【新製品レビュー】カシオEXILIM EX-ZR200
起動や撮影間隔といったレスポンスの良さに加えて、「背景ぼかし」や「HDRアート」などの機能を備えたEXILIM EX-ZR100(2011年3月発売)の後継モデル。撮像素子には1/2.3型裏面照射型CMOSセンサーを採用。有効画素数は前モデルの1,210万画素から1,610万画素にアップしている。画像処理はマルチコアCPU搭載のEXILIMエンジンHS。
カラーバリエーションはブラック、レッド、ブルー、ホワイトの4色が用意されてる。大手量販店の店頭価格は4万4,800円前後。
■サクサク撮れるレスポンスの良さ
基本的なデザインや操作部材のレイアウトは前モデルから変わっていない。前面の右手側にわずかながら膨らみがあって、指がかかる部分に滑り止め(硬質ゴムみたいな感触)が貼られている。右手だけでもわりとしっかりホールドできるのはいいと思う。電源ボタンは上面にあるが、背面の「撮影ボタン」「再生ボタン」でもオンにできる(オフにするには電源ボタンを押す必要がある)。
起動時間は公称で0.98秒。コンパクトデジタルカメラとしては速い部類に入るだろう。AFは広角端はかなり速くて(公称値は0.13秒)ほとんどストレスを感じない。が、300mm相当の望遠端はそれなりに時間がかかる。とはいえ、撮影間隔が短くてサクサク撮れるのは気持ちがいい。
搭載レンズは24-300mm相当F3-5.9の光学12.5倍ズーム。全体的に少々暗めのスペックだが、サイズと倍率を考えれば文句はない。最短撮影距離は広角端がレンズ前5cm、望遠端が90cmで、もっとも寄れるのは38mm相当のポジションで1cmまで(スーパーマクロ時はこの焦点距離で固定となる)。オートマクロ機能があるので、通常モードのままマクロ域まで寄れるが、接写時はマクロモードに切り替えたほうがピントが合うまでの時間は短縮できる(通常時は遠距離側優先でピントのスキャン動作を行なうのに対して、マクロ時は近距離側優先となるため)。
撮像素子は前述のとおり、1/2.3型裏面照射型CMOSセンサー。有効画素数は有効1,610万画素。感度面で有利とされる裏面照射型とは言え、このサイズで1,610万画素ともなると、ベース感度はISO80と高くない。最高感度はISO3200までとなっている。
一応、絞り優先AEやシャッター優先AE、マニュアル露出も備えているが、絞り値が2段階しかない(広角端ではF3とF7.9、望遠端ではF5.9とF15.4のみ)ので、それほど意味があるとは思えない。ということもあって、作例は基本的にオートモード(プログラムAEとなる)で撮影した。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。内蔵メモリは52.2MBある。実写での平均ファイルサイズはフル画素の高精細モードで7.7MB程度なので、6コマ程度撮れる計算となる。
電源は容量1,800mAhのリチウムイオン電池NP-130。CIPA基準の撮影可能コマ数は約480コマとなっている。撮影日は多少冷え込んだ関係でバッテリーには苦しい条件だったが(最後のほうは残量表示が赤色になってたけど)、それでも350コマほど撮れた。
ボディ前面の右手側には硬質ゴムのような滑り止めが貼られている。おかげで片手でもわりとしっかりホールドできる | 24-300mm相当の光学12.5倍ズーム。開放F値はやや暗め。センサーシフト式の手ブレ補正機構を内蔵している |
最短撮影距離は、広角端が5cmで望遠端が90cm。38mm相当のポジションでは1cmまで寄れる | 「シングル超解像」を使うと、画質劣化を抑えつつ、最大18.8倍(約450mm相当)までの望遠撮影が可能となる |
有効画素数が1,610万画素に増えたこともあって、ベース感度はISO80に下がっている。最高感度はISO3200まで | 「HDR」「HDRアート」などのポジションもあるモードダイヤル。一応、絞り優先AEとかも用意されている |
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード(ほんとは裏向きに挿入する)。電源はCIPA基準で約480コマ撮れるリチウムイオン電池 | 背面操作部のレイアウト。左側の「撮影ボタン」「再生ボタン」はそれぞれのモードでの電源スイッチを兼ねている |
上面の「HS(連続撮影切替)ボタン」は、高速連写モードのためのもの。その左右の穴はステレオマイクのもの |
■超広角画像が得られる「ワイドショット」
裏面照射型CMOSセンサーならではの高速性を活かした機能が数多く搭載されているのが面白いところ。連写合成を利用した「HDR」(ハイダイナミックレンジ)や「HDRアート」、「背景ぼかし」に加えて、前モデルにはなかった「ワイドショット」も新しく装備した。
「HDR」は5コマ連写した中の3コマを合成する仕様。このモードは静止画オンリーなので動画用のマスクは表示されない | 撮影時には効果が見られないのが惜しいが、楽しい写真が撮れる「HDRアート」。新しく動画も撮れるようになった |
「ベストショット」の「背景ぼかし」。連写合成によって、ピントが合っていない部分をぼかしてくれる |
「ワイドショット」は手法としては連写合成パノラマと同じだが、細長いパノラマと違って4:3比率の写真が撮れる。搭載レンズの広角端が28mm相当のEXILIM EX-ZR15などでは21mm相当または17mm相当の2段階切り替え式だったのに対して、24mm相当からの本機では18mm相当または14mm相当となっている。
パノラマと同様、撮ってる途中で失敗だと叱られる(カメラの振りが遅いとか速すぎとか、ルートから外れたとか)こともあるし、細かい部分がうまくつながってくれてないこともあるが、普通のコンパクトデジタルカメラでは難しい広角表現が楽しめるのはいいと思う。ただし、レンズ交換式カメラの超広角レンズと違って、建物などを撮るとかなり大きな歪曲収差が出るが、逆に魚眼レンズっぽい効果が得られると考えれば悪くない。
また、前モデルにはなかった「HDRアート」を適用しての動画撮影機能も新しく装備した。これも注目したいポイントのひとつといえる。
広角端以上に画角の広い写真が撮れる「ワイドショット」。これも連写合成機能を活用したものだ | 「ワイドショット」はカメラを縦位置にしないといけない。一度縦位置にしてからなら横位置に持ち替えても大丈夫 |
