オリンパスE-620【第6回】

Lightroomで真似っこアートフィルター

Reported by 北村智史


 オリンパス純正のRAW現像ソフトであるOLYMPUS Studio 2(Ver.2.2以降)を使うと、RAW形式画像にアートフィルターを適用できるようになった。普通に撮った画像をアートフィルター化できるし、撮影時と違うアートフィルターを適用することもできる。

 が、OLYMPUS Studio 2でできるのは、実はアートフィルターを搭載したカメラ(E-30、E-620、E-P2、E-P1、E-PL1)で撮ったRAW画像だけ。E-3とかE-520で撮った画像は非対応なのである。

 そういうわけなので、E-620のアートフィルターをお手本に、Photoshop Lightroom(以下、Lightroom)を使って、アーフィルター非搭載モデルを対象としたプリセットをつくってみようという次第である。まあ、筆者ごときの技術でばっちりに仕上がるほど底の浅いものではないだろうが、雰囲気くらい出せればいいかな、という感じで挑戦してみた。

 さて、用意するのは各種アートフィルターを使って撮ったRAW+JPEG同時記録の画像。ただし、読み込む前にファイルネームベース(ファイル名の拡張子以外の部分)をRAWとJPEGとで変えておく。ファイルネームベースが同じだと、LightroomはRAWとJPEGをひとつの画像としてまとめてしまう(この場合はJPEG画像が見えなくなってしまう)。なので、それを避けるためにリネームしておくわけだ。

 環境設定で「RAWファイルの隣にあるJPEGファイルを別の写真として処理する」用に設定することもできるが、リネームしないままだとすでにライブラリーに登録してあるファイル名の画像は拒否されてしまう。だったらリネームして読み込ませたほうが便利がいい。

 あとは、アートフィルターで撮ったJPEG画像と見比べながら、RAW画像を調整していけばいい。調整した内容は、「ユーザープリセット」として保存しておける。つまり、現像処方を残しておけるわけだ。こうしておくと、ワンクリックで真似っこアートフィルターが適用できる。

 保存したプリセットをほかの画像に適用して、さらにセッティングを煮詰めていく。いい感じに仕上がったら、新しいプリセットとして保存しなおす。ライトトーンやラフモノクロームは、条件によってパラメーターが変わるのか、ひとつのプリセットでばっちりというとはいかなさそうな感じなので、セッティングを変えて複数のバージョンをつくっておくのもいいかもしれない。

 もちろん、ライブビューの画面をにらみながら一発勝負で撮るほうが気合いが入っていいと思うが、後処理には後処理のおもしろさもある。RAWでやる分には画質劣化はあまりに気にしなくていいし、パソコンの大きな画面で試行錯誤できるのも、Lightroomのプリセットでやるメリットといえる。

 今回は、アートフィルターなしのカメラでもアートフィルター(真似っこですけどね)で遊べたらなぁ、ということであれこれやってみたわけだけれど、別にアートフィルターにこだわらなくちゃいけない理由もない。アートフィルターにない効果をつくったってかまわないんだし、そうやって写真の楽しみ方が広げられればいいんではないかと思う。

 以下、筆者がつくった(というか、でっちあげた)真似っこアートフィルターのセッティング内容である。当然のことながら、本物とそっくりの効果が得られなくても責任は持てませんのであしからず。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像、またはRAW現像済み画像を別ウィンドウで表示します。

ポップアート

 彩度をがつんと上げるのがベース。「基本補正」パネルで「彩度」と「自然な彩度」の両方をめいっぱいの+100にアップして、「明るさ」を+10。さらに「カラー」パネルで色別に色相とか彩度、輝度をあれこれいじって微調整。「レッド」は彩度と輝度を-10、「オレンジ」は彩度を-20で輝度を+40、「イエロー」は輝度を+40、「グリーン」は彩度を-40で輝度を+40、アクアは色相を-40にして彩度を+20と輝度を+80、ブルーが彩度を-30の輝度を+40。パープルとマゼンタはそのままにしてある。

 かなりアバウトにつくったので、アートフィルターで撮ったオリジナルのJPEG画像と比べるとずいぶん違って見える。そのうちにバージョンアップを考えよう。

左端は真似っこポップアートのレシピ。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)
ポップアートで撮ったオリジナルのJPEG画像RAWから未調整のまま書き出したもの
真似っこポップアートで書き出したもの。

ファンタジックフォーカス

 ファンタジックフォーカスには「ぼかし」が必要なので、Lightroomだけでは作業が足りない。それ以外の基本補正だけをLightroomでやる。「基本補正」パネルで「露光量」+0.33、「黒レベル」を0に下げ、「明るさ」を20増やして+70にアップ、「コントラスト」は15減らして+10に。「彩度」も-20に落とす。

 この状態でエクスポートするなりしてPhotoshopで開く。レイヤーを複製して「不透明度」を50%に下げる。で、「フィルタ」メニューの「ぼかし」から「ぼかし(ガウス)」を選んで、「半径」は25ピクセルくらいでOK。ソフトのかかり具合とかは違う感じもするが、まあ使えなくはないレベルには仕上がったと思う。

左端は真似っこファンタジックフォーカスのレシピ。ただしLightroomで不可能な「ぼかし」以外。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)。まだ「ぼかし」が入ってないので似ていない
「写真」メニューの「他のツールで編集」から「Adobe Photoshop CS3で編集」を選ぶ。もちろん、CS4でもOKですけど
Photoshopで開いたら、「レイヤーを複製」して「不透明度」を50%に下げておく
「フィルタ」メニューの「ぼかし」から「ぼかし(ガウス)」を選ぶ「半径」を25.0ピクセルにするとこんな感じ。「ぼかし」を適用したレイヤーを透かすことで、ソフトフォーカス効果が出せる
左がオリジナルで右が真似っこ。「ぼかし」の具合が多少違うのと、ホワイトバランスも少しズレている
ファンタジックフォーカスで撮ったオリジナルのJPEG画像。RAWから未調整のまま書き出したもの。
真似っこファンタジックフォーカスで書き出したもの。「ぼかし」をかける前の状態こちらは「ぼかし」後の状態

