新製品レビュー

D7500(外観・機能編)

小型軽量ボディに機能を満載 上級機に迫る高機能ぶりに注目!

装着レンズはAF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR(以下同)

D7500は、ニコンが6月に発売を予定しているDXフォーマット(APS-Cサイズセンサー)のデジタル一眼レフカメラである。ラインナップ中においては、D3000シリーズおよびD5000シリーズの上位機、3桁シリーズのD500の下位機にあたる、中級機ということになる。

上位機にあたるD500が登場するまで3桁シリーズが長らく不在になっていたこともあって、本機が属するD7000シリーズは、実質DXフォーマットのフラッグシップ機としての役割を担っていた。

その経緯もあって、最新の中級機であるD7500は、上位機にも匹敵するハイスペックな性能を誇るものとなっている。

デザイン

大まかにはD7100以来のデザインを違和感なく踏襲しているが、D7500は、近頃のニコン製デジタル一眼レフで採用著しい「モノコック構造」が取り入れられており、この点が非常に大きい。

モノコック構造とは、新素材である炭素繊維複合素材を適切な箇所に採用することで、従来の構造では不可欠だった大型の骨格部材を廃止し、外装が内部の骨格を兼ねることを可能とした技術。これによって、ボディを大幅に薄型化できるとともに、強度や剛性を保ちながら小型、軽量化、さらには深いグリップによる確実なホールディング性を実現している。

実際のところ、前機種D7200から大幅に軽量化したボディ(約720g)は、小型化しながらもなお深くなったグリップによって握り具合はすこぶる良好である。

実用性の高いモノコック構造を取り入れるには、ゼロベースでの新規設計が必要になるとのことだが、その基本的なデザインにおいてもD7500は完全なる“フルモデルチェンジ”を達成した新型カメラだと言えるだろう。D7200から番号を飛ばしてD7500と名付けられた意味にも頷けるというものである。

ボタン類

ボタンやレバー、ダイヤル類に関しては大きな変更はなく、概ねD7200の仕様を引き継いでいるため、従来のD7000系ユーザーであれば迷うことなく操作することができるはずだ。

そうした中でも、比較的大きな変更があったのがシャッターボタン周辺のレイアウト。D7200では(カメラを構えた状態で)右から「露出補正ボタン」「動画撮影ボタン」「測光モードボタン」と並んでいたものが、D7500では「露出補正ボタン」「ISO感度ボタン」「動画撮影ボタン」の並びに変更された。

確かに、デジタルカメラの場合は測光モードよりISO感度を変更する頻度の方が高いと思われるので、これは改善と言ってよいだろう。

上面に液晶表示パネルをきちんと備えているところは、上級機並みのスペックをもつ中級機として嬉しいところ。素早く必要な情報を把握するという目的においては、シンプルな液晶表示パネルは視認性がよくわかりやすい。D7200と微妙に表示レイアウトが異なる以外、基本的に同じである。

上面左側には撮影モードダイヤルが備えられ、同軸上にレリーズモードダイヤルが搭載されている。いずれも誤操作を防ぐためのロック機構付きで、その他の仕様もD7200から変更はない。

背面右側のレイアウト。マルチセレクターやAE/AFロックボタンなどの配置に変更はないが、従来、背面左側にあったinfoボタンが右側へと移り、iボタンがライブビューセレクターの右上に配置されるようになった(従来のinfoボタンは背面左側に移動)。

iボタンはinfoボタンを押して表示されるインフォ画面で、撮影時の設定変更をアクティブにするためのボタンであったが、D7500ではインフォ画面の表示状態に関わらずiボタンによる設定変更の呼び出しが可能となったため、より直感的に操作がしやすい右側へと位置が変更になったと思われる。

インフォ画面
インフォ画面の表示設定
表示内容の設定例

以上のレイアウト変更によって、背面左側のボタン配列は拡大表示ボタン(液晶モニター左側に縦に並んだボタンの中央)のサブ機能が測光モードボタンとなり、従来のiボタンの位置(同じく縦に並んだボタンの最下)はinfoボタンとなっている。

