ミニレポート
“バッファ増量”の効果を徹底検証
(ニコンD7200)
Reported by 吉森信哉(2015/4/9 07:00)
3月19日(木)、ボクはその日に発売された「ニコンD7200」を購入した。D7000とD7100、そして今回のD7200。いずれの機種も発売初日に購入したことになる。
このミニレポート、以前は「気になるデジカメ長期リアルタイムレポート」というスタイルであり、ボクはD7000とD7100の長期レポートを担当してきたが、D7100の第3回目のレポートでは“連続撮影可能コマ数の少なさ”に対するストレスや不満を述べている。その中で、少しでも連続撮影可能コマ数を増やそうと、涙ぐましい工夫(設定変更)をいろいろやった。
今回の「D7200」では、高速な画像処理エンジン「EXPEED 4」搭載と、バッファメモリーの容量拡大により、その不満の解消が図られている。まあ、D7200の製品情報を知った時には「え~っ、連続撮影速度がD7100と同じ最高約6コマ/秒って!? それって、新製品としては微妙過ぎないか?」と、批判的な感情も湧きあがった。
しかし、ボク自身がこれまでD7100を使ってきて、最も不満を感じていたのが、先ほど述べた“連続撮影可能コマ数の少なさ”であった。そう考えると、新製品としてのインパクトは弱いが、ボクのようなD7100ユーザーが注目すべき機種ではあると思う。
さて、D7200と従来モデルD7100の連続撮影可能コマ数の違いを比較してみよう。当然、そのコマ数は「画質モード」の設定によって大きく変わるが、まずは、カメラの初期設定である「NORMAL」設定時の数を、両カメラの使用説明書でチェックする(画像サイズに関しては、以降すべてサイズLに設定。これも初期設定)。
この設定状態だと、D7200もD7100も連続撮影可能コマ数の上限は「100コマ」となる(FINE、NORMAL、BASIC、いずれも同じ)。
なお、この使用説明書に記載されている連続撮影可能コマ数は、以下のような条件の元での数値になる。
サンディスク製の16GB SDHC UHS-Iカード使用、ISO100、JPEG圧縮:サイズ優先、ISO感度12800未満、自動ゆがみ補正:しない、長秒時ノイズ低減:しない
…ちなみに、100コマまで連続撮影可能な状態でも、レリーズボタン半押し時に表示される連続撮影可能コマ数は、D7200が「42コマ」で、D7100はその半分以下の「19コマ」となっている。
最初のチェックでの、両カメラの設定状態をインフォ画面で確認。…って、D7200とD7100のインフォ画面、けっこう違うなぁ、コレ!
JPEG(NORMAL)では両者とも十分な結果
実際に、その「NORMAL」設定で連続撮影チェックをしてみる。ただし、すべての設定が“初期設定のまま”というのは少々難しいので、撮影条件に応じて一部の設定を変えている。こういった一部の設定変更や、使用するメモリーカードの性能などでも結果は変わってくると思うので、あくまでも参考ということで…。
ここでの被写体は、向かってくるモノレール。露出モードはマニュアルで、フォーカスモードも「MF」を選択。AFではなくMFを選んだのは、まず純粋にバッファの能力を確かめたいから、その他の条件と設定は、三脚使用(レンズの三脚座)、レンズのVR:OFF、レリーズモード:CH(高速連続撮影)、ISO400。これらの条件と設定で、モノレール前面が画面内に入りきった瞬間から高速連続撮影を開始する。そして、全4両の車両すべてが画面外に出るまで、レリーズを押しっぱなしにした。
最初のカット(前面が画面内に入りきった状態)から、最後部が画面外に出る直前まで、D7200は「95コマ」撮影でき、途中でスピードダウンすることはなかった。D7100は「91コマ」撮影できた。
車両前面が画面から切れる直前までのコマ数は、D7200が「38コマ」で、D7100が「37コマ」。その差はわずか1コマだが、車両すべてが画面外に出るまでは4コマの差がある。実は、D7100の方は最後の5カット前あたりで、微妙な引っ掛かり(書き込み待ち)が起きて、わずかにペースダウン。それがこの4コマ差につながった(まあ、列車のスピード差の影響が“完全にない”とは言い切れないが)。
いずれにせよ、画質モード「NORMAL」設定時には、どちらも十分な連続撮影可能コマ数が確保できる。
