相変わらずGR LENS A12 28mm F2.5ユニット(以下A12 28mm)が楽しくて仕方がない。APS-Cサイズ相当の撮像素子がもたらす画質の良さは当然として、この大きさでF2.5の広角単焦点レンズというところがお気に入りだ。ボケも美しく、被写界深度を意識して撮影してしまうところは、小サイズセンサーのコンパクトデジタルカメラでは味わえない醍醐味だろう。GXRに取り付けたときのルックスも良く、広角レンズが好みなこともあり、今のところ最も気に入っているカメラユニットとなっている。
GR LENS A12 28mm F2.5を装着したGXRと、40.5mm径のケンコーMCクローズアップレンズNo.1、No.2、No.3 |
そんなA12 28mmの数少ない弱点のひとつが、約20cmという最短撮影距離なのかもしれない。APS-Cサイズ相当の撮像素子であることを考えると悪くないスペックだが、見た目やカメラの持ち方がコンパクトデジタルカメラに近いこともあり、どうしても被写体にぐっと近づけたくなってしまう。頭ではわかっていても、つい腕が伸びてしまう感覚だ。ほかのユニットと異なり、マクロモードがないことも特徴。近距離での撮影をあきらめたことで、速いAFとコンパクトな鏡筒を実現できたのはわかるし、クローズアップ撮影を極めたければ、GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO(以下A12 50mm)という高画質カメラユニットを使えば良いわけだ。
ただし本格的なクローズアップ撮影というより、少し離れて料理の全景を撮るときなどで、「もう少し寄れたら良いのに」と思うことがある。A12 28mmの画角は座ったまま大きな皿を画面に収めるのに悪くないのだが、最短撮影距離ぎりぎりの状態で、ほかの皿がわずかに入ってきたり、中途半端に皿の縁が入ったりしたときは、軽くストレスを覚えがちだ。
そこで今回は、A12 28mmにクローズアップレンズを取り付けて、最短距離を縮めてみることにした。A12 28mmは40.5mmのレンズフィルター類が装着可能。クローズアップレンズにより最短撮影距離が短縮されるので、上記のようなシチュエーションで、使い勝手が良くなると踏んだわけだ。
クローズアップレンズの現行ラインナップに、40.5mm径の製品を持っているのは、確認したところケンコーだけだった。そのケンコーの「MCクローズアップレンズ」には、No.1、No.2、No.3の3製品が存在する。No.1から順に被写体に近づけるようになり、No.3が最も近接できる。いずれも単レンズのシンプルな製品で、価格は各2,100円。値段の割に高級感があり、A12 28mmに装着した状態もなかなか格好良い。
No.1を装着 | No.2を装着 |
No.3を装着 | No.1+No.2+No.3を重ねて装着 |
試してみたところ、No.2およびNo.3の使い勝手が良い。クローズアップレンズなしの状態からぐっと近づくことができ、構図の自由度も高い。今回の撮影なら、個人的にはNo.2で十分に感じた。これなら料理の撮影で苦労する回数はずっと減ることだろう。
画質は思ったより良くて驚いた。にじみもないし、中心部は十分シャープで満足いくクオリティ。今回のように背景をぼかすなら、周辺部の描写の流れはほとんど気にならないはずだ。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- いずれもマニュアルフォーカスでフォーカスを最短撮影距離に固定。ピント位置を拡大表示しながら、被写体が最も大きくなるように手持ちで調整しながら撮影しました。
クローズアップレンズは重ねることで撮影倍率を上げることができる。そこでNo.2とNo.3の組み合わせに加えて、No.1とNo.2とNo.3を重ねた例も撮ってみた。画角が28mm相当から離れるが、No.2とNo.3を一緒に持っておけば、いざというときさらなるクローズアップ撮影が行なえるのは心強い。
今回、GXRでクローズアップレンズを使ってみて思ったのは、40.5mmという小径フィルターが持つ優位性だ。複数持ち歩いてもそんなに邪魔にならず、小さいため取り付け作業も楽。値段も安い。これまでレンズフィルターというと、あまり使わないのにかさ張るし、取り付けが面倒で高価、という印象が個人的にあった。しかし40.5mmなら比較的安価なこともあり、NDフィルターをはじめ、色んなレンズフィルターに挑戦しても良いかなと思った。A12 28mmだけでなく、A12 50mmでも同じ40.5mm径のレンズフィルターが使用できるのもポイントだ。
ちなみに、GXRで近接撮影時の撮影倍率を上げるには、デジタルズームを使う手がある。本来は遠景をより引き寄せて写すための機能だが、A12 28mmのような広角単焦点レンズを搭載したカメラユニットで、どうしても細部をクローズアップ撮影したい場合にも使える機能だ。
このときセットアップメニューの「デジタルズーム切替」を「通常」ではなく、「オートリサイズ」にすることで、画素補間を行なわない中央部を切り出すタイプのデジタルズームを設定できる。画素数は減るものの、個人的には画素補間を伴う「通常」よりは画質面で納得がいく。
ただし、オートリサイズにこだわるなら、デジタルズームする前の「画質・サイズ」で「L」を(アスペクト比4:3)にしておく必要がある。A12 28mmの最大解像度となる3:2だと、メニューで「オートリサイズ」に設定しても、デジタルズームは「通常」になってしまう。この仕様は説明書にも記載がないので、オートリサイズを設定する際に注意を促すなど、何からのアラートがあっても良かったのではないかと思う。
ともかく、クローズアップレンズでA12 28mmの使いどころが広がることがわかった。それもこれも、A12 28mmにフィルターネジがも受けられているおかげ。今後もAPS-Cユニットにフィルター装着用のネジを必ず設けてほしいし、できれば40.5mmで統一してもらえればありがたい。
※今回試用したMCクローズアップレンズを3枚セットで1名様にプレゼントします。締切は5月9日12時です。応募はこちらから。
2011/4/28 13:14