【新製品レビュー】ニコンD3000
ニコンのローエンドを受け持つエントリーモデルで、今年5月に発売されたD5000の機能やスペックを省略してコストダウンをはかったものと思えばいいだろう。
ライブビューや動画といったトレンド機能は持たない代わりに、ぐっと身近な価格設定で、大手量販店の店頭価格は、ボディ単体で54,800円程度。現時点で本機を下まわるのはソニーα230、オリンパスE-520、ペンタックスK-mといったところである。なお、AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR付きのレンズキットが6万9,800円程度、AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 55-200mm F4-5.6 G(IF)も同梱されたダブルズームキットは9万9,800円程度となっている。
今回試用したのはダブルズームキットに同梱されているAF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VRとAF-S DX VR Zoom Nikkor ED 55-200mm F4-5.6 G(IF)の2本。ボディと合わせて1,025gだ |
■小型ボディに3型液晶モニターを搭載
基本的なデザインはD5000に近いが、液晶モニターが固定式になっているからだろう、幅は1mm、高さが7mm、奥行きが16mm小さくなっており、重さも75g軽くなっている。また、固定式となったおかげで液晶モニターは3型にサイズアップしている(解像度は23万ドットで同等)。
D5000はボディ右手側のラインが下広がりの、少々ぽっちゃり感のあるシルエットになっているのに対し、本機はオーソドックスなラインになっているのが目に付く。また、内蔵ストロボもD5000より絞り込んでコンパクトさを演出したことで、数字よりも小さく感じられる。
マウント座金にはAFカプラーがなく、装着可能なレンズはAF-SなどのAFモーター内蔵レンズに限られる。AFはD90、D5000と同じくヒシ形配置の11点測距。中央1点のみクロスセンサーとなっている。測距点選択操作はマルチセレクター(十字キー)の単独操作で行なう。このクラスでは、ボタン+十字キーなどによる操作系を採用する機種が多いが、本機は快適に操作できて好感が持てた。
ファインダーはペンタミラー式で、視野率は95%、倍率は0.8倍と低め。メガネをかけたままだと画面の隅や視野外表示は見づらく感じたが、エントリー機としては水準以上のレベルだと思う。
撮像素子は、D60と同じスペックの有効1,020万画素CCD。CMOSセンサーに比べて消費電力や発熱量が大きいこともあってライブビュー機能はない。前面のローパスフィルターを振動させることによって付着したゴミやホコリをふるい落とす「イメージセンサークリーニング機能」を装備。また、ミラーボックス内部の空気の流れを制御して、撮像素子にゴミやホコリが近づきにくいようにする「エアフローコントロールシステム」も採用している。
電源は容量が1,080mAhのリチウムイオン充電池EN-EL9aで、CIPA準拠の撮影可能コマ数は約550コマ。ライブビューも動画といった消費電力の大きな機能がないので、よほど大量に撮る人でなければ不安は感じないだろう(充電忘れとかの心配はなくはないので、やはり予備の電池は持っておきたいが)。記録メディアはSDHC/SDメモリーカードを採用している。
例によってAFカプラーがない。左下のピンは絞りリングが最小絞り値にロックされているかどうかを検知するためのもののようだ | ファインダーは、視野率95%、倍率0.8倍。AFはD90やD5000と同じ11点測距。ワイドフレーム化などの機能は備えていない |
マルチセレクター(十字キー)は単独操作で測距点の移動が可能。ボタンを併用する必要がないので素早く快適に切り替えられる |
撮像素子には有効1,020万画素CCDセンサーを搭載。ローパスフィルター振動によるダストリダクション機能も内蔵している | D60と同じく、エアーフローコントロールシステムを搭載。ミラーボックス内部に空気整流用の穴が並んでいるのが見える |
電源は切り餅型(変な向きには装填できないようになっているのは偉い)のリチウムイオン充電池。容量は1,080mAhだ | 記録メディアはSDHC/SDメモリーカード。ライブビューや動画機能がないこともあり、容量を心配しなくてもよい |
■初心者向けの「ガイドモード」
新機能として挙げられるのが「ガイドモード」だ。例えば、「場面にあわせて撮る」から「花や小物をアップで撮る」を選ぶと、「クローズアップ」モードに設定され、狙った部分にきちんとピント合わせができるシングルポイントAFモードになるといった具合。「場面にあわせて撮る」には、「動く被写体」、「風景や街並み」、「ポートレート」、「夜景をバックに人物」など、よくある8つのシーンに加えて、フルオートとなる「おまかせで撮る」の9項目がある。
カメラの機能だとか撮り方がわかっている人にはほとんど意味はないが、撮りたいものを上手に撮るために、どういうモード、機能の組み合わせが適しているかなどの説明も表示されるので、コンパクト機からステップアップしてきたばかりの人には役に立つのではないかと思う。
また、画像編集メニューの内容にも変更が加えられ、D5000にはあった、「傾き補正」、「ゆがみ補正」、「魚眼効果」、「アオリ効果」がなくなって、「ミニチュア効果」が追加された。これは画面内の指定した範囲以外をぼかすことで、まるでミニチュアの風景を撮ったかのような雰囲気に仕上げるもの。選択した範囲外をボカしているだけの単純なものだが、風景やポートレートで使うと楽しそうだ。