「ワイド1」は18mm相当の超広角となる | グリーンの枠内がレンズの広角端で、ブルーの枠が写真に写る範囲となる |
シャッターボタンを全押しすると、矢印方向にカメラを振るよう指示される。端まで行くと、今度は反対方向に振る。操作自体は簡単だ | 「ワイド2」は14mm相当の超広角となる。 |
「ワイド1」と比べると、ぐっと広い範囲が写るのがわかる |
動画撮影中の画面。フルHD(1,920×1,080ピクセル、30fps)解像度。撮影中に左右キーを押すと「ハイスピード動画」に切り替えられる | 動画の画質モードはFHD(フルHD)とSTD(VGA)の2種類。「HS」が付いているのは「ハイスピード動画」のモードだ |
こちらは再生時の画面。ヒストグラムや撮影データが写真に重なるのが少々見づらい。もうちょっとどうにかして欲しいと思う | インデックス再生は5×5の25コマのみ |
筆者の個人的お気に入りポイントがここ。左右キーだけでダイレクトに「EVシフト(露出補正)」が可能。とても快適なのだ |
■まとめ
スリムなボディに24-300mm相当の高倍率ズームの搭載にレスポンスのよさ、電池の残量を気にせず撮れる長寿命バッテリー。これだけでも本機を選ぶ値打ちは十分にあると思うが、さらに「HDR」や「HDRアート」に加えて「背景ぼかし」「ワイドショット」といった楽しめる機能もいろいろ。カシオらしい盛りだくさんっぷりが本機の大きな魅力だ。
■作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
感度の設定範囲はISO80からISO3200まで。1EVステップでの設定となる。裏面照射型CMOSセンサーが登場した頃には感度の高さが強みと言われていたが、さすがにこのサイズでこれだけの画素数ともなると苦しさは隠せない。ピクセル等倍ではISO80でも若干ノイジーな印象を受ける。安心して使えるのはISO400までで、ISO800ではディテール再現の劣化が目に付く。ISO1600以上は常用は避けたい。
・画角(光学ズーム、超解像、ワイドショット)
光学ズームの範囲は24-300mm相当。広角端で目立ちやすいタル型の歪曲収差は画像処理によって補正されているようで、気になることはない。望遠端は広角端に比べて若干ソフトな印象は受けるが、画面四隅でも安定した画質が得られている。
「シングル超解像」を使うと450mm相当までの超望遠撮影が可能となる。もちろん、デジタルでの処理なので画質劣化はあるが、あまり大きくプリントしないのであれば十分に実用的と言える。
「ワイドショット」はパノラマ機能と同様、連写合成を利用した機能で、ズームの広角端よりも広い範囲を写すことができる。「ワイド1」は18mm相当、「ワイド2」は14mm相当の超広角撮影が楽しめる。つなぎ目が滑らかでなかったり、動くものがブレて写ったりすることもあるし、建物などはまるで魚眼レンズで撮ったかのような歪曲が出るが、そのあたりを割り切れれば面白い機能と言える。
ワイド1(18mm相当) / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F7.9 / 0EV / ISO160 / WB:オート | ワイド2(14mm相当) / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F7.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート |
通常撮影(24mm相当) / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/160秒 / F7.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.24mm | ワイド1(18mm相当) / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/500秒 / F7.9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 4.24mm |
・HDR、HDRアート
前モデル同様、「HDR」「HDRアート」を搭載。前者は5コマ連写したうちの3コマを合成してダイナミックレンジを拡張するもの。後者はさらに特殊効果を施すことでアート系の映像表現を得るもので、効果のレベルを3段階から選択できる。液晶モニターで効果をたしかめながら撮れないのがもうひとつなところだが、印象的な映像になってくれる。
・背景ぼかし
「背景ぼかし」も連写合成を利用した機能で、ピントが合っていない部分のボケが大きくなる。条件によって、うまくいかないケースもあったりするが、センサーサイズの小さなコンパクトカメラで背景のボケた写真が撮れるのは面白い。
通常撮影 / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/30秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 53mm(300mm相当) | 背景ぼかし / EXILIM EX-ZR200 / 4,608×3,456 / 1/320秒 / F5.9 / 0EV / ISO640 / WB:オート / 53mm(300mm相当) |
・動画
動画はフルHD解像度でフレームレートは30fps。音声は内蔵マイクのみだがステレオ仕様となっている。動画撮影中でもAFが働くので、あまり速く動くものでなければピントも追従してくれる。また、「HDRアート」の効果を適用した動画撮影も可能。この場合、HD解像度になってしまうが、独特のポップな色合いが動画でも得られるのだから見逃せない。
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
【動画】EXILIM EX-ZR200 / 47.8MB / 動画(FHD) / 1,920×1,080 / H.264 / 0EV / WB:オート |
【動画】EXILIM EX-ZR200 / 23.1MB / 動画(HDRアート) / 1,280×720 / H.264 / 0EV / WB:オート |
・作例
2011/11/29 00:00