撮像素子

搭載される撮像センサーは、DXフォーマット(APS-Cサイズ)の有効約2,088万画素CMOSセンサーである。

D7200が有効約2,416万画素なので、この数字だけを見てしまうとスペックダウンのように感じてしまうかもしれないが、DXフラッグシップ機であるD500と同じ画素数と言われればなんとなく安心できる。というより、D7500の撮像センサーと画像処理エンジンはD500と同じものが採用されているのである。

実はここがD7500の肝心なところで、画素数こそ少なくなったものの、D500と同じ最新の撮像センサーを搭載することで、後述するさまざまなメリットを得ることができるのである。

そもそも、2,088万画素と2,416万画素との差は、割合で考えればわずかに約1.16倍。現実的に、この程度なら実際のプリントや印刷などで解像感の差を体感することはまずないと言って良い。

常用感度の設定範囲は、D7200でISO100~25600だったところ、D7500ではISO100~51200となっており、従来より1段分高く設定することができる。

さらに、拡張感度の設定範囲は、D7200で約1~2段分(ISO 102400相当)までだったところ、D7500では約0.3~5段分(ISO 1640000相当)までの増感が可能となっている。

画素数を抑えながら最新技術を取り入れた結果の、実用性の高いスペックアップである。

また、ピクチャーコントロールには「オート」が加わり、煩わしい設定をせずとも、シーンに合わせてカメラが最適な仕上げ設定を選択してくれるようになった。

連写性能

連続撮影の速度は最高約8コマ/秒と、D7200の最高約6コマ/秒より高速化している。連続撮影速度は、上位機と同じくレリーズモードダイヤルの「CH(高速連続撮影)」と「CL(低速連続撮影)」で切り換えるが、低速連続撮影の速度はカスタムメニューで1~7コマ/秒までの間で設定することができる。

さらに、D7500の連写性能で大きく進化した点が、14bitロスレス圧縮RAWであっても最高約8コマ/秒で50コマまでの高速連続撮影が可能となったところにある。14bitロスレス圧縮RAW時、D7200の連続撮影可能枚数は18コマまでだったので、約2.8倍の大幅な進化を遂げたことになる。

これは、画像処理エンジンに最新のEXPEED 5を採用したことと、内蔵バッファーメモリーの容量が拡大されたことによるが、前述のとおり、画素数を2,088万画素に抑えたことも大きな要因の1つであろう。やはりD500と同じ2,088万画素CMOSセンサーの採用したことは英断なのである。

ちなみに、JPEG(画質モード:FINE、画像サイズ:L)時の連続撮影可能枚数は100コマまでとなっており、こちらは従来と変わらない。

なお、これらの連続撮影が可能な枚数は、いずれも撮像範囲をDXに設定した場合のもので、1.3倍のクロップ撮影ではない。

AFおよびレスポンス

51点のAFシステムには、「アドバンストマルチCAM3500IIオートフォーカスセンサーモジュール」が採用され、「180KピクセルRGBセンサー」と連携する。

51点というAFポイントは同クラスで比べても非常に多い測距点数であり、これによって、中抜けなどを起こさない“スキのない”AFエリアを構築している。また、中央付近の15点はクロスタイプセンサーになっている。

素晴らしいのは、光の少ないシーンでもより確実なAFを実現していること。中央1点は-3EV環境下でのAFが可能であり、残りの50点も2EV~-3EVの低輝度限界でピントを合わせることが可能だ。

一眼レフならではの頼もしい独立したAFシステムなのであるが、51点という点数自体はD7200と同じであり、アドバンストマルチCAM3500IIオートフォーカスセンサーモジュールは、FXフォーマットのD750と同等のモジュールを採用したものとなっている。

また、D7500はDX時の範囲を1.3倍相当に拡大して撮影できるクロップ機能も備えている。この状態で、画角は装着レンズの焦点距離の約2倍相当となり、51点のAFポイントは撮像範囲をより広くカバーすることが可能である。

フリッカー低減機能

新たに、静止画ファインダー撮影時にもフリッカー低減機能が使用できるようになった(動画撮影時はD7200も対応)。蛍光灯や水銀灯などの人工照明の明滅によるチラツキ(フリッカー現象)の影響を低減して撮影できる。

