新製品レビュー
Nikon 1 J4(機能・外観・操作編)
小型ボディに多彩な機能。着実な進化が見えるNikon 1中核機
塙真一(2014/8/4 08:00)
Nikon 1 J4(以下J4)はNikon 1シリーズの中でもっともスタンダードといえるモデル。初代のNikon 1 J1から数えて四代目となるモデルだ。
ニコンはNikon 1シリーズをミラーレスカメラとは呼ばず、あえて「レンズ交換式アドバンストカメラ」と名付けており、ちょっと一般のミラーレスカメラとは別の方向性のカメラといえるかもしれない。そのあたりは後ほど解説したい。
Nikon 1シリーズは大きく、SとJ、Vの3シリーズに分けられる。現在の最新型番はS2、J4、V3となっている。これらに加え、水深15mまでの水中撮影が可能なNikon 1 AW1を入れた4モデルが現行機種ということになる。
J4の発売は2014年4月20日。ボディのみの実勢価格が6万円前後、1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMが付属する標準パワーズームレンズキットが6万4,000円前後、標準パワーズームに加え1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6の望遠ズームも付属するダブルズームキットが7万5,000円前後となっている。
アルミ外装でソリッドな仕上がり。microSDを採用
J4の撮像素子は1,839万画素のCMOSセンサーで、光学ローパスフィルターレスとなる。Nikon 1独自のニコンCXフォーマットを採用し、撮影画角は35mm判換算で焦点距離の約2.7倍となる。レンズマウントはもちろんニコン1マウントだ。
センサーの画素数は上位モデルのV3と同一だが、V3には装備されるイメージセンサークリーニング機構はJ4では省かれている。
また、従来モデルとなるNikon 1 J3は1,425万画素だったことから、モデルチェンジとともに画素数アップしたことになる。
従来までのNikon 1シリーズは記録メディアにSDメモリーカードを採用していたが、現行のJ4、V3、S2はmicroSDメモリーカードとなった。小型軽量化の一環なのだろうが、microSDメモリーカードは外寸が11×15mmと、SDメモリーカードより小さい。うっかり落としてしまうと見つけるのに苦労するほどの小ささなので、取り外しには注意したい。
撮影データのパソコンへのバックアップなどはカード本体を取り外して行なうよりも、付属のUSBケーブルでカメラごと接続したほうが取り回しがよいように感じた。おそらくメーカーもそういう使い方を想定してこのメディアを選んだのだろう。
バッテリーは小型のリチウムイオンバッテリーで電池寿命は300コマ。J3の220コマから比べると大幅な枚数アップとなっている。
外観はアルミニウムを多用し、フロント部にはヘアライン加工が施されている。J3までの丸みのあるデザインからはガラリと雰囲気を変えたソリッドな仕上がりには好感が持てる。
ボディ前面にはこれといったグリップ部は設けられていないが、とくに持ちにくいといった印象はない。この大きさ、軽さであれば別にグリップ部は必要ないということだろう。
高速連写性能を生かした多彩な連写機能
操作関連のボタン類はシンプル。モードダイヤルこそ装備するが、実際の操作では十字ボタン上に位置するF(フィーチャー)ボタンを押して、タッチパネル操作をする場面が多い。Fボタンを押したときに表示される内容は各モードごとに最適化されたものとなっているため、とりえあずそのモードでどんな設定ができるのかFボタンを押してみるとよいだろう。
気になる撮影機能だが、一番の特徴は高速連写に優れることだろう。AF追従で約20コマ/秒、AF固定なら約60コマ/秒の高速連写が可能となっている。
ただし、1回の連写枚数は20コマ。60コマ/秒の連写モードではわずか約0.3秒で撮りきってしまうこととなる。とはいえ、一眼レフカメラなどの連写とはまったく別ものといえる動画のコマ送りのような写真が撮れるのは面白い。
また、連写に優れると同時にAFも非常に高速で軽快な撮影が行なえる。コントラストAFと像面位相差AFを併用するアドバンストハイブリッドAFシステムにより、AFに不満を感じることはなかった。
AFエリアモードをシングルポイントにすれば、タッチパネルによるAFエリア選択も可能で思ったところにピントを合わせることが可能だ。
J4には他のカメラにはない、特徴的な機能が装備されている。
まずはクリエイティブリングと呼ばれる機能。撮影モードをクリエイティブモードにセットし、さらに「クリエイティブ」を選ぶと、液晶モニター上にリングが表示される。このリングをタッチすることで15段階でエフェクト効果が変化するというものだ。「ポートレート」「クローズアップ」「風景」「その他」の4シーンで自動的に変わる。
使ってみた印象では、思い通りの効果が得られるというよりは、どんな効果が得られるのか出たとこ勝負という感じであった。ノーマルの仕上がりに物足りなさを感じたら、クリエイティブリングを使ってみるとよいだろう。
また、オートモードで絞りやシャッタースピード、露出補正などを直感的操作で行なえる「ライブコントロール」機能も装備され、カメラの知識が少ない人でも楽しめるよう工夫されている。
さらに、シャッターボタンを押した瞬間の前後20コマを連続撮影して、気に入ったカットだけを保存する「お気に入りフォト選択」機能や、シャッターボタン半押しで20コマの静止画を記録し、それを液晶モニターに表示されるスロー再生画面を見ながらベストな一瞬を記録する「スロービュー」機能なども搭載される。
これらの機能はNikon 1ならではの機能といえるが、正直使いこなしは難しい。なにしろ、決定的瞬間の1秒前後を確実に押さえないとどちらもよいタイミングの1枚が撮れないからだ。確かに、決定的瞬間そのものを撮るよりは初心者には優しいのかもしれないが、私個人の印象としては一発勝負で決定的瞬間を狙う方がより打率が高いという気がした。機能としては魅力的かもしれないが、常用できるかといえば疑問である。
J4にはWi-Fi機能も内蔵されている。Wi-Fi機能専用アプリケーション「Wireless Mobile Utility」をインストールしたタブレット端末やスマートフォンと連携することで、撮影画像を再生したり、保存してSNSなどにアップすることも可能だ。
さらに、Wi-Fi端末をキーデバイスとしてカメラをリモート操作し、撮影をすることも可能。J4くらい小さなカメラであれば小型の三脚でも十分にリモート撮影を楽しむことができるので、大いに活用したいところだ。