新製品レビュー

Nikon 1 J4(実写編)

1型センサーカジュアルモデルの画質を見る

以前、掲載した「Nikon 1 J4(機能・外観・操作編)」に続き、今回は実写編をお届けする。

まずは前回のおさらいだが、Nikon 1 J4は、Nikon 1シリーズの中核をなすスタンダードモデルで、J1から数えて4代目のモデルとなる。撮像素子は1,839万画素のCMOSセンサーで、光学ローパスフィルターは装着されていない。撮像素子の大きさは約1インチのニコンCXフォーマットを採用。撮影画角は35mm判換算で焦点距離の約2.7倍となる。

レンズ交換式カメラといえども、センサーサイズが比較的小さいことから画質面が気になるところだが、今回はその辺りを掘り下げてみたい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

遠景

まず基本的な解像力とてしては必要十分というのが正直な印象。飛び抜けて高い解像力とは思えないが、A3プリントくらいなら十分に耐えうる解像力といっていいだろう。

ただし、キットレンズとなる「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM」では中央部の描写力は良くても、周辺部はやや解像不足という感じになる。これほどまでにコンパクトにまとめたキットレンズにどこまでの性能を求めるかにもよるが、やはり周辺部はちょっときついと思っていたほうがよいだろう。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/250秒 / F7 / ISO180 / 絞り優先AE / 12.3mm

次に、レンズの絞り値による描写の違いだが、もっともシャープなのがF5.6。ワイド端の開放F値はF3.5となるが、開放でも十分にシャープな仕上がりとなっている。F8くらいから少しシャープさに欠けはじめ、F16では回折のためかかなりぼやっとした描写になってしまった。撮影シーンにもよるが、シャープでキリッとした描写を望むならF5.6くらいをピークとして考えておけばよいだろう。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / ISO160 / 絞り優先AE / 10mm
F3.5
F4
F5.6
F8
F11
F16

高感度画質

感度の設定はISO160~ISO12800まで。感度制限オートでは上限をISO6400、ISO3200、ISO800の3種類が設定できる。また、ISO6400とISO12800には通常のものとNRと表示されたものが存在する。NR6400もNR12800も通常のISO6400、ISO12800よりは確かにノイズ低減が見られる。

高感度の評価に関しては被写体によっても異なるし、個々人の許容範囲も異なるが、私の実感値としては、ISO800くらいまでを実用の上限という感じだ。ISO1600から急にノイズリダクションの効きが強まり、細部の再現性が悪くなるからだ。

ただし、ISO3200まではほとんとの色相の変化もなく、小さなサイズで鑑賞する分には十分な画質といえる。やはり状況に応じて使い分けるというのが正しいだろう。ISO6400から上はNR6400でもちょっと実用には向かないかなという印象だ。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / F5.6 / 絞り優先AE / 19.7mm
ISO160
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
NR6400
ISO12800
NR12800

高速連写

連写はAF追従で20コマ/秒、AF固定なら60コマ/秒の高速連写が可能だ。写真の飛行機は、AFモードをAF-Cにセットし、20コマ/秒の連写に設定している。連続記録枚数が20コマまでなので、実質1秒間の撮影ということになる。

実はAF固定で60コマ/秒の連写も試してみたが、こちらは時間にしてわずは0.3秒ほど。旅客機の離陸でもほとんど動きが感じられないくらいの短い時間であった。風船が割れる瞬間を撮るなど、超高速の一瞬を捉えるには60コマ/秒が便利かもしれないが、普通の連写なら20コマ/秒で十分なのではと感じた。

マクロ

標準パワーズームレンズキットとして付属する1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMを使用して最短撮影距離付近での撮影を行ってみた。

広角端。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/250秒 / F4 / ISO400 / プログラムAE / 10mm
望遠端。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/160秒 / F6.3 / ISO400 / プログラムAE / 30mm

カタログスペックを見ると最短撮影距離は撮像面から0.2m(ズーム全域)と書かれているのだが、実際に撮影してみると、ワイド端では撮像面から0.14mほど、テレ端では0.17mほどの距離から撮影できた。大抵の標準ズームはマクロ撮影には強いとはいえなが、この1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOMに関しては、かなりマクロに強いといってよいだろう。

しかもワイド端だけでなくテレ端でもマクロ撮影ができるというのは大きい。もちろん、本格的なマクロ撮影とまではいかないが、テーブルフォトを撮るくらいなら標準ズームで行けそうな感じである。

動画

動画の撮影はシャッターボタン横にある動画撮影ボタンを押すことで行える。モードダイヤルのポジションがオートモードにある場合やクリエイティブモードにあるときでも動画撮影は可能だ。

ただし、ベストモーメントキャプチャーモードとモーションスナップショットモード設定時は動画撮影ができないので注意が必要。

また本格的に動画を楽しむならモードダイヤルにあるアドバンス動画モードを使用するのがよいだろう。アドバンス動画モードでは、露出モードを変更したり、スローモーションや早送り動画、意図的にコマ落ちしたように記録するジャンプカットモードなどが選べる。

