交換レンズレビュー

ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm

短期集中連載:100-400mm級フルサイズ望遠ズームレンズ(8)

2023年3月に発売された「ライカ バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm」は、パナソニックやシグマとともにLマウントアライアンスを歩むライカが投入した、ライカのフルサイズミラーレスカメラ用として最長焦点距離を担うズームレンズである。

外観・仕様

最大径×長さは約φ88mm×198mm、質量は約1,530g(三脚座含む)。現代的なサイズに収まっているが、重量はやや重めといった印象だ。そのためか外装にはしっかりとした剛性感があり、そのあたりを妥協しないライカらしさを感じる。

鏡筒を最長の400mmまで伸ばすとこのような状態となる。400mmという焦点距離を考えれば、一般的な望遠ズームレンズの範疇だろう。

リング類はレンズ先端からズームリング、フォーカスリングの順に配置されている。特徴的なのは操作スイッチ類が一切存在しない点。同クラスの超望遠ズームレンズに見られるズームロックやトルクの調整スイッチなどが、あえて搭載されていない。こうした割り切りには、無駄な要素を極力排し、レンズ本来の姿を研ぎ澄まそうとするライカの美学が現れているように感じる。

金属製の丸型レンズフードが付属する。ロックボタンやフィルター操作用の窓といった付加機能は備えていないが、遮光性能は十分に確保されており、必要な機能だけを静かに満たしている印象だ。これもライカらしさの1つに数えてよいだろう。

本レンズは「ライカ エクステンダーL 1.4X」および「ライカ エクステンダーL 2.0X」に対応しており、焦点距離を1.4倍(560mm)あるいは2.0倍(800mm)に延長することが可能だ。クロップによる画素数減を回避できる一方、一般的なテレコンバーターと同じように、装着時の開放F値は1段または2段暗くなる。

作例

具体的なAF駆動モーターの種別は公表されていないようだが、試用した印象からは、最新世代のステッピングモーターが採用されているようだ。突出した速さこそ感じないが、安定してピントが追従し精度も高い。実用上、信頼性は十分に高い。

ライカ SL3/バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/400mm/シャッター優先AE(1/1,000秒、F6.3、-0.3EV)/ISO 200

新緑の中に佇むアオサギを捉えたカットだが、描写は全体としてシャープでコントラストも良好だ。画面の隅々まで細かな質感が丁寧に描き分けられており、解像力の高さは十分に感じられる。そこにボディ側のライカらしい画作りが重なることで、落ち着いたトーンの中にも密度のある仕上がりとなった。

ライカ SL3/バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/386mm/シャッター優先AE(1/1,250秒、F6.3、-0.6EV)/ISO 4000

最短撮影距離はワイド端、テレ端ともに公表されていない。ワイド端の最短撮影距離は1m以上あり、超望遠ズームレンズらしく極端に被写体へ寄れるタイプではない。最大撮影倍率も約0.11倍にとどまる。撮影距離に無理がないぶん描写には安定感があり、ピント面はしっかりとシャープに立ち上がっている。

ライカ SL3/バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/100mm/絞り優先AE(1/400秒、F5、+0.6EV)/ISO 100

一方、テレ端の最短撮影距離は1.5mほど。近接撮影という意味ではやや距離を要する仕様だ。この時の撮影倍率は最大の約0.24倍になり、長いワーキングディスタンスを保ちながら、1/4マクロに迫る近接撮影が可能になる。しかも描写性能は高いままだ。

ライカ SL3/バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm/400mm/絞り優先AE(1/400秒、F6.3、±0.0EV)/ISO 100

「ライカ エクステンダーL 2.0X」を装着することで、焦点距離は800mmへと拡張する。開放F値がF13と暗くなるものの、サイズバランスが大きく崩れることなく、さらなる超望遠域を撮影できる恩恵は大きい。

ライカ SL3/バリオ・エルマーSL f5-6.3/100-400mm+Extender L 2.0x/800mm/シャッター優先AE(1/1,000秒、F13、-0.3EV)/ISO 500

まとめ

重厚感と高級感をしっかりと備えながらも、操作系や外観はあくまで簡潔にまとめられており、無駄を削ぎ落としたその姿にはライカらしい思想が現れている。

突出した描写性能があるわけではないが、決して時代遅れという印象はなく、現代のフルサイズミラーレス用超望遠として十分に通用する。スイッチ類を持たないシンプルな構成でありながら手ブレ補正機構はしっかりと組み込まれており、そのあたりにも設計の新しさと実用性の高さがうかがえる。

シグマやパナソニックと歩調を揃える形での登場となり、やや出遅れた感は否めないものの、描写はもちろん使用感を含めた総合的な完成度は高い。上質なライカのボディと違和感なく組み合わせるという点においては、唯一無二の存在だ。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。