デイドリーム

 少し青みがかかるのをホワイトバランスでやると、画像ごとに設定をいじらなくてはならなくなる。なので、「明暗別色補正」パネルで操作している。「ハイライト」の「色相」を200で「彩度」を20、「シャドウ」も「色相」は200で「彩度」は5にセット。これでデイドリームっぽい青みが出せるので、あとは「基本補正」パネルで詰めていく。

「露光量」を+0.66、「補助光効果」を+30アップ、「黒レベル」を0に下げて、「明るさ」は+20、「彩度」を-20。アートフィルターで撮ったJPEG画像とはパッと見だけなら似ている感じになったものの、シャドー部のぼへーっとした濁り具合なんかはどう出したらいいのかもわからない状態。まあ、見比べなきゃ気にならないだろうし、ってことで。

左端は真似っこデイドリームのレシピ。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)。ちょっと明るくしすぎたかも
デイドリームで撮ったオリジナルのJPEG画像RAWから未調整のまま書き出したもの
真似っこデイドリームで書き出したもの

ライトトーン

 ライトトーンはハイライトの表現にくせがあって、その部分はPhotoshopに持っていってやらないといけないので、Lightroomではそれ以外の部分だけ。コントラストを柔らかくしたいので、「トーンカーブ」パネルの「ポイントカーブ」を「リニア」にして、「基本補正」パネルの「明るさ」を+20、「コントラスト」を45下げて-20に。ハイライトの階調を出すために「白トビ軽減」を30に上げて、ついでに「補助光効果」も5上げる。さらに「トーンカーブ」パネルで「ハイライト」を-45、「ライト」を+5にして、「彩度」を+20に上げればおおむねOKな感じだ。微妙に色相とかもいじったほうがいいような気もするが、そのあたりはお好みで。

 エクスポートしてPhotoshopで開き、「トーンカーブ」のハイライトだけ落としてやると、かなり近い感じに仕上がってくれる。

左端は真似っこデイドリームのレシピ。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)。発色も違うけど、空の調子がものすごく違うので、Photoshopに頼ることになる
Photoshopの「トーンカーブ」でハイライトだけ落としてみる空の調子もだいぶ似てきた。やっぱり色は合ってないけど
ライトトーンで撮ったオリジナルのJPEG画像RAWから未調整のまま書き出したもの
真似っこライトトーンで書き出したもの。ハイライト部分を調整する前の状態ハイライト部分を調整したもの

ラフモノクローム

 特有の粒状感を加えるのはLightroomにはできないから、これも外部のツールを使う必要がある。基本的にはグレースケールにしてハイコントラストにすればいい。

 白トビと黒ツブレが激しいので「露光量」を+2.00にアップ、「黒レベル」も45までアップする。「明るさ」を-40まで下げて、「コントラスト」は+100。それから「トーンカーブ」パネルで「ポイントカーブ」を「コントラスト(強く)」にして、「ハイライト」を+70、「ライト」を-70という乱暴な数値にする。最後は「シャドウ」を+20で。ただし、オリジナルの絵柄や露出によって仕上がりが大きく変わってくるので、状況次第でかなり設定をいじる必要がありそうだ。

 で、エクスポートしたら「フィルタ」メニューの「ノイズ」から「ノイズを加える」を選択。「均等に分布」で「量」は20%。これだとシャドーが浮いてくるので、レベル補正とコントラストで微調整を加える。

 ただし、Photoshopのノイズのほうが粒が細かいので、雰囲気としてはもうひとつな感じである。

左端は真似っこラフモノクロームのレシピ。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)。とりあえず、ノイズ以外はおおむねよさげ
Photoshopで「ノイズを加える」とりあえず、「均等に分布」で「量」は20%にしてみている
黒のシマリが悪くなるので「レベル補正」と「コントラスト」を調整。遠めで見た感じはまずまずの感じでも、ピクセル等倍で見ると、ノイズの感じが全然違うPhotoshopのは粒が細かすぎて、効果として物足りない
ラフモノクロームで撮ったオリジナルのJPEG画像RAWから未調整のまま書き出したもの
真似っこラフモノクロームで書き出したもの。「ノイズ」はまだ加えていない状態一応の仕上がり。フィルムの粒状感をシミュレートするプラグインとかを使ったほうがいい結果が得られるかもしれない

トイフォト

 周辺光量を落とすトイフォトは、色味もいじりたい。「周辺光量補正」パネルの「切り抜き後」の「適用量」を-80、「中心点」を63にして、「丸み」は+100、「ぼかし」を60といったあたりでまあまあの線になる。あとは「基本補正」パネルの「明るさ」を+57に、「コントラスト」を+60に上げて、「トーンカーブ」パネルの「ポイントカーブ」を「コントラスト(強く)」にする。

 それから「明暗別色補正」パネルで「ハイライト」の「色相」を70、「彩度」を20、「バランス」を+60にセット。さらに「HSL」パネルで「彩度」を調整する。「レッド」は-40、「オレンジ」、「イエロー」、「マゼンタ」は-20、「グリーン」と「アクア」は+20にする。

左端は真似っこトイフォトのレシピ。右画面はオリジナルと真似っこの比較(左がオリジナル)
トイフォトで撮ったオリジナルのJPEG画像RAWから未調整のまま書き出したもの
真似っこトイフォトで書き出したもの


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/3/1 00:00