作例の動画は通常のフルHD動画とスローモーション動画で記録したもの。同じシーンでも撮り方を変えるだけで印象も変わり楽しみが増える。スローモーション動画は120/400/1,200fpsの3種類の記録が可能。ただし、記録時間は約3秒となっている。





動画メニューの中に、「動画撮影中おまかせスナップ」という設定がある。ここの「自動撮影」をONにしておくと、動画撮影中に自動的に静止画も記録してくれるというもの。

動画撮影中でもシャッターボタンを押せば手動でも静止画記録は可能だが、おまかせスナップをONにしておけば、1分間に4枚のペースで最大20枚まで静止画を記録しておいてくれる。



動画中おまかせスナップで撮影された静止画

 ただし、使ってみた感想としては「やはりカメラまかせでは、一瞬のよい表情を記録してくれるわけではないんだなあ」というのが正直なところ。「動画も静止画も両方なんて気が回らない」という人にはオススメかもしれない。

作品集

カメラまかせのPモードで撮影。これくらいの撮影距離だとF5の絞りでも自然なボケをみせてくれる。葉っぱの再現性とバックの青空の発色、どちらも満足できる仕上がりとなった。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/1,600秒 / F5 / ISO160 / プログラムAE / 10mm
高い波が岩にぶつかり飛沫をあげる様子を撮影。逆光での飛沫の白さが引き立つように露出を-2/3EVにセットしている。こういうシーンを見る限り、1,800万画素という画素数でも十分に遠景細部まで再現できるのだと感じる。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/4,000秒 / F5.6 / ISO160 / 絞り優先AE / 30mm
動画で撮影したものを静止画でも撮影した。絞りを最小のF16とし、4秒間の露光となった。背面液晶で再生したときにはあまり気にならなかったのだが、パソコンで拡大してみると画面中央付近の水の流れが多いところが白飛びしてしまっていた。白飛び警告などの多彩な再生モードも欲しいところだ。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 4秒 / F16 / ISO160 / 絞り優先AE / 10mm
逆光にきらめくエノコログサ(通称、猫じゃらし)を撮影。穂にピントを合わせているのだが、こういうときにはタッチパネルAFがありがたい。AFエリアに縛られることなく、自由な構図でピント合わせ、撮影ができる。1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6 / 1/500秒 / F5.6 / ISO200 / プログラムAE / 110mm
ダブルズームキットに付属する「1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6」のテレ端で撮影。手前の草にピントを合わせているが、遠景のボケは比較的滑らか。手ブレ補正機構(VR)を搭載しているので、こういうシーンも手持ちで楽にこなせる。1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6 / 1/320秒 / F5.6 / ISO400 / プログラムAE / 110mm
こちらも1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6のテレ端で撮影した。撮影当時、非常に日差しが強く、液晶モニターを見ながらの撮影はけっこう難儀した。やはりいざという時のためにもEVFが有るのが望ましい。1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6 / 1/1,000秒 / F5.6 / ISO180 / プログラムAE / 110mm
クリエイティブモードのセレクトカラーを使用し、グリーンのみをカラーにしてみた。どういうときにセレクトカラーを使うのかと聞かれると困ってしまうが、たまにお遊び気分でやってみるとわりと面白い。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/1,000秒 / F4.8 / ISO160 / クリエイティブモード / 21mm
パノラマモードで撮影。パノラマ撮影は比較的簡単で、スタート位置でシャッターを押せば、あとは上下左右のどこに動かしてもパノラマ撮影をしてくれる。方向を指定したりしなくていいので手軽だ。カメラ内の合成にしては非常に上手く繋いでくれるものだと感心した。1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6 PD-ZOOM / 1/1,000秒 / F5.6 / ISO160 / パノラマ / 10mm

まとめ

Nikon1 J4は、ミラーレスカメラとしてはちょっと異端児的な存在という気がする。まあ、メーカー自身がミラーレスカメラではなく、“レンズ交換式アドバンストカメラ”と謳っているのだから、ミラーレスというジャンルには入らないのかもしれない。

だが、実際に使うこ立場から考えると、"小型軽量、かつレンズ交換可能”というクラスは真っ向からミラーレスカメラがライバルとなる。そうなったときに、J1からJ4までの進化で良いのだろうかという疑問もある。

J4は、小型軽量、しかも他に類を見ないほどの高速連写機能を持つカメラだ。あとは、もう少しカメラ(写真機)としての魅力、使いやすさを追究してくれても良いのではないだろうかと感じる。そこはVシリーズが担うと言われてしまえばそれまでなのだが。

ちなみに、カメラまかせであまり多くのことを気にせず、パシャパシャ撮る分にはとてもきれいに撮れる。風景だって人物だって発色もいい。もしかすると、このJ4はカメラまかせのフルオートで使うのが一番いいのかもしれない。

塙真一