【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FX66

定番スリムコンパクトが「超解像技術」を搭載
Reported by 本誌:折本幸治

 パナソニックのデジタルカメラ「LUMIX」シリーズのうち、一番の売れ筋といえばやはりFX系だろう。女性ユーザーを意識したスタイリッシュかつ小型軽量ボディのイメージが強い一方、光学式手ブレ補正、インテリジェントISOオート、おまかせiAなど、LUMIXシリーズ共通の新機能を大きくうちだしてきた広告展開も忘れられない。FX系の大規模な広告で認知が広がり、他のLUMIXや他社モデルにまでトレンドが波及した例は多い。

 そんなFX系の2010年春モデル「LUMIX DMC-FX66」は、基本的なスペックを前モデルの「LUMIX DMC-FX60」と同じくする一方、同社の薄型テレビやデジタルビデオカメラで採用例のある「超解像技術」を取り入れたのがトピック。新搭載のヴィーナスエンジンIVが実現した機能だ。また、SDXCメモリーカードにも正式に対応するなど、時代を見据えた機能強化を果たしている。

 発売は2月19日。実勢価格は3万5,000円前後。カラーバリエーションは、フローラルブルー、スイートピンク、リュクスゴールド、プレシャスシルバー、ノーブルバイオレット。


スタイリングは前モデルを踏襲

 前モデルのDMC-FX60になかったフローラブルーは、いかにも若い女性に向けた華やかなカラー。表面のグロス処理とメタルパーツの組み合わせが、アクセサリー的な魅力を強く放っている。このあたりのセンスは、さすがFX系といったところだ。

 スタイリングは前モデルとほぼ同じ。特徴的なのは、ほとんど外装と段差のない液晶モニターだろう。両側面の半円状のカーブとあいまって、とてもエレガントに感じる。このあたりの意匠は、前モデルから大きく改められた部分。「確かに小さいけど今となってはぶ厚い」という、当時のFX系の常識を覆したスタイリングだ。奥行きは21.8mm。ライバルと十分戦える薄型ボディを実現している。

 操作系も前モデルから変わっていない。電源ON/OFFと撮影/再生切替はともにスライドスイッチで行なうタイプ。さらに撮影モードの切替にはダイヤルを用意する。十字ボタンでメニューをあちこち探るのではなく、物理的なスイッチの側に表記したアイコンで機能を判断して呼び出せるので、デジタル機器が苦手な家族にも受け入れられそうだ。

 ただしボタン類がおしなべて小さく、Q.MENUから各設定を十字ボタンで行なうときなどの操作感に窮屈な印象を受ける。以前のFX系に比べれば、十字ボタンの操作性はずいぶん良くなっているものの、液晶モニターの大型化もあり、他社の同クラスも含めてそろそろ限界にきているのかもしれない。

 撮像素子は有効1,410万画素の1/2.33型CCD。今春はCCDとCMOSの勢力図がはっきり別れており、画素数アップを控えたCMOS勢に対し、CCD勢は小型タイプで1,400万画素クラスに到達した。本機のそのうちの1台になる。

 レンズはライカDC VARIO-ELMARITの銘を持つ光学5倍ズームレンズ。前モデルと同じく、35mm判換算で焦点距離25〜125mm相当の画角をカバーする。広角端の開放F2.8は、暗めのレンズが多いコンパクトデジカメの中ではありがたい存在だ。広角端での歪曲収差があまり目立たないのも特徴だろう。マクロモードでの最短撮影距離は、広角端3cm、望遠端100cm。センサー中央部のみで記録するズームマクロ機能を使えば、広角端以外での接写も可能だ。

 液晶モニターは23万ドットの2.7型。明るさ、視野角も標準的な印象を受けた。記録メディアスロットは、新たにSDXCメモリーカードに対応。もちろん、入手製の良いSDHCメモリーカードも利用できる。SDXCメモリーカードの普及はまだ先だし、SDHCメモリーカードがすぐにでもなくなることは考えられないが、将来にわたって安心できるのも購入時のポイントになるだろう。

 バッテリーは前モデルから変更なし。CIPA規格準拠の撮影コマ数は約380コマ。前モデルの約360コマから若干数値が上がっている。

レンズは25〜125mm相当(35mm判換算)F2.8〜5.9の光学5倍ズーム操作系は前モデルDMC-FX60と同じ。電源は長押しの必要がないスライドスイッチ
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。フル充電からの撮影可能コマ数は約380コマ

 動画機能は最大1,280×720ピクセル/30fpsのMotion JPEG記録になる。同じ720pでも兄貴格のDMC-TZ10やDMC-ZX3と異なり、AVCHD Lite準拠での記録は不可能。AVCHD Liteより記録容量が必要なので、動画記録を重視する人には少々物足りないかもしれない。

上からHDMI出力、AV出力

高い効果を感じる「超解像技術」

 超解像技術は、元画像を分析して部分ごとにエッジ強調などを行なうもの。AV業界やPCディスプレイ業界では、すでに一般的な製品訴求ポイントのひとつに数えられている。デジカメではパソニックが初めて搭載した。詳しくは以前掲載した「パナソニック『超解像技術』の秘密に迫る」を参照いただきたい。

