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小型ボディのフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S9」発表会レポート

リアルタイムLUTが大幅に進化 絞り固定のパンケーキレンズも

パナソニックは5月23日(木)、ミラーレスカメラの新製品「LUMIX S9」の発表会を都内で開催した。ここではその模様をお伝えする。

既報の通り、LUMIX S9は35mmフルサイズセンサーを搭載するミラーレスカメラ。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション副社長執行役員 イメージングソリューション事業部長の津村敏行氏は、「レンズ交換式カメラ市場では、ミラーレスカメラが大幅に増えている。各社が競って投入することで市場が活性化しており、フルサイズ機でさらに活性化が進んでいる」と現状を述べた。

LUMIX S9を掲げる津村敏行氏

また、「トレンドとしてSNS利用者が増えている。そしてSNSは写真や動画と切り離せないメディアでもある。現在はスマホが主流だが、カメラメーカーが積極的な製品開発を行うことでカメラ市場を牽引できると考えている」とした。

SNSに積極的に投稿しているユーザーはSNSそのものが目的では無く、SNSで人生を豊かにしたいという想いがあると分析。ユーザーの生活をさらに豊かなものにするため、今回の新製品を開発したと背景を話した。

ミラーレスカメラの構成比が増えている

小型軽量化を優先してファインダーやメカシャッターを非搭載とした。一方撮像素子や手ブレ補正機構を始め、上位モデル「LUMIX S5II」相当の性能も多く盛り込んだ。

製品のメインとなるターゲットは「初めてミラーレスカメラを買うアクティブSNSユーザー」と設定。そのため、動画の編集スキルが無くても色調整をカメラとスマホで完結できるシステムを新たに採用した。「エディットレス」で映える動画を共有できることをコンセプトとしている。

グローバルメッセージではEDITが不要であることを打ち出す
LUMIX S9の概要

S9という機種名の由来は、フラッグシップをS1シリーズ、ミドルクラスをS5シリーズとしており、それらとは大きく異なるコンセプトのカメラということで採用したとのことだ。

カラーバリエーション。下の3つはエクステリア張り替えサービスによるもの
装着レンズはLUMIX S 26mm F8
正面
背面
フリーアングルモニターを採用
上面。全体的にボタンの数は厳選したという
メカシャッター非搭載のためストロボも非対応となっている。デジタルカメラでは珍しい電気接点なしのコールドシューを採用する
バッテリーはLUMIX S5IIなどと同じ
底面
デザインには黄金比を取り入れた
今回、パッケージはプラスチックを減らしたものとなっている
上位機種同様のAFシステムを搭載
手ブレ補正も上位モデルと同じシステムだ
ハイブリッドズームも利用可能
ソニーα7C(右)との比較
同背面

リアルタイムLUTが進化

”エディットレス”については、PCの動画編集ソフトなどでカラーグレーディングをしなくても「リアルタイムLUT」機能で好みのルックを静止画、動画に対して簡単に適用できるようにしている。

リアルタイムLUTはLUMIX S5IIなどでも採用されていたが、今回大幅に進化した。新たにリリースするスマホアプリ「LUMIX Lab」でオリジナルのLUTを作成できるようになった。またクリエイターが作成したLUTをダウンロードする機能もあり、いずれもLUMIX S9に転送して適用できる。

新アプリのLUMIX Labをリリース

カメラ側には「LUTボタン」が新設された。このボタンを押すと、カメラに登録されているLUTをすぐに呼び出して適用できる。これまでよりも迅速にLUTの効果を確認しやすくなった。また、登録できるLUTの数は従来の10個から39個に増加している。

加えて、これまでリアルタイムLUTを適用できるデータはV-Log形式のみだったが、今回から全てのフォトスタイルで使用可能となった。LUTをカメラで選ぶと自動的に適切なフォトスタイルに設定される。

全てのフォトスタイルでリアルタイムLUTが使える

リアルタイムLUTのデータは、汎用的な33点の「.CUBE」形式。LUMIX Labでは自作のLUTデータをこの形式で保存できるので、他の人と共有することも可能となっている。

これまでカメラへのLUTの転送はSDカード経由だったところ、スマホ経由になったことで手順が簡素化された。撮影現場でもスマホでLUTを作りながら、カメラに転送して撮影するといったことがしやすそうだ。

