新製品レビュー

EOS 6D Mark II(外観・機能編)

コストパフォーマンスが高いフルサイズ入門機

8月4日、EOS 6D Mark IIが発売となった。前作EOS 6Dから5年ぶりのモデルチェンジとなる。前モデル同様、上位機種の技術を取り入れつつ画素数を抑え、使いやすく、お買い得感の高いプロ・ハイアマ向けの35mmフルサイズデジタル一眼レフカメラだ。

上位機種であるEOS 5D Mark IVと比較すると、画素数、測距点、測距エリア、連写速度、シャッター最高速など機構面が控えめなスペックとなっている。この点は前モデルと同様で、最高スペックを狙うのではなく、GPSを内蔵するなど実用域での使いやすさと高画質を狙ったモデルであることが明白だ。

前モデルとの比較で言えば、画質や機構面全てが向上しているが、Bluetooth、最新GPSの追加搭載、バリアングル液晶モニター、タッチパネルの採用など使い勝手の向上も著しい。中でも測距点の大幅な増加とAFスピードは快適な撮影感覚をもたらす大きな進化である。

ライバル

カテゴリー、スペックでのライバルはニコンD750である。しかし、かたやD750の登場は2014年であり、1世代の差がある。画質やAF性能など実質的なカメラの性能を比べるのは酷である。

プロ・ハイアマ向けと言える2,000万画素台、フルサイズというカテゴリーにおいて、EOS 6D Mark IIのライバルは現時点では存在しない。

大きさ、重さ

大きさ、重さは前モデルとほぼ同じと言っていいだろう。重さで10g増えて約765g(バッテリーと記録メディアを含む)、奥行きが3.6mm増えているが、手に持った印象は変わらない。

フルスペックと言えるEOS 5D Mark IVや他の上級デジタル一眼レフカメラより一回り小さい印象だ。大きすぎず、小さすぎずホールドしやすい。女性には大きいかもしれないが、多くのアジア人男性にとって手頃な大きさ、重さである。

ボディデザイン

デザインにおいて、すでにEOSとしてのアイデンティティが確立されており、良くも悪くも目新しさはない。しかし、デザインは操作性に直結し、アイデンティティそのものは価値である。

クオリティに関してもすでにこなれているとは言え、ボディ外装の継ぎ目の生産技術の向上が見て取れる。ボディ外装はいくつかのパネルに分かれているが、その継ぎ目はケガキで線を引いたが如く繊細であり、かつ段差も少ない。

直接手や顔で触れるものであるだけに、素材感ではないクオリティが求められるのだと改めて思う。十分なグリップ感と肌へのなめらかな感触のボディもEOSのアイデンティティである。

操作性

操作系はデザインにも関わる部分であるが、Kiss以外のEOSとほぼ共通と言える操作系である。

上面右ボタン類の配置は共通だが、表示パネル上のボタンがこれまでの4つから5つに変更され、複数の機能をかねるものではなく、1つのボタンに一つの機能が割り当てられている。シンプルで使い勝手の良い選択だ。

左肩には、電源レバーと撮影モードダイヤル。機種によってモードの配置間隔は違っているが、項目は同じだ。操作系がほぼ同じであることは、複数の機種を使うときに迷うことがなく、ありがたい。

背面右操作部の配置も各機種ほぼ共通だが、EOS-1D系やEOS 5D系のようにマルチコントローラーが独立配置ではなく、サブ電子ダイヤルと同軸に配置されている。これは、ボディの大きさの違いによって配慮されたものだ。結果として同じ使い勝手となっている。

背面左側にはINFOボタンとメニューボタンが配置され、シンプルだ。ファインダーを覗く際には使わないボタンとして左手側にまとめておくのは良い配慮だ。

撮像素子と画像処理関連

イメージセンサーは新開発。デュアルピクセルCMOSセンサーで、およそ有効2,620万画素である。これに最も新しい映像エンジンであるDIGIC7を組み合わせ、常用感度ISO40000を実現している。

EOS 5D Mark IVの常用最高感度はISO32000であり、本機が単なる下位機種ではなく、プロやハイアマが納得する画質性能を搭載したモデルであることがわかる。

画質の設定は、RAWにおいてサイズ違いの3種類、JPEGではサイズで4段階、最も小さいS2以外は圧縮率の違いで2種類ずつに分かれている。それぞれのサイズは、RAWで26MP、14.6MP、6.5MP、JPEGにおいては26MP、11.5MP、6.5MP、3.8MPである。

