザーにとっても、ともに高い満足度を得られるカメラといってよいだろう。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
・画角
・周辺減光/歪曲
・仕上がり設定
・アートフィルター
・フォトストーリー
・作例
【11時10分】記事初出時、画角作例のキャプションに「望遠端(200mm相当)」と記載していましたが、300mm相当の誤りでした。