カメラがフリッカーを検出すると、ファインダーの右下に赤く「FLICKERアイコン」が表示される。

ファインダー

一眼レフカメラの醍醐味ともいえる光学式のファインダーは、倍率約0.94倍、視野率約100%(DX時)。簡易的なペンタダハミラーでなく、明るく視認性の高いペンタプリズムがしっかり採用されている点には好感が持てる。ここは入門機などの下位機種との大きな違いだ。

ファインダー上部には、新たにアイセンサーが搭載されたため、接眼部に顔を近づけるだけで画像モニターのインフォ画面を自動消灯できる設定が選択できるようになった。ファインダー撮影時の操作性、また省電力に貢献してくれる。

液晶モニター

背面の画像モニターは3.2型の約92.2万ドット。固定式のD7200から進化し、上下チルト式を採用しているため、ハイアングル撮影やローアングル撮影も容易に行えるようになった。

ただ、バリアングル式ではないため、縦位置でのライブビュー撮影は難しくなる。

画像モニターはタッチパネル方式が採用されているため、D7200ではできなかったタッチAFやタッチシャッターも可能だ。

動画

動画機能も向上し、4K(UHD、3,840×2,160/30p)で最長29分59秒の動画を記録できるようになった。また、HDMIへ同時出力し外部レコーダーの非圧縮動画記録も可能。

通信機能

D5600やD3400で好評の「SnapBridge」も搭載している。一度設定するだけでカメラとスマートフォンが消費電力の少ないBluetooth Low Energyで常時接続できるため、シャッターを切るたびに撮った写真をスマートフォンに自動転送してくれる。

スマートフォンを利用するリモート撮影などにもWi-Fi接続で対応。ただ、NFC機能を搭載していいないのは、やや残念に思える。

端子類

端子類はボディ左側面の2カ所にまとめられている。

上部のカバー内には、外部マイク入力端子、USB端子、HDMIミニ端子の3つが、下部のカバー内には、アクセサリーターミナルとヘッドホン出力端子の2つが装備されている。

記録メディアスロット

ボディ右側面にはSDカードスロットを備えている。記録メディアは、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカード(SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカードはUHS-I規格に対応)に対応する。

DXフォーマットのフラッグシップ機であるD500との差別化を図るためだろうか、これまでD7000シリーズの特長であったダブルスロットは廃止され、シングルスロットとなった。

バッテリー室

バッテリー室はボディ底面に記録メディアスロットとは別に独立して装備されている。

電池は、リチウムイオンリチャージャブルバッテリーEN-EL15aを1個使用(EN-EL15も使用可)。バッテリーチャージャーMH-25aを使用(MH-25も使用可)して充電する。撮影可能コマ数(電池寿命)は、CIPA規格準拠でEN-EL15a使用時に約950枚となっている。

まとめ

ニコンのDXフォーマット機には、もともとD200、D300といったフラッグシップ機が存在した。しかし、デジタルカメラの高機能化と価格の面で3桁シリーズは長らく不在となり、代わって登場したのが“フラッグシップ機並みの機能をもった中級機”であるD7000シリーズであった。

しかし、2016年4月には思いがけずD300Sの後継機にあたるD500が登場。その基本性能の高さは、まさに現代のDXフラッグシップと呼ぶに相応しいものだった。逆を言えば、小型軽量なD7500は、D500の登場によって、中級機として本来あるべき立ち位置を復権したと言える。

ただし、搭載する撮像センサーや画像処理エンジンの性能、それらが引き出すAF性能や操作性のスペックは、相変わらず最上位機並であることに変わりがない。下位機から上級機までの多くのスペックを網羅しているという点で、使い勝手においては上位機のD500をも凌いでいるとすら言えるだろう。

気になるのは価格で、税込16万円前後の予想価格というのは中級機としてはいささか高めの設定であるように思える。D7200の売り出し価格は10万円前後であり、D500との価格差は3~4万円程度でしかない。

昨今のデジタルカメラの高価格化や、搭載された機能の数々を考えれば妥当かもしれないが、前機種D7200や上位機種D500を購入の選択肢に入れるとすれば、悩んでしまうというのが正直なところ。

そうした本機を選ぶうえでの意義は、次回の「実写編」にて、実際のポテンシャルを確かめつつ紹介していくことにしたい。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。