 超解像の効果は高く、ディテールが一皮むけたようなくっきりした描写になる。処理速度もONとOFFで変化は感じられなかった。部分によっては輪郭が太くギザギザに感じる部分もあるが、ここまでシャープになる割には、従来見られた強めの輪郭強調をかけたような不自然さは少ない。細部をよりしっかりと写し込む(写し込んだように見せる)この技術の効力は高いと思う。

 個人的にはまだ釈然としない部分もあるが、ここまでできるなら、今後発売するカメラのレンズ(あるいは交換レンズ)の分解能やコントラストの低さは、ある程度まで超解像でフォローする方向になるのでは? と思ってしまう。なお、超解像の描写がどうしても気に食わないなら、OFFにすることも可能だ。

  • サムネイルは撮影画像を等倍で切り出したものです。
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
超解像ON
DMC-FX66 / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm
超解像OFF
DMC-FX66 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/250秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm

 超解像を活かした機能として、パナソニックが打ち出しているのが、デジタルズームと組み合わせた「iAズーム」だ。デジタルズームによる画質劣化を超解像で補う機能で、パナソニックは光学ズームの5倍を超えた約6.5倍まで「ほとんど劣化しない」としている。それぞれの画角は、光学ズームの望遠端が焦点距離約120mm相当(35mm判換算)、iAズームの最大倍率時が焦点距離約162.5mm相当(同)。記録画素数を減らして画角を狭めるEX光学ズームとの併用も可能で、その場合は最大54.8倍のズーム倍率となる。

 超解像以外の新機能としては、明るさと鮮やかさをアップする「ハッピーカラー」が面白い。彩度が上がるだけでなく、中間調からハイライトにかけて明るくなり、結果メリハリがついた表現になる。また、人物を検出すると肌を明るく、かつ滑らかにするという。同様の美肌効果は、新機能の「コスメティックモード」でも利用できる。美肌に関してはパナソニックは他社に遅れを取っていたので、今春に追いついた格好だ。


まとめ

 基本的には前モデルのDMC-FX60から大きく変わっておらず、手のひらに収まるコンパクトなボディながら、25mm相当の広角ズームレンズを搭載したのは立派。撮像素子の小さなコンパクトデジカメならではの魅力と言えるだろう。超解像の実力も予想以上で、これからのトレンドになるかもしれない。AFなどのレスポンスも前モデルから高まっており、このクラスのデジタルカメラとして完成度は高い。

 ひっかかるのは、同じパナソニックのLUMIX DMC-ZX3の存在だ。若干大きめのボディになるとはいえ、DMC-FX66と同様に広角端25mmからのズームレンズ、超解像、SDXC対応スロットを搭載。さらにDMC-FX66にはない光学8倍ズームレンズ、3型液晶モニター、AVCHD Lite記録機能などを備える。

 もちろん、両者のボディデザインは異なるし、大きさもDMC-ZX3の方が一回り大きい。とはいえ奥行きは26mm。スリムコンパクトを名乗るに十分な大きさだ。それでいて価格差は2,000円ほどDMC-ZX3が高いだけ。試用した限りでは、画質もDMC-ZX3の方が良好だった。趣味性の高い商品なので最後は好みの問題になるが、DMC-FX66ならではの機能が欲しかったところだ。


実写サンプル

  • サンプルのサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

広角端・超解像ON
DMC-FX66 / 約5.2MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
望遠端・超解像ON
DMC-FX66 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/640秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 22.5mm
広角端・超解像OFF
DMC-FX66 / 約5.6MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
広角端・超解像OFF
DMC-FX66 / 約4.7MB / 4,320×3,240 / 1/640秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 22.5mm

・歪曲収差

  • 以下のサンプルはすべて超解像ONです。
広角端
DMC-FX66 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
望遠端
DMC-FX66 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/25秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 22.5mm

・感度

DMC-FX66 / 約5.3MB / 3240x4320 / 1/2秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 7.7mmDMC-FX66 / 約5.3MB / 3240x4320 / 1/2.5秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 7.7mmDMC-FX66 / 約5.2MB / 3240x4320 / 1/4秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO200 / WB:晴天 / 7.7mm
DMC-FX66 / 約5.2MB / 3240x4320 / 1/8秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 7.7mmDMC-FX66 / 約4.5MB / 3240x4320 / 1/15秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO800 / WB:晴天 / 7.7mmDMC-FX66 / 約4.6MB / 3240x4320 / 1/30秒 / F3.7 / -1.3EV / ISO1600 / WB:晴天 / 7.7mm

・ハッピーカラー

ハッピーカラーON
DMC-FX66 / 約5.7MB / 4,320×3,240 / 1/10秒 / F5.9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 22.5mm
ハッピーカラーON
DMC-FX66 / 約5.5MB / 4,320×3,240 / 1/10秒 / F5.9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 22.5mm

・マクロ

DMC-FX66 / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mmDMC-FX66 / 約5.4MB / 4,320×3,240 / 1/60秒 / F5.1 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 12.4mm

・逆光

DMC-FX66 / 約4.9MB / 4,320×3,240 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mmDMC-FX66 / 約5.3MB / 3240x4320 / 1/1,600秒 / F6.3 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm




本誌:折本幸治

2010/4/8 00:00