RAW同時記録で、バッファの差が出た
次は、被写体と撮影条件を変えないまま、画質モードを「RAW+NORMAL」に変えてみた。すると、レリーズボタン半押し時の連続撮影可能コマ数は、D7200が「15コマ」で、D7100は「7コマ」に激減。そして、「NORMAL」設定時のような、半押し表示数を大幅に超えるスムーズな連続撮影はできず、そのコマ数に達した後は“バッファ解放待ち”が生じてくる。
その結果、最初のカット(前面が画面内に入りきった状態)から、最後部が画面外に出る直前までの撮影コマ数は、D7200が「32コマに」、D7100は「25コマ」になった。バッファ容量の差が、そのままトータルコマ数の違いに直結した格好になっている。
コンティニュアスAFで検証
さて、次は実践的な連続撮影を行ないながら、D7200とD7100のバッファ容量の差を体感してみよう。被写体は、動物園内のチーター。画質モードは、動きモノ以外にも多用する「RAW+FINE」を選択。そう、連続撮影可能コマ数に関しては、最も不利な画質モードである。ただし、「JPEG圧縮」の設定は、初期設定の「サイズ優先」のままである(風景撮影などでは「画質優先」に設定している)。
露出モードはやはりマニュアルだが、フォーカスモードは「AF」で、AFモードは「AF-C コンティニアスAFサーボ」を選択。そして、AFエリアモードは「ダイナミックAF・21点」を選択した。
その他の条件と設定は、手持ち撮影、レンズのVR:OFF、レリーズモード:CH(高速連続撮影)、ISO800。これらの条件と設定で、動き回るチーターを追いながらのレリーズを押し続け、バッファ容量がフルになり連続撮影がスピードダウンするまでの連続コマ数をカウントした。
レリーズボタン半押し時の連続撮影可能コマ数は、D7200が「13コマ」で、D7100は「6コマ」を表示している。その差、約2倍。実際に撮影してみても、以降はバッファ解放待ちになり、どちらもスピードダウンが始まる。ということで、CH(高速連続撮影)のパフォーマンスが期待できる時間は、D7200は“2秒強”で、D7100は“約1秒”ということになる。
実際には、AFの挙動によってシャッターが切れるタイミングも微妙に変わる(6コマ/秒の速度が維持できない)可能性もあるが、単純に連続撮影コマ数が約2倍になると“連写してるぞ感”は、かなり高まってくる。そう、たとえ時間的には1秒であってもね。
“対DX1.3xクロップ”も有効
当然、D7200にも、D7100と同様「撮像範囲」設定の機能が搭載されている。その撮像範囲を、通常のDXフォーマット(APS-Cサイズ相当。23.5×15.6mm)から、対DX1.3×クロップ(18.8×12.5mm)に変更すれば、連続撮影速度が「約6コマ/秒」から「約7コマ/秒」にアップして、連続撮影可能コマ数も増加する。その数値は、先ほどのチーター撮影の状態で、D7200は「13コマ」から「18コマ」に、D7100は「6コマ」から「8コマ」に増加する。
まとめ
これまでのD7100でも、画質モードがJPEG(FINE、NORMAL、BASIC)なら、連写時にストレスを感じることはない。だが、RAWを含む画質モードに設定すると、連続撮影可能コマ数が極端に減り、動きモノの撮影では大きくストレスを感じるようになる。いや、動きモノでなくてもストレスは感じたよなぁ(苦笑)。それが嫌で、スポーツや乗り物などの連続撮影では、RAWは諦めて“JPEGのみ”のモードで撮影するようになった。
しかし、今回のD7200では、RAWを含む各画質モードの設定で、D7100の2倍以上のコマ数が撮影できるようになった。いま、単純に「2倍以上」と述べたが、その数値が“15コマに迫る”のか“5コマ強”なのかで、連続撮影時の快適度はまったく異なる。
まあ、約10コマ/秒という圧倒的な連続撮影速度を誇る「キヤノンEOS 7D Mark II」と比べると、そのスペックにはかなりの開きがある。だから、冒頭で述べたとおりD7200の新製品としてのインパクトの弱さは、ボクを含めた多くの人が感じているだろう。だが、これまでD7100で不満に感じていた“連続撮影可能コマ数の少なさ”は、実際に撮影してみても、かなり改善されたように感じられたのである。