新製品レビュー

Peak Design「Travel Tripod」

パズルのように隙間をなくしたスリム三脚

カメラ用アクセサリーを開発するPeak Designが、バッグやストラップなどのアイテムに続いて新たに投入したのが「トラベル三脚」のジャンルだ。名称もそのまま「Travel Tripod」。クラウドファンディングのプロジェクトが2019年夏ごろからスタートしており、支援した製品が2020年に入って手元に届いたのでご紹介したい。

※編注:国内代理店の銀一によると、CP+2020で実機を展示し、春に発売予定とのこと。

Peak Designは、今までのカメラアクセサリーとは一味違った特徴的なデザインの製品を揃えている。カメラの三脚穴にプレートを取り付けて、カバンのストラップなどにカメラを固定する「Capture」や、脱着が容易なストラップ「Slide」、カメラバッグの「Everyday」シリーズなど、ラインナップが増えている。

新たに追加されたのが今回の三脚。本格的なものというよりは旅行に持ち出しやすい比較的軽量の製品だが、Peak Designらしい様々な工夫が盛り込まれた製品となっている。

Peak Designの新しい三脚「Travel Tripod」。
開いたところ。素材はアルミニウムでしっかりとした剛性がある。カーボン脚のバージョンもある。

製品は2種類で、脚パイプの素材にカーボンファイバーを採用したモデルと、アルミニウムを使ったモデルがある。重さが1.27kgと1.56kgで、カーボンファイバー製の方が堅牢性が20%高い、という以外のスペックは同じ。今回入手したのはアルミニウムモデルだ。

アルミニウムモデルでも約1.5kgと比較的軽量な三脚だが、収納時の縮長は39.1cm、直径は7.9cmというコンパクトさが特徴の1つ。高さはセンターポール収納時で130.2cm、最大まで高くした場合は152.4cmとなるので、トラベル三脚としては十分なスペック。どちらの素材も、スペックで考えれば他社と比べて同等か少し軽い程度といった感じだが、コンパクトさは圧倒的だ。

コンパクトさの秘訣はその独特の形状。普通の三脚だと、センターポールとそれぞれの脚が円形の筒状となっているが、Travel Tripodの場合、やや平べったい五角柱に近い形になっているのだ。他社に比べてセンターポールも細い。このデザインで脚を畳むと、それぞれがパズルのようにピッタリとはまり、すき間がなくなる。その結果、収納時はスッキリと細い筒状に収まってくれる。収納時の太さは500mlのペットボトルの太さ程度だ。

脚のパイプを抜いたところ。やや潰れた五角柱の形状だ。中央のセンターポールは三角柱で、脚を閉じるとピッタリとはまる。
水のペットボトル(550ml)とほぼ同等の太さに収まっている。

付属のケースもいい。ちょっとキツイぐらいにピッタリ収まる柔らかなケースで、その分コンパクトさを損なわない。ストラップは付属しないが、Peak Designのストラップアタッチメント「アンカー」を介してカメラ用ストラップを装着すればいい。アンカーを三脚側に取り付ければ、このストラップを三脚本体に装着して持ち運ぶことも可能だ。

付属ケース。アンカーとカメラストラップ「Slide」を装着したところ。
ピッタリ収納されて、サイズがそれほど増えないのはメリット

コンパクトなのでバッグへの収まりもいい。ペットボトル並みの太さなので、ボトル用のサイドポケットにも容易に収まる。特にPeak DesignのEveryday Backpackとの親和性は高い。ポケットにケースを収めた状態で三脚だけを出し入れできる点もポイントだ。

Peak DesignのEveryday Backpackとはベストマッチ。もともとこのバッグのサイドポケットには三脚固定用のストラップが収納されていて、もちろんぴったりフィットする。

トラベル三脚だと、収納時に脚を180度反転させて短く収納しようというものもあるが、この製品はそうした手間をかけずにペットボトルサイズのコンパクトさを実現している。

脚部は5段のレバーロック式だが、収納状態でレバーに4本の指をかけて、一度に5段分のロックを解除できる使いやすい構造だ。それを一周するように手をずらして3本の脚で繰り返せば、スムーズに開放できる。ロックを解除したらそのまま脚を引き出してもいいし、下に向けて軽く振ればすべての脚が伸びる。

細長いレバーに4本指を添えてそのまま同時に開ける。

このあたりのスムーズさには精度の高さを感じる。脚を伸ばしたら、ロックレバーを握るようにして締めていけばいい。収納時はこの逆になるため開放時よりは少し手間がかかるが、動きとしては滑らかに行える。

以下は、脚を伸ばす際の動画。ロックを解除して脚を引き出し、脚を握りしめるようにしてロックレバーを締めていく。

トラベル三脚として小型軽量化を図っている関係上、5段目の脚は細い。力を込めるとたわんでしまうが、用途を考えれば十分だろう。耐荷重は9.1kgと、やはりトラベル三脚として十分以上に優秀だ。