RAWについてもサイズ違いが設定できるのは以前からであるが、誤設定には十分気をつけたい。なお、感度は拡張設定によって最高ISO102400が可能だ。

ファインダー

光学ファインダーの視野率は約98%で少し惜しいところだが、実用上は問題ない。それよりもすっきりと明るく、どんな環境でも良く見える点は改めて光学ファインダーの良さを感じさせてくれるものだ。

アイポイントは約21mmだが、アイポイントはシビアではなく、眼鏡使用時も裸眼でも、覗きやすい点は好印象である。

AF

肝心のAF性能は、素晴らしく速く高精度だ。何よりも驚くのは、点景として配するような被写体にストレスなく、速く精度よくピントが合う点だ。

測距点は45点で、決して測距範囲が広い方ではないが、速度と精度の点から大口径単焦点レンズを使っても、ストレスは全くない。当代随一のAF性能を持ったカメラの1つと言って過言ではない。

一方、ライブビュー時のAF性能についても、やはり同じ評価だ。ライブビュー時は画面最周辺には届かないが、かなり端にまでフォーカスポイントを設定できる。面積で言えば80%だ。

さらにはライブビューとは思えないフォーカス速度を実現している。これは、撮像センサーにデュアルピクセルCMOSを採用したデュアルピクセルCMOS AFの恩恵である。

デュアルピクセルCMOSセンサーでは1画素に2つのフォトダイオードを設置し、1画素ごとに位相差信号を検出し、光学ファインダー撮影時同様、位相差AFを実現している。ピント位置を探して大きく前後することなく、スムーズかつすばやいAFである。この特性は動画撮影時にも威力を発揮する。

デュアルピクセルCMOS AFでフォーカス枠を最も外側(右下)に移動させたところ

連写

連写の最高速度は前モデルの約4.5コマ/秒に対して、約6.5コマ/秒である。十分に速くEOS 5D Mark IV(約7コマ/秒)と比較しても見劣りのしないものだ。

撮影可能枚数もUHS-I対応のハイスピードカードなら、RAW撮影時で約21コマと十分である。撮影可能枚数を超えても、2コマ/秒弱程度で撮影が続く。数秒待てば速度も回復するので実用性能は高い。

液晶モニター

液晶モニターはサイド振り出し式の3型バリアングル液晶モニターとなった。レンズ光軸とはずれるものの、剛性感も高く、縦位置でも使いやすく実用的である。

動画機能

通常動画のサイズはフルHDだが、タイムラプス動画撮影では4Kサイズを選択でき、高解像度の動画を楽しめる。

タイムラプス動画の設定は、ライブビューボタンを動画撮影に設定してからメニューで行う。

通信機能

通信機能では、GPS、Wi-Fiに加えて、Bluetooth接続が設定された。

Wi-FiでPC、スマホ、プリンターと接続できるほか、Bluetoothでペアリングしたスマホとの常時接続を実現しており、撮影データを常時スマホに転送可能だ。また、カメラ同士での写真データ送受信も可能で、これもまた実用的な歓迎すべき機能である。

記録メディア

対応記録メディアはSDXC/SDHC/SDカード。スロットはグリップサイドに1基である。高速連写を活かすために書き込み速度の速いメディアを選択したい。

端子

ボディ左側面には、上から外部ステレオマイク端子、USB端子、HDMI mini端子が配置される。

リモコン端子は前面に移動し、全ての端子を同時に利用しやすくなっている。

電源

バッテリーはグリップ部に収納される。バッテリーはLP-E6Nが同梱されるが、従来のLP-E6と互換である。

撮影可能枚数、時間を前モデルと比較すると、ライブビュー撮影時、動画撮影時ともに大きく伸びている。ことに動画では、常温で2時間40分の記録が可能であり、動画機材としての資質にも大いに期待できるものとなっている。

まとめ

新しいEOS 6D Mark IIは前モデル同様、キヤノン製品に限らず現行のデジタル一眼レフカメラの中で最もお買い得感の高いモデルに仕上がっている。これは揶揄でも世辞でもなく、スペックと価格から純粋に判断されるものだ。

デジタル一眼レフカメラに求められる性能とは、連写速度やシャッター最高速度などカメラとしてのスペックと作画に必要な画質である。無論、EOS 6D Mark IIはカメラとしての最高スペックは狙っていない。

連写速度の速さや、より速いシャッター速度、より多い画素数などは、時として必要な機能であるが、現実の撮影のうちの何割かで使うに過ぎない。それよりも、結果としての画質にコストを注いだカメラだ。実写の結果が楽しみである。

※次回は「実写編」をお届けします。

茂手木秀行

茂手木秀行(もてぎひでゆき):1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、マガジンハウス入社。24年間フォトグラファーとして雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」を経て2010年フリーランス。