そのほか、「フィルター効果」の中にある「ソフト」や、「塗り絵」も面白いし、カメラ単体で画像をレタッチしたり、RAW現像ができたりなど、パソコンなしで写真を楽しめる機能もいろいろと盛り込まれている。
「SCENE」モードの代わりに新設されたのが「GUIDE」モード。撮りたいシーンに合わせて項目を選ぶという初心者向けのモードだ |
モードダイヤルを「GUIDE」に合わせると表示される「ガイドメニュー」。撮るためには「撮る」を選ぶ。当たり前ですが | 「撮る」の中には3つの項目があるが、とりあえずは「場面にあわせて撮る」を選んでみる |
「場面にあわせて撮る」には、フルオートの「おまかせ」のほか、よくある8種類のシーンに対応できる項目が並んでいる |
例えば、「花や小物をアップで撮る」ときには「クローズアップ」モードに切り替えればいいんだな、というのがわかるようにもなっている | このときのインフォ画面。変更不可能な項目はグレーアウトしている。個人的には、露出補正ができなくなるのがうれしくない点だ |
風景だって「遠くの被写体」なのだから勘違いしそう……「望遠レンズで撮る」とかのほうがわかりやすいと思う |
「テクニックを使って撮る」の画面には3項目がある。被写界深度を深くする「背景までくっきりさせて撮る」がないのが不思議 | 「人物の動きを止め」るには1/200秒以上のシャッター速度が推奨となる。「乗り物の動き」のほうは1/1,000秒以上になる |
簡単なアドバイスも表示してくれるので、初心者がカメラへの理解を深めるのに役立つのではないかと思う |
「画像編集メニュー」の内容。ユニークな映像表現が楽しめる「塗り絵」、新しく追加された「ミニチュア効果」はけっこう面白い |
「フィルター効果」の「ソフト」。元画像と見比べながら効果の強さを3段階から選べるようになっている | 「塗り絵」はコントラストの高いエッジ部分だけをラインアートにして取り出したような感じ。Photoshopで色を付けると楽しい |
「ミニチュア効果」の設定画面。黄色い枠の外側にはボカす処理がほどこされる。上下キーでピントが合う範囲を移動させられる |
■まとめ
上位モデルのD5000との大きな違いは、ライブビューと動画機能の有無、液晶モニターが可動式か固定式か、といったところ。いろんな撮り方をしたい方にはD5000のほうが向いているだろうが、シンプルに一眼レフライフを楽しみたいのであれば、むしろ液晶モニターが固定式な分だけ小型軽量な本機のほうがいいとも言える。使わない機能が省略されて、なおかつ価格は3万円ほども安いのだからお買い得、という考え方も成り立つ。
ただ、レンズキットとダブルズームキットの価格設定が高めなのはいまいちな点。レンズキットとボディ単体との価格差(キット同梱の標準ズームを手に入れるのに必要な金額)は、他社が5,000円から1万円程度なのに対して本機は1万5,000円。ダブルズームキットとの価格差も、他社の2万円から3万円程度に対して4万5,000円と大きい。このクラスの購入者の大半はキットの価格で見比べるだろうから、割高感は否めない。
そのためか、本機は発売と同時にキャッシュバックキャンペーンが開始される。ボディ単体とレンズキットが5,000円、ダブルズームキットは1万円のキャッシュバックが受けられるので、価格面でのマイナスはかなり軽減されるだろう。
エントリークラスだけにレスポンスがもうひとつな感は否定できない。アクティブD-ライティングをオンにすると、ポストビュー画像が表示されるまでの時間が大幅に長くなったりするし、露出補正などの操作に対する指標の動きもワンテンポ遅いような感じがあった。
とはいえ、ストレスになるほどの遅さではないので、よほどのせっかちさんでなければ不満には感じないだろう。コンパクト機からステップアップする人の最初のデジタル一眼レフカメラとしてもおすすめできるし、重量級のニコン機をお持ちの方がサブカメラとして選ぶにも悪くないと思う。
こちらは液晶パネル風の「クラシックデザイン」。上級者にはなじみやすいと思う。「ブラック」、「ブルー」、「オレンジ」の3色が選べる | シャッターボタンまわりの操作系はD5000と同じ。露出補正ボタンが人差し指を窮屈に曲げないと押せないのはF5からの伝統だ |
「セルフタイマー/Fnボタン」と「AE/AFロックボタン」の機能をカスタマイズできたりなど、上級者向けの機能も備えている | 「セルフタイマー/Fnボタンの機能」設定画面。セルフタイマー以外の選択肢がこれだけある。個人的には感度あたりが便利そうに思う |
「セルフタイマー/Fnボタン」は左手親指で押しやすい位置にあるので、どんな機能を割り付けるかが結構重要だったりする | こちらは右手親指で操作する「AE/AFロックボタン」。AEロックだけ、AFロックだけもOKだし、“親指AF”も可能だ |
「AFエリアモード」の設定画面。ちゃんと「3D-トラッキング」も搭載しているあたりはD5000と同じだ | 「インフォ画面」表示中に背面左手側の一番下の「インフォ設定ボタン」を押すと、液晶モニター上でさまざまな機能の変更ができる |
「インフォ設定ボタン」を押し、マルチセレクターで項目を選んでOKを押すと、液晶モニター画面上で機能の設定変更が可能となる | 「アクティブD-ライティング」を選ぶとこんな感じ。上下キーで内容を変更したらOKを押して確定すればいい |