センターポールの先に搭載された雲台も独特だ。センターポールの先端部がボール形状になっており、指輪の台座を逆にしたような3つの爪がボールを保持している。ボールに直接カメラ台が固定されたスタイルのため、その分、収納時の全長が抑えられている。

センターポールにボールがついた形状。その上にカメラ台が乗っている。
もちろん縦位置撮影も可能。

カメラアングルの固定には、台座周辺のリングを回す。緩めればボールに沿って縦横自由に動かせるが、水平を維持してパンをするといった用途は想定されていない。リングをしっかりと締めれば、縦位置でも次第に傾いてくるようなことはなかった。

ただ、3本の爪でボールを保持するという構造上、縦位置でレンズが正面を向くのは左側に倒したときだけ。右側に倒すと、爪がセンターポールと干渉し、レンズが上か下を向いてしまう。これは一般的な自由雲台でも同様ではある。

カメラ台の下部が脚のすき間にピッタリとはまり、三脚全体の小型化に貢献している。カメラ台の周囲がカメラアングルの固定と解除を行うリング。
センターポールの高さ固定ノブも、使うときに引き出し、未使用時は収納できる。

台座は同社おなじみのCapture用プレートがそのまま装着できるようになっている。一般的なクイックシュー代わりだが、カメラの三脚穴に取り付けたプレートを押し込むだけで固定され、鍵のマークがついたロックリングを回せばロックがかかってカメラが完全に保持される。いわゆるアルカスイス互換形状なので、プレートだけでなく、アルカスイス互換のL型ブラケットなども装着できる。

台座部にプレートがフィットする。最初に写真上側の溝にプレートを差し込み、下のロック部分に押し付けるようにすると、ロックがかかり固定される。

カメラ装着時は、最初に奥側の溝にプレートを合わせ、手前を下に押し込むと固定されるので、ロックリングを回してロックする。外すときはその逆。

使ってみると分かるが、他の三脚に比べてカメラの固定が非常に楽。特にCaptureを使っている人にとっては、当然のようにベストマッチする。アルカスイス互換のクイックシュー式雲台であれば似たようなことはできたが、シュープレートをクイックシューに固定するためのネジを緩めたり締めたりといった作業もいらないので使いやすくなった。

センターポールは1/3程度の部分で分割できる。2サイズの六角レンチが一体化した付属のツールキットをボールの穴に入れてボルトを緩めると、ポールを分離できる。別売の「ユニバーサルヘッドアダプター」と標準のヘッドを交換すれば、3/8インチのネジに通常の雲台やビデオ用雲台などを装着できる。手持ちの雲台を活用したい、ビデオ用にパンなどの操作が必要、という人も利用できる。

ボールヘッド頭頂部に穴があり、ここに六角レンチを差し込んで回す。
六角レンチは脚の部分に固定されている。
付属の六角レンチ。大小2種類ある。

脚の根元に開脚スイッチがあり、センターポールを分割すれば地上最低高は14cmほどとなる。

センターポールを分割したところ。
最低高の状態。

このセンターポールにも秘密がある。重しを吊り下げて安定性を増すための吊り下げフックが装備されており、Peak Designのバッグを吊り下げられるのだが、さらにこの部分をひねって取り外すと、ポールのパイプの中からスマートフォンホルダーが現れるのだ。

フックを取り外すと少し飛び出すホルダーを引き抜き、爪を開いてスマートフォンを挟み、台座に固定する。ホルダーの下部がプレートと同じように台座にピッタリと固定できるようになっている。今どきはスマートフォンでの撮影シーンも増えているので、三脚にスマートフォンホルダーが内蔵されるのはいいアイデアだ。

センターポール下部にある吊り下げフック。
スライドロックを引っ張りながら回転させる。
フックが外れると、スマートフォンホルダーが飛び出す。マグネットによって手を離してもフックは落ちないし、ホルダーも落下しない。
取り出したスマートフォンホルダーを開いたところ。
実際にスマートフォンを装着するとこんな感じ。安定感は抜群。

センターポール自体を引き抜く際は、このフックを取り外して行う。引き抜いたセンターポールを反対側から差し込むと、真上からの俯瞰撮影やローポジション撮影も行える。

オプションとして、先述のユニバーサルヘッドアダプターに加え、氷上などでも使える交換式の石突(スパイク)や「Ultralight Conversion Kit」も用意されている。最後のキットは、三脚のパイプを全て抜いて交換式の石突を装着することで、重さを40%削減してテーブル三脚に変換するキットだ。

アイデア満載なPeak DesignのTravel Tripod。同社の「Peak Designエコシステム」という表現の通り、アンカーやストラップ、バッグ、プレートとの親和性の高さと、よく練られた機能性、可搬性が特徴。特にPeak Designユーザーはトラベル三脚として便利に使えるし、そうでないユーザーも、プレート1枚が付属するので、コンパクトで使いやすい三脚として候補に入りそうだ。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。