新製品レビュー
D7500(実写編)
ダイナミックレンジも向上 DX機最高の画質が味わえる1台
2017年6月14日 11:57
D7500はニコンDXフォーマット(APS-Cサイズ)の最新デジタル一眼レフカメラ。やや立ち位置があいまいだった前機種D7200に対して、DXフォーマットのフラッグシップD500が登場したことでより中級機としての性格が明確になった。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1058420.html
モノコック構造を採用し従来比約45gの軽量化を達成するとともに、タッチ操作が可能なチルト式3.2型画像モニターを搭載するなど、着実に使い勝手が向上していることは明らか。
実写編となる今回は、D500から継承されているという画質がどれほどの実力であるかを中心に見ていきたい。
ダイナミックレンジ
作例は夕日と臨海の都市の風景を撮影したもの。当日の天気が薄曇りであったため、画像全体で階調の移行がよくわかる写真になった。太陽は中心部こそ白トビを起こしているが、明部から暗部へと、トーンジャンプなど起こすこともなく違和感のない階調を保っている。
FXフォーマット(35mmフルサイズ)機に比べれば画素ピッチが狭くなるため、その分、ダイナミックレンジも狭くなりがちなDXフォーマットであるが、この結果なら作品撮りに使用してもまったく問題なく満足できるレベルに仕上がっていると言ってよいだろう。
撮り比べをしたわけではないが、D7200よりもダイナミックレンジは向上しているといった印象であり、これは撮像センサーだけでなく、新しく採用された画像処理エンジンEXPEED 5との連携が高い次元で融合した結果の画作りである。
高感度
高感度性能について、1つめの作例は日没の薄暗い時間にアジサイの花をISO1600で撮影したものである。拡大すれば輝度ノイズによる多少の質感の消失が見られるが、色ノイズの発生はほとんど見られず、A4やA3サイズのプリント程度ならほとんど問題なく使うことができるだろう。
2つめの作例は、さらに感度を上げ、ISO12800で撮影した。ISO1600時に比べれば質感の消失が顕著であることは否めないものの、それでも色ノイズの発生はほとんど見られない。2L程度の小サイズプリントやWEB上での使用など、使用目的を限定すれば十分に実用範囲内であると言ってよい。
FXフォーマットに比べれば高感度撮影は不利とされているDXフォーマットであったが、センサーと画像処理エンジンなどの技術向上によって、かなりの高感度領域までが実用範囲となってきている。D7500は高感度特性においても、最新機種としてそうしたことを立証している。
連写およびAF
ファインダー撮影専用に51点のAFセンサーを搭載している。51というAFポイントの点数は前機種D7200と同じであるが、D500と同等の高速な画像処理エンジンと撮像センサーを採用したことで、連写速度が最高約6コマ/秒から約8コマ/秒へと向上した。
AFエリアが広範囲に設定されていること、15点のクロスセンサーが使用頻度の高い中央部に配置されていること、D500で好評のグループエリアAFが本機にも搭載され自由度が高くなったことによって、動態の捕捉能力はデジタル一眼レフカメラとして申し分のない性能を備えていると実感した。
フリッカー低減機能
これまで動画撮影時のみに対応していたフリッカー低減機能が、静止画のファインダー撮影時でも使えるようになった。
メニューの「フリッカー低減」をONにして、水銀灯が照らす建物を連続で撮影したが、10コマ以上連写した画像は全て適正な明るさで記録されていた。
逆に、フリッカー低減をOFFにして同じ被写体を連続で撮影すると、暗く写ったり色調がずれてしまったりしている画像が数枚混ざっていた。
フリッカー低減は、蛍光灯や水銀灯などの人工照明の明滅によるチラツキ(フリッカー現象)に対して、最も明るくなるタイミングでシャッターが切れるように自動調整する機能。蛍光灯照明下での人物撮影などでも役立つ機能なので、必要に応じて活用してみるとよいだろう。
作品
ヒルガオの花が咲いていた。画角が同じ場合、DXフォーマットはFXフォーマットに比べて被写界深度が深くなるが、望遠レンズを使って撮影距離を短くすることで背景を大きくぼかすことができる。
南京錠が目についたので撮影してみた。マイナス補正で撮影したことで、繋がれた鎖とともに金属の質感を強調することができた。D500と同じ2,088万画素センサーの描写は解像感も十分に表現してくれる。
カタバミの仲間だろうか? 道端で綺麗に群生していたので、スペシャルエフェクトの「極彩色」を使い鮮やかさを演出した。スペシャルエフェクトモードはモードダイヤルに配置されているので素早く設定することができる。
干潟を歩いているとたくさんのカニがいた。近づくと素早く巣穴に逃げ込んでしまうが、D7500の高速高精度なAFなら簡単に撮影することができた。
チルト式液晶モニターを引き出しローアングルで猫を撮影した。バリアングル式ではないため縦位置撮影は苦手であるが、個人的には横位置でのローアングル撮影がしやすいチルト式が好み。日没後で暗い条件だったが感度を高めに設定したので、手ブレを起こすことなく撮影できた。
まとめ
前機種D7200と比べると、2,416万画素から2,088万画素へと画素数が減ったこと、AFポイントが51点と据え置かれたこと、メモリーカードスロットがダブルからシングルになったことなど、D7500は一見するとスペックダウンしたかのような印象を受けてしまうのではないだろうか。
しかし、撮像センサーは上位機D500と同等のものであり、DXフォーマットとして300万画素程度の画素数の差はほとんど問題になるものではない。なにより、画像処理エンジンがEXPEED 4からEXPEED 5になるなど、各部が細かなところまでブラッシュアップされ最新のデジタル一眼レフカメラとして生まれ変わっていることの方が大きい。
実際、今回の実写結果では、D7500がニコンDXフォーマットにおける最高レベルの画質をもち、タッチ操作可能なチルト式モニターの新採用などで、操作性も確実に進化していることが実感できた。動画撮影を重視する人には、4K動画撮影機能やタイムラプス動画機能が新搭載されたことも重要なポイントとなるだろう。
「D500の高画質と高速性能を軽量・薄型ボディーに凝縮」というのがD7500のコンセプトである。入門機よりは高性能であってほしいがD500の価格と大きさには二の足を踏んでいた人にとって、うってつけのモデルが登場したというわけである。