LUMIX LabでLUTを選択しているところ
RGB別のトーンカーブ調整も可能。調整値はLUTとして保存できる
クリエイターのLUTをダウンロードすることもできる。現在100種類ほどが登録されている
LUTは自分の画像で適用具合を確認できる
カメラ側ではLUTの適用割合を調整できるほか、さらにルックの調整も行える

またLUMIX Labにはカメラの画像を取り込んでSNSにアップロードしたり、画像にLUTを適用するなどの加工が行える。ちなみにLUMIX Labは無料でありLUMIX S9ユーザーでなくても使用可能なため、スマホ内の画像の加工アプリとしても使える。もちろん同機を持っていればアプリを最大限に活用できる。

現時点でLUMIX Labの対応機種はLUMIX S9のみだが、LUMIX S5IIなどリアルタイムLUT対応機種については今後のファームアップで対応予定としている。

パンケーキレンズが登場

LUMIX S9に合わせる形で新レンズが2本発表された。

新しいレンズロードマップ

1つは「LUMIX S 26mm F8」で、単焦点・固定絞り値のパンケーキレンズとなっている。厚みが約18mmほどと薄くフォーカス操作でも全長が変わらない。

LUMIX S 26mm F8の特徴

またMF専用になっているのも特筆する部分で、LUMIXの交換レンズでMF専用品は初めてとのこと。MFにしたのは小型軽量化のためだそうだが、スマホのAFが当たり前の時代に敢えて異なる体験が価値になるという提案もあるという。MFリングの回転角は狭いものの、ねっとりとした動きで操作はしやすかった。

シンプルなデザイン
電子接点を搭載する

MF時はピーキング表示でのピント合わせを想定しているというが、焦点距離が短く絞り値も大きいのでピントリングを触らずにパンフォーカスでも使えるだろうとのことだった。

こうしたMFパンケーキレンズには電子接点が無いタイプも見られるが、本レンズは電子接点で通信することでレンズ補正や手ブレ補正が動作するほか、EXIF情報も記録される。画質についてもLUMIX Sシリーズレンズ同等の描写性を謳っている。

LUMIX S9に装着したところ。かなり薄く感じる

26mmという焦点距離については、薄く作れることを優先した数字であると同時に、比較的人間の見た目にも近い画角であることから採用したとのこと。また、絞り値についても小型軽量化達成のために決まった値だとしている。

もう1本のレンズは開発発表の形でアナウンスされた「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」。2024年内の発売を予定している。

LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3の特徴

広角ズームレンズだが、APS-Cクロップ時は28-60mm相当となり標準ズームレンズとしても使える。小型軽量でLUMIX S9にもマッチするとのこと。

高山都さん「コンデジ感覚で使えるカメラ」

発表会にはモデルの高山都さんが登場し、パナソニック コンシューマーマーケティング ジャパン本部 商品マーケティングセンター イメージングマーケティング部 商品マーケティング課長の塩見記章氏とトークセッションを繰り広げた。

高山都さん

高山さんは丁寧な生き方を発信するInstagramも人気を集めており、写真撮影も好きという。

普段は作った食事の記録や新しくしたインテリアなどを良く撮るそうで、雨の時の花も好きでよく撮影するそう。

写真の腕については、「初心者にもなっていないくらい」というが、「上手いとか下手とかに囚われすぎると撮る回数が少なくなるので、自分と向き合って自分が素敵だなと思う感性を信じるようにしています」と語った。

「子どもの素早い動きでもフォーカスが合う」と高山さん。左は塩見記章氏

LUMIX S9については、「今までカメラにはヘビーな印象がありましたが、LUMIX S9は持ち運びが苦じゃないくらい軽くて、被写体に合わせてレンズを簡単に付け替えられるのがいいですね。特にパンケーキレンズだとコンデジの感覚で使えます」と気に入った様子だった。

高山さんは発表会のあとすぐにポルトガル旅行に行くそうで、さっそく「LUMIX S9を提げてきます」と楽しそうに話していた。

賞金総額100万円というLUMIX S9のフォトコンテストが開催される
コンテンツ購入者向けのチュートリアル動画といった特典も用意される
コロナ禍ではこうした大きな発表会は控えられていたが、今回は会場の表参道ヒルズに多くの関係者が集まった

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。