こちらは感度設定画面。「こんなシーンにマッチするよ」的作例画像を表示してくれるので、カメラ慣れしていない人にはわかりやすそう | 再生時の白トビ警告表示。ヒストグラムといっしょに見せてもらえたほうが露出を考えるのに役に立つと思う |
ヒストグラムは輝度だけでなく、RGB各色のも個別に表示できる。こういうのは慣れている人にはうれしい機能だったりする | 再生時の「統合表示」の画面。絞りやシャッター速度とヒストグラムが同時に見られるのはうれしい |
■作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
●ガイドモード
「遠くの被写体を撮る」と「風景や街並みを撮る」で撮り比べてみた。絞りやシャッター速度だけでなく、明るさやホワイトバランスなども違う。
絞り優先AE AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 55-200mm F4-5.6 G(IF) / 3,872×2,592 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 200mm |
●画像編集
●ISO感度
感度の設定範囲はISO100〜1600。ISO1600に対してプラス1段(ISO3200相当)の増感が可能となっている。「AUTOモード」では感度はオートになりISO100〜400の範囲、「ガイドモード」の「子どもの寝顔を撮る」ではISO800までの範囲で自動設定される。ここでは「ノイズ低減」を「しない」で撮影したが、ISO800以上では弱いノイズ低減がはたらいている。
ISO800以上では細かい部分の描写が悪くなりはじめるが、ノイズの量はISO1600でもよく抑えられている。あまり大きなサイズにプリントしないのであれば、ISO1600でもそこそこ実用になる。さすがにISO3200相当は画質劣化が目立ってくるので常用はきびしい。
メニューの「ISO感度設定」の画面。設定範囲はISO100〜1600で、プラス1段増感のISO3200相当まで設定可能だ |
ISO100 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/200秒 / F11 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm | ISO200 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/400秒 / F11 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm |
ISO400 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/800秒 / F11 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm | ISO800 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/1600秒 / F11 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm |
ISO1600 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/2500秒 / F13 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm | ISO3200 AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/3200秒 / F16 / -0.7EV / WB:晴天 / 18mm |
●ピクチャーコントロール
画づくり機能の「ピクチャーコントロール」は、「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」、「モノクローム」の基本4種類に加えて、「ポートレート」と「風景」が追加された6種類。それぞれ、「輪郭強調」、「コントラスト」、「色の濃さ(彩度)」、「色合い(色相)」を微調整できる。
D60は「仕上がり設定」だったが、本機でようやく「EXPEED」+「ピクチャーコントロール」に統一された |
●アクティブD-ライティング
暗部補正などを行なって、見た目に近いイメージに再現できる「アクティブD-ライティング」は、「する」と「しない」だけ(ViewNXで見ると、「する」は「オート」と表示される)。細かい設定はできない。
また、オンとオフとでレスポンスがずいぶん変わるのも気になる点。シャッターボタン全押しからポストビュー表示までの時間を比べてみたところ(手もと計測なので誤差はそれなりにある)、それぞれ10回ずつ計っての平均は、オフでは1.51秒、オンでは3.48秒だった。
「アクティブD-ライティング」は「する」、「しない」のみ。「する」だとレスポンスが低下するのは泣きどころのひとつと言える |
●自由作例
えらくハイテクそうなビルに囲まれるかっこうで残っている住宅兼店舗(営業はしてないっぽい)。なんだかとてもドラマチック AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 3,872×2,592 / 1/40秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 18mm |
2009/8/10 16:25